第二章『カウントする悪魔』4
★飛矢折★
一週間とちょっと前、あたしは犯罪武霊使いに襲われ………その圧倒的で、理不尽な力によって、暴行され掛けた。
その時、あたしは星波町に住んでいる親友の家に遊びに行っていた帰りで、偶々彼女の家に忘れ物をしていた。それの忘れ物を届けに来てくれた彼女によって………彼女は強力な武霊使いだったので、あたしは、暴行魔から助けられた。
でも、あたしはその時、自分自身を成り立たせている武術が暴行魔に利かなかった事や、初めて経験する圧倒的で、一方的な暴力に晒された事で……強烈な恐怖を感じてて……酷く混乱していた………そして、あたしは、助け起こそうとしてくれた彼女に、親友の黄道 美幸に、条件反射で技を掛けてしまい………気付いた時には、彼女は倒れていて………病院で検査の結果、美幸は、腕の骨とろっ骨を折っていた…………その怪我は、治療系の武霊使いの人に治してもらったけど………美幸は、次の日から学校に来なくなった。
何度も美幸の家を訪ねて、美幸にも謝ろうとしたけど………会ってくれなかった。
………彼女はきっと許してくれない。
そう思った次の日から、いえ、多分、美幸に技を掛けてしまった時から、あたしは心の制御が難しくなって……武霊を具現化中の武霊使いに不意にあったりすると、その武霊使いに反射的に技を掛けてしまう様になっていた。
どんなに意識しても、気が付くと技を出していて………。
「きっと」
不意に、それまで黙っていた彼が、口を開いた。
斜め上の星空を見ながら、
「時間が解決してくれます」
斜め上に向いていたのは、きっと恥ずかしかったんだと思う。
「……そう………かな?」
思わず彼の顔をずっと見てしまうと、彼もあたしを見て、あたしが自分を見ている事に彼は驚いて………頷いた。
問い掛けの答え?
………彼の言葉は、明らかに気休めだったけど…………どうしてか、心が少し、ほんの少しだけど、安らいだ気がした。
きっと、それは、彼が強力な武霊使いだって言うのに、あまりにも情けなくて、あまりにも弱そうで、あまりにも………優しいから………。
彼は、私が抱いている普通の武霊使いのイメージとあまりにもかけ離れていて………いつもおどおどしている美幸と、何だか似ていた。
だからか、込み上げてくるものを抑えられず、あたしは笑ってしまった。
いきなり笑いだす私に、彼はきっと怪訝そうな顔をして、むっとしていたと思う。