間章その一『星波学園の人々』44
★飛矢折★
あたしが所属する部活は、女性護身武術部と言って、女性のみで構成された護身の為の武術を習う部活何だけど………あたしみたいに、所属するほとんどのメンバーが、護身の域を超えた武術を身に付けてたりする。
それは部が始まった当初から続いている伝統みたいなもので……そうなると気軽に部活に所属しようとする生徒も少なくて、予算も他の部からすると極端に少ない。その上に、部の理念から武霊使いを部自ら進んで入れる事をしていないので、鍛錬に使っている道場を修繕する費用すら工面できないでいた。
………つまり、何が言いたいかと言うと……あたし達が使っている道場の外見は、誰も使っていなさそうに見えるほどぼろぼろになっていると言う事。
中は何とか綺麗にしているけど………。
「今回の逆鬼ごっこは随分と派手ねぇ〜」
あたしとの組手中に、不意に朝日部長がそんな事を言ってきた。
その言葉に、一瞬あたしの意識が朝日部長からそれてしまい、その一瞬で一気に間合いを詰められて、気が付いたら床に倒されて、腕を極められていた。
「鬼は一人だけでしょ?確か巴のクラスに転校してきた子だっけ?」
極められていた腕を放し、直に距離を取る朝日部長。
私も直に立ち上がり、構える。
「………もしかして、巴の恋慕の相手?」
と言われ、わけのわからない感情が瞬間的にあたしの中から湧き出して………気が付いたらあたしは道場の出入り口まで投げられ、着地。
朝日部長!
っと、立ち上がって講義の声を上げようとした時、唐突に道場の出入り口が開いた。
唐突だった事と、組手中だった事と、背後だった事が重なって、
「巴、駄目!」
と制止する部長の声より早く、あたしは出入り口を開けた誰かに、振り返りざまにあごに掌ていを放っていた。
掌に感じる打撃の衝撃。
脳震盪を起こして仰向けに倒れる誰か。
っど、どうしよう………。
うろたえるあたしの横を通り過ぎて、朝日部長が素早く倒れている誰かの状態を確認した。
「……気絶しているだけ見たいね………巴、反省は後でも出来るから、とりあえず彼を中に運びましょ」
「………はい」
反射的にやってしまった事とは言え………私は同じ失敗を何度繰り返すのだろう………あれ?
うそ!?
驚く私に、朝日部長は疑問の視線を倒れている………彼、黒樹夜衣斗君に向けた。