間章その一『星波学園の人々』38
★美羽★
うぅ〜どこですか夜衣斗さぁ〜ん。
高校棟の上空を旋回しながら、私は必死に夜衣斗さんを探していた。
でも、高校棟校門で少し騒動があったのを見つけたぐらいで、夜衣斗さんの夜の字を見つからない。
………よくよく考えてみれば、夜衣斗さんのオウキには、姿を消せるステルスサーバントがある。つまり、上空から探しても見つからないんじゃ………どうしようコウリュウ?
私の心の問いかけに、コウリュウは困った様に私をちらっと見た。
そうだよね………私達って、『広範囲戦闘型』だものね………人を探したりとか、細かい事に全然向かないものね……本当に、どうしよう?う〜ん。
そうやって悩んでいると、とうとう予鈴が鳴ってしまった。
終了の鐘の音が鳴ってないから、まだ夜衣斗さんは捕まっても、教室にも辿り着いていない様だけど………。
夜衣斗さん……どこにいるんだろ?
★夜衣斗★
足下に宮本武蔵がいた。
っで、その後ろに黒子がいる。
………まあ、多分、宮本武蔵が武霊で、黒子が武霊使いなんだろうけど………この人何部だ?演劇部?………まさか黒子部とか黒子同好会とかじゃないだろうな………この学園ならありえそうだ。
のしのしと歩く宮本武蔵と音を立てずに歩く黒子を、息を潜めてやり過ごし、俺は再び学校の『壁をよじ登り始めた』。
現在俺がいる場所は、高校棟二階……の壁。
昨日の案内で分かったんだが、小中高の校舎は、一階が教職員室などの学校関係者の部屋になっており、二階が一年、三階が二年、四階が三年、五階が図書室などの科目別教室になってる。
ので、三階まで登らなきゃいけないんだが………何と言うか、今日は今までに感じた事がない感覚をよく感じる日だ。
今、俺の服装は、今『着ている』サーバントのステルス機能で見えないが、学校の制服から、マントとタイツとスーツの様な物を組み合わせた黒い服装になっている。これは、保護対象の身体機能を高め、一定の攻撃から保護する『PSサーバント』で、本体はマントに隠れて見えないが、背中に付いている他のサーバントよりかなり小型な円盤。その円盤から出るナノマシンが制服を再構成させて今の服装を形作っている。また同時に小型円盤から出ている管により、身体機能を身体の内側から強化するナノマシンが心臓・首・手首・足首から注入されており………要は、外と内からあらゆる身体機能を強化する事により、俺は今、学校の壁を難なく登れる超人になっていると言うわけだ。
何と言うか、俺は今までこれほどまでに自分の体を自在に動かした事はない。
思った通り、いや、それ以上に身体がすいすいと動く。
昨日も試したが………これは、かなり気持ちがいい。
…………だけど、同時になんとも言えない怖さを感じていた。
どう考えても、異常だからだろう。
武霊もそうだが、こんな事が平然と、あっさりと出来る事は、自分の、いや自分だけではない構成する世界をいとも容易く壊しかねない。
それが怖いんだと思う………使うんじゃなかったかな………でも、使わないとこんな登れないし………。
などと悩みながら登っていると、あっさり教室まで辿り着いた。
っで、問題が発生した。
どこも窓が開いていない上に、鍵が掛かっているのに今更ながら気付いた。
……登る前に確認しておくべきだったな……最悪……………ガラスを割るわけにもいかないし……。
と思っていると、窓際に飛矢折さんがいるのが見えた。