間章その一『星波学園の人々』30
「赤井さん!」
なかなか離れない美羽さんにいらいらして来たのか、大声を上げて美羽さんを睨む生徒会長。
「これは黒樹様自身でお決めになる事なのですわ。部外者は今すぐ引っ込みなさい!」
「うっさいわね!多少のアドバイスぐらいいいでしょうが!」
「あなたのアドバイスは、部活の勧誘行為と同意義でしてよ!」
「条約範囲内の事しか言ってない!」
「どうだか!」
「言ってないったら言ってない!」
「耳打ちでの会話に信憑性なんてありませんわ」
「…………全く、殊更は本当に殊更うるさい」
言い争っていた美羽さんが不意に黙り、ぼそりと聞こえるか聞こえないかの小声でそんな事を言った。
「あ・か・い・さ・ん」
なんだかより怒気を含んだ声になったので生徒会長を見ると、彼女の背後でフェニックスの様な武霊が既に具現化していた。
今のが聞こえてたのか?マジで!滅茶苦茶耳がいい………って、何だが周りにいた武装風紀委員達が一斉に逃げ出してるんですけど………
「何よ!」
と声を荒げる美羽さんの背後にもコウリュウが具現化している。
うわぁ……………逃げよう。
ダッシュで武装風紀委員会が避難している所に避難。
と同時に、二人が器用に互いの武霊の背に乗り、人・武霊共に睨み合いながら飛び立った。
…………えっと、この場合………どうすればいいんだ?
困った俺が隣にいる武装風紀委員を見ると、同様に困った顔をされた。
他の武装風紀委員も同様で………困っていると、別の方向に避難していた武装風紀委員、私服を着ている事から大学部の学生なのだろ、が近付いてくるのに気付いた。
「三島委員長」
近くにいた武装風紀委員がそう言ったので、よく見るとその武装風紀委員の腕章には武装風紀委員長と書かれている事に気付いた。
………それにしても、随分と鋭い目付きの男だなメガネを掛けているから多少は緩和されている感じはあるが………なんだか嫌な雰囲気をある………まあ、俺の感覚なんて当てになんないからな………気のせいだろう。
「黒樹君。俺は星波学園大学部三年の三島 忠人だ。武装風紀風紀委員長兼統合生徒会統合副会長をしている」
………何だか、統合生徒会のメンバーって名乗りが長いな……まあ、そう言う位置なんだろうが……。
「琴野会長はああなってしまうと、しばらくは戻ってこない………だから、ここからは私が会長の代理を務めたいと思うが……いいか?」
そう統合副会長に言われたので、改めて空を見ると二人は激しい空中戦を繰り広げていた。どうもどっちが先に後ろを取るか争ってる様だけど………確かに直には戻ってこなさそうだ。
………本当に微妙に嫌な感じがするが……まあ、そんな理由で断るのもなんだな……。
そう思った俺は、副会長の問いに頷いた。