大聖堂
大聖堂は静かだった。当然、扉の開閉音がギッギィーと響き渡り、エリーはひぃっと首を竦める。そうっとロイの後ろから中の様子を伺うと、中には大勢の人影が見えた。夕べの祈りには神殿中の人が集まるようだ。真ん中の通路を挟んで、2つに分かれた席はもう大半埋まっていたが、20列ほどあるうち、扉側の2列はまばらにしか座っている人がいなかった。ロイはエリーをひょいっと持ち上げ、真ん中から見て右側の、一番後ろの通路側の席に座らせ、そのまま通路を通って前方へと歩いていってしまった。エリーはきょろきょろと周りを伺うが、皆目を閉じ、左手と右手を組んで祈りのポーズをしている。エリーは見よう見まねで手を組んだ。目を閉じるが落ち着かないので、薄目を開けて近くに座っている人を観察する。エリーが座った右側の席は女性が多く、後ろの方にいるのは特に若い女の子たちだった。皆、髪を2つの三つ編みに纏めている。前方の方の女性たちは白いフードを被っているから髪型は分からない。スカートだから、たぶん女性。左側を伺うと、通路越しにこちらを見ている男の子と目が合った。ぎゃっ!エリーは慌てて目をそらす。ちょうどその時、リンリンとベルの音が大聖堂に響き渡った。
「この世界を作り給うた神々のご加護により、今日も1日を無事に過ごせたことを感謝し…」
ロイの声だ。ほんとに神官さんだったんだなあ…。この世界を作った神には感謝しているが、エリーの家は本日焼失したので無事とは言えない…。そう思いながら、朗々と響く祈りの言葉を聞いているうち、エリーの意識は沈んでいった。