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衣食住は大事!

「こ、困った…」

わたしエリーはただいまとても困っている。父母と死に別れたときと同じくらい困っている。なにせ、家が燃えている。父と母が唯一わたしに残してくれた家が。そりゃもう村祭りの時のファイヤーもかくや、というほど。呆然と見上げているわたしの頬に火の粉が降りかかりそうになり、我に返る。おいおいおい。さすがにこれはヤバイ。慌てて後退すると、さっき森から帰ってきたときに放り出した自分のかごに引っ掛かって尻餅をついてしまう。ついてねー…。だが今やこのかごだけがわたしの唯一の財産!慌てて抱え込む。

「よう!エリー!困ったことになったみたいだな!」

うるせえ、このドラ息子!わたしの悲壮な空気を壊しやがって!

小さなわたしの村では村長がいちおう一番偉い。そりゃあお役人との交渉から、困っている人(例えば親を亡くしたわたし)を助けるために奔走してくれているのだから、偉い。でも息子、お前は偉くない。だからわたしが働いてるときに邪魔をする権利もないし、わたしが家を失って嘆いているときに邪魔する権利もないのだ。

そうだ、今はこのドラに構っているヒマはない。これからの生活を考えなければならない。

「おい」

どうしようか、もう村には両親が亡くなったときに散々世話になってしまった。優しい人達ばかりだが、いつまでも迷惑はかけられない。

「おいって」

財産はかごだけ。あと中に入っている木苺、これはわたしの今日の夕飯になるのがたった今決定した。ほんとはジャムを作って売る予定だった。

「おいってば!」

なんだまだいたのかドラ。

「いい加減にしたまえ、ドラくんよ。わたしはこれから将来について考えねばならん。きみの相手をしているヒマはないのだよ」

「いや誰だよドラって。じゃなくて、お前どーすんだよこれから」

「だから今それを考えている。だが今妙案が浮かびそうなのだ。しばし黙りたまえ」

ふむ、わたしの今できる仕事は、家事全般に、森での食べ物を探すこと、後は…ない。困った。というより、住む場所もない。衣食住が一番大事。ええ実感してます。

「困ってるならウチに…」

「あー!!!」

ドラが何か言いかけた。いやそんなことは重要ではない!たった今思い付いた自分の考えが素晴らしすぎて驚いてしまう。

「そうだ!確かこの前来た神官さん!」

神殿から定期的にお話をしに来る神官さん。なんかわたしに神殿来ない?って言ってた。きっと下働きさんを探してたんだ。その時はあんまり興味なくて断っちゃったけど。一月も前の話だけどまだ無効じゃないよね?とりあえず神殿行ってみよう。歩いて三時間。今から村を出れば、日が暮れる前には着くだろう。

「じゃあ、ドラくん。申し訳ないがお父様に伝えてくれたまえ。本当に申し訳ありませんが、火を出してしまった不始末に関しては身の振り方が決まってから、改めてお詫びに伺います。わたしの家の周辺はそのままでも構いませんが、潰して畑にしていただいても結構です」

ぺこりと直角に体を曲げる。いやまあ村の外れだし。近くに家もないから大丈夫だとは思うけど、いちおう。ドラは目を真ん丸にしてる。

「お前って普通に話せたんだな…」

失礼なヤツだ。

「どこ行く気だよ?」

「ふっ、聞いて驚くな。わたしは神殿に行くのだ」

そして新たな人生を築くのだ!下働きの才能を認められたら終身雇用に切り替えてもらうつもりである。かごを携え、颯爽と歩き出すわたしにドラが何か叫んでいたが知ったことではない。振り返るな突き進め!これ家訓。

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