第6話 魔物退治ですか?
今日、3つ目です!!
ほんと、暇人ですか?と聞かれそうです汗
誤字・脱字があればご報告よろしくお願いします!!
盗賊を倒してから四時間程馬車でゆったりとした時間を過ごしていたが、急に馬車が止まる。
突然のこと過ぎて、グラリと揺れる馬車に対応できずに、態勢を崩した。
「うわっ!」
「きゃあっ!」
俺が態勢を崩すということは、目の前に座っているサシャにも揺れが伝わっているということで。
そして、それは、お互いに前に突っ込むということ。
つまり、俺の眼の前に迫る見事に実った双丘が直に味わえるということ!
さぁカモーン!!
「「ブベシッ!」」
しかし、俺の願っているラッキスケベは見事にハズレ、おデコとおデコが凄い勢いでぶつかり合っただけになった。
しかも、真正面から受けたが為に、ゴツン☆みたいな音じゃなくて、グシャッという生々しい音だった。
サシャさん、 折れてないですよね?
てか、頭蓋骨、割れてないですよね?
たぶん、ステータス的にも俺の体の硬さは異常なのはわかってんだよ!?
こんなか弱い女の子に食らわせるヘッドアッタクじゃねぇ。
あまりの事態に頭がついていけてなかった。
「あ、あの」
すごく困惑しながらも、涙目を浮かべているサシャ。
如何やら、俺の心配は無駄に終わったらしい。
さて、そんなことよりも……
さっきから外が騒がしい。
何かあったのか?
「……どうした!!」
護衛の1人が馬車を動かしていた人に確認を取る。
如何やら、何かあったようだが、俺としては面倒くさいことが来ないように必死に願うのみだ……
「そ、それが……」
いいよどむ馬主に不安を覚えた護衛は馬車を降りて確認をしに行く。
この時点で俺の中で渦巻く嫌な予感というやつはあったている気がする。
ったく、どうなってんだか……
地球じゃあ、こんな頻繁に緊急事態なんて訪れなかっただろうが。
毒付いても意味がない事は理解しているが、どうしてもそうしないと、頭が保ちそうにない。
「……な、んだと……あ、ありえーー」
ありえない光景を目の当たりにしたのか、驚愕の顔をする護衛のリーダー。
何だこれ? さっきから辺りの気配がーーっ!
「……どうしたんですの?」
それを見て俺の嫌な予感が伝わったのかサシャが護衛に確認をとる。
どう考えても面倒なことが起きているに決まってる。
だって……
「……そ、それが前方に魔物が多数確認されました」
言葉を詰まらせながらも、サシャに告げた事実。
あまりに異様な事態。
ここまで執拗な嫌がらせはないだろうと内心では思う。
さっきまで盗賊に襲われていた集団に行う仕打ちではない。
こんなピンチにも関わらず、俺としては呑気に、この世界には存在したのかという関心が少々、芽生えていた。
「……っ!!?」
サシャもその事実を聞き驚愕の顔をあらわにする。
しかし、それだけではないようで、護衛がさらに追加の情報を伝える。
お、まだ何かあんのか?
興味を隠し切れているか怪しい。
だが、次の瞬間に、俺以外の全員が固まることになる。
「しかも、ランクAの魔物、オロチが5匹ほど確認されています。」
ランクA……どの程度の強さかはわからんが外にいるやつらからは中々凄まじい圧力を感じるのは確かだ。
こりゃあ、とんでもないな……
「ほんと、今日はなんて日何でしょうか。 どうやら神は、私を生かしておくの嫌なのでしょうかね」
サシャは何処か諦めたような、しかし優しい目を浮かべて苦笑する。
それが事実だとするなら、その神は間違いなく俺が殺してやろう。
ーーその頃のアストーー
「ブルブル……なんか今すごい寒気がしたんだけど……がたがた」
ーー現在ーー
「とりあえず、和樹様貴方様だけでもお逃げください」
サシャは俺に向き直り、突然そんな事を言う。
自らの命を投げ出して、俺を守る?
は?
じゃあーー
「……は? お前らはどうするんだ?」
待てよ!! 俺!!
そんなこと、聞かなくてもわかってるだろっ!!
しかし、サシャは当然かのように微笑みかけて言った。
「私達も後で向かいますわ。 ですが、命の恩人である和樹様をこれ以上危険にさらすのは本意ではありませんので……」
嘘だ。
彼女は俺に心配させまいと嘘をついた。
なら、彼女は本当に強くて優しい女性であることは間違いないだろう。
迷いを見せる俺に対して、優しい言葉をかけてくれるサシャ。
違うっ!!
今は、そんな思考はいらない!
もっと他に、俺が何をなすべきなのかを考えろっ!!
お前は、何のために血反吐を吐いてまで強くなろうとしたんだ!?
ーー【大切】だった者は、闇に消えることの恐怖は心の中に残っているーー
「私たちはここであの魔物達を足止めします。なので、そこから……」
ーー夢と希望は潰え、この命に替えても立ち上がろうとした灯火は、理不尽によって簡単に踏み消されるーー
【英雄】は、万人の願いを叶える為に存在する者。
なら、自らの【大切】を見捨ててまで万人を救う事は、果たして【英雄】だというのだろうか?
答えは【正しい】だ。 たとえ、自らの【大切】が犠牲になろうとも、【英雄】は顔も知らないその他大勢の為に歯を食いしばって、戦わなければならない。
その身が朽ちるまで、他者を救い、自らの死力を尽くす。
だが、その果てにあるものは、安らかな眠りなどではない。
あるのは、ただ強力な力を恐れた人々の私怨。
多くの民は、その強大すぎる力を今度は自分達に向けられることを恐れ、【英雄】を消し去る。
ルールを捨てた筈の男は、新しく作られたルールによって殺された。
つまり、倫理を離れたものは、結局、倫理に帰るのだ。
それが【英雄】などと呼ばれる、自己犠牲を主張した者の末路。
「……ふざけるなよ」
俺はサシャの言葉を聞き、何かが吹っ切れた……
「……ぇっ?」
サシャは少し戸惑いの声を上げる。
しかし、俺は止まらない……というか止まってやらないっ!!
倫理が彼女を殺すというのなら、俺が倫理という概念をぶち壊してやる。
【英雄】など、クソッタレな御伽噺のヒーローにはならない。
本当に必要なものは、【大切】を守る力だけ!!
万人の願いなどクソッタレだ!!
この力は、己が信念に基づいて使ってやる。
俺がこの世界を救う事なんて、その直線上に有るだけのついでだ!!
だから、俺は目の前の彼女に怒ったのだ。
自分の命を投げ出す。
それは、さっき言った自己犠牲と何ら変わらない。
結局、生きる事を諦めただけの世界の傀儡だ。
そんな決められた死なんざ、受け入れる必要なんてねぇーんだよ。
「自分の命を差し出して他の人達を救うことが正義だと思っているんだったらそれは大間違いだ。そんなことで助かったてな助けられた方は嬉しくもなんともねぇーんだっ!!」
そう、助けられた方は自分の無力さを痛感するだけで、助かって良かったなんて思うことはない。
俺はその事を知っている。
そこには、少し涙を潤ませる少女が口を手で塞いで嗚咽を堪えている姿があった。
やっぱり無理をしてんじゃねぇーか。
見え透いた強がりを通してんじゃない。
お前は、お前らしく生きろ。
心の底からそう願う。
後顧の憂はーー
「和樹様。 しかし、このままでは……」
それでも、サシャは俺に食いさがる。
あぁ、わかってるさ。相手の危険度くらい。確かに、Aランクがどうだとかはわからないが、最悪でも外にいる奴らは一匹一匹が俺を一撃で屠れるだけの強さを持っていることは確実。
だが……
「……大丈夫だ、俺がなんとかしてやる」
「ぇっ?」
あぁ、そうか、今気づいた。
俺はこの子を守りたいんだ。サシャ・アースガルドという女の子を!!
だから俺は、制御を確実に出来ていない力を……自分の《枷》を外すことを厭わない。
まず、敵勢力の分析。
前方に、およそ百程度。
後方には零。
右方、左方共に、およそ二百程度。
自らの戦闘能力の分析。
獲物は腰につけている刀一本と空間収納にしまってある小太刀、手裏剣、弓、槍。
魔法のイメージ構成の失敗。
刀以外の獲物の修得は不可。
肉体の強度は地球と変わらない。
敵の一撃を喰らえば、死ぬ。
攻撃魔法の習得は失敗。
この戦闘において、魔法の使用は不可。
“鬼神化”の発動を許可。
肉体の強度は変わらない。 素早さ、攻撃力、スタミナの底上げ。
だが注意せよ。
この力は己の肉体を極限まで磨耗する諸刃の剣。
五分を過ぎれば、それは自らのーー
「うぉぉぉっーー!!」
注意事項など先刻承知!!
俺は自分の意思で封印していた力を解放する。
どうせ、ここで倒せなきゃ、俺は死ぬ!!
遠慮はいらない。
思う存分に敵を斬れ!!
そして、守れ!!
自分の大切なものをっ!!
『鬼神化!!』
そして、俺は今出せる全力を振り絞った。
この力は魔法ではなく俺の中に元からあった力。
そしてこの力を使えば相手を滅ぼすまで斬り続ける。
身体能力は大きく上がり、剣技のキレもよくなる。
だが、この力は俺が制御出来るのはせいぜい五分。
それを過ぎれば俺は人ではいられないだろう。
ーーだが、五分もあれば充分だーー
『……じゃあ、行ってくる』
そう言って俺はサシャたちに微笑んでから魔物達がいる方へ突っ込む。
『ーーっ!』
前方にいる魔物の集団に生身で突撃する。
瞳孔の開いた正気ではない目が複数、俺を射殺すように突きつけられる。
殺気。
完全に敵と認識された。
関係ない。
相手は魔物。
殺気を飛ばされたところで斬り殺せば問題はない。
『ーー宮部火神流 剣術 中伝ーー』
敵の間合いの把握。
集団としての動きを空中で観察。
視界の外は、感覚で把握する。
熊と兎の魔物が多い。
魔物は俺の動きに翻弄され、集団の動きが止まる。
狙い定めやすい位置と呼吸。
絶好の抜刀!!
『“火空斬”っ』
火空斬ーー火花が空に舞う様子からつけられたこの技の名前。
空中で敵の位置と呼吸を一瞬にして把握し、空中姿勢のまま抜刀する技。
これによって、斬られた魔物は20に及ぶ。
しかし、これで俺の攻撃は終わらない。
『ーー宮部火神流 剣術 奥伝 ーー』
構える。
敵の動きをいち早く感じ取る。
先程の一撃で、敵は、危険度を上昇。
魔物には知能が見れる。
動きの統率具合から敵には司令塔的ポジションがいる。
おそらく、蛇の魔物。
五匹。
周りの魔物に自らの身を守らせている。
右方の魔物と左方の魔物が此方に向かってきている。
好都合。
この場での一番適した技を使う。
『ーー“陽炎”っ!!』
陽炎……これは宮部火神流の中でもっとも使うことが多い奥伝だ。
名前の由来はその名の通り陽炎のように自らの存在が揺らめくという意味だ。
この技は相手の攻撃を誘いそこにいる筈の俺に攻撃させる為の奥義。
よって、その場にはすでに俺はおらず相手は困惑する。
……そこには致命的な隙ができる。
『はぁぁぁっー!!』
俺はその隙を逃さず斬りつける。
「「「グガァァァー!!」」」
魔物達の悲鳴があたり一帯をつん裂く様に響き渡る。
血飛沫があたりを飛び交い、俺は狩場となったこの一帯を駆ける。
次々に来る魔物を生々しく感じる感触とともに斬り伏せる。
既に、理性な正常に働いているのかさえ怪しい。
だが、数の大幅な減少は、間違いなく、相手の司令塔の埒外。
予想を大幅に超える被害が訪れている。
戦力の大幅ダウンは魔物にとっての予想外だった。
ならば、魔物の行う行動など決まっている。
ボスの逃走。
残りの魔物に時間稼ぎをさせ、自らは助かるために逃げる。
だが、俺は、相手のボスだけは逃がす気はさらさらない。
俺らを襲ってきたのだ、二度はないという事を他の魔物たちに見せしめるいいチャンスだ。
魔物には知識がある。
だから、この場で最強のボスを殺れば、話がスムーズに進む。
だから蛇型の魔物に俺が一番得意とする技を使う。
『ーー宮部火神流 剣術 奥伝ーー』
五体の司令塔の蛇をターゲットにする。
敵が俺の気配に気づいた。
対応するべく、魔力が動いた。
致死性の高いものだとうかがえる。
受ければ明確に訪れる死。
関係ない。
何もさせなきゃいい。
刀を引き抜く。
相手の急所に狙いを定める。
尻尾、腹、目、牙、首……それぞれの根元めがけて無数の剣戟を撃ち込む!
『“炎帝斬”っ!!』
炎帝斬は炎帝と呼ばれるだけあってもっとも威力が高い。
そして、その技は一太刀では終わらない、一太刀で終わらなければ二の太刀、それでも倒せなければ三の太刀と、倒せるまで無限に斬りつける。
「「「ぐしゃゃゃっー!!!」」」
今までで一番大きな喚き。
五メートル程あった蛇達は、既に四通りに斬り分けた。
生々しい感触から伝わった蛇の血液は少々酸で出来ていたようで、少し顔や腕にかかった。
軽傷を負ったが身体機能と命に別条はないので頭の隅に追いやる。
蛇の魔物達をまとめて斬り殺した……
魔物達はその様子を見て勝ち目がないと見たのか一目散に逃げ出した。
そして、そこには何匹いるのかわからないほどの魔物の死体とそこに立ち尽くす俺がポツリと立っているだけだった。
……ぁ……げ……んか……い……か……よ……。
突如感じた、嘔吐感と倦怠感は、俺を微睡みに落とすには充分なものだった。
「……!!」
誰かが、俺を呼ぶ声がした気がしたが、既に俺は意識を落とした。
王国入るって言いましたが入れませんでした。ほんとすみません汗。
今度こそ入ります。
誤字・脱字があればご報告よろしくお願いします!!