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バタフライドリーム  作者: 海 潤航
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ありふれた出会い

俊之が愛子と始めて会ったのは、カメラマンの先生に連れられて入った、ジャズを演奏している小さな酒場だった。


狭いステージの奥で、長い髪と小柄で細身の体を大きくしなりながら、ジャズ酒場ではあまり聞かない、リベルタンゴを弾いていた女性がいた。


リズミカルで哀愁が有り、切ないメロディーに俊之の心は大きく震えていた。


突然、俊之は舞台に近づき、いつも持ち歩いているカメラで彼女を撮影した。


そのシャッター音に気づき、顔を上げて俊之を見る。


俊之と愛子が初めて目線を合わした瞬間だった。




俊之はわずかな生活費を何とか工面して、一杯分の酒代をジーンズのポケットに入れ、一人でその店に通う様になった。


気軽に女性に声を掛ける性格ではない俊之は、カウンターの隅でピアノを弾く愛子を見るだけだった。


高校時代、初恋はあったが、それは淡く消えていった。


大学時代、何人かの女性と付き合ったが田舎育ちで無骨な俊之の純情さは、自ら女性を遠ざけていく。


今度の様に積極的になったのは初めての感覚だった。



愛子は週3回アルバイトとして、この酒場にピアノを弾きに来ている。


1ステージ千円という時代。それでも生活の足しにはなる。


親とは連絡を絶ち、小さなアパートでの一人暮らし。友人とジャズバンドを組みメジャーデビューを望む日々を続けている。


もちろん演奏だけでは生活できず、ピアノ音楽教室の先生をメインにしている。


音楽教室では彼女の本格的なクラシックの力と、その性格の良さや美貌に目を付け、再三社員として勧誘したが、芯の強い愛子は頑なに拒み続けている。


音楽大学時代、男性経験はあったが、愛子の美貌と体目当てで寄ってくる男ばかりの様で、不用意に男性に心を開く事はなかった。


そんな愛子も時折通ってくるジーパンとTシャツ姿の俊之の存在は感じていた。


いきなり写真を撮られた青年に間違いはなかった。しかし、それ以降一度も話しかけてくる事はなく、わずかな時間カウンターにいるだけ。


カメラを構えたときの目が、情熱的で澄んでいるのが印象的だったのは忘れられない。


今までの積極的な男とは違うかたくなさを秘めている事はよくわかった。


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