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生徒会議事録と書いてラブコメと読む  作者: ラブコメ中毒者
第壱項 人類滅亡の依頼
2/3

弐 生徒会の仕事

 目を覚ますと、見知った天井に、城島さんの顔。あれ? これは、もしかして、もしかすると、膝枕パターンなのか!? 


「目が覚めたのですね。あの、そろそろベッドから起き上がれますか?」


 うん、知ってた。小森知ってた。城島さんが僕の顔をのぞき込んでいただけ。わかってた。……どうやら僕は、保健室のベッドに寝かされていたようだ。あれ……僕は確か、殴られてダウンしたんじゃ……。


「ごめんなさい。やりすぎました……。」


 そう言って、城島さんが頭を下げる。あ、つむじ。ていうか、金髪で校則引っかからないのかな? まあ、校長先生があれだしね。仕方がないよね。うん。


「ま、まあ、とりあえず、生徒会室に行こう?」


「え、えぇ、そうですね。」


 おそらく、今は生徒会室へ行くことが最優先だ。これ以上遅刻すると、城島さんの立場がない。



 「……ところで、例の依頼は、あなたに関係しているんじゃないんですか?」


 移動中に、城島さんがそう聞いてきた。でも、僕はそんなこと知らない。


「え……? 僕じゃないけど?」


「……そうですか……。会議にかけてみましょう。」


 そう言って僕たちは、生徒会室に歩いていく。保健室のある、管理棟一階から渡り廊下を歩き、教室棟へ。そして、一階の技術科室の前にある、生徒会室に入っていった。



 僕たちが生徒会室へ入室し、遅刻を詫びる。すると生徒会長が、


「大丈夫ですよ。でも、もう合同会議は終了にして、各自委員会で会議をしようと思うので、小森君、城島君、とりあえず席に座って待っていてください。」


 笑いながらそう言った。そして僕たちが指定された席に着くと、周りから笑い声が聞こえていることに気が付いた。周りでは、他の委員会の代表たちが笑っていたのだ。どうやら、今日の会議は、全委員会で集合して行うらしい。……いや、待てよ? これってつまり、男女が同時に大遅刻、それもその男女が、二人とも生徒会という、暇を持て余した高校生にとっては、本校創立以来の、完全な、完璧な、格好のネタじゃないか? そのことに城島さんも気づいたようで、今朝の会議の時より、席が大分離れていた。人口密度は今のほうが多いんだけどね。おかしいね。心の距離は狭まったんだけどね。(初めて会った時から5時間程度しかたってないのに、その時よりも心が離れていたら、それはむしろすごいと思う。)そのかわり、物理的な距離が大分開いたね。うん。


「……あの、議長。一ついいでしょうか?」


 城島さんがそう言った。生徒会長は、ここでは議長と呼ばれているらしい。


「なんでしょう、城島君。」


「この、『人類を滅ぼしてください。』という依頼ですが、どうしてこれが最優先事項になっているんですか?」


「……? 生徒会議事録の管理、編集はあなたに任せてあるのですが?」


「い、いえ、これは知らない間に……。」


 このままでは、会議が始まらないまま終わってしまうな……。そう思っていると、一人の人が手を挙げた。


「あー、それ、私。」


 校長先生だった。


「……あ、それと、言ってなかったっけ? 一か月以内にそれ解決しないと、あんたたち停学にして、二人の関係あることないこと流すから。」


 ……勿論、言われておりません。というか、人類滅ぼすつもりなんですか、あなたは。


「校長先生……!? 無理ですよ!! 人類を滅ぼせなんて……!!」


 そうだ、城島さん。もっとやれ。噂なんて立てられてたまるか。


「あ~、岩石圏とか消せばいけんじゃない?」


 そんなことを思っていると、校長の反撃が。いや、さすがにそれは無理かと……。


「無理です。」


 はい、即答。どうやら、城島さんも同じ意見のようだ。


「冗談、冗談~。人類滅ぼせって言ってるんじゃなくて、それを書いた人を見つけてほしいのよ~。」


「……あぁ、なるほど……。でも、どうしてですか?」


 勿論僕は会話には入らない。でもどうせ、校長先生の事だ。『人類を滅ぼす=当然死ぬ⇒だからいやだ』ってとこでしょ。


「だって、人類滅んだらこの[自主規制]だってなくなるじゃん? 続き読みたいじゃん? ね?」


 ……官能小説!? 校長先生の原動力って、それなの!? 自分の命じゃなくて!? いや、まあ、そんなこと言わないけどね。


「……『ね?』じゃないですよ!! そんなくだらない本のために、あなたは私たちを停学させようとしているんですか!? 校長先生!!」


「城島君、ご名答!! だってリア充むかつくし。」


表紙に書かれた、『男性向け』の文字……。校長先生って、一応女の人だよね……? というか、校長先生心狭っ!! しかも、僕たちはそんな関係じゃないし。


「あの、校長先生? それ……男性向けですけど……。面白いんですか?」


 そう聞いたのは放送委員だった。昼の放送のネタにでもするのかな? まあ、僕には関係ないけど。


「ん? これ? あぁ、面白いよ?」


「な、なぜ読み始めたのですか?」


どうやら、インタビューが始まったようです。


「あ~、えっと~、確か、ずいぶんと前に店で、男性向けの官能小説を買っている若い女が居てねぇ。なんか周りの男たちがそっちを気にしてちらちら見てんのよ~。で、結婚は愚か、彼氏さえもいない私は、『男性向けの官能小説を買うと、興味を持たれる。』と勝手に解釈しちゃってさぁ。」


 校長先生って、どうやって教員免許取ったんだろう。


「で、では、なぜ、そ、その、か、官能……官能小せちゅ……、えっと、そ、それを、読み続けているん、です、か?」


 めっちゃ噛んでますねぇ。緊張しちゃったのかなぁ?


「ん~、読んでみると、意外に面白かったんだよねぇ。ストーリーもちゃんとしてるし。恋愛小説みたいなものとして捉えてるよ? まあ、表現が大分回りくどいけどね。」


 校長先生は、笑いながらそう言った。城島さんの顔が険しくなっていることとの対比で、すごく明るく見える。ただ、言ってることは大分アレだ。うん。僕、停学でもいいや。


 「小森君? 今、くだらないとか思ったねぇ!?」


 さ、さすが校長……。恐れ入ります。


「ラノベだろうが携帯小説だろうが、もしくは純文学だろうが、全部同じ小説ではないか!!」


 名言頂きました。でも、官能小説関係なくないですか、それ。


「それは、官能小説においても然り!! なぜ、純文学は良くて、官能小説はダメなのか!! そんなものは、きのこたけのこ戦争にでも任せておくべき。そうだと思わないか!? 小森君!!」


 ……なんで僕が責められるんだろう。


「校長先生!! 熱く語っているところ悪いのですが、そもそも職場に持ってこないでください!!」


 突然響いた、城島さんの言葉。それがこの教室内の騒ぎを静めた。それもそうか、という皆の顔。諦めきれない、という校長先生の顔。隣で大声出されるとうるさいなぁ、という僕の顔。そんな現状は、『もう、城島さんが生徒会長でいいんじゃないか?』とまで思わせるほどの、彼女の統率力。本当にリーダー向きだと思う。



 そして、ほかの委員会の人たちが部屋から退出し、ようやく、生徒会会議が始まった。


「では、今配った資料を見てください。」


 城島さんがそう言った。資料に書かれていたのは、今朝の依頼。『人類を滅ぼしてください。』とのことだった。


「人類を滅ぼしてください……か。なかなかぶっ飛んだことをいう子みたいだねぇ。どうよ。笹島。」


 奥の席に座っている赤髪の女の人が発言した。赤髪を腰まで伸ばし、鋭い目つきの三年生。姉御ですね。


「そうだな。イタズラと考えるのが普通だが、この文章に意味合いがあるのかもしれない。隠された闇を見つけられる可能性があるのなら、無下にはできないな。」


 笹島と呼ばれたメガネ青髪高身長の三年生が発言した。絶対この人が生徒会長だ。さっきは議長って呼ばれてたけど、絶対生徒会長だ。もし違かったら、僕の倫理崩れるわ。


「小森君、君はどう思う?」


 姉御先輩が急に聞いてきた。マジか、ここで僕に意見を求めるか……。それにしても、人類を滅ぼしてください、か。ほぼ確実に本気ではないな。でも、この字。どこかで見たことがあるような……。まあ、読んでみるか……。


《人類を滅ぼしてください。》

もう嫌です。

かみさまも私を見捨てます。

からっぽの私は生きてていいんですか?

らくになりたい。

はりで心を突き刺された気分です。

ないても喚いても変われません。

れいもカナも助けてくれない…。

たすけてください。

いまこの瞬間も私には地獄です。


 知るかボケ。っていうか、文面がめちゃくちゃだけど、どうしてここから人類滅亡につながるのかがわからない。


「姉g……、先輩。僕には、何故この内容から人類を滅ぼすことにつながるのか理解できません。」


 今姉御先輩と言いかけた……。危なかった……。


「ふむ、確かにそうだな。自分を助けてほしい。つまりは、今この状況を打破してほしいという内容に対し、状況ごと壊してほしいという題名…。二つの主張は異なっているな……。」


 どうやら姉御先輩は気づかなかったようで、そこには全く触れることなく、自分の返答を述べた。


「これは……いじめがエスカレートして、辛くなったということだろうか……?」


 笹島先輩が、周知の事実を、冷静に言った。いやあ、それぐらい誰にでもわかるよ。僕はもっと、重大な意味があるように思うんだが……。そう思っていると、城島さんが意見を述べた。


「あの、いいでしょうか。一つ思ったのですが……。」

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