山道でのできごと
私はあの後、両親のいる別荘へと帰り、今日起こったことを親に話した。
すると、二人は驚いたような顔をした後、にっこりと微笑んで、「良かったね」と言ってくれた。
明日また会ったとき、今度はなにして遊ぼうかとわくわくしながらベッドに入った。
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「嫌い!!嫌いよ!!どうしてそんなことをするの!?信じられない!!」
翌日、私は路面が水で滴る中、昨日会ったばかりの子に向かってこんな言葉を吐きかけた。
それは、一日遊んだ後に起こった、男の子のある行動によるものだった。
チュンチュン・・・
朝の木漏れ日がカーテン越しに差し込んできた。
私は眩しい光を手で遮りながら、待望の朝が来たことを実感した。
「今日はあの子とどんな遊びをしようかな」
私は着替えて階段を下りる。歯を磨いてから食卓へと行った。
「おはよう!」
お父さんは新聞を読みながら朝のコーヒーを飲んでいたカップをテーブルに置いて、おはようと返してくれた。
お母さんが料理をテーブルに持ってきながら、おはよう、今日はなにかあるの?嬉しそうね、と言ったので、私は昨日会った男の子と今日もまた遊びに行ってくることを伝えた。
「行ってきまーす!」
私はスキップをせんばかりにわくわくしがら外へ出ていった。
湖の淵に出る道まで来ると、マイナスイオンの効いた木々の空気を肺いっぱいに吸い込みながら、気持ちが良いなあと背伸びをした。
あの男の子は今どこにいるんだろう?
こんな気持ちのいい場所で暮らせるなんて、なんていいんでしょう!
そんなことを思いながら、もといた街と、この湖の町とを頭の中で比べていた。
「見っけー!」
突然声が聞こえてきて、そっちの方に顔を向けるとあの男の子が手を振っているのを見つけた。
走りながらこっちの方へと近づいてくる。
「おはよう。」
私は走って駆けてくるその子に挨拶をしながら、今日はどこか別の場所とかを案内してくれるの?と聞いてみた。
「うん、あるよ。」
そう答えて、男の子は私の手を取って、走り出した―――。
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そこは路面が沢からの水で濡れている舗装の整った山道だった。
男の子はこの場所がお気に入りのようだった。
路面の湿った感じと山道という影響で、なんとも清々しく、山の香りがする場所だった。
男の子はそこでバシャバシャと駆けながら、ほら、面白いでしょ!と言わんばかりにこっちの方を向いていた。
沢からの落ち葉や、ちょろちょろとした音が、なんとも心を癒された。
日が傾いてきた頃、カエルの鳴き声がどこからか響いてきた。
私はそろそろ帰らないと、と思っていた時、夢中に遊んでいた男の子は、何やら下の方を向いて遊んでいることに気付いた。
私は様子を見ようと、近くまでいってみたら、男の子は、カエルを足で踏みつけていた。
私はびっくりした。
「何をしているの!?」
するとその声にびっくりしたのか、男の子はカエルを思いっきり踏みつけ、なんとも生々しい水音を鳴らしていた。
ぷちゅっ
私は何がそんな音を立てたのか、想像してしまい、溜まらなく目の前の男の子のことを嫌悪してしまっていた。
「嫌い!!嫌いよ!!どうしてそんなことをするの!?信じられない!!」
私はショックで、その場から逃げ出していた。
後ろから男の子が追いかけてくるのかと思ったけれど、結局分からなかった。
私は別荘に帰り、ベッドに潜り込んで泣いていた。とても小さなことだったけれど、カエルの潰される音と、水の流れる音が脳裏から離れなかった。
泣いていて、咳き込んで、苦しかった。こんなに苦しいのは走ったせい?それともあのカエルのせい?男の子のせい?私はとても自分のことが小さく、弱く感じられた。