湖の向こう側に見えるのは・・・
「どこから来たの?」
その子は私に尋ねかけてきた。
私は、この子がこの町の子だから、初めてみる私がよその町から来た子だと思っているのかな?と察した。
「私はね、遠くから来たの。
今はこの町まで遊びにきてるの。」
「じゃあ、いつまでいるの?」
「そうね、明後日くらいまでかしら?」
私はただ、親に連れられて一時この町まで来ているのだけれど、いつ向こうに帰るのかは詳しく聞かされてなかった。
「じゃあ、帰るまでボクと遊ばない?」
急にこの子は、そんなふうに言ってきた。
私は、一緒に遊びたいという思いと、仲良くなれるかな、という思いをこの時感じた。
それに、何日かしたらここを離れることになるから、しばらくの間、一緒に遊んでもいいんじゃないか、とそう思った。
「・・・うん、いいよ!」
私は、オーケーの返事をした。
「やった!」
その子は、本当に嬉しそうにそう言って、肩を並べるように近づいてきた。
「どこに行ってるの?」
「特に行く場所とかは決めてないの、散歩してるの。」
そうして、私たちは知り合い、友達になった。
その日の夕方、太陽が傾き空が夕焼け色になってきた頃、私たちは明日また遊ぶ約束をしてそれぞれの帰り道を歩いていった。
私は帰る途中、あの男の子と出会った湖沿いの道を歩いているとき、湖の方を眺めながら今日の出来事を思い返していた。
私はあの時、自分でも驚くくらい自然にあの子と会話をした。
それまでは、初対面の人や、知らない人が話しかけてきても、あまり上手く返事を返すことはできなかった。
今日、あの子と会ったことは、何がしかの私の変化を感じさせた。
そんなことを思っていると、湖の向こう岸から分かるか分からないかといったほんとに細やかな、何かキラリと光ったのを見た。
私はそのキラリとしたものが気になって、向こう岸までぐるっと長い道を歩いていった。
ちょうど、見えたかなと思った当たりまで来たとき、道から外れて湖のそばへと行くように下っていった。
足場は、岩がところどころに見える、しっとりとした土でできており、杉のような木が並んでいた。
木に手をついて支えながら下りていくと、観葉植物のような生い茂った植物がある中で、ちょっと開けた所にそのキラリと光ったものの正体を知った。
それは、私の胸あたりまである、岩に嵌め込まれた綺麗な結晶が、湖に反射した光とともに、夕日に反射して輝いていた。
水晶?クリスタルというのだろうか、その結晶は、人目に付かないこのような所でひっそりと、それでも健気に主張していた。
私は、見つけたその水晶とこの場所が、目に入った途端に好きになっていた。
それほど、水面に反射した光と、水晶の光が交差するこの場所が綺麗だったから。