彼女は悩む。化け物だから…。
百合はある扉を開く。そこには誰も居なかった…。
(よかった…。このまま誰も来なければいいのに……。)
しばらくして扉の外から話し声が聞こえる…
「よかったねー。Sランクだよ。百合ちゃんと一緒だねー。」
「そーだなー。これからも忙しくなるんだろうな…。」
「頑張ってねー、海斗。百合ちゃんのこと。」「…おう。」
「……………………………え、嘘。」
扉が開く。入って来たのは…やはり彼らだった―
「……何で…?」
「ん?…あっ!百合ちゃん!…俺らもSランクなんだよー。これからよろしくねー!」
「そーいうことだから、関わらないでって言われても無理だからな。」
「…意味が分からない。何で同じランクなの。」
「こないだ言ったじゃん。結構強いよーって。」
「お前だけがSランクな分け無いだろー。」
「そーよ。私もSランクなんだから。」
「「「え?」」」
「失礼。私は白石茜。よろしくね。……あなたたちの他にもSランクは後20人ぐらいいるわよ。今年は結構優秀らしいわ。」
「えっ?あ、あぁ、そーなんだ、俺は神谷幸助。んで、こっちは宮下海斗。よろしくねー。」
「ええ、よろしく。」
ずらずらと20人ぐらいが部屋に入って来る。茜の言った通りだ。
去年はもう少し少なかったらしい―
入って来た生徒は一度百合の方を見てから席についていく。
百合は気にせず机にふせる。
(最悪だ……)
百合の隣に座る海斗。百合はふせたまま拒絶する。
「……何で私の隣に座るの?席、空いてるでしょ。」
「いーだろ別に。俺の勝手だろ。」
「もー、海斗。もっと優しく言わないと…ごめんねー百合ちゃん。海斗は、心は優しいけどね口は悪いんだー。」
「うるせー…そんなに口悪くねーし。」「悪いじゃん。」
そんなやり取りを聞き流していた時、また扉が開いた。
「皆さん、お揃いですね。こんなに多いのは初めてなのでちょっと緊張します…。知ってると思いますが、この学校の校長をしています。名前は……うーん…なんとでも呼んで下さい。Sランクの皆さんの担任もつとめます。よろしくお願いしますね。」
「名前無いんだってー。なんて呼ぶ?」
「無い訳じゃないんじゃねーの?…まぁ普通に校長先生だろ。」
(………馬鹿みたい。)
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「それでは、この学校の仕組みを説明しますね。」
「この学校では、2人1組ペアになってもらってパートナーとしてこれから一緒に生活してもらいます。」
「そんなの聞いてませ―ん。」
「…ええ、言ってませんから。言ってしまったら入学したくないと言い出す子が出てくるので…。ちなみに男女のパートナーです。」
「えっ!嘘だろ!」教室がうるさくなる。
「必ずパートナーを見つけて下さい。1人では戦えませんよ。」
――――――――――――――――――――――
「では、今日はこれで終わります。百合。来て下さいね。」
生徒たちが解散していく。もうパートナーを見つけた者もいる。
百合は校長室を目指し歩く。
「西條っ!」「…………何?」
「お、俺とパートナーになって欲しいんだけど…。」
「……どうして?」
「どうしてって…うーん…ただお前とパートナーになりたい。じゃあ駄目か?」満面の笑みで言う。
「私なんかとパートナーになっても不幸になるだけ…。それに私は1人で十分だから。」
「……分かった。じゃあまた誘うから考えといてくれ。」
「…………………え?」 「じゃあ、またな。」
「…ちょっと…え?…………意味が分からない。」
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「あぁ、来ましたね、百合。……どうしました?」
「何でもない……。」
「海斗君…ですか。」「……」
「嫌いですか?」「……鬱陶しいだけ。」
「そーですか。パートナー、なったらどうです?私は良いと思いますがねぇ。あなたがどれだけ強くても倒せない"魔"は必ずいます。"魔"も日々進化しているのですから…。」
「……でも、私なんかとパートナーになったら…」
「自分の正体がばれて、嫌われるのが怖いのですか?…海斗君がそんな人に見えますか?…すでに化け物と呼ばれているあなたに真っ正面から向かっていった方ですよ?」
「…………そうだけど…。」
「話はそれぐらいです。パートナー、早く見つけて下さいね。」
「…………」部屋を出る。
(どうすればいいのか分からない…。)
(私は……化け物なんだから。)
(あいつは化け物なんかじゃない。)