彼の話、それでも彼女は拒絶する。
昔からそうだ。自分の親友は人のことしか考えない。怪我をすることもあった。助けてもらったこともあった。だから彼は、今度は自分が親友を助けたいと願った
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百合の隣に座る者がいた。百合は視線だけを向けて聞いた。
「何か私に用?関わらないでとさっき言ったばかりだけど…。」
「それは海斗に言ったんでしょ?俺は言われてないよ。」
「……じゃあ今言う。私に関わらないで。」
「ははっ、言うと思ったー。…まぁ、話だけでも聞いてよ。」
「……興味ない。」
「うーん、あっじゃあ、今から話すのは全部俺の独り言だから、聞いても聞かなくてもいーよ。」
「……」
「あいつの名前は宮下海斗。俺の親友かなぁ。結構強いんだよー。で、さっきので分かったと思うけど、あいつは自分に関係ないことにも平気で首を突っ込む性格で、自分のことよりも相手のことを優先するヤツなんだよ…だからよく怪我する。」
小さい頃もそうだった。魔力が弱いせいでいじめられている子がいた。誰も助けなかった…誰も心配しなかった…。
だけど、海斗は違った…。小さいながらに精一杯立ち向かった。
その子を助けるために…。そのせいで怪我をし、今も背中に傷が残っている――
「本当、おかしいんだよあいつ。放っておけばいいのにねー。俺だったら絶対関わらなかったよ…。でも…やっぱりずっと一緒にいると情が移っちゃうんだねー。俺も助けなきゃって思う事が多くなったよ…。迷惑な話だよね。」
(……なら、親友というものをやめてしまえば楽なのに…。)
「…あなたはどうして親友を続けるの?」
「あっ、興味持ってくれたんだ!…うーん…親友を続けるのに理由はないかなぁ…。ずっと一緒にいたからあいつの事何でも分かるんだよね…だから、あいつが無理するなら俺が支えないとって思った。……あー…そろそろ戻って来るから行かないと。」
「…私には理解できない…。関わらないでほしい。」
「それでもいーよ。でも、関わらないでほしいと思うなら、そんな悲しそうな顔するのやめたら?さっきも同じような顔してたよ。そんな顔してたら海斗は助けたいって思うよ。」
「…悲しそうな顔?…」「…うん。」
「おーい、幸助ー…って西條…」
「あー海斗。ごめんごめん、行こっか。」「…あぁ。」
「あっそうだ、俺の名前言ってなかったねー。俺は神谷幸助。よろしくね。………無理はしちゃ駄目だよ百合ちゃん。」
「……」「じゃあまたね。」
百合は去って行く2人の背中を見ていた。しつこく自分に関わってきた2人。私の気持ちを無視してまで真っ直ぐ見つめてきた海斗。
自分に今まで向けられなかった目…。怖かった…。そして、なぜか温かかった…。
おそらく彼はこれからも自分に関わってくるのだろう…。その時に自分が何かやってしまうのではと怖かった…。
(だから私に関わらないで…)
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「…おい。」「ん?何?」
「ん?何?じゃねぇ。西條と何話してたんだ?」
「何って…ただ、愚痴を聞いてもらってただけだよ。」
「愚痴?誰に対してだよ?」
「え?言っちゃっていーの?怒らない?」
「なんだよ、その言い方だと…」
「海斗のだよー。」「即答……。」
「ははっ…あっ傷ついちゃた?」
「…は?そんなんで傷つくわけねーだろ。お前の愚痴とか愚痴の内に入らねーし。」
「ひっど!ちゃんと愚痴ってたよっ!」
「それはそれで傷つくわ…。」「はっはははっ…」
「なんだよ急に、気持ちわりぃ…。」「何でもないよー。」
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少年少女は出会った。彼女は彼の話しを聞いた。
だけど彼女は拒絶しなければいけない――
(秘密を知られたら、本当に嫌われてしまうから……)
「初めての気持ちって…悲しいものなのかな……?」
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