めまい
クラっと世界がぶれたと思ったら、俺は倒れていた。
たんなる立ちくらみか、またはめまいか。
それぐらいの些細なことだ。
「大丈夫?」
「ああ、大丈夫。ちょっとくらっとしただけ」
彼女が心配して俺に聞いてくる。
よっこいせとおっさんくさく立ちあがり、ぱんぱんとほこりを払う。
まわりに若干の人だかりができているが、大丈夫大丈夫と手を軽く振り、そのまま彼女と歩いていく。
「ねえ、本当に大丈夫?」
ざわざわとしている群衆も、もう散り散りになり、周りは誰も気にしていない。
「大丈夫だって」
そう言った俺は、彼女のその心配そうな顔も、好きになりそうだった。