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この学校は男子校で、今時珍しい全寮制だ。
全寮制というのは全校生徒、寮で暮らす事が義務づけられていること。
寮といっても集団で部屋を使っているわけでなく、一人一人に部屋が与えられるというとても贅沢な仕様となっている。
その寮の俺の部屋に生徒会長を連れてきた。
汚い水をぶっかけてしまったのが申し訳なくてつい。
「あの、生徒会長さん?さっきはすみませんでした。そのままだと寒いと思うんでシャワー使ってください。」
「あ、ああ」
「あんたの服は洗濯するので、俺のを着てくださいね。」
サイズは身長も同じくらいなので大丈夫だろう。
「いや、別にそれは」
「シャワーしたのに濡れた服をまた着る気ですか?」
「う、すみません。」
「早く入ってきてください。風邪ひきますよ。」
「わかった。」
渋々といった感じで浴室に行く生徒会長。
なんか、思っていたより……弱くないか?
結構いかつい顔をしてるから勝手に強いものだと思っていた。
さて、今はもう夜の7時。
めんどくさいけど晩飯作るか。
―――――――――
ガチャリと扉が開いて生徒会長が浴室から出てきた。
30分か。けっこう長風呂なんだな。
「あ、生徒会長さん。服小さくなかったですか?」
俺の問いを無視して生徒会長はずかずかとこっちに近づいてくる。
「何……うわっ!?」
目の前までやってきたと思ったら肩を押されて俺の体はソファーへと倒れた。
その上に生徒会長がまたがってきた。
「何するんですか。」
ソファーでよかった。痛くない。
「……何が望みだ」
「はい?」
「だからっ、俺になんでこんなに優しくする?何かあるんだろ?」
近い近い。唾飛んできそう。
というか、なんでいきなりこんな怯えてるんだろうか。
俺の顔の横についている手はガタガタと震えているし、顔は今にも泣きそうだ。
「なんで怯えてるんですか。」
「怯えてない。」
嘘つけ。
「はぁ、理由ですか?理由は水ぶっかけたし、ぶつかって上に乗っかってしまったのでそのお詫びみたいなもんです。」
「本当に?」
「はい。あ、シャワー貸すぐらいじゃお詫びになりませんよね。晩飯できてるんで食べていきます?カレーですけど。」
明日の朝の分まで多めに作ってあるからもう一人の分を用意するなんて余裕余裕。
「ふっ……あほか。」
その言葉と共生徒会長の怯えが消えたようだ。ふにゃっとした顔になって生徒会長の頭が俺の頭の横に来た。
なかなか離れてくれない。
「あの、生徒会長?」
「すまん。」
顔を上げた生徒会長はなんとも情けない顔をしていた。
「お前、名前は?」
そういえば名乗ってなかった。
「俺は橋田千夏。1年です。」
「俺は3年生徒会長、西野智明だ。橋田、お前もうちょっと抵抗した方がいいぞ?」
西野会長はそう言って意地悪そうに笑った。