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よっしーsideです。
プルルル
質素な部屋に着信音が鳴り響く。
またか……よくもまぁ毎日同じ時間にかけてくるものだ。
ため息をつきつつも電話をとる。
「もしもし。」
『あ、こんばんはー元気ー?今日の夜ご飯はなんだったのかしら。』
受話器の向こうからのほほんとした声が聞こえてくる。
「元気だ。で、今日はどうした?」
『せっかちねぇ。もう少し雑談してもいいじゃない。』
「今日の報告を聞きに来たのか?」
『もう!つれないんだから。なにか攻略対象達に動きがあったの?』
攻略対象。
乙女ゲームにおいて攻略、恋愛ができるキャラクターのことだ。
この世界は乙女ゲームの世界であり、この学園が舞台。
生徒会長の西野智明。
副会長の村岡宙。
その弟で庶務の村岡海。
会計の宮本悠仁。
書記の加藤楓。
先生の高野浩一郎。
そして俺、水谷慶貴。
計8人がこの乙女ゲームの攻略対象だ。
「いや、攻略対象達はストーリー通りに動いている。ただ、千夏が……」
『千夏!?またあの子何かしたの?大丈夫!!?』
千夏の名を出すと途端に声を荒らる。それだけ、千夏の事が心配なのだろう。ほんとこいつはブラコンだな。
「……今日、いつもよりかなり遅くに帰ってきてな。何をしてたのか聞いたら、生徒会で補佐をやることになり新入生歓迎会の内容を決めていたらしい。」
『ええ!それって主人公が起こすはずのイベントじゃない。なんであの子が……さすが私の弟……ふふふふふふ。』
「はぁ……喜ぶなよ。お前もうちょっと危機感持て。お前の弟が生徒会とがっつり関わり始めてるんだぞ?危険なイベントに巻き込まれる可能性が増える。」
『大丈夫よ。私の渡したペンダントを着けている限りはね。』
「そのペンダントを着けていたのにあいつ、会計に襲われてたぞ。首元にキスマークついていた。」
『それもっと詳しく!!!ふふ、そーゆー危険にはペンダントは反応しないのよ。明確な敵意がない限り。だから、あなたが守りなさいな。』
「気が向いたらな。」
『ふふ。……もうすぐで新入生歓迎会ね。やっぱり内容は鬼ごっこだった?』
「ああ。」
『なら、主人公の観察よろしくね。主人公が誰を選ぶかわかるから。』
そう、新入生歓迎会の鬼ごっこはストーリーの分岐点で、主人公がどのキャラクターを攻略するのかが決まる。
決まり方は主人公が捕まえられた相手が、主人公が攻略するキャラクターとなる。そのキャラクターの攻略ルートにはいるのだ。
『そうそう!鬼ごっこのためにいいもの作って送っといたから着けてね!!あんたの分もあるわよ。』
「変な物じゃないだろうな。」
『この春乃様を誰だと思ってるの?センスもバッチリよ!』
「わかった。……ありがとな。」
『……どういたしまして。』
驚いたように間を空けて答えてきて、そのあとにデレ期でもきたの?と散々からかわれたので一方的に電話をきった。
相変わらず、面倒くさい兄弟だ。
そんな事を思いながらも無意識に自分が笑っていることに、気づかなかった。




