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歩く七不思議と都市伝説  作者: 柊 響華
桜の木の下には死体が埋まっている!?
8/21

生贄の少女

 少女は恋をしていた。

 身分は違っていたけれど、少女は彼を愛し、彼も少女を愛してくれた。

 けれど、桜の神が二人を引き裂いた。


 少女は神の怒りを静める為に、桜の下に埋められた。

 生贄としてーー。

 生きたままーー。



 少女は彼に言った。

 自分は自分が生贄となることで貴方を救うことが出来るのならば、喜んでこの身を神に捧げようーー。

 と。

 ただ、人目でいいから死ぬ前にーー。

 埋められてしまう前にーー。


 貴方に会いたいーー。


 そう彼に告げた。



 そしてーー。


 彼女が神に捧げられるその日。


 彼はーー。







 *   *   *   *   *






 少女は普通ではあり得ない髪の色をしていた。

 本物の桜よりもずっと濃い桃色の髪。

 そして真っ赤な瞳。

 人間ではありえないーー。

「君が僕を読んだの?」

 僕は少女に尋ねた。

 少女は首を傾げた。

「私は誰も読んでいないわ。私は待っているの。あの人がここへ来るのを」

 あの人ーー?

 夢で見た青年のことだろうか?

「おい、亜鶴沙。大丈夫なのか? どう考えてもこんなの異常だ」

 隣で伸一君が言う。

 僕は伸一君に構わず続けた。

「あの人っていうのは、誰のこと?」

 僕は確かめなくていけない。

 あの夢がどこまで真実なのかをーー。

「あの人ーー?」

 僕の問いに少女は首を傾げる。

「あの人はあの人よ」

 その答えに今度は僕が首を傾げた。

「名前は? 君とはどういう関係なんだ」

 僕は少女に向かって歩みを進めた。

 少女は逆に一歩、また一歩と後ろに下がっていく。

「名前……? 私との関係?」

 少女は嫌々というふうに首を横にふる。

「どうしたの? 答えられないの?」

 僕は少女に近づく。

 少女は僕と距離をとろうとする。

「名前……。あの人の、名前、は……」

 困惑と恐怖に歪んだ少女の顔。

 追い詰められた人間の顔と同じ。

「君はその人の何?」

 僕は問いかける。

 そうしないと前に進まない。

 たとえ、それが少女にとって残酷なことだとしてもーー。

「あの人は……。あの人は、私の……」

 少女は俯いて、顔を両手で覆う。

 僕はそんな少女に近づいて、言った。

「分からないの?」

 僕の言葉に少女はハッとしたように顔をあげ、僕を見る。

 その目は大きく見開かれ、禍々しいくらいの赤色だったーー。

 赤よりも濃く、血よりも鮮やかな色。

 異形の証。

 少女は僕を見た。

 時間にしてそれは数秒の間だっただろう。

 少女の目がさらに赤い色が増して、髪が揺らめいた。

 僕が気付いた時にはもう遅く。

 僕の足下から、巨大な木の根が僕をめがけて勢いよく飛び出してきていた。


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