第一話
女が書いている作品なので至らない点も多々かあるかと思いますが、暖かく読んで下さると嬉しいです。
女性の方も読みやすいかと思います。
変態要素は入れるかもしれません。苦手な方はお気をつけ下さい。
物心がとっくについて、ふと鏡を見た時…。
そこには自分主役の誕生日パーティー用の衣装に身を包んだ6歳の金髪碧眼少年がいました。
その金髪が浅葱色のジャケットに袖を通していない真っ白な段フリルのシャツの肩に掛かり映えている。
まだくりくりとしたぱっちりな瞳は碧瑠璃を映し、それを縁取るように髪と同じ金がばさりと音が出そうなほど生えていて、白磁のような肌と高い鼻筋、小さく薄い桃色の唇から中世的なイメージを匂わせた。
…金髪碧眼とか魔王を倒す王道の勇者みたいだ。
その少年はそんなことをふと思って、首を横に傾げる。
…待て待て、金髪碧眼なんて周りに結構いるじゃないか。どうしてこんなに物珍しいものを見た気になったんだろう。 というか、この顔は見慣れている。 6年間、度々(たびたび)見てきた顔なんだから。
少年はそこまで考えて、頭に激しい頭痛を感じた。
頭の中にこの6年間知り得なかった様々な情報、とある男の背中、この世界の光景では考えられない鉄の高い建物。
そして……勇者と描かれた小説。
少年はそのまま倒れ込みます。
浅葱色のジャケットを掴んだままーー。
目が覚めた時には、ふかふかベッドに寝かされて自分に前世の記憶があると自覚した少年だった。
少年の名前はラファエル・シャルルドネといって、王都の離れに別邸がある高爵位の御曹司だ。 両親が優秀だからか、その性格は俺様になるでもなく、真面目に育った。
そんなラファエル少年の前世はどうにもパッとしない眼鏡男子である。
保育園の時はそれなりに公園で遊んだりしていた少年だったが、小学校に上がり読書に目覚めた。 読書のし過ぎで縁なしのフレーム眼鏡を掛けた地味男子は、華やかなドッチボールなど参加しない文化系へとなってしまう。
そんな地味男子でも、難しい本を読んでいる姿がかっこいーだとかドッチボールの強さに比例して、少しはモテていた時期もあった。
しかし、その少年は小学校高学年で二次元という世界に惹かれた。
ミステリー小説などが好きだった少年は、胸躍るファンタジー小説…ライトノベルに泥沼のようにハマったのだ。
中学生に上がり、RPGで遊んだり勇者が出てくるアニメを良く見るようになった。
完全にオタクの仲間入りである。
それでもイジメとかされないように学校では普通の地味男子として過ごし、家に帰って溜めていたアニメを吸収ーーーそう、隠れオタクなのだ。
ヘタレ過ぎて、オタクです!と宣言することも出来ないこの少年は隠れオタクとして趣味ともいえる勇者達に惚れ惚れしながら日々を満喫していた。
頭はそれなりに悪くなかったので良い高校に入学し、良い大学へと進学するはずだった。
勇者の新しい小説が出たというので買いに行った帰りに事故に遭ったのだ。
信号無視の車に轢かれて即死、少年は勇者の小説を自分の血で染めた。
だからといって、ここはその小説の世界ではないと思う。
小説のカバーを見ると、黒髪黒目の漆黒勇者が魔王討伐!という王道の金髪碧眼とは違った勇者だったのだから。
物事そんなに上手く、ライトノベルの世界に入ったりする訳ないか…とベッドで寝ていた首を右に向けて自分の右手をグーパーしてみる。
…まさか、な。
そう思ったラファエル少年だが、頭の中でいつぞや読んだ勇者と同じことをしてみた。
「炎よ出ろ」
前世とは似ても似つかない、どこかあどけなさを残している柔らかい声に応えるようにラファエルの右手にボッと炎が現れた。
…夢だ夢だ夢だ夢だ!!!
ラファエルは意思に応えた炎を見て焦り、炎が出ていない左手で心臓を数回叩く。
驚きのあまり過呼吸になりかけたが、炎はすぐに右手から消えた。
ラファエルは右手を隈無く見て触るが何処も火傷をしたようには思えない相変わらずの白磁のような手だった。
…いや、炎くらい魔道士専門なら出せるはずだ。 前に習った。
魔道士の血がある者は少し魔法が使えると、その血が濃いほど強大な魔法が使える…と。
……ん? このシャルルドネ家は代々魔道士の血なんてなかったはずだ。 教師にもシャルルドネは正統ですから誤っても魔道士の血は入ってません。 と言われて多少なりと傷付いた自分は最近のこと。
どうして、なぜ使えるのか…。
そんな混乱気味のラファエルに一つの文字が浮かび上がる。
ーーーチート勇者。
「むりむりむりむりむりむりむり!!!」
僕にそんな大役出来るわけがない!
そう思ったラファエルはこの能力を最大限に隠すことを決めた。
その後、ラファエルの声に今世での家族がわらわらと集まってくる。
「頭とか異常はないか?」
と渋い顔のラファエルの父親。 イザルス・シャルルドネはベッドの横に腰掛ける。
「急に倒れて、誕生日パーティーは延期してもらったわ」
と、厳しそうな母上。 ミーリヤ・シャルルドネはキツそうな顔とは対照的に、頭を撫でる仕草が優しかった。
「お兄様、もう大丈夫?」
と、お人形のような妹。 ユリア・シャルルドネは心配そうに眉を下げて、ベッドの端からちょこんと顔を出す。
これがラファエルの家族である。
ラファエルは随時笑顔で微笑んだ。
「大丈夫だよ、何も異常はありません」
アランの笑みに安心したのか、家族全員安堵の息をする。
とりあえず、今年の誕生日パーティーは家族だけでやろうと言った。 了承は貰えて来年は盛大にやろうと言われ頷いたラファエルである。