表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星空の雫  作者: 柑林-canna-
1/1

1「双子」

セミの鳴き声が響く

暑い夏の夜。


私はたった一人

夜道を歩いていた。


家にいることが苦しくて

暖かなものに包まれるのが

嫌になって…



とぼとぼと歩き

着いた場所は

いつも美好(ミヨ)が通う学校だ。


夜の学校は真っ暗で

ただ静かで

私の心を癒してくれる。


私は学校に通えない。


人が苦手なのだ。


でも私の代わりに

美好が学校に通っている。


双子の姉。


私と美好は双子で

でも家族以外は

そのことを知らない。


私が苦手なことは

あたしがやり遂げて

あたしが苦手なことは

私がやり遂げる。


双子の関係はそんな感じ。


二人で一つの存在なのだ。


そんな姉が通う学校…

たまに夜な夜な一人で

ここに来るのが私の楽しみ。


外では美好が明るくしているから…


美好の真似をして

私は美好の苦手を克服する。


二人は産まれた時から

二人で一人だった。



家で呼ぶ名前は違うけど

一歩外に出てしまえば

二人の名前は同じ。


外では同一人物。


家では別人。


そうして過ごして来たため

私には“友達”がいない。


いや、心の友と言えば

昔田舎に住んでいた頃に

たまたま見つけ、

引き取った狼が一匹いる。


人間に足を打たれ

誰もいない山の中で

血を流していたのだ。


たまたま見つけた狼だったが

怪我が治るまで側にいさせて

治ったら自然へ返そうと

大人達は考えていた。


だがこの狼は

私から離れようとしなかった。


どこまでも付いて来た。


山の中も、街も、

どこまでも。


引っ越しをした時も

私はわざと来た道に

私の匂いを残したりした。


その狼は私だけに懐いて

どこまでも追いかけて来た。


だから私は願った。


『ちゃんと、ちゃんと面倒を見るから、うちに置いてはダメ…?』


どこまでも追いかけ

付いてくる狼を

無理矢理引き離そうという

そんな大人は誰一人としていなかった。


だってその願いは

私が産まれて来て初めて

両親に心から願ったことだから。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ