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異界のストーリーテラー  作者: バルバダイン
第一部 「イダヴェル戦乱編」
8/65

第六話 「旅の仲間?」

ちなみに塔が2つ出てくる予定はありません。

 サラとの勝負はまた多くのギャラリーを呼び寄せることになった。


「がんばれよー」


 うん、お前が情報広めたと思ってるよ、ウェズレイ。


 今回は王は来ていない。そうそう暇ではないだろう。


「何かにつけ力で解決しようという野蛮な考えは・・・」


 大臣、お前は仕事しろ。


「すいません、メルレン殿」


 しょげかえるバルテルミ。


 あやうく「チェンジ」と言いそうになるのをこらえつつ


「仕方ありません、サラ様のお気の済むようにお相手します」


「あ、手加減は無用です。サラはああみえてなかなかの使い手です」


「それはそれは」


 しかし、クソ生意気とはいえ女子、しかも美人を殴るのは無理。


「お待たせ」


 サラ登場。


 なにやら銀色の高そうな軽甲冑という本気装備だ。


 手にはレイピア。


 ん?レイピア?刃物ついてんぞ!?


「さあ!決闘ですわよ!」


 おい貴様。


 ちょっと揉めたが結局レイピアを使用することになった。


 これは騎士団内での紛争結着手段として決闘が用いられる前例があることからだ。


 ルールは現代の競技フェンシングのように洗練されたものではない。


 どちらかが戦意喪失または意識不明、死亡などにより戦闘続行不能に陥ることで結着する。


 無論普通「参った」で決まるらしいが。


 やや、楽しげに素振りをするサラの剣先は確かに鋭い。気を引き締めてかからないとやばそうだ。


(あいつ・・・()る気だな!)


 僕はといえば、まだ鎖帷子が届かないので、綿シャツに革のベストといたって軽装だ。


 てか、得物レイピアで自分だけ甲冑着るんじゃねえよ。


 悪意しか感じない。




 さて試合(死合い?)開始となるわけだが、ちょっと考えてみる。


 勝利を得るだけならたやすい。


 頭から水ぶっかけて剣を跳ね飛ばして組み敷いてマウントポジションでも取ればいい。


 想像してみよう。


「卑怯者!お兄様との勝負でもこのような卑劣な手段で勝ちを奪ったのですね!」


 うんうん、きっとこうなる。


 じゃあ正々堂々勝負して圧勝すればいいのかな。


 しかし口の悪さほどではないが、腕前もなかなかのようだ。


 勝負をわけるのは高速魔術になるだろう。


 なるべくバレないように、しかもカドの立たないように勝つ方法ないかなあ。


 ちょっと仕込んどくか。


「はじめ」


 あ、始まっちゃった。


 今回の審判はバルテルミ。


 サラは単細胞っぽいから突っ込んでくるかと思ったら、慎重な構えを見せる。


 親愛なるお兄様が仮にも遅れを取ったという話から警戒しているのだろう。


 バルテルミの言うとおり構えに隙がない。


 バルテルミから薫陶をうけているようだ。


 となるとどうしたものかな。


 ビュッと切っ先が風を切り鋭い突きを見せる。


(殺気ハンパねえ)


 相手は殺意はともかく、本気だ。


 これは怖い。


刺突剣(レイピア)でマジで突くなよ!死んじゃうよ!)


 さすがにバルテルミには及ばないが、時折二段突きも織り交ぜながら僕を追い詰める。


「メルレン殿、手加減は無用です!」


 手加減してないよー。


 手が出ないんだよー。


 ここはやはり偶然ぽく見える魔術混ぜるしかないだろ。


発光(フラッシュ)


 ぼそっとバレないように呟いて、自分のレイピアの刀身が陽光に反射したかのように偽装。


 サラの目を狙う。


 うん、かわされた。

 すると、サラは少し下がって呼吸を整える。


「やはり期待はずれでしたわね。お兄様があなたに遅れを取ったというのは何かの間違いでしょう。この場で証明してみせます!」


 これは大技くるな。


「やあっ!」


 飛び込みの二段突き?いや、


 (三段突きか!)


 見切ったー!

 

 多分ですが。


 僕はなんとか本命の突きを見切り、鍔の装飾部分でサラのレイピアを受けた。


「くっ!」


 レイピアの持ち手のごちゃごちゃしたところは、マインゴーシュつまりはソードブレイカーと同じ使い方をする。


 パキッ


 ひねってやるとサラのレイピアは折れてしまった。


(よーし、これで大人しくなるかな)


 と思ってみれば、サラはこちらをより燃え盛った目でにらんでいる。


 しかし残念、勝負はこれまで。


 


 ところが、バルテルミが手をあげかけたところで、僕が勝負前に仕込んだものが帰ってきた。


擬似生物作成クリーチャーサモニング


 魔法剣士の独自呪文ではなく、魔術師の使う小型の使い魔を作る呪文である。


 偵察などを行い、術者にそれを伝える。


 一般にはコウモリやトカゲなどを作るが、僕は今回これを作った。


 ポトン


 それが肉薄していた僕とサラの間、僕のレイピアの鍔部分に落ちてきた。


 サラは思わずそれを見る。


「……」


 僕の作ったのは女子の敵「G」を捕食する益虫ながら、おなじくらい女子から忌み嫌われている八本足のアイツ、アシダカグモ(オス、成虫、体長4cm)だった。


 サラみるみる顔をひきつらせる。


「いやあああああああ!!クモおおおおおおおおお!!」


 凄い勢いで飛びさがると、ふっと顔色を失い、その場で倒れて気を失った。


 しまった。

 

 やりすぎたヨウデス。


「しょ、勝負あり…」


 バルテルミも力なく宣告する。


「ク、クモの勝ちだ!」


 爆笑しているウェズレイ。


 あいつ一回なんとかしないと。


 僕は勝負がもう少し長引くと思っており、適当な目標を偵察させてクモ君が帰ってきてサラがひるんだところで一気にたたみかけようと、前回よりさらに卑怯な作戦を考えていた。


 ところが謀は失敗しこの有様である。


 せっかくちゃんと勝ったのに台無しだ。


 まあ自業自得なんだが。


 当事者としてはサラをこのまま放置しておくわけにもいかず、お嬢様をお姫様だっこしてバルテルミの部屋まで運ぶことにした。




 サラ・ヴィクセン目線



 ん。


 冷たい。


 感覚が戻ってくる。


 一体何がどうしたのでしたっけ。


 回らない頭で記憶を探る。


 何をしていたかしら。


 今日はたしかバルテルミ兄様に呼ばれて…あ!


 思い出した。


 城で噂になっていた奇術師のような胡散臭いエルフの騎士、しかもお兄様と互角の腕前とかお兄様から一本とったとか根も葉もないことを振りまいている許しがたい奴。


 あろうことかお兄様はそんな詐欺師まがいの者を連れて千年森まで旅をせよとおっしゃる。


 ありえない。


 それでわたくしは直々に正体を暴くべく詐欺師に決闘を申し込んだのだ。


 案の定わたくしに攻め込まれて手も足も出ない詐欺師。


 わたくしは一気に勝負を決めるべく必殺の三段突きを繰り出した。


 でも、あいつはわたくしの必殺の突きを見切って止めた。


 わたくしは剣を折られ、そして…


「クモおおおおおおおおおお!」


「あ、気がつかれましたか?」


「え?」


 跳ね起きたときに額に載せられていたハンカチが落ちた。


 ハンカチは濡らされていた。


「二時間も目を覚まさないので心配いたしました」


 詐欺師!いや、名前はなんと言ったかしら。


「サラ、メルレン殿はお前を心配してずっとついていてくださったのだぞ。ここまでお前を抱きかかえてくださったのもメルレン殿だ」


 ああ、そうそうメルレンなにがしと言ったわね。


 え?抱きかかえ?


「わたしとの試合の最中の事故でしたので責任を感じてしまいました」


 はははと照れ笑いするメルレン。


 わたくしは顔が熱くなる気がしましたわ。


 こんな男に身体を自由にされるなんて。


 この男はまったく強そうに見えない。


 お兄様と違って芯がないのだ。


 それがまたわたくしの気に障る。


「おかしな邪魔のせいでせっかくの試合がうやむやになってしまいました。サラ様はとてもお強いのですね」


 くっ、あれほど完璧に三段突きを防いでおいてよく言う。


「わたしとしてはサラ様のようにお美しい方とご一緒できないのは残念ですが、ほかを当たります。ありがとうございました」


 え?自分の負けにするつもり?あのような恥を晒したわたくしに勝ちを譲るというのですか?


「しかしメルレン殿、千年森への地理が不案内では困りましょう」


「馬術の格好がついたら出発して、途中の町で案内人を雇うことにしますよ」


「しかしそれでは」


 バルテルミ兄様は言葉を続けられなくなってしまった。


 これではせっかくわたくしを紹介しようとした兄様の立場がない。


 だいいちク、クモなどに気絶して無様をさらしたわたくしの立場もない。


「お待ちなさい!」


 気づけば声をあげていた。


「勝負事に曖昧な結果など不要です。まして情けも無用!わたくしはあの場で倒れ、あなたは立っていた。それをもってあなたの勝ちとします」


 そうだ。騎士に甘えなど必要ない。


「当然条件もそのまま生きます。千年森への道案内役、約束どおりわたくしが勤めてあげますわ!」


 メルレンなにがしは驚いた顔をしている。


 立ち上がろうとして額から落ちたハンカチに気づく。


「これはあなたのものかしら?」


「はい、うなされていたものですから。わたしのハンカチなど載せて申し訳ありません」


 手を出してハンカチを取ろうとするのをサッと引っ込める。


「これは洗ってお返しします」


 淑女として当然の行いです。


 そういえばこの男先ほどわたくしのことを「美しい方」と言いましたわ。


 美しい…?い、言われ慣れているからなんとも思いません!





 メルレン・サイカーティス視点



 えー?何言ってんだこの馬鹿娘は。


 せっかく嫌だろうから穏便に落とし所みつけてやったってのに。


 馬つかって片道1月半?これと?朝昼晩キーキー言われるの?ストレスで胃に穴あくわ!


 たしかに美人だけどさー、美人だったらなんでもいいってわけじゃないだろ。


 第一手も出せない、デレない美人だったら人当たりのいい普通の娘のほうが精神衛生上よっぽど癒されるわ。


 いやむしろ男でいい。


 バルテルミはなんだかホッとした顔になっていた。


「メルレン殿、サラもこう言っておりますのでふつつかな娘ですがよろしくお願いします」


 ちょ、おま、用法違う!


「兄様!ふつつかとは聞き捨てなりません!」


 ツッコむとこ違う!


 なんだ、この断れない雰囲気は…




 というわけでメンツが揃いました。


 僕、アル君、サラ、サラの御付の侍女、ランベール・ルーセッタ。


 さすが貴族だけあって、王都騎士団の新人では侍従などつくはずもなく、侍女とは幼少のころからサラの御守をしてきた専属メイドさんみたいな人らしい。


 召使い兼教育係兼護衛、てことはサラがデタラメなのはランベールさんの教育が到らないせいではないのか!?


 このパーティ、騎士、騎士、騎士(見習い)、メイドと非常に偏っている。


 僧侶がいないパーティはまずいぞ。


 しかしこの世界で体力回復とか怪我治療しちゃうような設定はしてないんだよなあ。


 もともとのテーブルトークRPGではもちろんクレリックの設定あったけど、お話には一度も登場していない。


 現実世界とおなじく坊さんは葬式やったり、懺悔聞いたりするものだ。


 ツボ売ったりはしないのかな?


 メイドならご飯も上手にできそうだし、なんなら馬鹿娘放置でランベールさんだけ借りて行こうかな。


 地理もわかりそうだし。


 と、それとなく口にしたらサラがヘソ曲げかけたのでフォローに苦労した。


 なんだよー、おとなしく王都守護してろよー。



 

 馬術の教官が増えて、ウェズレイ、サラ、ランベールさんと3人になりました。


「おら、腿締めて下半身で馬に言うこと聞かすんだよ。ニーグリップ、ニーグリップ」


「背筋が伸びていませんことよ。馬に乗る姿勢も美しく!」


「メルレン様、従者より馬術が下手なのでは下々にも示しがつきません」


 ウェズレイ、お前の僕への扱いが時々刻々とひどくなってきてるのは気のせいじゃないよな。


 サラ、やかましい!


 ランベールさん、初対面に近いのになぜ僕に厳しくするんですか?


 しかし、手加減をしらないスパルタ指導により、僕の馬術はみるみる向上し、僕の尻はみるみる皮が剥けた。


 手持ちの薬草を塗ろうと思ったが手が届かなかったので、サラに塗ってもらおうかと思ったが尻ごと切り落とされそうなので、アル君に塗ってもらった。




 そしてミスリル銀製という恐ろしく高級そうな鎖帷子も届き、出発の準備はあい整ったのだった。


 グレティル王に会って親書を貰った。


「メルレンよ、初任務だが気楽にいくがよい」


「寛裕なるお言葉ありがとうございます。主命果たして参ります」


「うむ」


 路銀は公務ということで金貨十五枚、銀貨五百枚を支給された。


 自分で持ってると不安なので、まあランベールさんに渡しとくか。


 経費が足りなくなった場合は、立て替えておいて後で請求すれば全額くれるらしい。


 自分の持ち金は金貨十枚だけ持って、あとはカーマインさんに預けておく。


「特に当てもないので、皆のいいように使ってください」


「わかりました。責任をもって運用させていただきます」


 運用?FXとかやるんじゃないぞ?


 馬は訓練に使っていた、元・暴れ馬を使用。最近では僕の顔を見ると愛想笑いするように見える。


 それぞれの乗馬+荷馬の5頭編成である。


 馬術訓練を始める前は馬車で行こうかとも思っていたのだが、進むペースが落ちることと場所によっては進めなくなる可能性もあるので、機動性に勝る乗馬になった。


 門前まで来ると、見送りにカーマインさん、バルテルミ、ウェズレイが来てくれた。


 一応一行のリーダーとしてご挨拶。


「それでは行ってまいります」


「メルレン様、道中のご無事をお祈りしております」


 カーマインさん。


「メルレン殿、オーベイ殿への用事が首尾よくいくといいですね」


 バルテルミ。


「面白い話期待してるぜ」


 ウェズレイ、僕はネタ担当じゃない。


「皆様、わざわざのお見送りありがとうございます。出発しましょう」


「はい!ご主人様!」


 アル君、君は召使いじゃないと何度言えば分かるんだ。


「わたくしに任せておけばまったく不安はありませんわ」


 サラ、それは人を不安にさせるためのセリフだ。


「……」


 ランベールさんはイマイチ何考えてるのかわかんないんだよなあ。




 麗しの都ヌクレヴァータ、しばしのお別れ。


 できればオーベイのとこでイダヴェル侵攻に対するアイデアがないものか。


 そんな隠遁してる賢者を引っ張り出す方法といえば、やっぱ三回訪ねるべきか?


 これが後に言う三顧の礼である(嘘)。

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CMみたいですね。

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