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異界のストーリーテラー  作者: バルバダイン
第二部 「ラトロード領の日々」
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第五十七話 「来客」

メリークリスマス!

って昨日投稿しようと思ったけど間に合わなかったの巻

 サイカーティス商会もからんで、一大木工集団が招聘され、伐採する、切り株を掘り起こす、整地する、丸太を各種板材へと中間加工する、輸出する。


 という付加価値をつけた開拓、開墾事業も軌道に乗り始め、ラトロードの地に巨大な更地が出現してきていた。


 逃げずに襲ってくる野性動物や怪物は騎士団によって討伐され、環境保護とかマジメに考えたほうがいいのか悩む日々もあった。


 次に来たのが移民建築ラッシュ。


 騎士団とその関係者、旧エンフィールド公領からの移住者を一応優先していたが、王都の復興が取り壊し、瓦礫の除去を含むのでなかなか進展しない中、にわかに近郊にできあがりつつある新しい町、なおかつ治めるのは大戦の勇者様(ヤメテー)とくれば、とくに生活レベルがもともとあまり高くなかった者からどんどん移民希望が出てきた。


 王は王都の再開発にあたって一旦人口が減るのは仕方ないという旨の触れを出したせいで、財産を簡単に持ち運べる者は新天地での生活に賭ける者が一定数いたというわけだ。


 するとしっかり各種資材、食糧、生活必需品、そして大工や石工などを抱え込んでいたサイカーティス商会はまたもや未曾有の活況を迎える。


 たまにちょっと心配になって聞いてはみるものの、他の商人の追い出しや不当な利益は得ていない。


 むしろ良心的な価格が好評を呼びさらに評判があがる。


 他の商会や個人商店などは品質、価格ともなかなか競争できずにサイカーティス商会に加盟させてくれという申し出も多いらしい。


 初手で成功したので、商売のパイが大きくなり薄利多売へシフトしてきているのだ。


 こうなると中々その牙城は崩せないだろう。


 なんか財閥みたいになりそうだな。


 なので個人商店がたまに開店して必死で頑張ってるのを見るとついつい判官びいきなのか声をかけてしまう。


「やあ、御主人。よかったら商売の話をしないかい?」


「おや珍しいエルフの行商さんか仲買さんかい?珍しいものがあるといいね。ここいらは人は多いんだがサイカーティスさんの地元だし、新規でやっていくにはなかなか厳しいのさ」


「これはちょうどよかった。僕が個人的に仲間と作っているものなんだけどね、そんなにたくさん作れないし需要がそんなに多くあるとも思えないから、サイカーティスさんみたいな大店には卸せないんだよ」


「それは願ったりかなったりだ。いい品なら目先が変わったものを扱うのはいいことさ。他と違うってのはそれだけでタネになるんだ」


「じゃあ早速このブツなんだがね…」


「メルレン…」


 声をかけられはっと振り向くとサラだった。


「や、やあサラどうしました?」


「姿を見ないと思えば、またなにか怪しげなことをして」


「あ、あやしいとは失礼な、せっかく研究所の試作品の初期量産体制ができたのでパイロットショップになってくれるお店を交渉していただけで…」


 慰安旅行から帰ってきた後、さっそく一軒の建物を買い取り、馴染みの酒屋の先代と米農家の先代を引き込み日本種造りの試行錯誤を開始した。


 レシピがまったく不明だったので大賢者(クソジジイ)との双子の本(文通)によるやりとりでまたも主にプライド的なものを色々喪った気がするが、これも日本酒製造という大望のため!


 ガラスより安価だという理由で陶器製の見た目まんまな大徳利に入れた日本酒試作品にはそれっぽい筆文字で「芽瑠錦」と書いてある。


 メルレン謹書である。


 炭ではなく焼き付け用の塗料なので書くの難しかった。とかはまあどうでもいいか。


「これは?」


「米の酒で、今までに無い製法で作っています。厳密に言うと遥か東の島国に伝わる製法なのですが」


「もらっていいかい?」


「どうぞどうぞ」


 僕はお猪口を取り出す。


「ささ御主人、まずは御一献」


「なんだか変わったエルフの御仁だね。おっと悪いね」


 注がれた酒を口へ運んできゅっと飲み干す。


「お?これは…米本来の甘い華やかな香りが広がり、遅れてやや酒の風味がやってくるが…なんとも爽やかにキレていくっ!」


「でしょう、でしょう。ささもう一杯」


「いただくよ」


 さらにあおる。


「むう、飲みつづけても飽きが来ず、アルコールの回り方も実にいいじゃないか」


「でしょう!でしょう!」


 僕は自分用の猪口も取り出し主人と飲み始める。


「メルレン!」


「ああ、サラ。ホラあなたの分もありますよ」


 もうひとつ猪口を取り出し、サラに押し付ける。


「そういうことじゃなくて…!」


「ままま、まずは一杯飲んでから話をゆーっくり聞きましょう」


「…もう」


 サラはおそるおそる口をつけると、そのまま飲み干す。


「あ、フルーティ」


 女子コメントいただきました!




 結局主人とサラは潰れ、僕が店主を店内に立てかけておき、サラを担いで帰った。




 その後お店はメルレン日本食研究所のパイロットショップとなり、店舗に実際飲み食いできるスペースを増設し、敷地面積あたりの売上高としてはキリタチのトップを誇ることになる。


 あ、そうそう町の名前は僕の愛刀霧断丸(キリタチマル)にちなんでキリタチになった。


 サイカーティス領の主都キリタチ。


 微妙にダサいがこれが落とし所だった。


 慣例にしたがっちゃうと「メルレン」とかも候補になるので全力で拒否した。


 持ち物ならまあ由来もあるしいいだろう。


 で、このお店はどうみても日本の居酒屋にどんどん近づいていき、仕入れの許す限りは拡張されていった。


 ちなみに僕が領主だって気づいたときには平伏されたけど、今では仲良しだ。


 酒は人を繋ぐ。


 酒が禁止な一部の宗教もあるが勿体無い気もする。


 神の仰せとあらば仕方ないのかな。


 町の開発と関係あるのか無いのかわからないが、青菜の塩漬けなど酒のアテの試作に一所懸命になっていた僕にある日王都からの使者がやってくる。




「メルレン様!王都より急使です!」


 執務室でレシピのメモ書きをしていた僕のところにアル君が転がる勢いで入ってくる。


「急使ですか?またどのような?」


 心当たりも無く予想もつかない。


 いやな予感しかしないなあ。


「詳しいことは、今サラ様が応対されていますので!」


「わかりました。行きます」


 応接室に入ると略装の王都騎士団員が直立して、同じく立ったままのサラが難しい顔をしている。


 騎士は僕を見てビシっと威儀を正して口上を述べる。


「突然の訪問大変失礼いたします!わたくしは王都騎士団のユミル・グレイファスと申します!この度恐れ多くも陛下より伝令の大任を拝し駆けつけた次第であります!」


 うん、若いのに堅い人だ。


 というかこっちが正しい。


 ウェズレイとかうちの山賊騎士団の方がどうかしている。


「お役目ご苦労様です。陛下よりの御伝言とはどのような内容でしょう?」


「はっ!こちらの書になります!ご確認ください!」


「拝見いたします」


 きらびやかな封筒に入った文書を開くと、そこには達筆なグレティル王からのメッセージがあった。


 時候の挨拶、近況と形式どおりに続き、本題が書いてあった。


「え?」


 内容は以下のようなもの。


『ラトロード伯に会いたいという客が王都を訪れた。最友好国でもあるし断る理由もないので承諾した。ただし気が長くないようで、王都での歓待もそこそこに切り上げそちらへ向かわれると言う。それで取り急ぎ急使を送ったが、受け入れの準備をする猶予はないと思われる。そのあたりの事情は説明してあるが、どうかできる範囲で最大限の歓迎をして欲しい。

客は以下である…』


「カタラク国王ダルタイシュ・セルワー陛下、王妃ゼフィア・セルワー殿下、王弟ティルクーク・セルワー公爵…」


 すでに内容を聞いていたらしい面々は青ざめている。

 

(主役キター)


 本編終了後にいきなりこのイベントかー。


 外伝でも全く触れていないダルタイシュ達の後日談。


 また対応が面倒くさい展開しか想像できない三人組だなあ。


 しかしまあここでげんなりしていても話にならない。


「サラ!わたしは貴族や王族の儀礼については残念ながら疎いので、最低限礼を欠いてはまずいポイントを打ち合わせましょう。アル、すぐ『銀杏(いちょう)の並木亭』と近隣の宿に問い合わせ貴賓室あるいは一番上等な部屋を空いているだけ押えてください。カーマイン、屋敷の客間の清掃と調度の確認を。それとランドルフに手持ちの材料とすぐさま手に入る最高の素材の仕込みを大急ぎで始めさせてください。ハウスメイドたちはわたしと残って打ち合わせに参加。以上各員行動開始!」


 思わず「状況開始」と言いたくなるが自重する。


「グレイファス卿は別室にてお休みください。お勤めご苦労様でした」


「は!」




 どう転んでも国賓というVIPの突然の来客。


 主都キリタチはまだ町並みも整わぬ中大騒動である。


 騎士グレイファスに聞いたところ、ダルタイシュは最少の人数でカタラク、ミクラガルド、イダヴェルを経てバルディスに至ったらしく、各国の王もほぼスルーで真っ直ぐこのキリタチを目指してきたらしい。


 なんだよこえーなー、どんだけ興味持たれてんだ。


 そうなんだよなあ、あいつのキャラ設定って『興味本位』『力任せ』が柱だからなあ。


 興味持ったらくるよなあ。でもゼフィアは嫁だからいいとして、ティルクークまで来るのはどういうことだ?


 あいつは兄ほど興味本位とかでは…あー『知識欲旺盛』の属性に僕がひっかかったのか。


 だとすると兄と同じくらい面倒臭いな。


 どうする。どう誤魔化す。


 しかし具体的な考えもまとまらないうちに、まもなく到着という報告が入る。


「どうしましょう!ろくな歓迎準備もできておりませんのに!」


 サラはすっかり大慌てだ。


 なまじ歓迎セレモニー責任者みたいなポジションにつけたため、重責でテンパっている。


「だいじょうぶですよ、サラ。カタラク王は寛大な人物、たとえ焚き火を囲んでの酒盛りが歓迎式典だとしても心から喜んでくれます」


「そんな!口さがない者たちは王を『砂まみれ』などと言いますけど、あのバシュトナークを尋常の立ち合いで討ち果たし、十王国に平和をもたらした真の英雄ですわ!国を挙げての歓待をすべきですのに」


 お、サラはダルタイシュファンだったのかー。


「王は宮殿暮らしに慣れておらぬゆえ、そういった形式を嫌うと聞いております。歓迎の心が伝わればいいのです」


 そう多分あいつらは、きっとゼフィアを含めて心ゆくまで僕をいじり倒すことが目的に違いないのだから。




 到着である。


 毛足の長い大柄な南方産の馬に跨り件の三名、護衛と思しき恐らくはカタラク近衛戦士団から五名の計八名。


 国王の一行としては恐ろしく少ない。


 しかし史上最強にして地上最強を自負するダルタイシュには護衛はいらないし、ゼフィアもたぶん女性最強レベルだし、ティルクークは精霊王が守ってるから奇襲を含めたどんな攻撃も通らないし、護衛はあくまでもお飾りでしかない。


 どうせ周りのサラやアル君達のように「え!?この人数?」的に驚かれるんだから、いっそのこと三人で動けばいいのに。


 まあ国許がせめて形式だけでもと食い下がってこんな感じになったんだろうな。


 おかげで後が酷い。


 アクム・サハ新世話役、そして興味本位バルディス代表のザックラー・ウェズレイ、新北部方面司令ダナード・エルゴをはじめとする王都騎士団総勢百名。


 いわゆる一個中隊である。


 これを予想して宿を押えたのだ。僕ってばなんて賢明なんでしょう。


 僕は王の前に片膝をつき頭を垂れる。


「これははるばるのお越し誠に光栄でございます。なにぶんまだろくに整わない町、礼も弁えぬ無作法なわたくしではありますが心より歓迎させていただきます」


「おう、突然悪いな。邪魔するぜ」


 日焼けで褐色の肌の偉丈夫、ダルタイシュ・セルワーその人だ。


「バルディスを離れた身で言えた義理ではありませんが、この度の戦では国の危機を救ってくださりありがとうございます」


 戦国のヒロイン、ゼフィア・エンフィールド女公改めゼフィア・セルワー王妃。


 正統派美女で王道ヒロインポジションに見えて、意外と腕っ節で解決しようとするし、精神的に病みやすい。


「兄のわがままに便乗してついてきてしまいまして心苦しい限りですが、お噂をうかがい是非ともラトロード伯にお目にかかりたいと思ってしまいました」


 盲目の精霊使い、ティルクーク・セルワー。視力と引き換えに全知に近い能力を得ている怖い人。


「皆様、ささやかではありますが一席設けさせていただいておりますので、御案内いたします」


 もう酒飲ませてうやむやにしよう。



 川魚の燻製、青菜の塩漬け、パドバ産居付きアジの干物、おなじくパドバ産干しイカの炙り、イノブタのハム、ベニマスのカルパッチョ風などなど。


 ランドルフが仕込んでいたメニューがテーブルにてんこ盛りだ。


「お!酒に合いそうな食い物だらけだな!」


 ダルタイシュは嬉しそうだ。


 最近ツマミの開発してたから偏ってるのは認める。


 から揚げも試作してたけど、香辛料の調達が遅れている。


 カタラク方面でなんとかならないかなあ。


 あと大量の油を使用する揚げものは、どうしてもぜいたく品になってしまうため広まらない感じだ。


 試作ではいわゆる我が家のレシピでにんにくを利かせて揚げ焼きにしていた。


 これはこれでウマイのだが、あのころもがサクっとしたから揚げを食べたかったのだ。


 領主が油もったいないとかケチ臭いこと言ってると悲しいので、そのうち作る。


 序盤はエールとワインを出していたが、やがてブランデーのような強いアルコールを提供しつつ、自分用に徳利を出した。


「お?なんだそれ?酒か?」


 ダルタイシュはめざとく見つける。


「ええ、米の酒でこのあたりでは珍しいものです。あまり強い酒ではありませんが、お試しになりますか?」


「そいつは是非飲んでみないとな!」


 立ち上がると自分の椅子を掴んで、僕の隣まで引っ張ってきた。


「貰うぜ」


 言うや、徳利に直接口をつけてグビグビやり始めた。


 まったくイメージ通りだな。


「うめえな!」


 僕はコックニーさんに目配せして追加で持ってこさせる。


 もう無礼講に突入していたが、ここからさらにカオスが加速していく。



「よろしいですか?」


 なんか礼儀とか最初一応気にしてたのがアホらしくなるほどぐだぐだになった頃、ついにヤツが動いた。


 灰色の主神の寵児、ティルクークだ。


「これはティルクーク様、何か」


「少しお話したいと思いまして」


「ええ構いませんよ」


 そりゃあ断れないもの。


 僕は徳利とお猪口二つを持つと部屋の隅に移動した。


 ソファへ誘うとティルクークは危なげなく座る。


 こいつは目が不自由で視覚情報は一切ない。


 しかし全ての精霊の友というチート中のチートみたいな加護があるおかげで、歩く方向から迫る危険をはじめ、知りたい情報と知るべき全てを瞬時に知ることができる。


 奇襲をかけようにも精霊のおかげで筒抜け、どんな欺瞞情報も通じない。


 布陣は風の精霊がつぶさに伝えてくれるので常に万全の備えができる。


 ダルタイシュの数倍敵に回しちゃいけないヤツだ。


「わたしは盲いているかわりに人の見えないものまで見通せる力を授かりました」


「はい、噂で存じ上げております」


「イダヴェルとの戦ですら結末を知っている物語を聞くようなもので正直倦んでおりました」


 そうそう、こういうところが怖いんだよね。


 悪意はないんだけど、視力よりももっと人としての大切ななにかが欠落した感じ。って設定したの僕か。


「世に求めるものなどありませんでした。知ろうとすれば即ちもたらされる、それは探究心という心にとってはなにより残酷なことです」


「なるほど、力のある者には余人には計り知れぬ悩みがおありなのですね」


 イヤミのひとつも言いたくなるというものである。


「それが…ただひとつ、いいえまだあるのかもしれませんが、今知る限りでただひとつ見通せないものがあるのです」


 ん?なんだろう。


 しかし、イヤな予感しかしない。


「あなたです、メルレン・サイカーティス卿。あなただけはその機微も力も未来も、何もかもが見通せないのです」


 ヤッパリナー。


「これは本来ありえないことなのです。心の中まで見通すことはさしもの精霊にもかないませんが、漏れ出す感情は精霊の知るところとなり、行動は無論のこと人物の足跡(そくせき)ですら大地や木の精霊が伝えてくれるのです」


 個人情報関係なしかー。


「しかしあなたのことになると精霊が口を噤むのです。何も見えない、何もわからないと。これはどういうことなのか!?」


 静かに感情を昂ぶらせるティルクーク。たぶん興奮したコイツを見た(書いた)のはこれが初めてじゃないかな。


「さあそうおっしゃられましても、わたしは精霊魔術の心得もありませんし、心当たりはありません」


「いくつか推論を立ててみました」


 聞いてねえ。


「まず一つは未知の魔術、恐らくは古代魔法王国のそれになるかと思われますが、その術式により精霊の活動を阻害することができる」


 あーそんなのもあるかもね。あそこの設定いい加減だから変な魔術一杯ありそうだもの。


「しかしこれは否定的にならざるを得ません。なぜなら精霊魔術が非常に一般的ではないため、これに対する防御手段を常時発動させる意味がない」


 そりゃそうだ。アイテムでもカウンタースピリッツとか聞いたことないもんな。


 それなら魔術防御の方が実用的だし。もっと言えば魔術師の絶対人数の少なさからして、軽くて丈夫な鎧の方がもっと実用的だ。


「もうひとつ考えたのですが、少々突飛な推論です」


「どのあたりからが現実的でどこからが非現実的なのか、門外漢のわたしではまったく判断できません」


 イヤミその2。


「それは単純な格の問題です」


 やっぱ聞いてない。ん?格?なんだそりゃ?


「つまりわたしがいかに精霊の働きを駆使しようとも灰色の主神、精霊王レヴィノーアの御業は見通せないのと同様に、力…いえ存在が遥かに高位である者には通用しません」


 ごくり。


「精霊たちの反応は実に微妙です。精霊王の御前のように畏怖と尊敬を抱いているような、あなたの姿形以外のことがわからないことに苛立っているような…」


「わたしにはわかりかねますが…」


 するとティルクークはキスでもするのかという距離まで接近し、見えないはずの目で僕の両目を覗きこんできた。


「あなたは…何者ですか?」


 うわあ、肌キレイ…じゃねえよ!


「わたしはわたしでしかありません。変わり者のグレイエルフ、メルレン・サイカーティスです」


 そのままティルクークはじいっとしていたが、やがて表情をフッと緩めた。


「いいでしょう、答えをみつけるまで探究です。すぐに解明できるような命題では退屈です」


 距離を取りなおして続ける。


「でもこうしてお会いしてわかったこともあります」


 わ、なんだよ。やだな、勿体つけんなよ。


「なんでしょう?」


「確実なのは、あなたがグレイエルフなどではなく人だということです」


「!!」


 えーーーーーー!ちょっとまった、口ふさいでやろうか。


「わたしは見ての通りグレイエルフですよ。生まれてすでに550年を数える酔狂な森の住人です」


「わたしは目が見えません。だから目の前の方がどのような姿をしているのかは精霊の声でしかわかりません。だからいつも空気の動きや臭い、足の運び、音、そして何より雰囲気を嗅ぎ取るのです。あなたからはエルフやヒルエルフ、そしてレイスリー・プロガーンやラザルス・アクシオムが共通して持っていたエルフの感覚が全く無い。わたしが今こうして感じるのは人間のそれです」


 勘っていうのか?やっぱこいつ怖いって。剣聖ラザルスや師匠のレイスリーと面識があったのはまずったなあ。


「人里に下りてまだ2年ほどですが、すっかり慣れてしまったのでしょうかね」


 言い訳する僕にティルクークは微笑で返す。


「詰問するつもりはありません。非常に失礼で無礼なわたしの個人的好奇心ですから。どうかお許しください」


「いえいえ、カタラクを、十王国を代表する賢人に興味を持っていただくなど身に余る光栄です。わたしにわかる範囲のことでしたらなんなりとお聞きください」


 ようやくかわしきったかな。というか追及するのをやめてくれたという方が正解か。


 やな汗かいたぜー。


「お、男色会談は終わったのか?」


 ウェズレイ、お前は無礼講というものを履き違えている。


「し、失礼ですよ!」


 サラは顔真っ赤でウェズレイを嗜める。


「サラ嬢ちゃんがいちばんワクワクして見てたじゃねえかよ。まあいつまでも女に興味示さないから男色か疑いたくなる気持ちはわかるよなー」


「ティルクーク、お前ってそっちだったのか?」


 ダルタイシュも普通に聞くんじゃない。


「さあ、どうでしょう。わたしは伯爵ほどの美男であれば性別など問いませんが」


 おい。


 おい!


 お前冗談でもバイ宣言とかすんな。サラが絶句してるじゃねえか。


「わたしに衆道の嗜好はありません」


 きっぱり言い切ったものの、会場はなにやら微妙な空気になった。


 ホモネタで盛り上がる国王歓迎会ってどうなのよ。

みなさん良いお年を~

2015年のシメがホモネタか~^^;

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