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異界のストーリーテラー  作者: バルバダイン
第二部 「ラトロード領の日々」
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第五十六話 「慰安旅行」

おひさしぶりですー。

エタってないよ?w(もはや苦しい)

 港町パドバへ視察とパッケージツアーの企画のために何故だか領主が出かけていくというワケのわからないことが決まった。


 カーマインさんはどうしても自分で見たいらしく、アルの父ウォーデンス氏と筆頭内政官ネヴェ・バンドワールにいない間の引継ぎをちゃっかりしていた。


 サラも何やら当然のように荷造りをし、リュタンも同じく。


 アル君も何食わぬ顔で旅支度。

 これはもうなんだかオーベイのところへ行ったメンバーと変わらなくないか?


 兄バクスターの手伝いというかお祝いにランベールが復興したポロニアム男爵家へ出かけていて、いない代わりがカーマインさん。


「旅というものを、予め用意された行程に従って楽しむとはまた奇想天外な思いつきをなさいますね」


「行き当たりばったりであるとか、ハプニング的な旅の楽しみが大きく損なわれるデメリットはありますが、定期的に一定数の客が見込めることにより、交渉次第では宿や食事の価格を下げることができます。


客の立場からはいまひとつ予想のつかない旅行のコストが事前に提示された額プラスお土産や小遣いであるという想定ができることで必要金額のイメージが容易になります。またスケールメリットによって通常より安価で、宿の情報や食事の情報も事前に把握できる安心感、そして少数ではありますが騎士団の護衛がつくという通常の旅行では考えられないようなメリットがあります」


「メルレン様、よくぞ考えられましたな」


 通常のパッケージツアーに護衛騎士つけただけだけどね。


「すでに都市間の定期馬車には同様の試みが考案されていますが、旅を民の楽しみに落とし込むという発想は驚きです」


 めっちゃ食いついている。


 温泉旅行とかはやっぱ年寄的にはツボなのかな?そういう習慣がないはずなので不明なのだが。


 


 さて、パドバと言っても広うござんす。


 町の北側は山になっており、ここには穏やかではあるが活動を続ける火山がある。


 ちなみにここの火山の灰もローマンコンクリート作成に良い結果を出したのだが、大規模な活動が無いので地表からサクサク集めることが難しく、できれば重機など持ち込んで露天掘りをした方がよさそうだったので優先順位が下がった。


 シーリア火山はまだ散発的な噴火を繰り返しているので灰の量は無尽蔵に地表にあふれている。


 パドバ火山は火山の常で地下水が温泉化しているので、湯と熱は町の資源として扱われている。


 籠に入れた野菜を茹でたり、水でうめて公衆浴場に利用したり、だ。


 また海運、漁業ともに盛んでパドバの港は貿易港と漁港が隣接している。


 これは水揚、卸売り、輸送を効率よく行うためで、保存技術が発展していないため、燻製や塩漬けの加工場も港に併設されていて相当賑やかだ。


 魚介の生食の習慣がないため、鮮度維持についてはそこまで拘られておらず、入手できた魚の下ごしらえや処理の様子によって、焼いて食べるのか、煮込むのかなどを選択する。


 勿体無い。


 実は調査によってパドバの火山洞窟には天然の氷室になっているものが一定数存在し、夏には上流階級を中心に飲料の冷却用などに一部利用されている。


 氷で冷蔵できて、鮮度のいい魚が手に入るのなら刺身で食わんでどうする!


 メラメラと食欲の炎を上げていると、我が家の料理長ランドルフがニヤニヤしている。


「旦那様ァ、楽しそうですね」


「ええ、久しぶりに生で魚が食べられます」


「完全な生ですか?」


「完全な生です。包丁の扱いや鮮度の見極め、氷水を使った臭みの抜き方などありますので向こうで教えます」


「そ、そりゃいいですが、それも東方の島国の料理ですか?」


「そうです」


 もう最近は胡散臭いことは全部「東方の島国」に伝わる云々言っとけばいいような気がする。


 醤油も持参したので刺身、炙り、あらい、焼き霜と箸休めに洋風のカルパッチョも食べてやる。


 パドバへ向かう馬車の中でランドルフにみっちりマンツーマン指導をしたのは言うまでもない。


 あー日本酒欲しい。


 麹菌があるから発酵は可能だけど、酒醸す工程はさすがにわからん。


 エールかワインで我慢しよう。




 なにげに一番浮かれているのは僕かもしれないとうっすら自覚しつつ、平和な旅程が過ぎていく。



 さて、バルテルミの兄でもあるピアーズ候ロイド卿が紹介してくれたのは、少々山あいにある温泉宿だ。


『本当にあそこでいいのか?もう少しマシな宿がいくらでもあるぞ?』


 僕からの要望は二つ、収容数が多いまたは増築して多くできる。


 もう一つが大事で、源泉かけ流しの風呂があること。


 そこまで温泉文化の根付いていないこの世界では、温泉などは「沸かさなくても熱くて燃料代の節約になるお湯」でしかない。


 ありがたがって引き込みの設備を長々と街中まで作ったりしていない。


 ということで、温泉宿は温泉が自然湧出している山あいの辺鄙な場所にしかないわけだ。


 一部に愛好家がいたり、老人が温泉療法みたいなことをしているが、なにせ辺鄙なのでわざわざ通ったり長湯治するものも少ない。


 よって、


「ボロいな、これ!」


 その温泉宿『湯と木漏れ日亭』は、思わずメルレンのキャラを崩壊させてしまうほどのボロっぷりだった。




「これはこれは遠いところからお疲れ様でございます。何分不便な場所にあり、温泉以外には何もない宿ではございますが、どうかごゆっくりとおくつろぎください」


 主人の挨拶はなかなか好感度が高い。


 宿の接客など、現実世界と違って千差万別だ。


 おう、ぐらいしか返事をしない親父もいれば、元気いっぱいのおかみさんまで様々なのだ。


 そこいくとこの主人は日本の温泉宿の挨拶と比べても見劣りしない。


 これはプラスポイントだ。


「メルレン、その貴重な白紙にさっきから何を書いていますの?」


 チェックポイントをメモっているとサラが覗き込んでくる。


「これは宿のよいところ、気になるところを書いているのですよ」


「ええっ?そんなの普通の紙に書けばいいじゃありませんか!?それはバルディスの技術では作れない紙だって言ってたじゃないの」


「いいんです、いいんです。これは大事なことなので、大事な紙に書くんですよ」


「この旅に出てからというもの、何だか妙に張り切っているような気がしますわ…」


 内政チートの知識などほとんどない僕だが、食に通じるものくらい張り切ったっていいと思うんだ。


 これで爆発的ブームになって食文化の版図が完全に塗り替えられ、ファンタジーの酒場でイカつい鉱夫が鯖味噌定食を食らう姿が一般化すれば、さすがに強制力が働きそうな気もするが。


 米はまあまあある。


 これは理由があって、小麦を使ったパンとの用途の違いだ。


 米、小麦粉の状態では保存方法などには大差がないが、携行食としては実は米の方が数段優秀なのだ。


 米はそのまま持って行き、水を調達すれば調理して食べることができるが、小麦粉は発酵させて焼き上げることでパンになるため工程がはるかに面倒なのだ。


 またパンを持ち運ぶにも日持ちの問題、膨らむため意外に嵩張るデメリットがある。


 ただし短い旅程や行軍ならば、そのままの状態で火を使わずに食べられるパンの方が圧倒的に利便性が高い。


 そんなわけでこの世界では現代日本よりはパン食より、欧米よりは米食より、ざっくりとした感じでは4:6の米パン比率なのだ。


 米の品種はインディカ米っぽいのかな。


 しかしながらそのまま食べてもパサつくという感じはしないので、僕はすぐ慣れた。


 もともと米のよしあしにまではあまり拘らない方なのだ。


 現代にいるとき、七万する炊飯器を買ってご飯を炊いたら、あまりの旨さに驚いたが、一週間もすると慣れてしまった。


 主食なので、まずいと萎えるが、毎日感動していては身がもたない。


 これは僕だけの考え方なのか?




 視察ポイント一箇所目。


 風呂。


 湯治場だな、うん。


 掃除は行き届いているが、施設には老朽化が見られ、源泉かけ流しではあるものの、湯量を絞り自然と冷めることで温度をほぼ一定に保っている。


「混浴ですか…」


 そう、この世界では混浴が主流。


 なのでどちらかというと公共浴場は不健全な施設として受け止められている。


 混浴万歳。


 と、思いがちなのだが、それではこの温泉ツアーが長く流行するための肝要な部分である『女性の集客』が見込めない。


 女性へのケアが、パックツアー計画の成否を左右するのだ。


「御主人」


「はい」


「湯量は充分確保できますか?」


「ええ、留め口を開放すればこの管でも十倍は出ます」


 それならここは大々的に手を入れよう。


 どうせこの宿はサイカーティス商会が大々的に資金を投入して改築する。


 頭の中で男女別に別れた岩造りの大浴場、露天風呂をイメージしながら職人への発注内容に思いを巡らせる。


 周囲には見た目に派手な火山岩を配し、身体が接触する部分については磨かれた滑らかな川石、そして隙間を埋めるのは開発した水中硬化型のローマンコンクリートを使う。


 タイルは無いから大きさのそろった石を並べるか、石工に切り出しをさせて床面に並べていく。


 温泉の引き込みに合わせ、湧き水の引き込み経路も併設し、豊富な湯量で贅沢なかけ流しにする。


 うんうん、いいかんじだなー。




 視察二箇所目。


 厨房。


 多数の客室をさばくため、規模は充分。


 しかし集客が少ないため、ここを切り盛りするのは妙齢の美女一人と補助に少女。


「こちらは?」


「申し遅れました、妻でございます」


「御主人は調理はなさらないので?」


「いえ、わたしが主にやるのですが、接客の時は妻が代わりに調理をいたします」


 ふむ。


「ランドルフさん」


「はい」


 連れてきた料理人のランドルフさんを呼ぶ。


「気づいたところはありますか?」


「そうですね、設備がやや老朽化していますが、清掃は行き届いており奥方の刃物の扱いも堂に入っております。厨房の規模は充分すぎるほど大きく客数が増えても問題ないでしょう」


「開業当時の父の代には料理人も複数いたそうです。今は私どもだけですが」


 奥方とも話してみたが、実に感じのよい人だ。


 娘さんもややおどおどしているものの、素直でいい娘。


 と、くれば


「改装後は奥方が接客をした方がよろしいでしょうね」


「それはどういった理由でしょうか?」


「女性の方が細やかな気配りが出来、男性客からは美しい女性ということで喜ばれ、女性客からは同じ女性ということで安心感があります」


「なるほど」


「御主人はお客様の部屋割りや清掃、調理、経理などの裏方仕事を統括してまとめて、料理人も雇ったほうがいいでしょう。娘さんは奥方の補助として増員する予定の女性の接客担当者と共に仕事に慣れていってもらえばいいでしょう」


 女将さん、仲居さん、板前さんですよねー。


 出発前に代替食材でランドルフさんに仕込んだ海鮮料理をここで指導してもらうことにする。


 鮮魚の仕入れを頼んでおいたのでそれを確認する。


 貴重な氷も使って鮮度保持もバッチリだ。


 しかもちゃんと活締めされている。


 野締め、活締めの手順についても事前に連絡してあったので、きっちりできている。


 欧州では魚食の文化はあるが、締めについてはあまり頓着がないらしく、折角の美味しさが損なわれているケースが多いという。


 締め、これは魚を殺すことによって鮮度を保つ方法で、疲労物質が身にたまり味が落ちることを防ぐ方法で、魚の生食をするにあたっては絶対必要な工程だ。


 活締めは文字通り生きている魚を締めることで、エラ裏に包丁を刺して瞬時に絶命させる。


 野締めは氷で一気に冷やすことで締めるのだが、当然活締めの方が鮮度落ちを防げる。


 ただ大量の魚を一気に締める場合は野締めでないと、イケスでも用意していない限りは時間的に無理がある。


 今回は当然活締め。


 この世界の、特にバルディスの海では青物と呼ばれる魚はほぼ日本で流通していた暖流系の魚、ブリ、カンパチ、シマアジ、サバ、アジなど、いや正確には近似種なのかもしれないが、それらの漁獲がある。


 ただ磯物というか、ごく沿岸で獲れるものはピッタリ同じものはそれほど見ない。


 いわゆるマダイであるとか、シロギスであるとか、ハゼであるとかそういう魚種だ。


 まあマダイは外海でも棲息しているはずなのだが、これだという魚は見ない。


 食べて似た食味の魚というと、コレコと呼ばれている銀色に眩しいギンガメアジに似た形の魚か。


 これも旨いので仕入れてもらった。


 ちなみにイカはアオリイカ、スルメイカなど種類も豊富なので旬のものを捌いてもらう。


 ちなみにイカの締め方は……な、長くなってしまった。


 ひとまずここはランドルフさんに任せて次に行こう。




 視察三箇所目。


 客室。


 これも古いながら掃除は充分行き届いている。


 しかし、しかしだ。


 簡素な木製のテーブル、同じく木製の椅子、頑丈な木のベッド。


 これでは調度品が無い分、現在の邸宅よりウッドハウス感が強い。


 温泉じゃなくてサウナがしっくりくる。


「さあみなさん、ちょっと家具を運び出して入れ替えますよー」


 ぬかりはない。こんなことは当然想定内だ。


 旅ではない旅行、日常から解き放たれたリラックス時空間を演出するためにはサイカーティス商会で特注した品々が必要。


 まずはカーペット。


 いわゆる貴族の使うカーペットは内装品の一部で床のカバーの意味合いが強い。


 装飾と足音を消して生活環境の改善の役目だ。


 しかし日本的な絨毯というと、これは洋間の畳といってもいい。


 毛足が長くそのまま寝転べる。


 暖かいシーズンならうたた寝もまたヨシ。


 今回作らせたカーペットは無論日本風で、スリーシーズン兼用にできるように毛と麻の混紡で毛足はやや短め。


 しかしながら柔らかく、そのまま寝転んでも通年快適間違いなしの逸品。


「わああ、気持ちよさそうですー」


 地べたに寝るという貴族(にわかだけどね)にはあるまじき行為に皆目を瞠る中、リュタンは僕と一緒に転がってきた。


「むうう、これはなんという解放感でしょうかあ」


 いきなり桃源郷を彷徨うリュタン。


 それを見て俄然興味を持ったのは駄メイド(失礼)のエレイン。


「わ、わたくしも…」


「いけませんよ、エレイン!」


「ヒッ」


 上司のコックニーさんににらまれビクンと硬直してしまった。


「構いませんよ、身体を投げ出して解放感を得る。これが休息や気分転換としての旅行をわたしが提案していることのの一部です。普段一所懸命に働いている皆さんのたまの骨休めです。くつろいでいただかないと僕も困ります」


 そうおっしゃられましても、と困惑するコックニーさん。


 主人の許しが出て転がろうと隙をうかがうエレイン。


 ごろ寝の魔性を知ればなんぴとたりともその誘惑に抗えるわけもないのだー。


 続いて座卓、座椅子などある意味地属性のアイテムを続々と運びこんで、とりあえずの温泉旅館化は完了。


 まあ内装を和風まで行かなくても、もうちょい落ち着いて洒落たものに変えれば非日常空間が演出できるだろう。


 高台にあるので、遠くに海も見え眺望は申し分ない。




 食堂は広かったので、こちらにもカーペット、座卓を運びこんで宴会場に仕立てた。


「お待ちどう様です」


 そこへ運ばれてくる山海の珍味。


 好き嫌いもあるので、刺身盛は少なめにして海鮮しゃぶしゃぶ、焼き魚、果てはムニエルまで揃えた。


 宴会はやはり大皿料理だ。


「これはなんとも豪快で豪勢ですねー」


 アル君も目を丸くしている。


「さあエレイン、分担して皆様にお取分けしますよ」


 コックニーさんが配膳しようとするのを留める。


「いやいいんですコックニー、旅行での大皿料理はめいめい料理とも言って、各人が好きな料理を好きなだけ自分で取って食べるものなのです。そこには身分の上も下も、主従もありません。これを無礼講といいます」


 そこから調子に乗って「似非遥か東の島国」の話をでっちあげて、やれ神人共食だの席順のありかただのうろ覚えの内容を話して場を煙に巻く。


「ということで、特に旅行の間は気楽に、酒も手酌でやらせてください」


 そうそう手酌だと自分のペースで飲めていいんだよねー。

 

「メルレン様、大層お酒がお好きだとお聞きしておりましたので、この地方で揃えられるものはできるだけ集めさせました」


 なんと!主人グッジョブ!


 これはカーマインさんの気配りが炸裂したのか。いやいやナイスです。


 エール、ワインはスピリッツ系のものと各種そろっている。


「おや?」


 ふと手を止めたところで主人が嬉しそうに微笑む。


「それはこの地方で伝わる地酒の中でももっとも高級なものです。さすがにお目が高い」


 聞けば麦を発酵させて蒸留したものを三~五年寝かせてブレンドしているらしい。


 そういえば焼酎の人気銘柄でそんな作り方のヤツがあったなあ。


 どうりでウイスキーに似た味わいがして…実にウマイ!


 これはもしかして日本酒造りもできるんじゃないかなあ。


 領主命令で作らせてみよう。試飲は徹底的に僕がやることにして…。


 


 料理はみんな大好評だった。


 まあこれだけ鮮度保持できてる臭みもまったくない魚介を食ってしまったら、ハマるしかないだろう。


 その後酒もすすみ、いつもどおり死屍累々の有様を作り出してしまった。


 風呂入ってこよー。




 すっぽんぽんになって一人で大浴場に入ると、やっつけ仕事ではあるが草を編んだ仕切りがされており、男女別にはいれるようになっていた。


 脱衣所とか入口とかを増設すればこんなカンジでいけるだろう。


「ふいーーーっ」


 身体を洗い流すと浴槽に浸かる。


 いやあ、生き返るね!この瞬間は。


 少し硫黄の臭いがするお湯は肌触りもよく、温度も好み。


 年数を経て黒ずんだ天井を眺めながら緊張を湯の中へほどいてゆく。


「メルレン?」


 え?サラ?


 仕切りの向こうから声がする。


「ええと、お疲れ様」


「あ、ああサラもお疲れ様」


「久しぶりにリラックスしてるようで何よりね」


 まあ確かに言われてみれば休みらしい休みもないままきたなあ。


「ありがとうございます。でも適当に手を抜いてるから大丈夫ですよ。わたしが一番得意なのはサボることですから」


 サラは笑う。


「わたくしたちも思い返せばずっと気を張ってきたから、いい気分転換になったってみんなで話していましたの」


「それはそれは。なにせ社員の士気回復を目的としているのが慰安旅行ですからね」


「社員?」


「うんと、まあお世話になってる人達ですね」


「そう」


 それからサラととりとめない話をしながら長湯をした。


 珍しくカドのない優しいサラだったのは風呂のせいだと思っている。

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