表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界のストーリーテラー  作者: バルバダイン
第一部 「イダヴェル戦乱編」
6/65

第四話 「就職・・・?」

調子がいいうちに書きまくりますよー

 正義の人、イケメン、そして脳筋とくるともはや生物災害(バイオハザード)レベルだな。


 手合わせをお願いしたいがうんぬんとか言っていたが、日本語訳すると「戦いたくなっちゃったテヘペロ」って話じゃないのか?


 はあ、仕方ない。死なないように戦おう。


「そうですね。わたくしも東へ向かおうと考えておりましたので、お手合わせ願えるとしたらこの機会を逸しては遠のきそうです」


「おお!受けてくださるか!感謝いたします!」


 バルテルミは大喜びだ。


「お手柔らかに願います」


「ご謙遜を」


 いやマジだってば。





 では早速と、案内されたのは練兵場。


 王城の練兵場は宮廷騎士団、王都騎士団、衛兵団の練武場がありやたら広い。


 王様の観兵用の席が設けられていたりす……うぇ??


 あやうく変な声出そうになった。


「グレティル王・・・」


 グレティル新王が一人観兵用の席に腰をおろしていた。


 バルテルミを振り向くとすごい角度で折れ曲がって、僕に頭を下げていた。


「申し訳ありません。実はメルレン殿との手合わせを陛下も是非ご覧になりたいとの仰せでして・・・」


「え、何故わたくしめのことなどを・・・」


 バルテルミの折れ曲がる角度が上がった。


 言ったな、こいつ言いやがったな。


「まあ、魔法剣士といったらもの珍しいかもしれませんね。陛下にお見せできるようなものではありませんが、よろしければお願いいたします」


「ありがとうございます!」


 バルテルミって偉い割に腰低いよな。


 そこが好感度高いんだけど。


 さて王様に拝謁する作法なんてわからないけど、適当にいくぞ。


 腰の剣をはずして目の前の地面に置く。


 片膝をついて頭を垂れる。


「グレティル陛下、お目通りがかない恐悦至極に存じます。わたしは古の森のグレイエルフ、メルレン・サイカーティスと申します」


「メルレン、楽にしてくれ。会うのは二度目であるな」


 二度目?


「パレードの最中が一度目だ」


 ああ!ゼフィアに思わず声をかけた時か。


 こっち見てたけど覚えてたのか。


「あの時は大事な祝賀式典にも関わらず失礼いたしました」


「よい、それよりも魔法剣士の技を修めていると聞いた。秘するものでなければ余にも見せてもらえぬか」


「陛下のお目にかけるほどの技ではございませんが、未熟なれどご披露させていただきます。技に秘するところもございません。理論とあとはひたすらに修練するだけのものでございますれば」


「楽しみだ」


 その頃になると練兵場は静まり返り、ところどころでひそひそと話す声が聞こえた。


 魔法剣士が珍しいのだろう。つか世界で2人だしな。


「手合わせの取り決めはどうしましょう」


 と、角度が元に戻ったバルテルミ。


 死なないようにしないと。


「では木剣の寸止めでお願いします」


 木剣でも当たったら死ねそう。


「了解いたしました。誰ぞ、武器を持て!」




 練兵場の一角、いつのまにか王様の周りにも宮廷騎士団の面々と思しき人間が増えてたりして、ギャラリーの多さに緊張してしまう。


(寸止めだし、怪我するのは嫌だけど怪我させてもマズいな。物理系の魔術はやめとこう)


 魔法剣士として使える魔術はそれほど多くない。


 へっぽこ剣士だったら補うために、中級剣士だったら上乗せするために、手練れならば場を支配するために魔術を組み合わせる。


 反射神経で魔術を使用するので、予めどんな魔術を使うのか決めておいたほうが使いやすい。反面不意を衝かれると、なかなか魔術での対応がしづらいという欠点もある。


 師匠は寝てても魔術使えるらしい。変態すぎる。


 さてと、いきますか。


 バルテルミは先に立っている。


 さすがに武人の顔になっている。


 本気出すなよお。


 向かい合って立つとプレッシャーで帰りたくなってきた。


 お互いに一礼して構える。


 バルテルミは片手の下段。


 防御的な構えだ。


 様子を見て反撃に転じるつもりか。


 油断してください、お願いします。


 僕は両手の中段、剣道でいう正眼の構えだね。


 審判役らしい人が声をかける。


「それでは・・・はじめ!」


 はじまったけどお互い動かない。

 それは空気が固まったような……ではなく、バルテルミは当初の予定どおり様子を見ていて、僕はどうやって仕掛けたらいいのかわからない。


 しばらくにらみ合っていたが、案の定僕が先に折れた。


(まあ、言っても試合だし。精一杯やって勝ち負けは二の次だ)


 とか中学生の部活動のようなことを考えて腹をくくった。


 仕掛けて反撃がきたらそれに合わせる、つまり後の先だ。


 嘘です、できません。


(向こうさんは魔法剣士を見たがってるわけか。何が出てくるかわからないビックリ箱に警戒してるといったところか)


 よし。


 無造作に歩いて間合いを詰める。


 バルテルミは攻撃範囲ギリギリで後ろへ下がる。


 そこで一気に踏み込む。


「ふん!」


 全力の踏み込みから中段の全力の突き。


 魔術もなにもない直線の攻撃。


 バルテルミは下段から跳ね上げて僕の突きを横へと逸らす。


 クルリと翻る切先、そのまま胴薙ぎに来る。


(あぶね!)


 何とか飛びのく。


 突っ込み気味で体勢を崩した僕に今度はバルテルミが迫る。


 ここから本格的な攻防開始。


 バルテルミはお返しとばかりに突きを放つ。


(うおわ!二段突き)


 一段目の突きはフェイントになる。


 完全にフェイントに引っかかって二段目の突きに対応できない。


 が、


空壁(エアウォール)


 二段目の突きが胸に当たる直前に魔術を発動。


 瞬間的にその部分に超高圧の空気の玉を作る。


 バルテルミにはクッションでも突いたようなボヨーンとした感触があったことだろう。


「これが魔法剣士の!」


「その通りです!」


 ひるんだ隙に更に仕掛ける。


幻手(ミラージュハンド)


 腕の幻影を作る魔術。


 これを使うと僕にも簡単に二段突きができます。


 しかしバルテルミはよく見切り、二段目を防御した。


幻手(ミラージュハンド)


 二段突きと違うのはこのように二段目を幻影にして先に突きを放ったり。


 防御される。


幻手(ミラージュハンド)


 二段の突きをまったく同じタイミングで打ち出したり。


 防御される。


幻手(ミラージュハンド)


 二段じゃなく四段突きくらいなら打てるところが魔法剣士ならではだぜ。


 防御される。


 て、全部防がれてるじゃん!


 バルテルミは一旦仕切りなおした。


「驚きました。予想以上です」


 こっちも初見でかわされるとはビックリだよ。


「全力で行きます」


 やめてくれー。


 そこからのバルテルミの攻めはまさしく怒涛。空壁(エアウォール)を混ぜながら防御していくものの切り崩されないのがやっとといったところだ。


「凄いな。バルテルミと互角に打ち合っているぞ」


 グレティル王、いや互角じゃないですよー。


「いやー、次はわたしと仕合ってもらえませんかねえ」


 てめこらウェズレイ!ふざけんな!


 外野も盛り上がっているが、バルテルミも盛り上がっている。


 目をキラキラさせながらどんどんギアを上げている。


 いやもうこれ無理だ。



 

 決めた、作戦変更。


 物理系魔術使わないようにしようと思ったけど使おう。


 ようは怪我させなきゃいいんだよ。


 セコい戦いさせたら魔法剣士の右に出るものはいないぜ!


 うん、自慢にはならないね。


 集中して防御をする。


 神経を研ぎ澄ましてバルテルミの呼吸を読む。


 無限に息を止めることはできない。


 無限に攻撃を続けることも出来ない。


「フッ」


 僅かだが、攻撃が緩む。


 酸欠に近い状態になったバルテルミが息継ぎをする。


 ここだ。


水球(ウォーターボール)


 バルテルミの鼻先に水の球を作り上げぶつける。


「うわ!ごほっ」


 息継ぎのタイミングで水を浴びせられたバルテルミは吸い込んでむせてしまう。


 我ながら卑怯だ。


(もらったー!)


 しゃがみこむバルテルミに木剣を振り下ろす。


 が、バルテルミはこちらを見もせず防御の為に木剣を掲げる。


(ノールックディフェンスですか!すげえ。しかしだ)


空刃(スライス)


 空気の刃を2つ、掲げられた木剣の裏側に発生させる。


 そしてその中間点を思い切り叩く。


 すると、バキッと音がした。


 てこの原理であっけないほど簡単にバルテルミの木剣が折れる。


「そこまで!」


 審判から声がかかる。


 よし!勝った!


 ……。


 あれ?勝っちゃった。




「見事なり!」


 立ち上がり拍手するグレティル王。


 しまった、勝ったらまずいだろ。


 なんか色々目立つ気がするう!


「魔法剣士の技とくと見せて貰った。是非褒美をとらせたいので後で謁見室に参るがいい」


「メルレン殿ー!今度は是非俺と手合わせしてくれー!」


 ぶんぶんと手を振るウェズレイ。


 はははと苦笑いで誤魔化す。


 そーっと振り返るとバルテルミはまだしゃがみこんでいた。


 やべー。こりゃショックでかかったかなー。


 と、思ったら。


「いやあ素晴らしい!」


 びよんという感じで跳ね起きる。


 おもわずびくっとしちゃったよ。


「感服いたしました。たいした腕前ですね!わたくしの完敗です!」


「いやいや、尋常の立ち合いでは到底かなわないところでした。苦し紛れに無作法な技を使ってしまい申し訳ございません」


「あれぞ魔法剣士の技ではないですか!戦場での作法に上等もなにもありません。立って王と民と国を護ってこその騎士です」


 おーこいつ結構柔軟性もある。


 プライド一辺倒の騎士じゃないぞ、ますます凄い。


「所詮奇術ですよ。次にやったらとても勝てるとは思えません」


「ご謙遜を。まだ手加減しておいででした」


 むーバレたか。


 しかしいきなり空刃(スライス)で目玉切ったりはまずいだろ。


「バルテルミ殿こそ底が知れぬと見えます」


「なんのなんの」


 武人トークをしながら和気藹々と引き上げる僕たち。


 しかし練兵場はどちらかというとシーンと静まり返っていた。


 なんか次元の違うものを見せ付けられたという雰囲気だった。


「何者なのだ・・・」


 呟きが聞こえる。


 しがないもの書きですよー。




 さて謁見室。


 そこには僕、グレティル王、王の侍従、大臣ぽい人、バルテルミ、ウェズレイが揃っていた。


 褒美はなにかなー。まあ妥当に現金な気がするが。


 貰ったら面倒なことになる前にとっとと旅立とう。


「メルレンよ、大儀であった」


「勿体のうございます」


「無礼ともいえる頼みをよく聞いてくれた。そして素晴らしいものを見せて貰った。改めて礼を言おう」


「ありがたき幸せ」


「これへ持て」


 侍従が進み出て袋を盆に載せて王へ差し出す。


 王は袋を取ると


「そなたの労をねぎらい褒美を取らそう」


「身に余る光栄に存じます」


 聞いたことがあるようなセリフ並べてるけど合ってるのか?


 とりあえず頭を下げたままにじり寄って袋をいただく。


 金貨10枚入ってそうだなー。


 これで路銀は確保したぜ。


 そろそろおいとましましょうか。


「さてメルレンよ、お前に野心はないか?」


 ん?何の話?


「野心でございますか?」


「お前の剣は我が国有数の使い手たるバルテルミを相手にして一歩も退かぬ。まさに見事というより他にない」


 勝っちゃったけど。


 でもどっちかというと押されてたよ。


「恐れながらおっしゃる意味がよくわかりません」


「剣で身を立てる野心があるのなら、我に仕えてみぬか?」


 は?


 まじで?と思ったら大臣さんもそう思ったらしく


「陛下!恐れながらこのような身許もわからぬような者を騎士に取り立てるなど!」


 と、速攻でつっこんだ。


「グレイエルフが他国の手の者というか?それにメルレンがわが国に害意などないことは余は知っておるつもりだ」

 

 にやりと王。


 なんのこと言ってんだ?


 だが、断る。


「この非才の身にありがたいお言葉なれど、わたしは探究の旅の途中。先を急ぎますゆえ」


 今度はバルテルミがびっくりした顔。


 受け入れると思ってたらしい。


「た、探究なれば騎士団に身をおいても為せます。むしろ何かしらの助力ができると思われます。どうかお聞き入れください」


「まあ待てバルテルミ」


 王が手を挙げ一同は黙る。


「悪いが皆席をはずしてくれ。ちょっとメルレンと二人で話したい」


 大臣が色めきたつが結局押し切られて全員退出する。


 いや僕も退出したい。


「メルレンよ。まず聞くが探究の旅は目的地などあるのか?」


「はい、千年森の大賢者オーベイ・ファスハンディルに会って聞きたいことがございます」


「なるほど、それはやや長旅になるな」


 王はふむふむと頷いて続けた。


「本題に入る。お前は知っておる気がするが、今朝バルディス宮廷騎士団長ゼフィア・エンフィールドが都を離れた」


 知ってる。


「何故わたしが知っていると」


「お前はパレードの時、ゼフィアに声をかけたではないか。あれはまさに余の心を代弁した言葉であった。しかし余から言葉をかけるわけにはいかなかったのだ」


 え?どういうこと?まさか王って……


「差し出がましい真似をいたしました。陛下はゼフィア様のお心をご存知でおいででしたか」


 グレティル王は笑う。


「当たり前だ。余とて木の又から生まれたわけではないわ。しかもゼフィアのように真っ直ぐな性根の者の心を見抜けないでどうする。しかし、余は余の意のままに動くことは許されん。余とてゼフィアの思いに応えてやりたいのはやまやまであるが、それは許されぬことだ」


 そかー王って朴念仁じゃなかったのか。


 国のために私情を押し殺したわけか、なんか見直したな。


「ご側室というわけにはいかなかったのでしょうか」


 あえて聞いてみる。


「歴代で側室をもうけた王もいないではないがな、だいたいは正室と近い格にする。これは揉め事を防ぐためであろうな」


 揉め事というと後継争いか?


 双方男子を産めば実際揉めるかもしれないが、格が低い方のみ男子を産んで姻戚家の地位が逆転したらそれはそれでしこり残しそうだな。


 また格の低い方にばかり王の寵愛が集中しても揉める。


 格の近いところが側室となれば、先に産まれた男子に継承権が優先されることで恨みっこなしになる。


 まあそれでも他の王子を亡き者にしようとする謀略とかもありそうだけど、それはもはやどんな条件でもあり得るしなあ。


「それにゼフィアは余とは血が近すぎる」


 ふむ、そういえばエンフィールド公爵家は昔の王の弟が創設した家門で、二代前には王妃も出している。


 リスクが高すぎるってわけだな。


 王はそこら辺を弁えてた。ゼフィアは理屈では納得出来なかったんだろう。


「お前がなぜゼフィアにああいった声をかけたかはあえて聞かぬ。あの時のお前の顔はそれを許さぬように見えた」


 むーなんも言えねえ。


「そこで先ほどの話になる。結果わが国は騎士団長を欠いてしまった。繰上げでバルテルミを代行に任ずる予定だが、戦力の低下は否めない。だからお前の力が欲しいのだ」


「いや、そう申されましても・・・ウェズレイ殿や有力な騎士の方々もおいでですし、ゼフィア様の穴は充分埋められるかと思いますが・・・」


「ゼフィアは国民からの人気、信望とも厚かった。諸国を歩くような名目をつけたが、人の口に戸板は立てられぬ。真実はやがてそれとなく広まろう。その時に国民を失望させたくないのだ」


「それはわかりますが、それとわたしとどのような関係が・・・」


「お前とバルテルミの立ち合いを見た兵や騎士達を見たか。一様に息を呑み、度肝を抜かれていたぞ」


 王はおかしそうに笑う。


「ゼフィアに次ぐ実力のバルテルミを手玉に取ったグレイエルフの魔法剣士、これはゼフィア不在の不安を払拭するに足ると思う」


 手玉に取ってねー!


 しかしこれはなんだか凄いプッシュを食らっているぞ。


 どうやって断ったらいいのだろー。


「オーベイの元へ向かうなら馬と供もつけよう。正式に騎士とならずともよい。客分という扱いでも構わぬ」


 うわーうわーうわー


「禄もなるべく弾もう。月に金貨50枚ではどうか」


 年収六千万ですかーーーー!


 押されるのには滅法弱い。


 しかも断る理由がうまく出てこない。


 えーい、どうにでもなりやがれ!


「そこまでおっしゃられるのではお断りするわけにもいきません。未熟な技と非才の身ではありますが、グレティル王に我が剣を捧げます」


「おお!承知してくれるか!」


「ただし客分ということでお願いします」


 こうして現実世界より早く、現実世界で内定していた年収の約十五倍強で、僕は異世界で就職しました。


 目立ちすぎな気がして怖い。


そ、そろそろヒロイン(候補?)登場させたいなあ。

アネカ?いやどうだろ・・・

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ