第三十二話 「荒城の月」
よし金曜更新を取り戻しましたー。
なにせ明日は雪すら降ろうって中で釣りいきます。
凍死するかもです。
生きていたらまた来週会おう!(大袈裟です
アリエン・ワーデルガー視点
バルディスの部隊を捜索して撃破する作戦は失敗だった。
カッセル五百騎長の部隊が完全にやられてしまって全員馬車で送られて帰ってきた。
兄上が所属しているラウザー五百騎隊をはじめ他にも騎兵を使って、それこそ血眼で敵を捜索したけど綺麗さっぱり消えていた。
サイレン将軍は考えた作戦が失敗してとても悲しそうだった。
ウォーレンナック大将軍にも結構叱られたらしい。
僕は兄上が無事だったことにほっとしたけど、サイレン将軍が悲しそうだったのでつらくなった。
「大丈夫ですか?」
「ああ、わたしは大丈夫だよ。心配させてすまないね、アリエン」
将軍は少しだけ笑っていた。
「なぜ敵は捕らえた兵を殺さなかったのでしょうか」
「うん、いくつか考えられるね。まずは人道的な考え方の指揮官だということ。これは無益な殺生はしないという合理性も含めてだね」
「殺せば後で仕返しされなくて済むような気がします」
「それも一面的では正解だね。ただ、負けて帰ってきた兵に対して軍はあまり優しくないんだ。彼らにはもう表立っての出番は無いだろうし、15万のイダヴェル軍には代わりはいくらでもいる。実際負けて帰ってきた人間がいるという事実が他の兵にもよくわかるのは戦意の低下という効果もある」
「敵はそこまで考えたのでしょうか」
「さあね。でも一筋縄ではいかないことには変わりないし、敵の概要を把握するという初期目標まで達成させてくれなかった」
「でもカッセル隊長は敵は3000だと」
「それを鵜呑みにするわけにはいかないよ。多く見せているのか少なく見せているのか、狙いがわからない」
サイレン将軍は再び考え込んだ。
最近は参謀の人達よりサイレン将軍の方が仕事をしている気がする。
「将軍、お茶をもってきましょうか?」
「ああ、頼むよアリエン」
山のような書類と格闘するサイレン将軍を、僕は心の中で応援するしかない。
メルレン・サイカーティス視点
馬刺しを食べたくなったが醤油がない。
大蒜や生姜はあるのだ。
戦場で手に入るものではないが、街では比較的容易に入手できる。
醤油醤油醤油醤油醤油醤油醤油・・・
欲しいったら欲しいのー!
「リュタンー」
輜重隊に行き暇そうなリュタンに声をかける。
「なんですかあ?」
「あの手帳貸してください!」
「テチョウ?ですか?」
「なんでしたっけー、あのー大賢者に連絡するアレですよ」
慌てていたので大賢者への敬称が抜けている。
構うか。あんなもんクソジジイでいい。
「ああー『双子の本』ですね」
「そうそうそれそれ!」
取り出された本を借りるとシャープペンで書き込む。
『メルレンです。』
・・・・・・・・・・・・・・・・遅い。
10分待ったが返信がない。
既読スルーとかしてたら絶対いじめてやるぞ。
結局1時間経って返信が来た。
『なんじゃ自己紹介か?』
くっ、マジ殺してえ。でもジェントルに自制。
『少々大賢者殿のお力をお借りしたく思いまして』
『麹菌じゃろ?』
はあああああああああああ!!!!!!??????
なんだコイツ。まじで気持ち悪い。確かに醤油を作るのには麹菌が必要だから製法を書いた本を召喚(という名の万引き)してないか聞こうとは思ったけど・・・
『大賢者なめんな』
おい・・・
『里心がつきおったか。下半身はエルフのようにヘタレておるようじゃが、胃袋は強欲なままか。自制とかできんのか。呆れたもんじゃ』
くそううう、なぜこのクソジジイにここまで罵詈雑言の限りを尽くされなければならんのだ。
本破ったろか。
『欲しいんじゃろ?麹菌』
なに!?
『まさか、大賢者殿は麹菌をお持ちで?』
『なんせ暇な年寄りじゃからのう。いつかお箸の国から来る奴が欲しがるかもなあと思って東より寒天を取り寄せ、ご丁寧にガラスシャーレーまで作って、培養した麹菌からいわゆるキイロコウジカビの菌群を分離培養したものを種麹として持っておるが、それがどうかしたか?』
なんだとう!?
作り方調べてサイカーティス商会で工房作って、麹の培養研究とかして醤油作って刺身食おうと思ってたのに、もう麹がある・・・だと・・・?
『欲しいのか?』
欲しい!絶対欲しい。しかし簡単に頭を下げていいものなのか!?
『しかしのう、結構苦労して作ったこの種麹を内心クソジジイ呼ばわりするような奴にくれてやるには忍びないのう』
見透かされてる!未来だけではなく心までも!
『せめて心の底から、お願い申し上げます!大賢者様!と土下座でもすれば分けてやるのにのう』
『お願い申し上げます!大賢者様!』
醤油の前にプライドなど不要。
いきなり土下座した僕にリュタンは目をまんまるにしていた。
最近よく全力で驚かれるな。
『お主の誠意は充分に理解した。お主のところの執事に麹は送っておく。味噌でも醤油でも存分に作るがよい』
『大賢者様に深く感謝いたします』
『うむ。その心を忘れるなよ。次のお願いは三跪九叩頭の礼をすれば聞いてやらんでもないぞ』
僕は仁祖ですか・・・
何か色々喪った気がするが大体OK。
・・・ちょっとまて??
でもワインとかも酵母使うんだよな。
ウイスキーも飲んだぞ?
・・・・・。
「リュタン、ちょっと聞いていいですか?」
「はい~なんなりと」
「酵母って知ってます?」
「お酒作る時に使う菌ですよね」
「作り方知ってます?」
「いえ~、でも酒屋さんなら知ってると思いますよ」
・・・これはイーストの分離方法と麹の分離方法は違うかもしれないが、そういった細菌の培養技術はこっちにもちゃんとあるじゃねえか。
米さえあればなんとかいけたんじゃねえか??
く、じじいにハメられた気がする。
あいつ僕の土下座が見たいがために麹造りとか手の込んだことしたのかも。
いや絶対にそうだ。
くそう、醤油の製造がはじまってもアイツには届けないようにしよう。
シマアジ釣って活け造り食ってやる!
あ、また食欲が沸き起こってきた。
重傷者を後送する部隊に王都のカーマインさんへ大賢者からの荷物と取り扱い、さらには醤油製造の準備について手紙をしたためた。
麹は作り方さすがにわからないのだけど、醤油は前に自作してる人のHP見たから覚えている。
炒った小麦と良く煮た大豆を半々で混ぜ麹菌を混ぜる。
ぬるいくらいの温度で発酵させ、熱くならないように広げたりして放熱させながら3日つきっきりで温度管理。
固まってきたら手で揉んでほぐす。
全体的に色が変わってきたら、大豆+小麦の1.5倍くらいの量の20%塩水に漬け込む。
時々攪拌しながら腐敗に注意して醗酵させる。
2ヶ月醗酵させたら、その後半年から1年寝かせてから布で絞る。
絞り汁を沸騰しないように加熱して殺菌し、煮沸消毒した瓶などに入れれば出来上がり。
よし、全然手間がかからないぞう(涙
実際のところカネの力で醤油製造工場を作らせるつもりなので僕は手をくださないのさ、ふはははは。
なので工場作る前に麹の繁殖とレシピの検証、製法の確立を頼んでおいたのだ。
早ければ1年後には試作醤油で一杯やれる。
ん?麹があれば日本酒も仕込めるのか?いや焼酎もいけるな。
ワイン+刺身はダメだろう。
となればやはりここは大賢者に・・・
いやいや大賢者様にお願いして詳しい日本酒と焼酎の仕込み方のレシピを召喚して貰うしかないな。
みなぎっっっっってwきwたwぜーーーー!
脳内がだいぶおかしなことになっていたけど、漸く自分を取り戻してふと見るとリュタンがいろいろと残念な感じで僕を見ていた。
「失礼しました」
「いえーちょっとびっくりしましたけど、メルレン様ってエルフぽくないですよねー」
だって人間だもの。
「わたしもとても魔術師には見えないってよく言われました。今でも魔術師かどうか微妙な気がします」
「リュタンは魔術師だと思いますよ。それも一流、いや1.5流かな」
「ふふふ酷いですよー。あ」
「どうしました?」
「いつの間にか呼び捨てで呼んでくださってます」
リュタンはなにやら嬉しそうにしている。
そうか、どうもこいつは娘ってかんじが強くてなあ。ついつい呼び捨てになってしまったね。
「もうリュタンもわたしたちの仲間ですから」
と言うとリュタンはまた嬉しそうにしていた。
「なかまなかま」
口の中で噛み締めるように呟いている。
「あ、これありがとうございました」
持ったままの双子の本を返そうとページに目をやると、こんな文字が浮かび上がっていた。
『なんじゃ下半身も強欲になってきたか?この雑食エルフめが。欲しきゃやるぞ、そんな不肖の弟子は』
やかましいわクソジジイ。
「久しぶりだな!メルレン将軍」
将軍言うのやめい。
考えてみればアニキだお頭だ将軍だと個人的に適当な呼び方されてるな。
ここは何かに統一した方がいいのではないだろうか。
主に格式(厨二)的な意味で。
やはり騎士爵とはいえ貴族の一員なのだから、やはりメルレン卿?
で、王からは
『卿の言やよし』
って言われるのか・・・?
うん、銀河で英雄になっちゃいそうな気がするからやめよう。
ウチの王様あんなに野心的じゃないし。
「わたしは将軍ではありませんよ、ジレコ伯爵」
「さきほど報告を聞いたぞ。さっそく大暴れしとるようじゃないか。やはりわたしもそちらに同行して斬りこんでやればよかった」
ダナードとこの人並べといたら、結構露払いになりそうだなあ。
「大暴れといっても敵勢力は目に見えるほども減っていませんよ」
「100の兵で15万の敵が壊滅するようでは、バルディスにとっての脅威はイダヴェルではなく貴公だということになってしまうな」
「ははは。まあ実際手段を選ばない軍がイダヴェルであるとはいっても、まだまだ不慣れで無垢なのですよ」
「貴公からみれば赤子に等しいということか、怖いのう」
それだと僕がド外道みたいじゃないか。
「戦とは本来もっと非情で冷徹です。十王国の人々は『命のやり取りをするのだから正々堂々と』と考えてるフシがありますが、結論からいけば間違いです。手に掛けるのが兵だろうが民衆であろうが殺しに過ぎません。上等も下等もない。いかに敵を欺いてたくさん殺すかです」
「それだとイダヴェルの悪行と変わらぬな」
「無論、士気高揚だとか馬鹿な理由で民衆を手に掛けることなどありえません。われわれの相手はあくまでも兵士、戦って死ぬことを覚悟して戦場に来た者です」
「そこが譲れない部分というわけか」
「というよりは大前提です。そこを曲げては単なる殺戮者です」
「違いない」
ジレコ伯爵は地図を広げた。
別行動になった間に仕掛けた大掛かりな罠だ。
それはまさに絶妙な地形といえた。
「貴公の助言に従って選定し準備したのがここだ」
ジレコ伯爵領全体の地図を広げて×を書き込む。
地形は理想的、しかし。
「脇道ですね」
「うむ、こればかりは仕方ない。貴公の言うような地形がそもそも主要街道にあるはずもないからな」
それはそうだ。
「ただ準備は滞りなく完了しておる。これで後は敵を誘い込むだけなのだ」
ふむ。
「華容道でいきますかねえ」
「カヨウドウ?」
ここでいう華容道とは古代中国の歴史物語『三国志演義』で登場するエピソードだ。
曹操は劉備、孫権の連合軍に赤壁の戦いで敗れ撤退していた。
敵の追撃により兵は散り散り、大将曹操も僅かな手勢を率いるのみだった。
ここで華容道というあたりに差し掛かり、かたや平坦な広い道、かたや道幅の狭い峠道。
おまけに峠には煙が焚かれている。
これを見て曹操はあえて煙のある道へ向かおうとする。
配下がその理由を尋ねると
「兵法に虚実あり、これは敵の待ち伏せが平坦な道にあるのを隠すための策略である」
と言ったそうな。
ところがそんな単純なわけはなく、中途半端に深読みして煙のある方に来るとふんだ劉備配下の関羽の読み勝ちで曹操はあっさりつかまってしまう。
この後以前の恩を返すために曹操を見逃して諸葛孔明に怒られるとか、史実である三国志の正史では曹操はこんなヘマをせずあっさり撤退しちゃうとかあるのだが、そのへんは置いておく。
さて、関羽は待ち伏せをしている方にこさせるためにこれをやった。
僕らは主要道に火を焚いて敵に深読みさせるわけにもいかないので、空城の計も併用することにした。
たぶん、僕らの搦め手は多少なり効いているはずだ。
これがまるっきりのバカならかからないけど、ちょっと警戒しはじめた、ある程度のオツムの人ならこれでいけるはずだ。
脇道はジレコ伯爵の居城の裏山みたいな脇道を登っていった先にある。
道幅はあまり広くないが、軍が進むにはなんとかなる程度か。
山の峠を越える道で途中から谷あいに入り、切り通しのような狭隘な道を抜けると胃袋のような形の盆地に出る。
古くは小火山の火口であったのかもしれないが、今は噴煙があがることもなく森となっており、やがて入口側と似たような切り通しが姿を見せ再び山道に続く。
ゆるやかに上りながら、ゆるやかに曲がっている森の道。
その長さは約3km。
木は落葉樹が大勢を占め冬枯れしている。
グレコ伯爵はこの1月半ほどの間、森の道に近いところを中心に可燃物を隠して積み上げ、皮袋に油を詰めてその中に置いて回った。
袋に入れておけば熱によって燃えて引火するし、多少置きっぱなしにしておいて揮発してしまうことがない。
そう仕掛けたのは大掛かりな火計だ。
乾坤一擲というか、こうまで大仕掛けしないと敵の数が減らせない。
こんな仕掛けをできる場所はここともう一つしかないので、なんとしても引っ掛けたい。
というわけで火計、空城の計、華容道の三段仕掛けだ。
敵の進軍のペースに合わせて準備を進め、いざ状況開始である。
空城の計を仕掛ける為に主要街道に面したジレコ伯爵の居城に僕が単独で向かう。
事前の打ち合わせに従って居城の門は大きく開け放たれ、これ見よがしに食糧などの物資が野積みで積み上げられている。
中はまるっきりの無人だ。
僕は門の高楼に登ると、バックパックからハープリュートを取り出して石塀に腰掛けた。
「あとは敵さんの到着待ちですね」
メルレンはエルフらしく楽器の心得もあったようだ。
ハープリュートなら弾けるらしかったので、調達して練習として皆の前で昨晩披露してみた。
曲目はどうしようか悩んだが、メルレンのレパートリーは馴染みがなかったので、不慣れながら楽譜を書き起こした。
「えー、こほん。これから披露いたしますのは遥か大陸を離れた東方の島国に古く伝わる曲です。拙い腕ではありますが、どうぞお聞きください」
酒盃を手に皆は聞く姿勢だった。
「題名は『荒城の月』」
僕は弦に手をかけてマイナーコードを紡ぐ。
「はぁる~こう~ろう~の~はぁ~なぁ~の~え~ん~」
メルレンは声もいい。中性的で透明な声が物悲しい詞を朗々と歌い上げていく。
日本語で歌っている。
歌詞の意味など誰もわからない。
しかし、歌が進むにつれてそこら中ですすり泣きが聞こえ始め、歌い終わる頃には大半の者が涙を流していた。
そして喝采が巻き起こった。
歌もいけるのかー、マジでメルレンさん万能だなあ。
「メルレン殿、これはいかなる内容の歌であろうか」
バクスターが顔をぐしゃぐしゃにして聞いてきた。
「そうですね。こうして見上げる月はいつまでも変わらないけれど、人やエルフの世の営みなど儚い泡のようなものだ。今は荒れ果てたこの城も昔は栄えていて、こうして月を見上げて宴を催している者達がいたのだろう。というような歌ですね」
それを聞くとバクスターも周りの人間も、またぼろぼろ泣き始めた。
「然り!然り!こうして人と人が命を奪い合い、領土を奪い合う。その行為のなんたる不毛なことか!今宵の月もさぞ笑っていようぞ。我らが皆滅んでも世界の営みにはなんら及ぼさぬ。なんたる些事であろうか」
「いいえ。われわれは確かに矮小ですが、それゆえに懸命でなくてはなりません。われわれが虫の営みをみて笑わぬのと同様に月もわれわれを笑ったりはしないでしょう。己の信じる道を往き、事を成すことがやがて世界を形作っていくのです。無駄で無意味なものなどこの世には一つもありませんよ」
なんか『人生とはなんだ!?』状態になった中学生を諭しているような気分になったが、バクスターに対してこうかはばつぐんだったようだ。
「メルレン殿ーー!」
がばっと抱きつかれた。
「我輩、一生ついてゆきますぞーー!」
いや、王についてかないとダメだろ。
好評につき演奏会は続いた。
悪乗りして『同期の桜』とかもやった。後悔はしていない。
テンションも上がったので、その後はまたなし崩し的に飲みまくって全員倒した。
誰か僕を倒せる勇者はいないものか。
そして明けて作戦当日。
酒が残ってる者もいたが、だいたいは午後からエンジンかかってくるはずなので問題なかろう。
暇を持て余し、ルーズリーフに話を書きまくっていたら午後の日差しもやや傾いてきた。
すると街道の向こうから遂に大軍勢が見えてきた。
「いらっしゃいませ~」
いつも読んでくださってありがとうございます。
先週かな?
TOPページの更新情報で短編書いてた作家さんのエッセイで、「ポイント獲得のために書き溜めて毎日更新する新連載を投下する必勝法」についての賛否というか考察が書かれていました。
なんと!そんな技があったのですね!?w
まあポイント増えると嬉しいですが、今だって結構嬉しいですしね。
まあ人は人。僕は僕。
読んでくださる方が一人でもいればモチベーション上がります^^
これからもよろしくお願いします^^
・・・いや新規さんも大歓迎ですよ?w(結局w




