第二十七話 「一騎打ち」
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
今年の目標は第一部くらいはちゃんと完結させたいですね。
いつも愛読ありがとうございます。
お気に入り、感想、評価、応援、罵倒、つっこみ、誤字や矛盾の指摘などなんでもお待ちしております。
イラストとかも・・・
いやそれは高望みかあ。
しかし自分が美術の成績2だったのでw
今回はひさびさに残酷なシーンがありますので、苦手な方はご遠慮ください。
ただ、必要以上にキツくはしませんので・・・
では今年一回目の更新です。
どうぞ~
「これはなんというか・・・」
僕はちょっと困ってしまった。
予想以上にジェルケルハイム砦の状態がいい。いや良過ぎる。
天然の要害を抱えて、要塞といえるほどに堅牢な構造、補給物資は潤沢ときたもんだ。
これでは色気を出したくなる。
さあ悩む悩む。
ブレない僕か、柔軟な僕か。
まずメリット。
緒戦で様子見なうちに警戒心を抱かせることができる。
少しでも有利な状態で兵数なり、士気を削れる。
デメリット。
危ない。
こんなんで僕は本当に軍師的な立場なんだろうか・・・。
よし決定。
「一戦かましますか!」
普通逃げると思ったでしょ。
削るうんぬんもあるんだけど、今のうちに練習することもあるしね。
まずは形だけでも抵抗しないと不審に思われるかもしれない。
「かますって・・・いつもどおり変な魔術でも撃ちこむんですの?」
おい。変って言うな。せめてマイナーとか言ってくれ。
「いえ、あまり早い時期にこちらに魔術の心得のある者がいると知られるのも得策じゃありませんので、魔術なしまたはバレないように使います」
「というと具体的な作戦があるんですね?」
「いいえ、これから考えます」
「・・・・・」
サラの好感度が下がった。別にいいけど。
砦には作戦会議室があったので、主だった人を集める。
守備隊長さんも参加。
「このとおりジェルケルハイムは堅牢な砦だ。敵の足止めくらいはできると思うが」
「足止めに意味があるならしますけど死ぬ日が早まるだけでさしたる効果はありません。籠城というのは援軍があってはじめて成立する戦法です。立て籠もっても手詰まりです。ましてや敵の魔法兵に戦略級の合成魔術の準備する間を与えてしまっては誰ひとり逃げられなくなってしまいます」
バクスター挙手。こいつ質問多いね。
「では基本無血開城という次第となりまするか?」
「う~ん、悩みどころですね。いずれこちらが追撃するかもしれませんので、その時に防衛拠点とされるのを防ぐために焼いてしまうか・・・」
目をむく守備隊長。
「しかし!国境防衛の要ともいえるこの砦を失っては今後の防備に問題があります!」
「うん、そこはまた作ればいいと思いますよ」
「むう・・・」
続いて珍しくランベールさん。
「しかし砦は南面に防御の指向がされていますので、北側から侵攻する場合にはさほど強固ではありません。物資の節約また今回の作戦での破壊等の手間を考えても無理に廃棄する必要はないと思われます」
うん、一理あるね。僕はうなずく。
「そうですね。崩落させるような罠でも仕込んでここで何百人か潰してやろうかとも思いましたが、費用対効果からすると割に合いませんね」
「費用対効果?」
「ええ、かかるお金と結果が見合わないということです。これだけの砦を壊して再建することを考えると、敵軍の1割弱または魔法兵団の大半を戦闘不能にしなければなりません」
ちょっとみんな口を噤んでいる。
あれ?なんか目が冷たいよ?冷血漢扱い?
冷徹な計算とかしないと戦争に負けちゃうよ?
「結局戦争の勝ち負けというのは初期の目的を達成する、阻止するということで決します。この場合敵の目的はバルディス王国の制圧とマガニアへの侵攻または橋頭堡の確保です。つまり、バルディスを制圧した時点で補給線が確保されており維持に必要な戦力が残されている必要があります。我々は敵の絶対数を減らすことで敵の侵攻の意義を失わせることが出来ます」
まわりを強く見渡す。
「われわれの被害は全滅しても200あまり。正直戦局には関係ない数です。さすがにこの数では敵への有効な戦術はありません。数量にダメージをあたえられないのであればダメージの質を変えればいいのです。すなわち士気であり、疲労であり、また指揮系統です」
説明しながら考えをまとめていく。
「ここは一騎打ちですね」
偵察に出た兵からの報告が入る。
敵はちょうど渡河作戦を終えつつあったらしい。
おしいなもっと早く知っていれば上流にダムでも作ってやったものを。
いや資材も労働力も期間もないな。まして国境であれば敵に見つかる可能性も高い。
川かー。王都の手前の川の橋を全部落としておいて水計仕掛けてみようかね。
布陣はやはりみわたす限りの大軍という形容で、数にまかせて堂々としているらしい。
先鋒はチェスター将軍というそうだ。・・・知らん。
大軍ということで陣形の組みなおしにも相当かかりそうだ。
ここまでだいたい3日というところか。
せっかく豊富な籠城可能な物資だが、輜重隊中心に積載していく。
リュタンの乗るスペースがありますように・・・
撤収の準備を急がせつつ、いよいよ出番になりそうな霧断丸を手入れしているとダナードが来る。
「隊長」
「なんでしょう」
「やっぱ、いきなり隊長が出るのはどう考えても下策だとおもうっス」
「でしょうねえ」
「じゃあなんででスか?」
一騎打ちと言った時の反対の嵐といったら凄かった。
志願者がダナードをはじめ、バクスター、ダンスタン、守備隊長まで。
ほぼ全員が反対の意志を示していた。
それらを僕は
「いやでもあなたがた僕に勝った人いないじゃないですか」
と一蹴。
サラとかは寝所まで反対しにきてたな。
ただ一騎打ちの流れを考えると、切り抜けられそうなのが僕しかいなかった、というだけの話だ。
「えとですね、まず一騎打ち自体ですが、これは受けて貰えるはずです」
「舐めてきてるからっスか?」
「ええ、渋るようなら挑発すれば必ず受けるでしょう」
「それは同意っス」
「で、相手のチェスター将軍ですが強いですか?」
「ええ、メニヒの配下では1、2を争うと聞きます」
「なるほど。でもこれもわたしが勝つでしょう」
「断言でスか。根拠はなんスか?」
「本気出すからですよ」
僕が笑うとダナードは苦笑した。
「参ったス。でも自分もチェスターに遅れをとる積もりはないっス。何故自分じゃダメなんスか」
「うん。問題は一騎打ちの後です」
「後?」
「ええ。チェスターを殺せば指揮系統にダメージを与えるという目論見は成功します。ただ、相手側としては一方的にやられて黙っているとは思えません」
「まさか・・・」
「相手は『騎士の誇りなんか一銭にもならない』と公言しているイダヴェルですよ。勝者への尊敬や尊重などはないと思っていいでしょう。おそらく何千という矢が飛んでくるか何千という兵に囲まれるか」
「それなら尚更行かせられないっス!何考えてるんスか?自殺じゃないっスか」
ダナードは珍しく興奮して立ち上がる。
「わたしなら大丈夫です。いざとなれば魔術使いますので。こんな緒戦で大事なみなさんに怪我なんかさせられません」
と言ったものの僕の自信の根拠は全く別のところだった。
チェスターなんか知らん。
これだ。
知らないということはどう考えてもモブだ。
おそらくレイスリー・プロガーンに匹敵する腕前のメルレンがモブにやられることはありえない。
そんな根拠といえるようないえないようなものだった。
しかし、僕は結構自信満々だった。
「まあまあ伊達に隊長やってるワケじゃないんだっていうところを見てくださいよ」
「しかし・・・」
納得できない様子だったが、ダナードはそれ以上は何も言わなかった。
次はリュタンだった。
「本当に大丈夫ですか?」
「ええ。なんとかなると思いますよ」
リュタンは最近輜重隊ともうまくやっている。
これは本人が積極的に周囲に関わっていることで、周囲の認識が変わってきていることが大きい。
それでさらに本人が明るくなるという良い循環だ。
「メルレン様ならわたしと合成魔術を使えるのではないでしょうか」
もう一個火山つくるのかー。
「うーん、できるかもしれませんがやめておきましょう」
「どうしてですか?わたしなら平気ですよ」
必死な目で訴えるリュタン。トラウマを押してでも魔術を実行したいという。
「不確定要素が大きいです。天変地異の魔術は火山ができるだけとは限りませんから」
「え?そうなのですか」
そうか、リュタンはあれ一回しか使ったことも見たこともなかったなあ。
「ええ、一応古い魔術書にはいくつか例が書いてあった筈ですが・・・」
「すいません、わたしが読んだ魔術書には『禁呪でありみだりに使用するなかれ。恐ろしい災厄をもたらすであろう』としか」
そんなの書いてあったら使うなよ・・・
「そ、そうですか。他にも過去の例としては何もかも凍りつく氷土が大地を覆い数年間付近の気候が変動したとか、複合竜巻に数倍する巨大な竜巻が敵も味方も天高く巻き上げて何万人もが一瞬で死んだとか、突然地面が崩れて周囲が海になったとかだいたいロクでもないことが多いですよ」
「え・・・」
絶句する、リュタン。
「火山がまだよい方だったのですか?」
いや、いいかどうかは別として・・・
「禁呪は禁呪たる理由があるんですよ。今回はわたしに任せてください。かっこいいとこ見せちゃいますよ」
リュタンはしばらく呆然としていたが、やがて微笑んだ。
「メルレン様はいろいろ不思議な方ですね。わたしはグレイエルフというのはお師匠様のように他人に関心がなくて、どちらかというと冷たいイメージなのかと思っていました。いっぱい迷惑をかけてきたわたしは、まわりの人に責められることが多かったので、そんな冷たさすら心地よかったんですけどね」
自嘲気味。なかなか完全には脱却できないか。
「まあ大賢者殿は相当変人ですが、グレイエルフってのはそんなにイメージ悪いですか?」
「いえ、悪いというかなんというか世俗との関わりを嫌うというか・・・人間を見下していますね」
長く生きてるとロクな大人に育たないってことだな。
「でもメルレン様は、わたしを分け隔てなく扱ってくださったり、こうして国同士の戦争などというものに積極的に関わってくださいます」
まあグレイエルフじゃないしね。
「グレイエルフにも変わり者はいるってことですよ」
「わたしにとってはとても貴重で大事な方です。どうかご無事で」
うんうん。リュタンは前にくらべてしゃっきり喋るようになってきた。
天然なのかと思ってたけど、コミュニケーションが苦手だっただけなのかもな。
任せてください。頑張っちゃいますよう。
見渡す限りイダヴェル軍。
さすがにちょっと身震いがきた。
しかしそれはさすがに誰しも同じだったようで、一同息を呑んでいる。
「これに立ち向かおうってのは正気とは思えませんね」
「そんな冗談は笑えませんことよ」
サラである。
「まあわたしも含めてこんな大軍を目の前にすることもそうそうないでしょうから、この際われわれの敵とはどのような存在か目に焼き付けておくのもいい機会かもしれません」
「余裕ですのね」
「いえいえ内心どきどきですよ」
はあ、と溜息をつくサラ。
「こういう時に頼りになるのはもう充分わかっておりますけど」
ぐっと両手で僕の手を握り締めるサラ。
む、不覚にもどきっとした。
「無事で帰ってこなければ、ここにいる皆の命運も窮まるということをお忘れなく」
ここにおいても責任を優先させるサラは素直に偉いと思う。
「その時は隊列など気にせず最速で逃げてくださいね」
「輜重隊などは速度が出ません。それを守りつつ撤退するのは至難の業であるとわかっているでしょう?」
それは敵も同じだが、本気で追撃に出られたらつかまる。
「大丈夫、逃げる準備だけは万端にしておいてください。ここからはそればっかりですから」
「とにかく・・・無事を祈っております」
「・・・ありがとう」
チョロイン・・・とは呼ばないでおこう。
さて一応騎士っぽく鎖帷子の上になるべく軽い騎士鎧をつける。
チョバムアーマーもつけていないし、軽騎兵と騎士の間の中途半端なかんじだ。
「ではいってきまーす」
「か、軽すぎますわ!」
サラ、つっこみありがとう。
皆に苦笑されつつ出発するあたりは、この隊のユルいかんじがよくあらわれているなあ。
隊旗もなく、飾りのついた騎兵槍もなく、細身の剣(霧断丸)一本でふら~っと出かけていく様子はきっと異様に見えるんだろうね。
「それじゃあ開門!」
緊張はない。恐らくメルレンのせいだろう。
体中に張り巡らされた感覚は「できる、問題ない」と脳に訴えてきている。
まるで物見遊山にでも出かけるように僕は一騎打ちに向かう。
ちょうどタイミングが悪かったようで、いわゆる鬨の声が聞こえてきた。
「あらら、無策で出すぎたかな」
見ればイダヴェル先陣は重装歩兵を前面に立てて悠然と進撃を開始したところだった。
これはもしかして僕が出ていって一騎打ちの名乗り上げても気づかれずに踏み潰されてしまうのではなかろうか。
まずいなあ。引き返して逃げたほうがいいかな。
ダルタイシュみたいに大盾構えた重装歩兵を盾ごと両断して前進を止めるとかは無理だしなあ。
霧断丸の切れ味ならば何人かは斬れそうだけど、進軍を止めるまではいかない。
さて・・・
すると轟音がした。
イダヴェル先陣の手前に土煙があがる。
見ればジェルケルハイム砦の城壁に一条の煙があがっている。
大砲だった。
守備隊長と何人かが、一門きりの大砲に取り付いて動き回っている。
この世界の大砲は非常に出来が悪く、弩弓や発石車のほうがまだ戦力として期待できた。
大砲自体が重く取り回しや移動が困難で、照準はだいたいの見当でしかなく、一発撃ったら砲身の清掃が必要で次弾装填に時間がかかる。
要するに狼煙のような、景気づけのような役目しか果たせない。
しかし、この場で敵の足を鈍らせることには成功した。
GJだ、守備隊長。
しかしあとはとっとと逃げてくれ。
今しかない。
僕は馬を飛ばして敵先陣中央に向かって一気に駆けた。
すうっと息を吸って精一杯の大音声をあげる。
「これよりは栄光あるバルディスの地である!イダヴェルの軍と見受けるが、通りたいのであれば戦場の倣いとして我に武を示せ!我はバルディス宮廷騎士団が一、メルレン・サイカーティスである!腕に覚えのある者は進み出よ!」
決まった。
足を止めたイダヴェル先陣はやや戸惑っている。
出鼻を挫くことに見事に成功した。
追い討ち。
「勇猛と聞くイダヴェルには一騎打ちを受けられる者すらおらぬか!」
「その言聞き捨てならん!」
お、きたきた。
「我こそはイダヴェル帝国剣術団アークロイガー第一軍の先陣を預かるウルリック・チェスターだ!エルフ風情に遅れはとらぬぞ!」
「受けていただき感謝する!前言を撤回しここに謝罪させていただく」
「謝罪承った」
「さて、一騎打ちと申しても何の趣向も無いようではそちらも興が乗りますまい」
取引を持ちかける。
「いかような余興か」
「もしこの一騎打ちにおいてそちらが勝てば砦の門を開放し、イダヴェル軍の通過を許そう」
「そちらが勝てば?」
「やはり門は開放するが、我が軍が撤退を完了するまでの間の1日だけ猶予をいただきたい」
しばし黙考するチェスター。
「どちらにしろ砦は放棄するということか。騎士の誇りとやらはどうした」
「あたら無駄に命を散らすことが騎士の誇りなどではない。譲れぬ矜持、護らねばならぬものがある時に命を惜しまぬことが騎士のつとめだ」
「よかろう。イダヴェルはこのようなところで一兵の犠牲を出すわけにもいかぬ。そちらの話受けた」
「感謝!ではいざ尋常に勝負と参ろうか!流儀はそちらにお任せしよう」
「何も上等なことなどない!得物はなんでも構わぬし、決着はいずれかの生死を持って決す!」
「委細承知!」
一旦僕は馬首を返し、距離を取る。
あちらの武器は長槍だ。
距離を取れば相手に有利なのだが、こういうものにはやはり様式美がいるだろう。
問答無用で集中攻撃をされる可能性も考えたが、どうしてなかなか紳士的じゃあないか。
それとも強者の余裕なのだろうか。
ウルリック・チェスター将軍。
モブ男のくせになかなか良将と見た。
体躯もいい、気風もいい、あれでは戦果も人望もなかなかのものだろう。
斬っておいて損はない。
「いざ!」
「いざ!」
距離約100メートル。
同時に声をかけて走り出す。
最近は慣れてきた愛馬ガブ子だ。
ちなみに最初に乗ろうとした時に噛まれたのでヤキをぶっこんだので、この愛称なのだが心の中だけで呼んでいる。
本当の名前はウェズレイに貰った時に聞いた気がするが忘れた。
「いいぞ、ガブ子」
褒めてやると低く鼻を鳴らす。
恐れても気負ってもいないようだ。
霧断丸を抜き身にして両手で手綱を握る。
振りかぶって走る方が剣の出は速いが、軽さで勝る日本刀(風)だ。
重さではなく切先のスピードと鋭さで斬るのだ。
対するチェスターは小脇に槍の柄を抱えて油断なく突進してくる。
背後ではチェスターに対する応援が巻き起こっている。
結構な速度を乗せているが上体にブレがない。さすがに乗馬技術ではまったく敵わないね。
ぐんぐん接近して当然先に槍の間合いに入る。
が、まだ仕掛けてこない。
引きつけるつもりか?
見れば槍を持つ右腕は、さながら引き絞られた弓の弦のようにギリギリとたわめられている。
必殺の間合いを狙うのか。
もう一歩でこちらの間合いというところで、遂にたわめきった槍が放たれた。
狙いはどこだ?!
軌道が見えた。
胴狙いだ。
これは堅実ないい狙いだ。
ここまでの僅かな間に、僕の乗馬技術があまり巧みでないことを見抜き、よけにくい胴へ全力の一撃を打ち込み、できれば落馬させて地上に落ちたところを突く。
落馬までいかずとも全力の打撃は僕の攻撃の機会を奪うため、二撃目で急所への突きを入れる。
僕とチェスターの体重差まで考慮した実にいやらしい選択じゃないか。
「よっと」
僕はなんとか体をひねる。
しかしこれは攻撃を躱すためではない。
ひねりながら神速の斬撃を槍に入れる。
カッ
甲高い音を立てて槍の穂先が両断される。
それとともにチェスター全力の突きは下へ向かって流された。
えっ?という顔をするチェスター。
彼には今の動きと、何が起こったのかが見えなかったのだ。
あるいは見えても理解できないのか。
大きな大きな一瞬の隙、僕はもう一歩を進めて間合いに入る。
振り下ろした霧断丸の切先を上に向ける。
切り上げ、つまり逆袈裟の構えだ。
そこで漸く僕とチェスターの視線が交差した。
彼の目に浮かんでいたのは驚愕と恐怖だったのだろうか。
僕は迷いなく振り切った。
首当てもやすやすと紙のように断ち切ってチェスターの首は空中高く舞い上がり、クルクルと回転して地に落ちた。
主を失った身体は馬に乗ったまましばらく進むと、どうっと地面に落ちた。
手綱を緩められた馬も速度を落として歩いている。
勝った。
なんの感動も恐怖もなかった。
ただ手には斬った感触が強く残っていた。
さて今度こそ完璧にとどめさしたメルレンですが、精神的にはフィルター越しのような感覚で特にショックはありません。
霧断丸は斬鉄剣までは切れないですが、甲冑くらいならいい角度で入ればすぱーっと切れます。
ぶ、ぶんししんどうでもしてるんじゃないですか?
ではまた次回^^ノ




