第二十三話 「お好みパーティ」
今回は一週間以内の更新でしたよ!(えっへん
いや褒められるペースではありませんね・・・
前回では感想というか励ましはいただけるわ、お気に入り件数も増えちゃうわで嬉しかったです。
いつも皆様ありがとうございます。
また頑張って更新します^^
「面白い!」
ジレコ伯爵は膝を打った。
あれ?怒らない?
伯爵は僕の策を聞いて上機嫌だった。
僕が不思議そうにしているのを見て伯爵は笑った。
「常々きやつらの所業を聞くに不快であった」
それはイダヴェル帝国剣術団アークロイガーの蛮行であった。
「コルベインでの悪行はここまで聞こえている。無抵抗の村を焼き払い、男は四肢を切り取って串刺しに。女は犯して奴隷にするか殺した。子供も同様だ。老人などはまとめて生き埋めにされたという」
それはアークロイガー第二軍マグニール・デュラハンの軍の仕業だ。
血を好み、無用の戦も選んで行う。
作戦の遅滞も構わず、攻め入った地では非道を尽くす。
この悪鬼のような将軍が放置されているのは、その悪評ゆえだ。
『イダヴェルが来る』
そう聞いただけで戦意を喪失し、逃げ出す者が少なからずいる。
マグニールが重用されているのはそうした効果を見込んでのことだ。
一方の第三軍を率いるのは『イダヴェル唯一の騎士』、『濃紺の騎士』と呼ばれる、イダヴェル1、2を争う剣の冴えと、騎士としての矜持をもつ男、クスコ・ガンカナーだ。
軍は非常に統制が行き届いており、軍紀の乱れもない。
用兵は神速かつ勇猛で、将軍の人格も高潔だ。
しかし第三軍に甘んじている。
なぜか。
それは『イダヴェルに騎士は不要』というバシュトナークの言にもよる。
イダヴェルは成果主義だ。
成果のために手段を選ばないことがもっとも重要とされる。
メニヒ・ウォーレンナックはまさにこの思想の体現者だ。
バシュトナークに匹敵する武力を持ち、冷徹な計算によって最も効率の良い方法を選択する。
それがどのような非人道的、卑劣な手段であったとしても全く躊躇しない。
ただ最短距離で、最も速く、最も多く殺す作戦を立てる。
マグニールのように手段におぼれることもなく、クスコのように誇りに惑わされることもない。
「聞けばイダヴェルは無辜の民をすすんで手に掛けるというではないか。聞けばイダヴェルに騎士はいないからだという。言語道断である!それは人間ではない!」
はーい、僕エルフです~人非人で~す。
「そのように卑劣な外道であるならば、奸計を巡らせて罠にはめてやるというのなら、かえって胸がすくというものよ」
いやまあ罠ってほどのものではないんですがね。
ネットゲームやってて人にやられてイヤなことを考えてたら自然とコレに行き当たったというか・・・
「貴公の策気に入った」
「それは何よりです」
「確かに他の国ではなくイダヴェルが来るのだ。民が残っていればむごたらしい目にあうのもわかる。抵抗は無意味でしかないだろう。即刻領内の避難状況を騎士団に徹底させ、そのまま王都へ向かわせる。指揮は長男のヴァーサタイルに執らせる」
ん?陣頭指揮じゃなくて長男が指揮とるの?
「承知いたしました。ジレコ伯爵はどうなさいますか?」
「意地をすべて曲げてしまうのも悔しい。同道させてもらう」
えええ?
説得するも頑として聞かず、「陛下にお叱りを受けてもやむなし」と言う。
しかしこれは非がないしお咎めなんか受けないだろうなあ。
ただ、隊の命令系統が割れると困るなあなんて思っていたら、伯爵は手勢100を引き連れて分隊として僕の指揮下に入るという。
分隊といっても別働隊みたいな扱いで構わないので、指示がなければ予備戦力として待機を続けると。
反論を封じてきたわけか。頑固なおっさんだなあ。
どうしても一戦まじえなくては気がすまないというワケか。
「では約束してください。敵を見ても決して自殺まがいの突撃などしないでください」
被害を出す領民への代償として自らの首を捧げることもあり得る。
ここは念のためクギを刺しておかねば。
「案ずるな。わたしとて軍人だ。命令がなければ命を投げ捨てるような真似はせん」
この人に命令するのヤダなあ。
ジレコ伯爵はそれを知ってか、わざとらしくお辞儀をすると
「マウリシオ・ジレコはこれより宮廷騎士団団長代行補佐メルレン・サイカーティス殿の指揮下に入ります。ご下命あるまで控えますのでなんなりと」
うわあ、やりづらい。
このおっさんが偉いなあと思ったのは夜だった。
屋敷が立派な割に人気がないと思ったのだが、家人はすでに使用人にいたるまで避難させており、現在残っているのは補佐も務める執事と、長男、次男、そして騎士団のみであるという。
騎士団も馬廻りなどは避難させており、厩の清掃から飼葉やりまで自分達でやっているそうだ。
「なのでロクな食事もないのだ」
と、保存食を出してきた。
なんだおいイイ話じゃねえか。
よし。
僕は思い立ち騎士団の詰め所に行く。
「給仕当番いますかあ?」
食料庫を覗くと、小麦粉、トウモロコシの粉、干し肉、キャベツのような野菜、塩、コショウ、トマトと肉を煮詰めたようなソースの瓶詰めなどがあった。
近隣の村でそのままにしてあったニワトリも一箇所にあつめて柵で囲い、毎朝当番が餌やりと採卵をしているそうだ。
充分だ。
騎士団から手を借りて、なるべく平らな鉄の盾を何枚も屋外へ運び出す。
火をおこしていると、騒ぎを聞きつけて皆がやってくる。
「ご主人様、何をしているのですか?」
「ああアル君、いいとこに来ました。手伝ってください」
「何をです?」
「夕飯の支度ですよ」
アル君に野菜を刻ませる。実家では手伝っていたそうでなかなか手慣れている。
段々と手伝いの人数が増えていき、火起し組、野菜組、粉混ぜ組、水汲み、セッティングなどに分かれて奮闘する。
下ごしらえも済んだところで残りの人間も呼んでくる。
伯爵まで即席の野外晩餐に現れた。
「いいですかあ、今からこの料理の説明をします!これは作りながら食べる料理で東国の一部に伝わるものをある材料でまあまあ再現したものです」
サラダボウルに刻んだ野菜、水で溶いた小麦粉、トウモロコシ粉、味つけの塩コショウ、干し肉、生卵を投入しフォークでぐるぐるかき混ぜる。
「こうやって具と粉を馴染ませたら」
熱した盾の上に油をひいて、ボウルの中身を乗せる。
じゅうううっといういい音を立てて、焼けていく。
「片面を5分ほど焼いたら、大きめのフォークやナイフなどでひっくり返します。裏面も5分ほど焼いてお好みでソースを塗って食べてください」
「まったくはじめて聞くものだがなんという料理だね?」
伯爵は不思議そうに見ている。
「お好み焼きです」
うんお好み焼きだ。当然言葉に出して翻訳されるはずもなく、
「オコノミヤキ?」
聞いたことがない響きにますます首をひねる面々。
「本当は水ではなくて魚のスープをとって入れたり、トウモロコシ粉は使わないとか違いはありますが、野戦料理だと思っていただきましょう」
通常は無発酵のパンのような焼いた小麦粉や、塩コショウで味を調えた湯ときトウモロコシ粉に塩漬けキャベツ、干し肉あたりが戦場での食事となるらしい。
皆はめいめいの分を自分で焼きながらソースを塗ってはおいしそうに頬張っていた。
「貴公は本当に面白いな」
「長生きしているだけですよ」
「迫る敵、土地を追われる不安、騎士団も口には出さずともどこか不安な空気が蔓延していた。ところがこうして火を囲んで笑いあいながら食べている姿は本当に楽しそうだ。貴公は不思議な男だよ、だいたい恥ずかしい話ながら、わたしもこの年になるまで自分の口にいれるものを自分で作ったことなどなかったことに今気づいた」
はははと伯爵は笑う。
「やってみると結構ウマイでしょう」
お好み焼きもどきはトウモロコシ粉のせいか薄味ながらサクサクとした食感がけっこういける。これはこれでアリだ。
「うむ。自分で作ること、外で皆と食べることが更においしく感じるのかもしれないな」
「そうですよ」
「いい気分だ。よし!酒蔵を開けろ!今夜は飲むぞ!」
おおおお、というどよめきが周囲を包み、酒が運ばれてくる。
「まあ飲め」
「いただきます」
アルコールが入ってればなんでもいい。
アル中ではないが、あれば必ず飲む。
特にメルレンはタダ酒ならあるだけ飲みそうな勢いだ。
チート肝臓覚醒。
「本当にお前は不思議なヤツだ」
さっきから同じことばっかり言ってるジレコ伯爵。
酔ったのか、貴公はお前に変わり、焦点の定まらない目で半笑いの顔で僕の肩をバンバン叩いてくる。
「そうですかねえ」
僕も面倒なので同じように答えておく。
お好み焼きはもう終わったので、具に持ってきた干し肉に塩コショウをかけて炙ってツマミにしている。
居酒屋感ハンパないな。
「そうだとも!あのはねっかえりのヴィクセンの嬢ちゃんを手なずけて」
言っちゃった。
「ちょっと可愛いからってあの人間爆弾も侍らせて」
おい、だいぶディスられてる気がするぞ?おっさんカラミ酒か?
「うちの騎士団の連中もお前を気に入ったみたいだし」
男をつかむには胃袋をどうこうとか言いますね。
「そしてワシのハートも射止めおって!」
伯爵は爆笑しながら僕を叩く。
単に酔っ払いなだけじゃねえか。一人称ワシになってるし。
あとホモは結構です。
酒飲んだ後はおなじみの光景になりつつあるが、立っているのは僕だけ。
死屍累々である。
ていうかアル君に飲ませたの誰だよ。
ランベールさんまで結構酷い格好で寝ている。
しかし冬も近いこの時期に屋外で寝ると死ぬぞお前ら。
まだ火が着いてるからなんとかなるんだが、消えたら何人か確実に風邪くらいはひく。
「まいったな」
「どうしたんですか?」
「ああ、リュタンさん。起きてましたか」
「わたしはお酒飲めないので、火にあたってすみっこにいましたから」
う、あれだけの盛り上がりの中ですらぼっちを貫いてしまうとはなんというブレなさ。
「それではちょうど良かった。この中から生き残りを探して屋敷まで運ぶチームを作りましょう」
「生き残りって・・・わかりました!」
リュタンはなんとなく嬉しそうに答えると、騎士達の間を飛び回った。
泥酔しなかった人数は14人。
あとは屍だった。
「では生き残りチームで泥酔者を宿舎まで運びます。体格のいい人を運ぶ場合は装備をはずしても構いません。誰のものかわかるようになっていればいいです。二人一組で腰を痛めないように運んでくださいね」
「はい!」
リュタンは意識を取り戻しそうな者の介抱にまわった。
冷えてきたので湯を沸かし。すこし冷ましてから飲ませている。
「大丈夫ですか?白湯を飲んでください」
中には盛大にリバースしている者もいるが、リュタンはイヤな顔ひとつせず、甲斐甲斐しく世話をしている。
なんだ結構天使じゃないか。
しかも見た目も可憐で可愛らしい。
あの二つ名さえなければアイドルになってもおかしくない。
案の定、朦朧とした状態から覚めた者の大半はリュタンに魅せられたらしく、僕のところに「あれは誰なのか」と聞いてきた。
「リュタン・シーリアです」
忌み名に等しい名前を聞いて顔を強張らせる者もいたが、半数以上はすこし驚きながらも、
「考えていたのとイメージ違いますねえ」
などとぽうっとした表情でリュタンの姿を目で追っていた。
大丈夫だ、リュタン。お父ちゃんが保証する。可愛ければ大概なんとかなるもんだ。
その後は目が冴えて眠れなくなってしまったので、やはり気持ち悪そうに起きてきたアル君をつかまえて剣術の鍛錬をした。
サラは起こしたけど起きなかった。
努力はしたのに起きなかった自分が悪い。
しかしその後ズルいだのなんだのと恨み言を言われた。
というわけで指揮下の人数が倍増した。
これをどうしたらいいのか。
メリットとしては単純に兵力が増えたので、戦力が充実した。
作戦の幅も広がる。
デメリットとしては補給量が2倍になった。
本来根拠地とすべきジレコ伯爵領にはもう兵站はない。かき集めれば食糧や水くらいはどうにかなるだろうが、かきあつめるための人がいない。
王都に2倍補給とジレコ伯爵同行の伝令を出す。
避難民向けの食糧等を余分に持っているのが幸いで、これを取り崩しながら次の目的地であるウイラード辺境伯領で多目に補給しなくてはならない。
とはいえウイラード辺境伯領も避難させなければならないので、1度満載したら次はないだろう。
まだある。
ゲリラ戦を行わない限りは一瞬で全滅する兵力だ。
これが二倍になったところでやはり一瞬だ。
そのくせ命令の伝達には最大二倍の時間を要するようになり、発見される確率も単純に二倍になったといっていいだろう。
本来愚行だ。
しかし受け入れたものについてはなんとかしなきゃならない。
夕刻には本隊と合流した。
アル君に先行して伝令に走ってもらったので、本隊は進軍を止めてジレコ伯爵の騎士団を待っていた。
到着を出迎えてくれたのはクーリア、テスカの悪い人(w)コンビだった。
「アニキ!お帰りお待ちしておりました!」
「お頭!お疲れ様でした!」
どんな盗賊団だよ。
ジレコ伯爵は眉をひそめている。いやコイツら連れてかなくてマジでよかったな。
「こういった輩まで手なずけるとは、貴公の懐深さはまさに感服・・・」
別にフォローもいりません。
はい、またみんな集合。
「ええとですね。いろいろありましてジレコ伯爵の騎士団から精鋭百騎が同行してくださることになりました。特に輜重隊には苦労かけますが、万事よろしくお願いします」
輜重隊隊長は黙ってうなずく。
「当面戦場に想定される地点までは遠いので、合同で移動して戦場が近づいた時点で別働隊として編成したいと・・・」
ここでジレコ伯爵が挙手する。
「よろしいか?」
「どうぞ」
「道々考えたのだが、国境から漸減作戦を取りつつ撤退戦を行っていくという方針でしたな」
「その通りです」
「敵の士気と進軍速度の低下を企図して、我々はひとまずこの地に留まり、地の利を活かして罠を仕掛けていきたいと思う」
なるほど、補給はこれまでどおり自前で行いつつ、会戦予定時までに国境を目指すというわけか。
「いい考えだと思います。早速敵進軍ルートの予想、誘導の手筈、会戦予定地点と時期について細かい打ち合わせをしましょう」
「採用感謝する」
それから更に夜も更けるまで綿密な打ち合わせを行った。
段取は精密に、しかし臨機応変でなくてはならない。
相手もいる。
相手の出方によってとるルートや対応についても細かく話し合った。
先行することになる僕ら本隊はウイラード辺境伯領でもう一度説得を行い、補給の段取をつけ、ジレコ騎士団に後送しなくてはならない。
そのあたりもウイラード辺境伯への親書をしたためて貰った。
バルディス南部ももう冬の気配だ。
既にメニヒはイダヴェルの帝都ウルを進発した頃かもしれない。
いよいよ本番が近づいてくる。
万事手抜かりなきようにいくとはいえない。
僕は何せ初陣なのだ。言えないけどね。
なるべく見知った顔が誰も死なないように。
本来中立であるはずの作者だが、なんの因果かバルディスに飛んで、そこで浅からぬ縁というヤツができてしまった。
筆の上ではどれほど凄惨な戦場を描けたとしても、実際に目の当たりにすれば竦むかもしれない。
親しい人間の死はどれほどのショックだろう。
いざとなれば持てる知識の全てを動員する。
メインストーリーに影響が出てしまっても構わない。
僕は決意を新たにして更に南下する。
今のところこのお話の中核は戦闘シーンなのかおちゃらけなのかよく本人もわかっておりません。
開戦してもあんまり殺伐とはしたくないなあと思いつつ。
ではラーメン食ってきます^^ノ




