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異界のストーリーテラー  作者: バルバダイン
第一部 「イダヴェル戦乱編」
18/65

第十六話 「サムライソードと御前会議」

まだまだ暑いですね!

そういえば新型NEXUS7を発売日にゲットしました。

これで更新がはかど・・・いいえ関係ありませんw

 王への謁見を済ませて、家に戻るとパーティの準備は整っていた。


 リュタンも入浴して着替えたようだった。


 サラはドレスアップしている。




 さて、わがサイカーティス家ではルールがある。


 僕は一般人で駅ビルのレストランのディナーコースすらロクに食べたことがない。


 従ってコース不要。前菜もメインもいっぺんに持って来い。


 せいぜいデザートくらいは作りおきして氷蔵庫で冷やしておいてもいいけど。


 で、大事なのはここだ。


 全員同じテーブルでご飯を食べること。


 この宣言をしたときのコックニーさんの呆然とした顔はひどかった。


 そんな貴族的生活したいわけじゃないし、だいたい食ってる時に傍で控えられているとまったくもって集中して食えない。


 おかわりも自分で取り分ける。


 ワインのおかわりも手酌でやらしてくれ。


 メシは大勢でわいわい食うものだ。





 というわけでランドルフさんが一通り温めて持ってくると食事開始というのが、我が家のルールとして定着した。


 サラやランベールは当然、リュタンも驚いていたが僕が「田舎暮らしが長かった」という言い訳とともに持論を熱く展開すると納得したようだった。


「えー、本日はまことにお日柄もよく…」


 ゴホンゴホン


 僕のおかしな挨拶にカーマインさんが咳払いでツッコミを入れる。


 やりなおし。


「えー、今日は任務の無事完了と、我が家へ初めてお客様を招くということという二つのお祝いです。ランドルフの腕は確かです、どうかゆっくりと楽しんでください」


 かんぱーい。


 マナーも特にない。主に僕とランドルフさんは食べ方がマナーから逸脱している。


 でも気にしているとお腹ふくれないので無礼講的な雰囲気の食事が常となっている。


 それもまあ数ヶ月ぶりだ。


 よし今日はめでたいし、さらに現実世界的な宴会マナーを見せてやろう。


 おもむろにワインデキャンタを持つと立ち上がる僕。つかつかと皆の注目の中カーマインさんの席に行く。


「まままカーマイン、飲んで飲んで!」


「メ、メルレン様!主がそのようなことをされては!」


「堅いこと言わないでくださいよ。無礼講無礼講」


 年長者に酌したあとはサラだ。


「サラもいろいろありがとうございました」


 きっとソムリエ的な人に注がれたことしかないであろうサラも目まんまるである。


「これはエルフの流儀ですの?」


「いえいえメルレン流です」


 ナゼかキメ顔で微笑む僕。それを言うならサイカーティス流では?と脳内ツッコミも思い浮かんだが、メルレンの亡き父母がこんなことするわけもないしな。


 次にリュタン。


「これからもよろしくお願いしますね」


「こ、こちらこそお願いしますー」


 吊り目のサラ、タレ目のリュタン。どっちも可愛い。


 家が盛り返せばサラより格上だよなあ。


 ただし、上二人がいるのでどこかに嫁に出されるはずだったのだろう。


 それが今や放逐され流浪の身、イージスシステムを組み込まれ、災害扱いされて嫁の貰い手もない。


 可愛そうな身の上だよなあ、僕が考えたとはいえ。


「頑張って生きるんですよ!」


「???は、はい!」


 次は順番的にサラの御付のランベール。


「どうですか?決心つきましたか?騎士団入りは」


「あ、はい。サラ様に相談したところ。快くご承知していただきました」


「それは何よりです。おそらく王都の騎士団ですので、そういった主従関係への配慮もある程度見込めると思います。サラと一緒に推薦状を出しておきます」


「ありがとうございます」


 言いつつ、だばだばとワインを注ぐ。


 そしてアル君。


「やあ、お父上に挨拶は済みましたか?」


「はい!わざわざお気遣いいただきありがとうございました。父上はメルレン様のことを大変好きらしく、しきりに仕事に励むように言われました。あとは商売についても、うちのような古いだけで小さな商店を商会に加えていただき感謝の言葉もないと伝えてくれと頼まれました。僕からもお礼を申し上げます」


「…商会?」


「はい!サイカーティス商会です」


「……」


 なんだか、カーマインさん予想より急速に手広くやってるようなんですが。


「いえいえ、商売は別物です。お父上がこれまで堅実に商ってこられたからこそです」


「そう言っていただけると嬉しいです。父ともども、これからもよろしくお願いします!」


「はい、こちらこそ」





 その後、巨漢ランドルフと飲み比べしたが、見掛け倒しだった。


 というかエルフの体のせいか、フルボトル1ダースとか飲んでも全然余裕だな。


 僕のチートはここくらいな気がする。


 コックニーさんは飲めないと言っていたので、エレインにも酌をする。


 酒乱だった…。


 いやまあ案の定泣き上戸なんだけどね。


 僕に抱きついて大声で泣きじゃくるエレインは色々困った。


「失礼ですよ!」


 と、引き剥がそうとしたコックニーさんは壁まで吹っ飛ばされる。


 サラは剣呑な目付きで睨んでいる。


 カーマインさんはニコニコしていた。


 やがて糸が切れたように寝てしまったので、コックニーさんが顔をしかめながらベッドまで引きずっていく。



 一応カーマインさんに商会のこと聞いておこう。


「カーマインさん」


「はい」


 マイペースに飲んでいるカーマインさんも相当強いな。


「こんな席に仕事の話で申し訳ありませんが、気になったので聞いていいですか?」


「なんなりと」


「商会ってなんですか?」


「事後報告になってしまい申し訳ございませんでした。多少の資金の余裕と、バルテルミ様の父上でありますピアーズ候からご融資のお話をいただきましたので、業務の利便性を高めるため商会として申請し、個人の商店や職人を支援し傘下に置くような体制を取りました」


 お、恐ろしい爺さんだ。


「現在のところ食品の流通をアルの父親、ウォーデンス商店に任せており、資本の注入により販路の最適化と流通路の拡大を試みています。一方メルレン様よりご下命いただきました鉄の買い入れと武具生産ですが、中央では既に豪商の傘下として営業している鍛冶師が多かったため、ピアーズ候にお願いし北部の鍛冶師で個人営業をしているものをまとめて雇用し、金属の仕入れについては北方と外国からの輸入ルートを構築しつつあります」


 資金のある限り、王都の武器、防具を充実させよう、っていうくらいだったんだが、カーマインさんは上行ってた。


「その中でも北方の有名鍛冶師グルミエの招聘に成功しましたので、サイカーティス商会では彼のブランドを前面に立てて、言わば『グルミエ監修』や『グルミエ工房製』といった付加価値をつけた商品の販売を武器の主軸として参ります。また、フルオーダーにも既に応じており、その際はグルミエ本人が製作した『銘入り』として差別化を行います」


 商売人すぎる。この人って公爵の補佐として領土経営してた、言わば内政のプロだよなあ。なんかどっちかというと商人属性が強いんですが。


「さっそくウェズレイ様に斧槍を納入しております。魔術付与品ではありますが、金貨二百枚という逸品です」


 わあ…。


「わ、わかりました。そちらの方はカーマインさんに一任します。補佐の人員が必要なら自由裁量で雇用して構いませんので」


「ありがとうございます。粉骨砕身勤めます」


 深々と頭を下げる。


「ところでメルレン様、商会設立を記念して一振りお作りしましょう。よい宣伝にもなります」


 えー金貨二百枚とか持ってないぞ?


「サイカーティス商会は文字通りメルレン様の個人資金団体です。武具防具をそろえることから、政略、土地や家屋の入手に至るまでなんなりとお申し付けください」


「そ、そうですか。助かります」




 そういわれて武器を作ることになったのだが、何にしよう。


 この世界の金属は鉄がほとんどでミスリルが高級なごく一部に使われている。


 しかし、やはり僕も男の子。


 なんでもいいから武器作っていいと言われたら…




 翌日からグルミエのもとへ通って打ち合わせをする。


 拙い絵を描いて、形や用法、そしてこだわりを一生懸命伝えた。


「こんな剣は打ったことがない」


 と渋面のグルミエだったが、その鍛造の難易度の高さや、試行錯誤のうちに垣間見える武具の枠を超えた美しさに段々魅せられていったようだった。


「あとは任せてくれ」


 と、言ったきり工房にこもり何日も過ぎた。


 数週間後、完成の連絡を受けて、工房へ行くとグルミエやカーマインさんの他にウェズレイもいた。


「なぜここに?」


「オレは常連だぜ。なんか面白い剣が出来たっていうから見に来たんだよ」


 暇人だ。


「いやあ苦労したぜ、素材は手持ちも少ないオリハルコン、おまけに肉厚は薄い。反りのつけ方と切れ味の関連性が難しい。でもさすがに寝食を忘れてやるうちに傑作といえるようなものができたぜ」


 グルミエが差し出した刀はやや大きめのサーベルのようだ。


 しかし違う。


 その片刃の剣は僕らならすぐにわかる。いわゆる太刀だ。


 全長85cm。サーベルよりはシミターに近い反りを持ち、刃の部分には直刃の刃文が出来ている。


 オリハルコンって焼きいれられるんだなあ。


 柄もオーダーどおりに柄巻きして鍔をつけ、金のはばきに切羽をつけ、鞘も細工師が苦心して糸巻き造りになっている。


 さすがに鯉口まではつけなかったが、記憶にある限り再現したファンタジー世界での日本刀である。


 う~ん厨二全開。


 オリハルコンをつかったせいで研ぎはグルミエしかできないそうだ。


 まあほとんど減らないと思うけどね。


 付与魔術は不壊はいらないので、魔術結界破壊と魔力増大、魔術威力増大をつけた。


 三つつくとはさすがオリハルコン。


 僕は無言で鞘走らせると無造作に傍らにあった一抱えもある巨大な金床を斬った。


「うわ!なんだそれ!」


 叫んだのはウェズレイ。金床は文字通りまっぷたつになった。刃こぼれひとつしていない。切断面は磨き上げたように滑らかだ。


 うん、こりゃすごい。


 大好きな太刀、鎌倉期の名工、粟田口吉光の一期一振、しかも秀吉による磨り上げ前を意識した積もりだけど細部まではさすがに覚えてないからなあ。


「名前つけますか」


 聞けばウェズレイの斧槍は皆殺し(エクスターミネーター)だそうだ。


 強そうだが品が無い。実例を聞くとこの国ではもう少し品のある名前をつける傾向にある。


 まあだいたいは厨二っぽい名前だが。


 しかし太刀でもあるし、和風の名前がいいな。ただし一期一振は恐れ多くて名前を拝借できない。


 関係ないがそれっぽい名前にしようかね。


 天下五剣にも「鬼丸国綱」、「数珠丸恒次」と「丸」の字が入っているものが二振りあるし、「丸」にしようか。


 普通は由来があって名前がつくものだが、この際どうでもいい。


「よし、では『霧断丸』としましょうか」


「キリタチマル?」


 訝しげなウェズレイ。日本語はそのまま発音すれば耳慣れない異国の言葉だ。


「ええ古い異国の言葉で、霧を斬るもの(ミストスラッシャー)という意味です。これほどの切れ味ならば鉄だけではなく霧ですらまっぷたつにしてしまいそうです」


 と説明すると、一同は感心したようだった。


「さすがはメルレン様、語感もよく、詩的で格調の高い名かと思われます」


「そうかあ?オレの皆殺し(エクスターミネーター)も悪くないと思うがな」


 個人的にはウェズレイに賛成だが、グルミエなどは露骨に顔をしかめている。


 まあ他がバルテルミのロングソード『哄笑する神の断罪ジャッジメントオブザテンプター』やゼフィアのレイピア『正義の執行者(エグゼクター)』等、厨二至上主義なので仕方ないか。


 と、いうわけでオーナー特権でむちゃくちゃ高級な武器が入手できた。


 これで魔法剣士から侍にクラスチェンジだ。


 嘘だ。




 

 そんな風にマニア武器作って遊んでばかりいたわけでもなく、バルテルミに挨拶にいったり、アル君とランベールの騎士叙勲につきあったりとそれなりに忙しく動いていた。


 中でも僕は王から新たなる役職を任じられた。


 バルディス王国宮廷騎士団団長代行補佐兼任参軍。


 なげーよ!


 参軍といういわば軍師職に任じられた。これは非常職で戦時の役職だ。


 つまりこの時からバルディス王国は実質上の戦時体制に入ったのだ。


 王都直轄の早馬による伝令役が数名ずつ各町、城に常駐することになり、伝令内容を伝えながら入れ替わっていく。


 各町でも戦時体制に入り、南部の町では避難の準備が進められる。


 そして王による会議が召集され、各有力貴族(またはその代理)、宮廷騎士団の各隊長、王都騎士団長、衛兵隊長、参軍(僕な)が集められた。


「揃っているな、では早速はじめよう」


 王は会議場に入ってくると腰掛けた。


「メルレン、進めてくれ」


 ホストは参軍の僕が務める。


「はい、まずは大賢者殿のところで入手してまいりました情報をおつたえします」


 アンタの威光をたっぷり使わせて貰うぜ。


「わたしは簡単な星読みができますが、それでこの国迫る戦乱の気配を感じ、陛下の下に参じ剣を捧げました。詳細を知るために大賢者殿のもとへと赴き、導きを得て参りました」


 嘘だ。


「それによるとイダヴェル帝国の主力メニヒ・ウォーレンナック率いる帝国剣術団アークロイガー第一軍およそ15万と帝国魔術団アトラーヴェイの術師1000人が我がバルディス侵攻の準備を整えていることがわかりました」


 ざわっとなるが、予測していた者も多くパニックになることはない。


「先に結論から申し上げますと、この戦に勝つことは不可能です」


 今度は完全にざわめいた。というよりは怒号があがった。


「言うに事欠いて貴様!戦う前から負けを認めるというのか!この場で斬ってやろうか!」


 立ち上がったのは南部のイダヴェルと国境を接する辺境伯ウイラードだ。


「待てウイラード。話を聞け」


 王はウイラード辺境伯を手で制す。


「しかしながら陛下!」


「いいから座れ」


 渋々座って腕組みをする。


 僕はそれを見届けてから続ける。


「理由は主に二つです。一つ目は単純な戦力比です。高度に訓練された十五万のイダヴェル軍と各地に点在するバルディスの兵力十万では明らかに不利です」


 バルディスには衛兵以外の常駐歩兵戦力がない。基本騎士、騎兵だ。その他城や要害を中心に弓兵や弩兵がいる。


 それゆえに精鋭ではあるが衛兵までかき集めても統率のとれた行動は期待できず、各貴族所有の騎士団との連携もあやしい。


「イダヴェルの予想侵攻ルート上の街や拠点で散発的な抵抗を続けてもメニヒの軍を漸減できる期待はありません。イダヴェルは我らの背後にあるマガニア侵攻のためにバルディスは一気に攻めて通過するつもりだと思われます」


 なめたことを、などという呟きがもれる。


「加えて一人で二十人の兵を凌ぐとも言われる魔術師千人の存在です。言うまでもなく遠距離攻撃が脅威であり、距離を潰して戦えば勝ち目もありますが、前衛に精強な兵を置いて阻まれれば被害は増す一方になるでしょう」


 バルディスには魔術に対抗する手段がほとんどない。


「討ち死に覚悟で突貫すれば大きな被害を与えることができるかもしれません。しかしお忘れなきように。我らは死ぬわけには参りません。我らが求めるのは勝利ではありません。陛下をお護りし、民の盾になることが存在意義なのです。イダヴェルにはまだそれぞれ十万の兵力を擁する、第二軍、第三軍が控えているのです。それらから陛下をお護りできずしてなんの臣下でしょうか」


「ではどうすればよいというのだ!」


 と、ウイラード辺境伯。


「もう少々お待ちを。今から二つ目の理由をお話いたします」




 ここからが勝負どころだ。


 僕の計画をなんとしても成功させる。


 計画名「命あっての物種」


 …ダメ?

いつもありがとうございます。

第一部も中盤に差し掛かってまいりました。

出来事が増えてくるので書きやすいのですが、それにとらわれず人物書きたいなあ。


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