表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

第二話 異世界ってのは結構楽しいものなのかもしれない

できれば、お気に入り登録をしていただくとやる気に繋がります。

異世界ってのは結構楽しいものなのかもしれない


俺は少女、奏に連れられ一軒家に来ていた。

「どこだよここ」

俺は戸惑いながらも聞く。

すると奏は何が嬉しいのか。ニコニコしていた。

「私の家だよ。そして、ここを拠点に異世界のゲームに参加するんだよ」

ゲーム? 拠点?

俺は何を言っているのかわからなかったが全ては奏に任せることにした。

「で? 俺は何をすればいいんだ?」

俺はソファに座って落ち着くと奏が俺の膝の上に乗ってきた。

「まずは二つ名申請をしないとね」

奏が言っていることはわからないが今の状況がとても恥ずかしいことだけは分かる。

なんだよ。こんなに可愛いのにこんなに無防備でいいのかよ。

「な、なんで俺の上に乗るんだよ」

俺は恥ずかしさ紛れに言うが奏が首をかしげたまま何を考えているのかわからない。

「え? だって、荒木くんは今日から私のものなんだよ? 私のために生きて私のために死ぬんだから。いいじゃん」

何がいいのだろう?

まあ、奏が言うならいいのかもしれない。

なんか、どんどん奏のペースになってないか?

まあ、人生を諦めたやつが言えたことでもないか。

奏は感念した俺の頭を撫でてまるで犬扱いだ。

そのうちお手とか言い出すのだろうか。それはそれで困るな。

「荒木くんは何が欲しい? 絶対的な力? 可愛い女の子?」

無邪気な顔で聞いて来る奏。

欲しいもの。欲しいものか。そういえば無いな。

「いつからだったかな。そういうものを欲しがらなくなったのは」

俺は遠い目をする。

そっか。と言って奏はまた笑顔になる。

ああ、なんでそんな笑顔なんだよ。

「俺はお前が笑顔でいてほしいな」

俺は無意識にそう言っていた。

言ってから顔を熱くし目を逸らす。

ったく。こいつといると調子が狂う。

「なら、私はずっと笑っていようかな。私、笑うだけなら自身あるし」

また、奏は笑顔だ。

俺の中が満たされていく感覚になる。

その笑顔だ。それさえあれば俺はそんな腐った世界でも生きていけるかもしれない。

「じゃ、行こう。異世界に」

そう言って俺の膝から飛び降りスタスタと歩いて行く。

俺も立ち上がり奏についていく。

奏はクローゼットの前で立ち止まる。

「ここが入口だよ」

そう言ってクローゼットの扉を数回叩き開ける。

そこには大きな木々が立ち並び、暖かそうな日差しを放つ太陽があり、小鳥たちのさえずりが響き渡る広大な森だった。

「こ、この中が異世界なのか?」

俺は驚きと感動で胸がいっぱいになった。

こんなところから異世界に行けるのか。それに異世界ってのはとても神秘的なんだな。

奏はクローゼットの中に入って行く。

俺もその中に吸い込まれるように入っていった。

「どう? 綺麗でしょ」

自慢するように奏は胸を張り言う。

俺は苦笑した。

ああ、綺麗だ。それに驚いた。

「奏、お前はなんでも持ってるんだな。俺にはない確かなものを」

俺は笑っていた。苦笑ではない。奏と同じ、笑顔を作っていたのだ。

「私は何もないよ。だから、今から手にしていくんだよ。荒木くんと一緒に。この両手いっぱいの幸せと欲しいもの全て。ね」

俺は頷いた。

奏の野望を叶えさせるために俺はなんだってするさ。

「荒木くん。どうしたの?」

奏が俺を不思議そうに見る。

俺は涙を流していた。なぜかはわからない。

きっと奏の言葉に感動したんだと思う。

何もなかった俺に、何もかもに興味をなくしていた俺に奏は他の奴らとは違う見方をしてくれた。

俺の気持ちを真っ向から潰しに来ていた奴らとは違い、奏は俺と同じ方向を見て同じ方向に歩んでくれた。

それが嬉しかったんだ。

「いや、お前を見てたら幼すぎて泣けてきたんだ。その体型で俺と同い年だっていうのにも涙だ」

俺は冗談を言うと奏は頬を膨らませ怒っていた。

「これは長い病院生活であんまり栄養が足りなかっただけだもん!」

怒った奏も可愛かった。

こいつは長い間入院していたらしい。病名は教えてくれなかったが相当長かったのだと思う。

入院してから伸ばしていると言った髪は地面スレスレで止まっていた。

体だって十七にしては幼すぎて中学生みたいだ。

だが、俺にはそれがよかった。そんな奏だからこそ俺は付いてきたんだと思う。

「さあ、早速二つ名申請に行こう!」

俺の手を握って走り出す奏。

俺は抵抗せずされるがままだった。

気づくと木製の家の前に立っていた。

「ここだよ」

奏は走ったせいか荒くなった息を整え言う。

「ちょっと待ってて」

そう言って奏は家の中に入って行く。

待ってろと言われたので俺はその場で待つことにした。

「おい。そこの坊や。おじいさんと一緒に遊ばないかい?」

不意に後ろから声をかけられ驚いたがすぐに冷静になりゆっくりと振り向く。

「なんだ?」

俺はこっちに来て間もないので何をすればいのかわからないのになぜいきなり声をかけられるんだ?

「じゃから、わしと一緒に遊ばんかい?」

遊ぶ?

いきなり現れて何を言い出すんだこのじいさんは。

「逃げ出すのかい?」

俺はその言葉に怒りを覚えじいさんの遊びに付き合うことにした。

「いいかい? この玉をどこまで投げられるかのゲームじゃ。それ、ワシが一番手じゃ」

そう言ってじいさんは玉を飛ばした。

驚いたことにその玉は三十キロも飛んでいった。

「どうじゃ。わしもまだまだ衰えちゃいんぞい」

そう言ってじいさんは勝ち誇っていた。

確かにこの玉で三十キロはすごい。何しろ玉自体に重さがない。これではどれだけ力を込めて投げたところで遠くへは飛ばないだろう。

なら、他に方法があるはずだ。

俺はポケットに入っていた紙くずを空に投げた。

すると紙くずは不規則に動きそして落ちてくる。

そうか。そういうふうに風が動いていたんだな。

「荒木くん? 申請終わったよ」

俺が玉を投げようとしたとき奏がちょうど家から出てきた。

「そうか。ならちょっと待っててくれ」

そう言って玉を俺が考えた通りに投げた。気道、角度、強さ共に絶好だった。

俺は振り向き奏の元まで歩いて行った。

「坊や、どうした? まだ勝負は終わってないぞい」

「いや、終わったよ。俺の勝ちだ」

そう言い残して奏の元で止まる。

玉はじいさんの玉を優に超え距離的には約四十キロだ。

「ほう。わしの負けかえ。どうも若いのにはかてんのぉ」

じいさんは笑い去っていった。

「荒木くんまさか村長を倒しちゃうなんて。まあ、それくらいじゃないと面白く無いけどね」

はい? 村長?

さっきのが?

「なあ、もしかして倒しちゃいけなかったのか?」

俺は焦りを隠しつつ静かに聞く。

「ううん。いいんじゃない? 別に怒ってなかったし。それより私眠いよぉ」

そう言ってあくびをして俺に抱きついてくる奏。

「お、おい」

何してんだよ。

俺は奏を揺らすと

「ね~む~い~」

と言って両手を広げてくる。

「抱っこ」

何を言っているんだこいつは。いい年こいてそれはないだろと思っているとじれったくなったのか奏の方から俺に抱きついてきた。

「しかたねぇな」

俺は抱っこしてやると奏はすぐに寝てしまった。

「ったく。何歳だよ、お前は」

意外にも軽い奏を抱っこして元いた世界に帰って行った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング 荒木「クリック……別にしなくてもいいが奏がうるさいんでな」
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ