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終わらない物語

作者: 朔夜

『不思議の国のアリス』を読んだことがないとわかりにくいと思います。

「大変だ大変だ! 早くしないと女王様に首をはねられちまう!」

 懐中時計を持ち、チョッキを着た白ウサギが走っていくのを見て、お姉さんと木陰で本を読んでいたアリスはウサギを追いかけました。

「待って! ウサギさん! 待っ…きゃぁっ」

 アリスはウサギ穴に落ちてしまいます。

 落ちて、落ちて、落ちて……たどり着いた場所は不思議な国でした。

 すぐに首をはねようとするハートの女王、ニヤニヤ笑いのチェシャ猫、狂いさんがつウサギ、時間を怒らせたイカレ帽子屋。

 大きくなったり小さくなったりしながらアリスはいろんな人に出会います。



「コーカスレースをはじめよう!


優勝者は全員だ!」


「あんたはずいぶんと物を知らないんだね。


ほら赤ちゃんをあやしてみな!」


「帽子屋か、三月ウサギ。好きなほうを訪ねるといいよ。どっちもキチガイだけど。


ここらじゃみんなキチガイだ。僕もあんたもその仲間。」


「細かいことはどうでもいい。ゆっくりと楽しもうじゃないか。永遠に続く六時のお茶会を。」


「まずは処刑―――判決はあとじゃ!


あやつの首をちょん切れ!」


「誰があんたたちを気にするもんですか! ただのトランプの束のくせに!」


 不思議の国でのへんてこな出来事は突然終わります。

 アリスが悲鳴を上げてトランプたちを払いのけようとしたとき、気がつくと、アリスは川辺に横になっていてお姉さんのひざに頭を乗せていました。

「あら? …あれは夢だったのかしら」



―――――ソンナケツマツハミトメナイ



 キリリ、キリリと螺子が巻かれる音が聞こえる。



「大変だ大変だ! 早くしないと遅れちまう!」

 懐中時計を持ち、チョッキを着た白うさぎが走っていくのを見て、木陰でうとうとしていたアリスはウサギを追いかけました。

「待って! ウサギさん! 待っ…きゃぁっ」

 アリスはウサギ穴に落ちてしまいます。

 落ちて、落ちて、落ちて…たどり着いた場所は不思議な国でした。


 涙の池に落ちびしょぬれになってしまったアリスはドードー鳥の提案でコーカスレースに参加します。

 ルールは簡単。好きなときに走り出して勝手なときに止まるだけ。

 丸いコースを走り続けるアリスたち。

 ゴールのない堂々巡りのレースはドードー鳥の一声で終結します。

「走るのやめ!」

 コーカスレースに参加していた動物達はドードー鳥につめよります。

「優勝者は誰なの?」

「みんなが勝ったのさ。優勝者は、全員だ!

だから、みんな賞品を出したまえ。」

 コーカスレースに参加した動物たちは自分の持つものを出しあいます。

「この賞品はいったい誰にあげるんだい?」

「勿論レースの敗者にさ。」

「全員が優勝したんだから敗者はいないんじゃないの?」

「…その通り! さあさあみんな、今出した賞品をしまうんだ。」


 ドードー鳥の言葉に動物たちは出したものをしまいます。

 けれどもコーカスレースにはたくさんの動物が参加していました。

 大量の賞品を取り合ううちに、他人の賞品もちものが手元に来たり、自分の賞品もちものが誰かに取られたり。

「なんておかしな光景なの。」

 アリスはつぶやきながらその場を離れます。


「メアリーアン! メアリーアン!」

 コーカスレースから遠ざかり、気の向くまま歩いていたアリスの後ろから呼びかける声がしました。

 どこかで聞いたことのあるような声。

 アリスが穴に落ちてしまった原因の白ウサギの声でした。

「メアリーアン! こんなとこで何してる? 早く家から手袋と扇子を取ってこい!」

 白ウサギは怒った声でアリスに命令します。

 アリスは人違いだと説明するのも怖くて白ウサギの指差した方向へ走って行きました。

 ですが、走っても走ってもウサギの家らしき建物は一向に見当たりません。

 気づけばアリスは深い森の中をさ迷い歩いていました。

「ウサギさんのおうちはどこかしら?」


 しばらく森をさまよっていたアリスは急にひらけた場所に着きました。

「あら? あれがウサギさんのおうちかしら?」

 そこにはおしゃれな家が建っていました。



「あんたはずいぶんと物を知らないんだね。


ほら赤ちゃんをあやしてみな!」


「帽子屋か、三月ウサギ。好きなほうを訪ねるといいよ。どっちもキチガイだけど。


ここらじゃみんなキチガイだ。僕もあんたもその仲間。」


「細かいことはどうでもいい。ゆっくりと楽しもうじゃないか。永遠に続く六時のお茶会を。」


「まずは処刑―――判決はあとじゃ!


あやつの首をちょん切れ!」


「誰があんたたちを気にするもんですか! ただのトランプの束のくせに!」


 不思議の国でのへんてこな出来事は突然終わります。

 アリスが悲鳴を上げてトランプたちを払いのけようとしたとき、気がつくと、アリスは木陰に横になっていて枯葉が頭に乗っていました。

「あら? …あれは夢だったのかしら」



キリリ、キリリ。

螺子を巻く音が聞こえる。



「大変大変大変だ! 遅刻遅刻遅刻遅刻だ!」

 懐中時計を持ち、小さな燕尾服を着た白うさぎが走っていくのを見て、花冠を作って遊んでいたアリスはウサギを追いかけました。

「待って! ウサギさん! 待っ…きゃぁっ」

 アリスはウサギ穴に落ちてしまいます。

 落ちて、落ちて、落ちて…たどり着いた場所は不思議な国でした。


 大きくなって、小さくなって。

 次に自分がどうなるのかちっともわからなくなりながらもアリスは持ち前の好奇心で白ウサギを追いかけます。

 ドードー鳥や白ウサギ。

 とってもへんてこな動物にあいながらアリスは森を進みます。


 コンコン

 家を見つけたアリスはドアをノックしました。

 家から出てきたのはお仕着せを着た、魚の顔の召使でした。

「こんにちは。ここはウサギさんのおうち?」

「いいえ。ここは公爵夫人のお屋敷です。さあ、早く入ってください。あたしのかわりに。」

 魚の召使はアリスを屋敷に押し込むと自分は屋敷の外に出てドアを勢いよく閉めてしまいました。

「なんなの?」

 アリスはしばらく閉まったドアをにらみつけていましたがくるりと回って屋敷の中を見回しました。

 アリスの入った部屋は台所のようで、コックがなべをかき回していました。

「なんてひどいにおいなの。」

 部屋の中には鼻の曲がりそうな臭いにおいが充満していました。

 においはコックのかき混ぜているなべが原因のようです。

 部屋の中で赤ちゃんを抱えて座っていた公爵夫人も、公爵夫人に抱きかかえられている赤ちゃんも顔をしかめています。赤ちゃんにいたっては顔をしかめるどころかけたたましい声で泣き喚いています。

 においに平気そうなのはコックと炉ばたに寝転んでいる大きな猫だけです。猫は耳から耳まで届くくらいにニヤニヤしています。

「あの…そのなべで何を作っているんですか?」

 勇気を出してアリスは聞きました。

「作っているんじゃない。未練を煮詰めているのさ。」

 コックは振り向きもせずに答えます。

「未練は食べるものなの?」

「いいや、未練は捨てるもの。ゴミだからこそこんなにおいになっちまう。」

 要領を得ない答えを返すコックに、アリスは腹を立てました。

「もっとわかるように説明してよ!」

 コックは無言でなべを火から下ろし、周りのものを手当たり次第にアリスと公爵夫人、そして赤ん坊のほうへ投げつけ始めました。

「ちょっと! 赤ん坊に気をつけてよ!」

 アリスはとても怒りますが、公爵夫人は気にした様子もなく赤ん坊を投げつけます。

 コックは赤ん坊を受け止め、投げ返します。

 そうして何度か赤ん坊が公爵夫人とコックの間を行き来したあと、公爵夫人は乱暴にアリスのほうへ赤ん坊を投げつけてきました。

「ほれ、赤ん坊をあやしておきな。」

 アリスが赤ん坊を受け止めたのかを確認せずに公爵夫人は部屋を出て行きました。


「こんなところにいちゃだめよ。すぐに殺されてしまうわ。」

 アリスは赤ん坊を抱えて外に出ます。

「あなたもあんなところはいやでしょう?」

「別にかまわないけど。ただ、連れ出してくれたことには感謝するよ。」

 アリスは驚きました。とても流暢に話すこの声はアリスの腕の中、抱えた赤ん坊からしていたのです。

「あのにおいはひどかった。鼻が曲がるかと思ったよ。」

 聞き違いなどではなく、はっきりと赤ん坊がしゃべっています。

 アリスは驚いて赤ん坊を落としてしまいました。

 けれども赤ん坊は大して気にしてもいないようです。

 だんだん赤ん坊の体は大きくなっていってついにはアリスの背をこえ、立派な大人の男性になってしまいました。

「それじゃあね。」

 先ほどまで赤ん坊だった男性はウィンクをして森の奥へと去っていきました。

 アリスは呆然と見送るしかすべがありませんでした。



「帽子屋か、三月ウサギ。好きなほうを訪ねるといいよ。どっちもキチガイだけど。


ここらじゃみんなキチガイだ。僕もあんたもその仲間。」


「細かいことはどうでもいい。ゆっくりと楽しもうじゃないか。永遠に続く六時のお茶会を。」


「まずは処刑―――判決はあとじゃ!


あやつの首をちょん切れ!」


「誰があんたたちを気にするもんですか!ただのトランプの束のくせに!」


 不思議の国でのへんてこな出来事は突然終わります。

 アリスが悲鳴を上げてトランプたちを払いのけようとしたとき、気がつくと、アリスは作りかけの花冠を手に転寝をしていました。

「あら? …あれは夢だったのかしら」



キリリ、キリリ。

螺子を巻く音が聞こえる。



「どうしよう?! 早くしないと女王様がお怒りになっちまう」

 懐中時計を投げ捨て、白ウサギが走っていくのを見て、アリスはウサギを追いかけました。

「待って! ウサギさん! 待っ…きゃぁっ」

 アリスはウサギ穴に落ちてしまいます。

 落ちて、落ちて、落ちて…たどり着いた場所は不思議な国でした。

 ドードー鳥、ずぶ濡れねずみに芋虫や公爵夫人、チェシャ猫。

 個性豊かへんてこりんな彼らに会い、影響されながらもアリスは進みます。

 アリスがたどり着いたのはハートの王と女王が住むハートの城でした。

 城では裁判を行っていました。

 アリスは裁判に参加し、女王に目をつけられてしまいました。

「まずは処刑―――判決はあとじゃ!


あやつの首をちょん切れ!」

 女王の命令に従ってトランプ兵たちはアリスに飛び掛り体を押さえつけます。

 首切り役人がやってきて、アリスの首をはねてしまいました。



キリリ、キリリ。

螺子を巻く音が聞こえる。



「もうだめだ…。遅刻決定だ……。」

 耳をたらした白ウサギが早足で歩いてくるのを見たアリスはウサギを追いかけます。

「ウサギさん? どうかしたの? ねぇ、ウサギさ…きゃぁっ」

 アリスはウサギ穴に落ちてしまいます。

 落ちて、落ちて、落ちて…たどり着いた場所は不思議な国でした。


 白ウサギを追いかけ続けたアリスは森の中で、ニヤニヤ笑うチェシャ猫に出会います。

「ねえ、チェシャ猫さん。私はどっちへ行ったらいいかしら?」

「それは、あんたがどこにいきたいかによるにゃあ。」

「別に、どこでもいいの。」

「にゃら、どっちに言っても関係にゃいにゃぁ。」

「違うの。私は白ウサギさんを追いかけてるの。白ウサギさんを知らない?」

「しらにゃいにゃぁ。ただ、あっちのほうには」

 チェシャ猫は尻尾を右のほうへ振ります。

「帽子屋が住んでるにゃ。あっちには」

 チェシャ猫は尻尾を反対に振ります。

「三月ウサギが住んでるにゃ。好きなほうを訪ねればいいにゃ。どっちもキチガイだけど。」

「キチガイのところになんか行きたくないわ」

「ここらじゃみんにゃキチガイさ。僕もキチガイ。あんたもキチガイ。」

 ニヤニヤと笑いながら言う猫にアリスは既視感デジャブを感じた。

「…あら? この会話、前にもしたことがあったかしら?」

「さぁ、どうだろう?」

「チェシャ猫さんは私と会ったことがあると思う?」

「さあ。君が会ったことがあると思うんならそうにゃんじゃない?」

 笑いながらはぐらかすばかりのチェシャ猫にアリスは腹を立てながらずんずんと歩き出します。

 そんなアリスに背後からチェシャ猫が声をかけます。

「僕のオススメはまんにゃかの道にゃ。」

 その声にアリスが振り向いたときには猫の姿はなく、ニヤニヤ笑いだけが残っていました。

 アリスがチェシャ猫の助言どおり真ん中の道を選んで歩き出すと、しばらく歩いたところで道がなくなっていました。

「猫さんったら。でたらめを言ったのね。」

 頬を膨らませて怒りながらアリスは右の道を選びます。

 ですが、道はしばらく歩いたところでなくなっていました。

 左の道も同様に。

 アリスはもと来た道を引き返そうとしましたがなぜかみつかりません。

 真っ暗な闇の中でアリスは立ち尽くしているだけでした。



キリリ、キリリ。

螺子を巻く音が聞こえる



「どうしよう~。おにいちゃんにおこられちゃう~。」

 どうしようと言っている割には緊迫感のかける口調でのんびりとベストを着た白ウサギが歩いてきます。

 アリスはそんなウサギには目もくれず一心不乱に分厚い本を読んでいます。

 ウサギはのんびりと巣穴に戻っていきました。



キリリ、キリリ。

螺子を巻く音が聞こえる。




 何度も何度も繰り返される物語。

 少しずつ少しずつ歪んでいく物語。

 誰もその歪みには気づかない。

 狂いだした物語はどこへ向かう?


 キリリ、キリリ。


 螺子を巻く音が聞こえる。


 始まりは、いつだっただろう?


 終わりは、どこなんだろう?


 キリリ、キリリ。


 螺子を巻く音が聞こえる。


 繰り返される物語。

 終わりの見えない物語。

 誰もが敷かれた道を走っている。

 道が歪められているとも気づかぬまま、ただひたすらに。





 …………終焉は、訪れない。

あるゲームをクリアしたらむしょーに書きたくなりました。


中身がちょっとわかりにくいかなぁ~と思います。

一応活動報告に解説的なものを載せたのですが、そっちもたぶんわかりにくいです。

読んでくださってありがとうございました。


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