エピローグ
エピローグ
結局、人類は助かった。
ウィルスの魔法陣は一か月前の中国のコンピュータの中にも一つだけ存在していた。
私が作ったソフトでは座標は計算できても時間軸まで計算はできない。
どおりでウィルスが止まらないわけだ……
胸次郎が兵器の能力で過去にあったウィルスのコンピュータを見つけ出し、ヴィナが忌み人の能力でその過去のコンピュータの魔法陣を書き換えた。
今回はヴィナの機転で助かった。まさか、逆作用の魔法陣なんてものがあるとは……
消滅の魔法陣ではウィルスでやられた体を治癒できないが、あれなら確かにウィルスでやられた体も治癒できる。
今、人類は科学と魔法の両方を努めて理解する方法に向かっている。
科学世界にある手のついていないマナ。魔法世界にある手のついていない資源。
再起不能地域や汚染地域は沢山あるものの、未来は明るい方向に進んでいる。
魔法と科学を応用したらどんなことができるか。それを、人類が全員自分の体で体験した。
もう、戦争は起ころうする雰囲気はない。今は、復興に向けて科学世界と魔法世界の本当の交流が始まった。
陳とミーレが望むように歴史はここで終ることはなくなった。
これで、たぶんこれから三〇〇年は歴史が刻まれるだろう。戦争も災害も起こるとは思うが歴史が終るほどではないだろう。三〇〇年後くらいにまた歴史が終りそうなときには、もうその後の人たちに任せる。
私たち家族は、ヴィナと胸次郎が結婚した場所にいる。
ここは、我々家族が出会った大切な場所だ。
ヴィナと胸次郎が子供をあやしている。
「ほらほらー。お母さんはここですよー」
「そして、俺がお父さんだ。お前もバナナを食べなさい。そして、ミルクはお父さんにも分けなさい」
私が胸次郎に突っ込む。
「子供のミルクを奪うな。たわけ」
「なにを言う。本当にミルクが必須なのはお前だ。なんだ、そのみすぼらしい体は」
「私は味噌汁は好きだがミルクは嫌いだ。賞味期限一年過ぎた牛乳を日付だけ確かめて一気飲みしたことがあるからな」
「それで、牛乳がトラウマになっていたのか?」
「当然だ。それが原因で体重が夢の二〇キロ台に突入したのだ。誰もがトラウマになるだろう」
イレミも私につっこむ。
「腹壊しダイエット……これ以上やせてどうするのよ……」
「他にも、食べるものも買えない貧乏ダイエットや、間違った食材を大量に買いこんだときのまずい物ダイエットなど、日々の努力は忘れていない。こうした努力の末に私の完璧なプロポーションが保たれるのだ」
「ピザでも食べれば太らない?」
「青いぞ。イレミ。私のような天性のプロポーションを持つ人間はピザなど食べたら即効で腹を下しさらに体重がへるようになるのだ」
「あたしは、無事に太りつつあるというのに……」
「それは良いことだ。そして、私を敬え」
静かな時間が流れる。今なら聞けるかも知れない。
私はイレミの目を見る。イレミはうなずく。
「胸次郎、ヴィナ。なんで私とイレミを許したんだ?」
胸次郎は答えた。
「夢の中で、死ぬほどミーレに怒られた。お前が恨んでいる人は、全人類を恨んでいたのだ。それでも世界を救おうとしている。うらんでいる人間すら救うのが本当の人間だ。お前は緑太郎を許さない限り永遠に緑太郎の足物にも及ばない。ってな」
ヴィナも答えた。
「夢の中で、めちゃくちゃ陳さんに怒られたの。お前が恨んでいる人は、全人類を恨んでいたのだ。それでも世界を救おうとしている。うらんでいる人間すら救うのが本当の人間だ。お前はイレミを許さない限り永遠にイレミの足物にも及ばない。ってね」
そうか………結局、ミーレと陳の力を借りたのか。
非常に悔しいがしょうがない。
ヴィナは話を続けた。
「でもねー。ヴィナと胸くんはイレミちゃんと緑くんにすごく感謝しているんだよ」
胸次郎も話を続ける。
「だって、子供を作ることができたからな。これは本当に感謝している。ありがとう」
イレミがうれしそうに答える。
「子供ができないわけないじゃない。あたしが命の神様にお願いしたんだし、死ぬほどマナを集めたんだから」
私が横槍を入れた。
「ぼけ。私が二人のiPS細胞から生命に必要な細胞を作ったからに決まっているだろうが!」
「違うわよ。そんなもので子供は出来ません。必要なのは祈りと感謝よ」
「ちげぇ、技術と知恵だ」
「大丈夫だよ。イレミちゃん。緑くん。二人の暖かさは十分な理解しているから……」
「あとは、この子が俺のように偉大な肉体になるまで鍛えれば無問題!」
「そうそう、ヴィナはあと一人子供が増える気がするんだよー」
私のポケットにはミーレから貰った秘法がまだ入っていた。授業の終わりに貰った秘法。
たぶん、ウィルス騒ぎのときに使えということなんだろうな。すっかり忘れていた。
秘法といわれた袋を開けると一つのメモが入っているだけだった。
「ヴィナと胸次郎を使え。それですべてが解決する」
最初から、答えが配られていたのに気がつかないとは……
イレミも陳から同じ紙をもらっていたらしくいまさら悔しがる。
「あー!!あたしにはいい勝負するという神経がないのに………カンニングペーパーがあれば僅かな躊躇もなく見るのに!!くそぅ……なんで気がつかなかったんだー!!!」
胸次郎が私に声をかける。
「おい、そこのホネ。この子に名前をつけてやってくれ」
そうだな………男の子だからあの名前に………
次は、イレミにつけさせよう。たぶん女の子が生まれる気がするから。
終わり。
というわけで、一気に更新しました。
本当は、少しずつ更新がいいんでしょうけど…
まぁ、私としては一気に読んでほしいので……
(まぁ、読んでくれる人がいればの話ですが)
だって、第三章が暗いし、鬱だし何より長い
ここまで、読んでくれる人がいたなら本当にありがとうございます。
そして、もしこの物語やキャラを好きと言ってくれる方がいたとしたらこれ以上の喜びはありません。
もともとこの話は、死んだ友人の約束を果たすために書いたものです。
「お前は、才能がありそうだから長編小説を書きなさい」
と、一方的に約束を押しつけられたのです。
まぁ、書くことはないだろうと思っていたら、そいつが死にやがった。
しかも、自殺ですよ。死ね。
仕方ないので、無職時代に温めていたアイデアを形にすることにしました。
当時、科学好きであった私がフィックションで科学が魔法っぽいもののかませ犬になっていたのが許せなかったという事を魔法と科学を互角にしたらどうだろうと考えて創作した物語です。
コレ書いたものが10年ほど前ですが、オタク系主人公と腐女系ヒロインは今見たら、結構今のトレンドに当たっていてびっくりしている次第です。
いや…こんなの先取りしてても…
さてはて、謝辞として
この「小説家になろう」で執筆している井口亮 先生に、この小説を書くにあたって本当に初歩から教えてもらって、この件では頭が上がらないです。(てにをは、すら怪しかったのです)
いや、本当にありがとう。(この件に関しては)
あと、G 貴様あの世で待ってろよ。
私は約束を守ったし、貴様が逝ってから私はネタにまみれた人生を謳歌しているからな。
いや、もうネタにまみれた人生はこりごりです。
では、改めて読んでくれた人ありがとうございます。
2020年5月
ちょっと、おかしいところを直してみました。
秘蔵していた文があったので、ついでにアップしました。
まさか本当に、中国初のウィルスパンデミックが始まるとは……