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第四章 歴史が終わる二秒前

第四章


平和なはずの世の中。資源があるはずの世の中。マナも使えるはずの世の中。笑顔が絶えないはずの世の中。

現実は、そうではない。科学世界の人々は決して魔法世界の商品と技術を使おうとしなかった。その技術で自分たちがどれだけ苦しめられたか知っているから。そして、魔法を理解できないから。

魔法世界の人たちも同じ。魔法世界の人々は決して科学世界のものを使おうとはしなかった。科学がまったく理解できないから。

世界から流れる世論は友好条約を結んだ連邦国の弱腰。

まだ、戦争ができる。まだまだ戦争ができる。まだ許さない。まだ許せない。

そんな空気が流れている。お互いの技術がまったく理解できないから余計に怖がり余計に見下す。

そして、復讐は復讐を呼ぶ。

私はそんな内容のテレビをつけていた。

おそらく事実だろう。辺りには戦争デモの声がする。

国連と国際は最初にお互いにコミュニケーションを促すために、最初にインターネットとテレパシーの共有化を行った。

早い話が、魔法世界の人間でもテレパシーでインターネットができるということである。

そして、魔法世界のインターネットも科学世界のコンピュータでアクセスが出来るようになった。ちなみに魔法世界のインターネットは木がサーバーのかわりに情報を蓄積させているようだ。イレミの話だとそういう情報に特化した妖精が世界中にいるらしい。

このような、魔法と科学の調和は確かに始まっているがまだまだ弱い。

私とイレミは、だらけながらお茶をいっしょにすすっている。

大きな共通した悩み事があるからだ。


「なぁ、イレミ」

「なぁに」

「一つ、相談がある。ヴィナと胸次郎の記億をもう一度消さないか?」

「なにを言っているのよ!!!あんた、また逃げる気なの?」

「正直言おう。あんな精神状態では直るものも直らん。そうでなくても、あの魔法科学兵器の威力は半端ではないからな」

「あたしはそんなことをするのは反対だし、何より技術的に無理。あんな病がかかった状態で記億なんて消せると思うの?」

「だが、やらないと病にやられるぞ」

「やったら、病にやられるわよ」

再び二人分のため息がもれた。

「こんなことなら、時空移動器なんかつくるんじゃなかったかな……」

「開発しなければ、五年で人類の歴史終ったけどね。人類の問題があたしたち家族の問題になったんだから感謝しなさい」

「まぁ、少なくても未来はあるからな」

「もっともその未来の可能性を消したい人は沢山いるようだけど」

イレミは外の様子を指差した。デモ隊が列を作ってうねり歩いている。

「暇人どもめ。デモってるくらいなら働け」

「ニートが言っても説得力ないわよ」

「私は主夫だ。ニートではない。おまえこそ働け」

「あたしは主婦よ。ニートではありません。自動食器洗い機と自動掃除機と自動洗濯機と自動炊飯器とカップメンに頼っている誰かさんとは違うのよ」

「よく分からない式神で家事らしいことをする奴よりましだと思うぞ。働けとまではいわん。動け。今日十メートルも動いていないだろう」

「あんたもね」


ピリリリリリリリリリ

アラームがなった。胸次郎とヴィナの世話の時間だ。

「さて、時間だな。今日も胸次郎の世話を頼む」

「あんたも、ヴィナの世話をお願いね」

私はヴィナの世話を担当している。

私はまだ、まともに胸次郎の世話を行っていない。私は胸次郎の村を滅ぼし胸次郎の家族を虐殺した。その記憶が胸次郎と私の溝になっている。一度、私は胸次郎に会いに行ったが大声で拒否をされた。会いたくないと。

イレミも同じ理由でヴィナとまともに会っていない。

ヴィナはイレミを拒否している。

だから、私はヴィナの看病を行いイレミは胸次郎の看病をするという奇妙な状態になった。

私は、ヴィナの部屋をノックした。


「どうぞ」

「入るよ。ヴィナ」

そういうと、私はヴィナの部屋に入った。

薄暗い部屋、顔色が悪いヴィナが無表情のまま何もない空間を見ている。

私は、できるだけ笑顔でヴィナに話しかけた。

「ヴィナ。調子はどうだい?」

「最悪だよぉ……」

「そうだな。最悪だな。ヴィナ。何か欲しいものはあるか?」

「…………にたいんだ」

「もう少し、大きい声で言ってくれないかな」

「死にたい!もう、どこにも行きたくない!ヴィッカのところに行きたい!!」

ヴィナはそういうと頭を抱え込んだ。

やれやれ…………毎度この調子だ。ここで、怒るのはたやすい。

しかし、ここで諦めてはいけない。死にたい理由が必ずある。

それを聞いて、ただうなずくだけでいい。そして、すこしずつすこしずつ外にだしてやりいろんな人と話せることができれば、いつか直るはず。奇跡は起こらない。僅かな前進を一歩ずつゆっくりと行うことが大切だ。そんな愚直な積み重ねがそのうち奇跡になる。

「ヴィナの昔の話を聞かせてくれないかな……?」

いいままでは、私から話しかけてもふさぎ込むだけだった。


ゆっくりと時計の秒針の音が聞こえる。


ヴィナは、ゆっくりと質問に答えだした。

虫に憑かれてからの初めての言葉。

「ヴィナの……昔。お父さんが魔物狩りしていて……お母さんが小さい家でヴィナとヴィッカを育ててくれた……きれいな川があって、魚をつったり……木の実を食べたり……ヴィッカとずっと山であそんでいたんだ……」

……私は親に虐待されていた。そこで、警察の捜査方法を調べ上げ、法律を勉強しどうやれば無実になるか考えに考え抜いて、最終的に化学の知識で親を毒殺したものだが。

警察は、幼い子供が殺したとは思わずに捜査をそのまま打ち切ったんだよな。

それに比べて、幸せな子供時代だな。……うらやましい。

ヴィナが私に質問してきた。

「緑くん。……緑くんが犯してきた罪って胸くんの村のことだけじゃないでしょ?」

ここで隠してもしょうがない。事実は事実だ。

「そうだよ。強盗、サギ、人殺し、虐殺、テロ。大体犯罪と名のつくことはすべてやった。だってできたし、誰も私を捕まえることは出来なかった。私がどんなに派手な犯罪を犯しても、誰も私を見つけることは出来なかったし裁けなかった。だから、私はなんでもできると思ってなんってなんでもやった。そして、世界の征服ができるくらいまでなんでもやった。それでも私は裁かれなかった。そこで、陳と出会ったんだ」

「なんで、世界を征服しなかったの?」

「胸次郎に会ったからさ。胸次郎に出会って初めて感情というものが生まれたんだ。以前の私には、計算と比較と利害しか見えなかったから。胸次郎に出会った後、酷く後悔したよ」

「罪は償ったの?」

「償えないよ。法律でまともに裁こうとすると死刑が一〇〇回行われてもまだ足りない。だから……この世界から逃げ出したかったんだ。ゼロから、真人間としてやりなおしたかったんだ」

ヴィナは目を大きくして驚く。

「それで、魔法世界にきたのね……やっぱり、胸くんすごいなぁ……そんなすごい人を改心させちゃうなんて……」

やっぱり、ヴィナは知らないんだな。

「ヴィナ。ヴィナも偉大な人を改心させたんだぞ」

「誰なの……?」

「イレミだ。ヴィナの知っている昔のイレミと今のイレミは同一人物だと思うかい?」

「………………」

「イレミは、昔親に虐待されていた。そして、親を殺すためだけに魔法を必死で学んだ。裁かれない方法も必死で考えて考えて考え抜いて、そして実行した。そのまま、誰からも愛されずに大体の犯罪に手をそめるようになるんだ。それでもあまりの魔法の技術のレベルで誰も捕まえられないし、誰も裁けなかった。そして、誰もイレミを叱ることができなかったからイレミはだんだん壊れていったんだ。限界まで壊れた果てにヴィナの村を襲ったんだ」

イレミから話を聞いていないが私と生い立ちはほとんど変わらないだろう。

まぁ、私はBLにははまらないし、あそこまでいいかげんではないが。

「でも、ヴィナはイレミちゃんを許すことはできないよ……」

「許さなくていいよ。イレミはヴィナに感謝しているんだから……」

「なんで、ヴィナに感謝するの?」

「ヴィナがイレミの近くで、ずっと笑顔だったから。ヴィナのおかげで、イレミは計算と理屈と利害だけの不完全な世界から戻れたんだ。イレミはヴィナがいてはじめて人間になれたんだよ。世界には喜びや笑いがあるということを初めて知ったんだ。そんな恩人をイレミは決して見捨てない」

「じゃあ、イレミちゃんが科学世界に行きたがっていた理由は……」

「もう、魔法世界で犯した罪は償えないから、恩人と共に新しい世界でゼロから人間として生まれ変わりたかったからだよ」

「……………………」

「ヴィナはイレミを許さなくていい。でも、イレミを理解してくれないか?」

長い長い沈黙。ヴィナは、私に目を合わせないようにカベを見つめたままつぶやいた。

「…………ウン」

「ありがとう」

「なんで、緑くんがお礼を言うの?」

「もう、イレミは私の家族だからな」

……言っていて体がかゆくなってきた。こんな臭いこと言いたくないのに!!私はもっとお茶らけた奴なのに!!携帯大好き、ギャルゲー、アニメ大好きな超天才科学者なのに! こんな臭いセリフをいうやつじゃない!

ヴィナが少しだけクスリと笑う。

「ありがとう。緑くん。もし、少しでもウソをついていたらヴィナは緑くんも許さなかった。たとえ臭い理由でもヴィナには届いたよ」

……そうか。ヴィナもウソを見破る能力があったんだな。良かった……ウソ言わないで。核シェルターのときはロボット経由だから分からなかったんだな。

「ヴィナ。私も一つだけ質問がある。なんで、胸次郎と会ってくれないんだ?」

「ヴィナが生きていける理由………ただ一つだけの理由なんだよ……胸くんと結婚しているから……」

ヴィナは指輪を大事そうに抱える。

「それなら、どうして会わないんだい?」

「もし、胸くんがヴィナを拒絶したらヴィナはたぶんもう生きていけないよ……よくわからないけど、本当に好きなんだもん………それを考えるとどうしても会えないよ。………そして、胸くんにはヴィナを拒絶する理由は沢山ある。だって………ヴィナは……胸くんを………本気で殺そうと…………」

ヴィナの目には涙が浮かんだ。私はそっとハンカチをヴィナに渡す。

以下のことを考えながら。


くぅぅぅぅぅ。なんてかわいい奴だ!!!どこぞのクソガキとは大違いだ!!

まさに、萌え。萌えすぎ!正直、この弱っているヴィナにネコ耳かぶせてぇぇぇぇ!!!

めがね、かけさせてぇぇぇぇぇ!!!目がいい魔法世界の人間にあえてめがね!!このミスマッチがさらに萌えを加速させる!言うならば、SLと新幹線が並走しているような感動!マジで二次元ではなく、リアルに萌えたのは初めてだ!!まさに、スキップをしたくなる一瞬だ!!

そんな、かぐわしき妄想に浸っているとヴィナから不審な目で見られていた。

ハンカチを受け取りながら一言。


「緑くん。今、変なこと考えていたでしょ?」

ギク……

まずいまずい。あまりの甘美な妄想で一瞬世界がとんだ。

ヴィナは人の心を読めるんだった。さて、イカス私を演出し続けなければ。

「ヴィナ。胸次郎はヴィナのことが大好きだよ。でも、胸次郎もヴィナのように本気で殺意を向けてしまったから、会うに会えないんだ。もし……胸次郎がヴィナに告白してきてくれたら……そのときは胸次郎を許してくれるかい?」

「ヴィナは、胸くんのこと大好きなんだよ。許すも許さないも……ないんだよ」

「なら、良かった。ヴィナ。約束できるかい?」

「なにを?」

「今のような、表情を取り続けること。そうすれば、すぐ虫は取れるし、胸次郎にも会える」

「うん……早く……胸くんに会いたいなぁ……」

「分かった。次は胸次郎に会わせるよ。約束する」

「本当?ありがとう……」

私はそういって、ヴィナの部屋をでた。

良かった。本当に良かった。今までのように、死ぬ、会いたくない、もう殺して、私は愛されていない。と、いわなかった。初めて笑顔があった。

これを奇跡というなら、奇跡は小さい努力の毎日の積み重ねで初めて奇跡になる気がする。イレミに対する感情はまだまだ許せないだろうが、今の表情ができるならこれからゆっくりと打ち解けてくれるだろう。

イレミも胸次郎の病室からでてきた。イレミの顔には笑顔が見える。


「イレミ!胸次郎の様子はよかったんだな!!」

「その様子だとヴィナの様子もよかったのね!良かったぁ…………長かったよう…………」

「しかし、イレミに謝ることがある。イレミの過去をヴィナにすべて言ってしまった」

「いいよ。いいよ。あたしもあんたの過去すべて胸次郎にいっちゃったから」

「しかし、生い立ちがまったく同じというのもいやな気分だな」

「まったくよ。こんなホネのガラクタじゃなくてもっとイケメンな王子様だったらさらに良かったのに!そして、当然イ・ケ・ナ・イ・同性愛の趣味を持っているのはデフォ!小さな男の子の恋人をもっているの!!」

「それは、こちらのセリフだ。こんなクソガキではなく、もっと天然の猫耳メガネっ子でなおかつそれが妹で一二人ほしかった」

「妹という時点で、何かちがわない?」

「違わない。正しい」

「ところで、次に胸次郎とヴィナをあわせる約束したけど大丈夫?」

「ああ。まったく問題はない。むしろ、私もヴィナとそーゆー約束をした」

「つくづく、対称性って恐ろしいわね……」

「ああ。時空がいっしょでも同じような行動を取るとはな……」


ヒカルカゼヲオイコシタラ♪

携帯の着歌が流れた。メールが来たようだ。

「あんた、その趣味の悪い着歌やめないさいよ」

「ヤオイをひた走る貴様にだけには言われたくない」

メールの確認をしたら信じられない内容が書いてあった。

「おい、イレミ……」

「見なくても分かるわ。……あたしにも念報がきたよ」

メールの内容はミーレと陳が自ら国連軍の本部に出向いたということらしい。

そして、今日にも極秘に処刑されることが決定された。

という内容だった。


私とイレミは同時にため息をついた。

「正直、陳の死刑は止めたい。奴はこれからの復興に向けて大切な人材になる」

「あたしも、ミーレの死刑は止めないと。あたしレベルの人間なんて一体何人いると思っているのよ!」

「場所は………科学世界の南極か……なんでそんな辺鄙なところで……」

「今日じゃ、どうやっても……助けられないよ………」

クソ……陳。気に食わないデブだが、奴のおかげであの暗黒期を乗り切れたのも事実。出来る限りのことをして助けなければ。やつはナンバー二だが天才だ。正直、総合力では世界一だ。私には苦手なことが多すぎるからな。

私は、すぐさま国連の偉い奴に電話をかけた。


「はい、もしもし」

「事務総長か?人工人間を作った緑太郎だが。」

「先の戦争では、大活躍でしたな。これからも科学世界代表として辣腕をふるっていただきたい」

「辣腕をいっしょに振るいたい奴がいる」

「ほう…………あなたのお眼鏡にかなったのは誰ですか?」

「陳だ。奴を特例で死んだことにして、てきとーな人形でも撃って死んだことにならないか?」

「それは、かないませんな」

「なぜだ?」

「あなた方がそういうと思って、陳を死刑にしたあとにあなたにメールを打ちました」

「おい………なんて…………!!!!お前今、なんていった!!!?」

「陳は、この世界の秩序を壊した大悪党です。あなたも秩序を壊しましたが陳はもっとひどい。なぜなら陳のせいで科学世界の勝利で終る予定が魔法世界との同盟をむすばざるを得ない状況に追い込まれましたから」

こいつら……まさか…………

こいつらがまだ、デモや戦争をあおっているのか?

もう、資源がないだろう!もう、プライドとかいっている場合ではないだろう!

協力して、未来を築いたほうが……

しっかりしろ。こいつに感情をぶつけてはダメだ。情報だけを聞き出さないと。

「国連軍はまだ国際軍と戦いたいのか?」

「その通りでございます。科学は我が文明のすべてがかかっております。負けるはずがないのです。魔法などは人類には必要ありません。そして、魔法世界が資源の活用を見出す前になんとしてもそれらを奪い取る必要があります」

「なら、なんでネットだけは開放した?」

「あなた様であろう方が、そんな愚問を聞くのですか?次の戦争のために……ですよ」

「…………そうか」

「あなた様には、陳とミーレの処刑する瞬間の映像を送ります。なにやら、意味不明なことを口走っているので…………あなた様ならその内容がわかるかも知れません。では、忙しいので失礼」

こうして、電話が切れた。

次の戦争。つまり、魔法のことを調べ上げて今度こそ戦争で勝つつもりということだ。

インターネットを開放することにより相手国の機密情報をいち早く手に入れる。

ハッキングや情報収集なら、科学世界の技術が上だと思っているのだろう。

そして、魔法世界も同じことを考えて魔法世界のインターネットを開放したということか。

バカな奴らだ。魔法世界と科学世界は対称世界だぞ。

魔法世界が科学世界にダメージを与えれば、科学世界が同時に魔法世界に同等のダメージを与える。まるで、鏡と戦っているというのがまだ分からないのか。

そして、協力すれば絶対に裏切らないのに……

これは、囚人のジレンマではない。最適解が存在する。

自分が協力すれば、相手は必ず協力するのに……


イレミは涙でうるんでいる。

イレミもいてもたっても居られなくて、国際軍に念話をしたようだった。

おそらく、同じようなことを言われたのだろう。

「え……え……ミーレ……」

「泣くな。私も泣きそうなんだ」

「だって……ミーレがいなきゃ、たぶんあたしは生きていない………」

私は、イレミの涙をハンカチでぬぐってやってから、自分に言い聞かせるようにイレミに話した。

「私も、陳がいなければ私はこの世にはいない。だが、ここは冷静に考えろ。今思うと陳もミーレも死にたがっていたとしか思えない」

「そうね………あの戦争もミーレと戦ったというよりは、ミーレがあたしに胸次郎を渡すためとしか思えなかった……」

「陳は、本当に賢い奴だ。あの中国の戦力と科学力、そしてヴィナを有効に活用されて戦うと間違いなく私の負けだった。私がヴィナに勝てたのは、一対一の勝負で、なおかつ相当の準備を行った場所で戦ったからだ。陳が指揮していたら必ず負けた。陳はヴィナの指揮をしていなかったんだ」

「そういえば……そうね」

さて、そろそろ陳とミーレが処刑される映像が届くはずだ。

私は自作のパソコンを立ちあげた。

「イレミ。いっしょに見るか?陳とミーレの処刑映像」

「見たくないよ……本当は……」

「だが、おまえも陳からメッセージを受け取ったんだろう。陳の知識を末代まで伝えるという言葉を。陳は目的もなしに死ぬ男ではない。もっとも、大儀のために死ぬ男でもないが」

「あんた、ずいぶん冷静だね」

「ミーレには魔法学をおそわった恩があるしな……その約束は守らないと」

パソコンのアイコンが光っている。

映像が届いたようだ。

私はさっそくその映像を開く。


寒々とした大地。手錠をかけられた陳とミーレが棒のようなものに括りくくりつけられている。ミーレには槍を。陳には銃を。それぞれの死刑執行人達がそれぞれの武器を構える。

死刑執行人は陳とミーレに最後の言葉はないか聞いた。

陳とミーレはお互いの顔を見てうなずいた。

「ミーレ。わしが全て話す」

「ああ。陳、まかしたよ」

陳は不敵な笑みを放ちながら話を始めた。

「我が同士たちがなぜ死んだと思っている?二〇〇億の我が同士は人類のために布石になった。我が同志たちは誇り高いのだ。人類のためならば、喜んで命をささげるだろう。資源のない科学世界。マナのない魔法世界。どちらも長くは持たないとは思わないかね。だが、お互いは無理解という恐怖のために戦争を仕掛けてきている」

死刑執行人は言った。

「話が長い。やっぱり今死ね」

死刑執行人は、陳の頭に銃を突きつけた。


そして、無慈悲に発砲。陳の頭に弾丸がめり込む。

だが、陳は演説をやめない。

「戦争は華やかだ。だが、武器のその火はもう尽きかけている。お互いは戦争をまだ行う力はあるのか?ないだろう。このままでは、人類は必ず滅ぶ。もう、滅ぶしかないのだ。しかしだ……魔法と科学の調和があれば、歴史はまた紡がれる」

「なぜだ!!なぜ死なないのだ!!!やめろ、話をやめろ!!」

陳は、なんども頭を打ち抜かれても演説をやめない。銃声が何度も轟く。

「人類のために、歴史のために、未来のために、まだ生まれていないわが子たちのために、誇り高い我が同士は守るべき人類のために我らができることはただ一つ。人類の敵になること。魔法世界の住民と科学世界の住民の共通の敵になること」

「なんで……なぜ死なないのだ!」

死刑執行人は、何度も何度も何度も陳の頭を打ち抜きつづける。

陳は、頭がすべて吹き飛んだ状態でもまだ言葉を続けている。

「我らという強大な敵が居て、初めて、人類は協力し魔法と科学お互いの理解を深めるのだ。それだけしか、人類の歴史をつなぐ道はない。我が偉大な祖先たちから受け継いだ歴史をこんなちっぽけな愚行で止めてはならん。人類は全滅してはならんのだ!そうだ。我ら中華人民共和国と中央共亜国は魔法と科学の調和のためだけに同盟を結んだのだ。我ら誇り高き民族は歴史を後世につなぐために、焼かれ、撃たれ、切られ、蔑まれ、憎まれ、殺されることを自ら望んだのだ!!後世を愚鈍なる貴様らに託したのだ!!忘れるな!偉大な我が同士達のおかげで世界の歴史はまた紡がれる事実を!!」

「うわわわぁぁぁぁ!!!なんで、なんで、死なないんだ!!」

陳は死刑執行人をにらみつけた。

「うるさい黙れ。もっと喋らせろ」

「誰か……誰かこいつを黙らせろ!!」

「だが、愚鈍なる貴様らは我が同士のその心の叫びを踏みにじるように、再び戦争へと駆り出している。わしは、それを我が民族の侮辱と考えた。このままでは、人類の歴史のために笑顔で死んだ誇り高き我が同士が許さない。そこで、人類が生き残るに値するかゲームを行うことにした」

ミーレが陳に向かって言葉を挟む

「おいおい、陳。このままでは、わたしが何も話さなくて殺されてしまうだろ?」

「おお。そうだったな。レディーファーストを心がけるわしがとんだ失態だった。どんどん喋るがいい。どうやら、こいつらはわしらを殺せないようだ。死刑執行人の名が泣くな。まったく、情けない」

ミーレは、笑みを浮かべながら話をし始めた。

「そう、そこでゲームの内容だが」

「もういい、死ね!!!」


ミーレの胸に槍が突き刺さる。ミーレは痛みが感じないように話を続ける。


「そこで、全人類にかかるウィルスと呪いをかけさせてもらった。まぁ、人類の命はあとわずかだ。このゲームから助かるには全人類が協力しなくてはならない。まぁ、このままでは間違いなく全滅。どこかの誰かのように一人二人の天才だけでこのゲームが解けるとは思わないで。とりあえず、キーワードは八月一日。それから一週間がゲームの期間」

陳が横槍を入れる。

「おいおい、ミーレそんなものでいいのか?」

「言いたいことはすべて陳がしゃべったから。偉大な中央共亜国民とわたしは、国連と国際を許さない。偉大な国でなければ、全人類の敵になれない。我ら中央共亜国民とと中華人民共和国の人民は自ら憎まれ殺される役目を負ってまで人類の歴史をつなげることを望んだ。貴様らは身を挺したその好意を無碍にしてその歴史を閉ざす選択をしたのだからな。本当に……恥を知れ!!!!」

五本の槍が一気にミーレの体を貫く。

辺りに血が飛び散り、内臓が飛び出る。

ミーレは死刑執行人に話しかける。

「まだ、槍が足りない…………わたしは中央共亜国の二〇億の命を絶つ作戦をしたのだ!二〇億本の槍でわたしを貫け!それでもまだ足りない!もっと槍を!もっと槍を!もっと槍を!!」

陳はほとんど唇しか残っていない状態でミーレに話しかける。

「おいおい、ミーレよ。それならわしは二〇〇億の弾丸が必要ではないか?面白い。わしにももっと弾丸をよこせ」

いっせいに、死刑執行人たちは弾丸を陳に放った。

数百という槍がミーレに突き刺さる。


そこで、映像は切れた。

言葉もない。あまりの内容に言葉を失う。

「おい………なんてことを……」

「じゃあ………あの戦争は……やっぱり……」

過去の友人が死んだ悲しみよりも、陳に対する怒りがわいてきた。

「ちょっと待て!人類を戦争しかやらない奴に託すな!!!陳!!お前はなにをやっているんだ!!それなら、中国がすべての実権を握り世界を征服しろ!!それでも、歴史は刻まれるはずだ!」

「そうよ!!ミーレがやればよかったじゃない!!なんで、こんな奴らに歴史を託すのよ!!!」

「そして、なんで私に連絡を取らなかった!!そんな計画なら、私は喜んで力を貸すぞ!!ミーレも私の能力をよく知っているだろう!!」

もう、涙も出ない……陳が……人のために死ぬなんて……

ただの外道だったはずなのに……

あの戦争で、本当に世界征服できたのに…………

人類の未来だけを考えて、あの作戦を行ったというのか……

頭が混乱してくる。


お互い、何も出来ずに時が流れる。


私とイレミが落ち着いたとき、イレミが私に問いかけた。

「ねぇ、もし………だよ。もし、だけど………四年くらい前の緑太郎なら、陳が人類を助けるために力を貸してくれといったらどうする?」

「決まっているだろう。助けるフリをして最終的に人類を滅ぼす」

「そんなことをすると、自分も死なない?」

「人類の有無は当時の私には大きな意味ではなかったから。人がいてもいなくても一人だったし……人類とは私以外の人間をさす言葉だと理解するだろうな」

「あたしも……そうだった。絶対に遊び半分で人類をほろぼすことを考えた。だから、ミーレと陳はあたしと緑太郎に声をかけなかったんじゃないかな…………平常な感情をしているように見せかけて、油断を狙っている………と思ったんじゃないかな…………陳とミーレが同盟を組んでいることが最初からばれていると思ったんじゃないかな………」

「そんなことは………当時の私ならやりかねない………人を騙すためにはなんだってやったから……知っていることでも知らないというし、知らないことでも知っていると嘯いて情報を引き出す………」

「だからこそ、人類を救うという目標はあたしたちには話せなかった。最後に必ず邪魔されるから………」

「最後というか、最初から失敗するように仕向けてそれをただ眺めているだけだろうな。崩壊は最後の最後で始まったほうが美しいから。そして、その崩壊のきっかけは一番初めにあることが望ましい。なぜなら、最後に崩壊すると決まったものを人が汗水たらして無駄な努力して作るからだ。その無駄な努力の過程を見るのが何よりすきだった」

「今考えると、本当に最低な奴らだったんだね。あたし達って」

「今まで私は陳が危ない奴だと思っていたが、陳の対称性であるミーレは常識人だった。信じがたいが奴は、本当はまともだったのか?」

「え?陳はまともな常識人だよ。ミーレこそ狂っているじゃない!!!」

「おいおい、なにを言っている?ミーレはすぐ殴るし年増だし朝が早くて確かにうざいが、それ以外は非常に優秀で優しい人間だったぞ」

「あんたこそ何言っているのよ!!陳はデブで口うるさいし朝早いけど、それ以外は本当に礼儀正しい紳士だったよ!!」

「うそだ!陳とは長い付き合いなんだぞ。紳士という言葉は奴にはない!奴にあるのは破壊と殺人と世界征服という目標のみだ!」

「ミーレがやさしい訳ないじゃない!!ミーレにあるのは復讐と策略だけよ!全人類に復讐するはずのミーレがなんで人類の歴史を救わなくちゃいけないのよ!」


もう、お互い答えは分かっていた。

私が接してきたミーレが本当のミーレだということを。

イレミが接してきた陳が本当の陳だということを。


昔の私があまりに人としてクズだったため、陳は自分に害が及ばないように狂ったフリをしていただけということか。

当時の私………おそらくイレミも、人の感情が著しく欠けていて、圧倒的な知識とひらめきがあった。そして残虐。人にモラルを逸脱する行為を強制させて人を壊すその思考。人を騙し、その人を崩壊させる趣味。すべての努力を無駄な努力に変えるその性癖。害を加えられたら、その家族を対象に復讐するその考え方。

そんな奴から、身を守るためにはどうすればいいだろうか。

一つは、関わらない。

陳のように、関わらざるを得ない場合はどうすればいいだろうか?

もう、狂っているように見せかけるしかないだろうな。

さすがの私も、壊れている人間には興味がなかった。

なにをしても悲しまないし、壊れていると努力はしないし、モラルもなかったから。何よりも人は壊れるから面白いのであってもともと壊れていたら壊しようがない。

陳は壊れていなかった。壊れていたのは我々だけだったのか。

イレミがぼそりとつぶやく。

「あたしは……もしかして、親友になるべき人を………」

「なんで……私は、あんなにダメだったんだろう………」

「陳は……ミーレの話を聞いていたけど、最終的にあたしを信用して科学を授けたんだね………」

「ミーレも………陳の話を聞いていたけど、最終的に私を信じて魔法学を授けたのか………」

いつまでも消えない過去の過ち。その代償は、陳にもミーレにも、ヴィナにも胸次郎にも確実に多くの代償を支払わせた。そして、私とイレミは何一つ代償を支払っていない。

私が無能なら、いつかどこかで必ず裁かれた。

私の場合は、それすらもかなわなかった。


後悔だけが私の人生になりそうな、そんな虚無感。

もはや、一生かかっても償いなどできん。


だが、私にはヴィナと胸次郎がいる。ついでにイレミがいる。

今なら、家族がいるのだ。くじけるわけにはいかない。


私はイレミに聞いた。

「おい、今日は何日だ?」

「七月三一日よ。どうしたの?」

「陳とミーレが八月一日に何か仕掛けると言っていただろう?」

「なんか、ゲームとか呪いとかウィルスとか言っていたね……」

お互い少し考えた。私には遠く及ばないとしても陳が仕掛けてくるゲームだ。

奴はそういうことに関して、ウソはつかない。それに、処刑されるときにウソは言わないだろう。ウソは自分が優位に立つために使うものだ。それに関して、例外はない。

と………なると、本当に全人類を滅ぼす方法があるというのか。

「よく分からないが、とてつもなく嫌な予感がする」

「あたしも…………」

「確か、食料は一年分くらいの備蓄はあるよな」

「正確には、四〇一日と二食分の食料と水よ」

「それだけあれば、十分だな」

「でも………どうやって全人類にウィルスやら呪いやらをかけるんだろね?」

「分からない。どんな感染力の強いウィルスだって数箇所程度でばら撒いても世界中には届かない。感染地域を隔離して終わりだ」

「そうよ。どんな呪いでも前提条件を満たさなければかからないわ。全人類に呪いをかけるには恐ろしいほどの前準備がいるよ」

「どちらにしても、明日分かるが………」

「ヴィナと胸次郎はどうするの?」

「奴らは、金属がんと虫を落とさないといけない。たとえ人工人間とホムンクルスとはいえ今の状態でウィルスやら呪いだかにかかるとまずいな」

「普段なら、まったく心配はないのだけど……」

「一度、ヴィナと胸次郎を同室にしよう。そこで隔離する」

「………大丈夫?あの子達まだ精神状態が危ないよ」

「陳は人類を滅ぼすゲームを行うと言った。万一に備えないといけない」

「………ここまで質問していてなんだけど、ここまであたしと考えが同じだと正直気持ち悪い」

「言うな。私も心を読まれているようで気持ち悪いんだ。胸次郎の部屋にヴィナを連れて行く。おまえはどうする………って、ついてくるだろうな。私も胸次郎に会いたいし」

「一目だけヴィナを見せて………お願い………」

私は再びヴィナの部屋のドアを叩いた。

「どうぞー」

ヴィナは答える。イレミは扉のところで隠れる。

私はヴィナの部屋に入った。

「ヴィナ。緊急事態だ。よく聞いてくれ。これからよく分からないが全人類が滅ぶかもしれないウィルスと呪いが流行る」

「え……?どういうことなの?」

ヴィナの顔が青ざめる。

「だから、ヴィナを保護するために一度胸次郎と同じ部屋で一週間すごしてほしい。私とイレミが本気でお前らを守る。別々だと手間が二倍になる」

「ちょっと……まってよぅ。そんなの急にいわれても困るよう」

「時間がない。そして、選択肢もない。私たちも自分達の身を守らなくてはならないから。すまん。了承してくれないか?」

「……ずるい。ヴィナに選択の余地がないのに相談するなんて」


ヴィナはふてくされたようにそっぽを向く。

イレミ……いつ出る気だ?

扉のカゲに隠れていたイレミがひょっこりとヴィナの部屋に入ってきた。

できるだけ笑顔で。楽しかったときと同じ表情で。

無理しやがって。

「ヴィナー。ねーねー。お菓子もって来たよー。いっしょに食べようよー」

ヴィナの表情がいっぺんする。

「近寄らないで!ヴィナは一生イレミちゃんを許さないから!出て行って!!」

イレミの表情が一気に暗くなる。

「ヴィナぁ……あたしは……なんでもするから……一生ヴィナに尽くすから……どんなことをしても償うから……もういい加減に許してよ……」

「イレミちゃん。償うというなら、いまここで死んじゃえ」

「ヴィナ。それで本当にあたしを……許してくれるの?……あたしが、死ねばヴィナの気持ちは本当に……晴れるの?」

「いいから、早く死んで!」


イレミは、自分のポケットにあるボールペンを取り出した。

ボールペンの先を自分の首に向けた。イレミは半笑いの状態でつぶやいた。

「ヴィナ。よく見ててね?あたしの死ぬ姿を。こんなことで償えるなら安いものよ」


おい、お前……本気か?

「馬鹿野郎!!!」

私はイレミの手を思いっきり払った。

イレミの手からボールペンが落ちる。

イレミの目の焦点も合っていない。イレミは茫然自失に座り込んだ。

「イレミ!!こんなことで死のうとするな!!」

「だって……ヴィナが……死ねって言うから…………」

私はヴィナに向かって叫んだ

「ヴィナもヴィナだ!!イレミがどれだけお前のことを想っているのか分からんのか!!」

「分からないよ………分かるわけないじゃない!!なんで、お父さんとお母さんを生きたままヴィナに食べさせた張本人から想われなきゃならないの?」

「………だが」

「イレミちゃん。もう消えてぇ!!」

ヴィナが聞き取れない言語を喋る。

ヴィナの体内にいる虫がヴィナの皮膚を突き破った。辺りは血にそまる。

イレミは、ヴィナの魔法でドアを突き破り部屋の外まで吹っ飛んだ。

そのまま、イレミは廊下の壁に激しく叩きつけられる。

廊下のカベにはイレミの血のあとがついた。

「緑くん。あなたもでていってね。イレミちゃんなんかをかまう人間もしんじゃえ。どうせ、胸くんの村でイレミちゃんと同じことやって笑っていたんでしょ?」

「ヴィナ……ちょ…………」

「いいから、出て行けぇぇぇ!!」


ここは、イレミの治療が先決だ。ダメだ。また振り出しに戻った。

ヴィナは咳き込んで、虫を吐いた。

魔法なんか使うから……また、治療が一からやり直しだ……

私はゆっくりと、ヴィナの部屋から出た。

この調子だと胸次郎に会わないほうがいいな。ヴィナと同じ反応が予想される。

その前に、イレミだ。

私はイレミに駆け寄った。


「おい!!生きているか!!おい!!」

「あはは………なんとかね………」

「しょうがない。ヴィナと胸次郎は別々の部屋でなんとかするぞ」

「やっぱり………嫌われているなぁ………」

「とりあえず、ヴィナの部屋と胸次郎の部屋に食料を一〇日分ほどおいとこう。陳の話では七日ですべてきまるようだからな。人類が滅ぶにしても滅ばないにしてもどちらにしても」

私は、イレミに包帯を巻きながらそういった。

「そうだね……胸次郎にもこのこと伝えないと……」

「ああ……すまないが頼むぞ……」

「大丈夫。まかせておいてね」


次の日。八月一日。

よく晴れた日だった。私とイレミはいつもどおり昼過ぎに目が覚めた。

いっしょにテレビを見ながらお茶をすする。昨日とまったく同じ状況。

テレビの内容も、昨日とまったく同じ。

科学世界は魔法を許さない。

魔法世界は科学を許さない。

そして、早く戦争を。科学か魔法か。どちらか早く白黒を。

デモ隊の怒号が町に響く。


イレミが私に話しかける。

「ねぇ、……なんにも起こらないねぇ」

「だなぁ…………」

「へーわだねぇ……」

「だなぁ………ところで、お前は昨日ちょっと取り乱していたが大丈夫か?」

「大丈夫よ。心配かけてごめん」

「まったく、自分から死のうとするな」

「うん……こればかりは言い訳できない。本当にごめん」

「分かればよろしい」

私も胸次郎に死ねといわれたらたぶん、イレミと同じような行動を取った気がするから強くいえない。やっぱり、同じ考えというのは非常に気色悪いな……

イレミと私は、ぼけーとテレビを見てお茶をすする。

「そうそう、ヴィナが食料を持って自分から胸次郎の部屋にいったみたいだ」

「本当?よかった。これで保護がしやすくなるね」

「まぁ、何かが起こればの話だが」

「ここで、ヴィナと胸次郎が何かイケナイことをしたりして。なんかしちゃったりして!しちゃったりして!!」

「私は神に仕える巫女のように、アニメキャラクターに操を捧げた男だ。羨ましくなどない!」

「そうよ!異性に興味がある異性になんか誰がほれますか!!でも……カワイイ男の子ならあたしの純潔奪ってもいいかも……でも、王子様も捨てがたい。ここは、両手に花よね!あたしは男の子と王子様のカラミを見ながらモンモンとするの!!ああ……幸せ……」

「そんな純潔、早くゴミの日に捨ててしまえ」

「失礼ね。これが聖地池袋のデフォよ」

「聖地は秋葉原に決まっているだろう。正直エルサレムよりも尊い。エルサレムにはアニメがないからな」

もう、午後三時だ。本当に何もないかもな。

「おい、陳の奴ただのはったりだったのかも知れないな」

「ミーレは二位の実力があったのに最後は負け惜しみかぁ……」


え?


突然、イレミの全身から血が噴出した。


取りとめもなくイレミから血が噴出してくる。自動車のブレーキ音が聞こえる。

町が一気に騒がしくなった。ネコも犬も人も、全てが血まみれで動いている。

イレミが慌てふためく。

「え?緑太郎!!すごい血!!」

「イレミ!お前その血は?」

「何言っているの!!!鏡見て!!」

「お前がだ!!早く早く!!」

イレミの奴なにを言っているんだ!

私は痛くもかゆくもないぞ!!それより、イレミの失血を止めないと!

私は、そういうと白衣の中にある包帯を取り出した。


包帯が赤い?


私は自分の腕を見た。赤い。血か?血が吹き出ているのか?

すかさずテレビを見た。アナウンサーも血まみれだ!

そして、テレビの番組が途絶えた。

イレミの首筋に何かが見える。数字?

「イレミ!服脱げ!!」

「ばかぁ!!この非常事態になに考えているのよ!!」

「ちげぇ!!お前の首に数字が埋め込まれている!!」

「え?え?」

すかさず、イレミは上着を脱いだ。もう、全身血まみれだ。


六〇四七五三…………六〇四七五二…………六〇四七五一……

一秒ごとにカウントが始まっている。

「緑太郎!あんたの首にも数字が!!」

「今、数字はどのくらいだ?」

「今、六〇四七四七よ。あ、ひとつ減った」

「お前と同じ数字だ」

「ヴィナと胸次郎は大丈夫だよね!?」

「大丈夫だ!あの部屋は完璧滅菌してあるし、空気は完全に外気から遮断してある。なおかつ実に陽圧だ。病原菌が入る余地はない!」

「対魔の魔方陣も対呪のお札も十分はっているわ!あの部屋なら大丈夫!」

「なんで、我々のところでそれをやってなかったんだ!!」

「少しでも前兆があれば分かると思ったからよ!あんたこそなんで防御を怠ったのよ!!」

「少しでも前兆があれば対処できると思ったからだ!!」


落ち着こう。自覚症状はまだまったく出ていないのだ。

まず、勝利条件の確認だ。

勝利条件は病気に打ち勝つこと。

現時点の状況。数字が首筋に出ている。

体の穴という穴から血が吹き出ている。

感染経路不明。

テレビ、外の人間が同じタイミングで同じ症状が出ている。

陳とミーレのセリフから期限は一週間ある。

全人類が助け合わなくてはならない。

現時点の情報はこれだけか。まずい、恐怖に敗北しそうだ。情報が少なすぎる。血が出すぎている。大丈夫、一週間あるんだ!

落ち着け。落ち着け。落ち着け。落ち着け。落ち着け。落ち着け。落ち着け。落ち着け。落ち着いた!


「イレミ。まずは落ち着け。陳は一週間の期間があるといった。今あわてる必要はない」

「大丈夫。あたしはもう落ち着いたから」

さすが、私の対称性。考えることは同じだな。

「でだ。現段階の状況を確認したい」

「あんた、この血が吹き出る病気に何か心当たりはない?魔法ではこんな症状は聞いたことがないわ」

「おそらく、エボラ出血熱だ。もともとアフリカの風土病で致死率は九八パーセント。全身の穴という穴から出血して高熱が出る。ものによるが七日くらいで死ぬ。だが、この症状では高熱は出ていないようだ。イレミ、首筋の数字に関して何か知っていないか?」

「おそらく、死の宣告。もともと、病気で余命いくばくもない人に使う禁呪の一種よ。これを使うと七日間だけどんな病気の人でも健康体になる。もちろん、健康体といっても数字が少なくなるごとに元の病気が現れてくる。そして、七日間を過ぎると…………」

「死あるのみか…………この禁呪を使う上での前提条件はないのか?」

「その死の宣告をかけたい人の血液が沢山必要だよ。その禁呪の魔方陣もどこかに無いと!」

 とりあえず、国連の偉い奴にでも連絡をとるか……

私は自分の携帯電話を取り出した。

携帯電話の画像がすべて魔方陣になっている!!?

「うわぁ!!」

私は思わず携帯を投げ出した。

「しまった!!二〇〇四年度版の初期ロット初期ファームの超極レア京ぽんを思わず投げてしまった!私としたことがぁぁぁぁ!!」

「んな、アホなこと言ってないでテレビ見て!テレビテレビ!!」


イレミはテレビを指差している。テレビには黒い画面と赤い画面が交じり合い不気味な魔方陣がいくつか映し出されている。

何もしていないにもかかわらずパソコンが自動的に立ち上がった。パソコンの画面にはテレビと同じ魔方陣が映っている。

イレミはつぶやいた。

「物質合成の魔方陣が……なんでパソコンに…………」

「なんだこれは!なんなんだこれは!イレミ、この魔方陣がなにを作っているかわかるか!!?」

「見たこともない物質が魔方陣で合成されているのよ!!すごく小さい……ものすごく小さい物質を作り出しているのよ!なんか、ものすごく簡単な作りだけと恐ろしいほどの情報を……」

「まさか、これでエボラウィルスを作っているのか?」

「緑太郎!魔方陣じゃ物質を作れても生物は作れないよ!生物を作るには神の力も借りないと!」

「残念だが、ウィルスは生物ではなく物質だ。ウィルスに魔方陣を仕込むことはできるのか?」

「……出来る。胸次郎の金属がん細胞は分子の大きさの魔方陣よ」

「それで、エボラウィルスに死の宣告の魔方陣を仕込んでエボラの出血で得た血液を触媒に死の宣告か!エボラは人から人へと移る。……これなら科学世界中にエボラをばら撒ける。インターネットに接続していない人間などいない」

私とイレミは情報を探す。

一〇分が経過した。

首の数字は六〇〇引かされた。

私はパソコンに向かった。

「とりあえず、パソコンは使えるな。科学世界はほとんど全滅だ。魔法世界の状況を調べ上げないと!!」

次々にでてくる魔法世界の阿鼻叫喚。血まみれの子供。なぜ死の宣告を受けなくてはならないという恐怖。未知の病原菌。そんな言葉が張り巡られている。

魔法世界とはいえ、電化製品がまったく無いわけではない。

炊飯器や自動洗濯機などは、式神や魔法よりも経済的で使いやすいからだ。

そして、問題は炊飯器や洗濯機までインターネットに接続して制御を行っている。

もちろん、ディスプレイも当然ついている。そこから感染が拡大したのか?

イレミも自分の念波でインターネットに接続し状況を調べている。

「緑太郎…今言うアドレスのホームページを表示してみて…ひどいものが…」

イレミが見つけたのは、魔法世界に打ち上げられた人工衛星が取った写真だった。

魔法世界の中央共亜国のすべてを使って大きな魔方陣がきれいに描かれていた。

「マジか……ここのサーバーの場所は……中国……か……」

「小さいのものでも……魔方陣を描けるなら……逆に大きいものもないか探したの……大きいもの大きいもの……と探したら……こんなものが……」

中国製の衛星が取った写真。それは大きな大きな魔方陣。神の力を使わずにその形だけで効果を発揮する。マナの力を使って、特殊なエボラウィルスをずっとずっと生産しつづける。

イレミがつぶやく。

「ねぇ………なんなのよこのウィルス………神様にまでかかっているよ………」

「ああ。それと、私の電卓までご丁寧に魔方陣が出ている。この電卓はインターネットには接続できないぞ。」

つまり、このウィルスはコンピュータウィルスからエボラウィルスと死の宣告を発生させる。生物と神にはエボラウィルスのような症状を。コンピュータにはコンピュータウィルスに変形しインターネットを通じまた増殖を行うというのか?


人畜神共有コンピュータウィルス。


これが、陳とミーレが作りあげた兵器。

「おいイレミ。パソコンの魔法陣とこのミーレの国の巨大な魔方陣の形はなんか形が違うぞ」

イレミは自分のほほを叩き気合を入れなおす。

「これは、中央国の魔法陣は任意の場所にある魔方陣の効果をそのまま代行する魔方陣よ。難しい魔方陣を作れる人は限られるから、この魔方陣は場所を示しているの。そしてその場所にある魔方陣の効果が現われるの」


あれ……ゲームのヒントになりそうな……


血が乾いてカサカサになってきた。

エボラによる血液の出血はどうやら一度の出血だけで全て止まったようだ。おそらく、死の宣告の効果によって。数字が正確に刻まれる。


こうして、一日目が終った。


八月二日


体がだるい。だるすぎる。

体に刻まれた数字がだるさを引き立てている。

エボラに一/七かかっている事と同義だからだ。死の宣告の数字が六/七になったから。

早く……早く解く方法を見つけ出さないと……

私とイレミは昨日得た情報をすべてインターネット及びテレビで公開することに決めた。

もう、時間が無い。全人類の知恵が必要だ。

このままでは、私とイレミだけでは解けない……

しかも、方法を見つけるだけではなく全人類が協力するような方法をとってその問題を解決しなくてはならないのだ。

イレミの様子がおかしい。明らかにふらついている。

「イレミ。大丈夫か?」

「ごめん。かなりだるくて……」

「死の宣告は六/七になった。これでこのだるさというのは……」

「先が思いやられるね……」

「早く……早く、解決方法を見つけないと……」

「正直、数字が半分を過ぎたあたりから動けなくなる人が続出する気がするよ……」

「ところで、魔法世界ではウィルスや有機化学分子に魔法陣を仕込むのは普通のことなのか?」

「そんなわけないでしょ!ウィルスや有機化学なんて科学の知識がなければ想像もできないよ。今までで一番小さい魔方陣は米粒にかかれた魔方陣よ!」

「魔法では情報に生命を持たすことはできるのか?」

「それはできるよ。かなり面倒くさいけど」

「つまり、コンピューターウィルスにも生命が宿るということか……」

コンピューターウィルスがコンピューターに魔方陣を表示させてそのモニターからウィルスが作られるのは理解できる。仕組みはさっぱりだが。

だが、ウィルスがどうやって電卓などの電子機器に感染したりするのだ。フォーマットがぜんぜん違うだろ。

しかもだ、ウィルスならどんどんと進化する。早くしないと一つのワクチンだけでは対処できなくなる。

イレミが私に話しかけてきた。

「ねぇ、あんたのその電卓かしてくれない?」

「ああ。一応計算は出来るが常に変な魔方陣がでているぞ」

「これだと、ドットが荒くて効果はないわ」

「で、これをどーするんだ?」

イレミは私の聞き取れない言葉を電卓に向かって放った。

電卓の魔方陣らしきものが消えた。

「イレミ!何をやったんだ!!」

「解呪よ。魔方陣が壊れる魔法のこと。魔法世界の人なら誰でもできるわ」

電卓からは、魔方陣が消えたがまた再び魔方陣らしきものが現れた。

空気中のウィルスがまた電卓に取り付いたのだろう。

「パソコンでやったか?」

「パソコンでも一時的に元に戻るけど、また再び魔方陣がでるの……」

「パソコンの場合は、ネット感染か空気感染かのどちらかで再感染したのだろう」

状況は逐一悪化していく。魔法世界の感染が科学世界と同じくらい早い。

その理由は分からない。


こうして、八月二日一五時現在。科学世界、魔法世界の全ての人間はこのウィルスに感染した。


私は、パソコンのキーボードを叩いた。

「くそう!!ダメだ。感染ルートがまったくわからない!」

「緑太郎!あんた、その考えは間違っている!感染ルートを探すのではなく、もう病気を打ち勝つことを考えなきゃ!!あんたの口で勝利条件を言って!!」

「病気をなんとかして、人類を存続させる……」

「はい。よくできました。なら、あたし達の考えることは感染を予防することではなく、病気を治すことにシフトすること」

「すまん。私が悪かった」

イレミのその口調は強がり。私にはそれがよく分かる。

しかし、陳め。なんというゲームを用意してくれたんだ。

おそらく、相当に魔法のことを勉強したようだな。

私は科学に関しては誰にも負けないが、魔法だと天才とは到底思えない。

たぶん、陳は魔法の知識において私をはるかに凌駕したのだろう。

魔法の知識と科学の知識を合わせれば……科学の知識だけ最強でも勝てる要素はない。


本当に、惜しい奴を無くした………


八月三日

全人類がエボラに二/七感染。


絶望が広がり始めた。


何も成果はない。世界が絶望に包まれる。

どんな解決法も見つからないように思えた。

人々はもう、戦争という言葉をつかうことはなくなった。

ただ、何もせずに神に祈ることしか出来ない。

最後のときだというのに、略奪などは何一つ起こらなかった。

エボラで体がもうほとんど動かないからだ。

私とイレミの体からじわりじわりと血液が染み出してくる。

もう、イレミとの会話はほとんどない。

喋るだけでも億劫になってきたからだ。

ヴィナと胸次郎は大丈夫だろうか………

電子機器に感染する以上、連絡は取れない。


ミコミコナース♪

私の携帯電話がなった。

国連の偉い奴からだ。

「もしもし、緑太郎様でしょうか?」

「そうだ」

「アナタ様もこの病にかかりましたでしょうか?」

「ああ」

「打つ手は…ございませんでしょうか?」

「ない」

「世界は、アナタ様の助けが必要のです……せめて……ワタシたちだけでも助かる方法はないでしょうか……ワタシには、幼い娘がいるんです。どうか……どうか……助けてください」

怒りがこみ上げてくる。陳さえ殺さなければ奴からいくらでも情報を引き出せたのに。

しかも、幼い娘って、お前らが起こそうとした戦争は同じくらいの幼い娘もすべて殺すということだ。なぜ、他人の娘を殺せて自分の娘を殺せないのだ。他人を殺せて自分を殺せないのだ。本当に理解に苦しむ。

「お前らが、戦争しようとしなければ……こんなことにならなかったんだぞ。その責任を誰が取るのだ?」

「ワタシが悪いのですか!!ワタシは世論の言うままに動いただけです!!文句があるなら戦争戦争と言っていた全ての人にいってください!」

「だから、今、全ての人類が罰を受けているのだ」

「アナタ様は、いつだって自分ひとりだけ助かる方法を見つけている。ワタシにもその方法をお教えください!」

「死ね」

電話を切った。たぶん奴の最後の希望が私だったのだろう。

また、アニメの主題歌が部屋に響く。同じ相手から同じ電話。

私はそのままほっといた。エボラが体中に侵食する。

成果がない。

あせりだけが、空回りする。


八月四日

全人類が三/七エボラに感染。


絶望。


携帯電話が鳴っている。違う相手から同じ内容が。

エボラの症状がきつい。

私はもう半分諦めていた。今まで自分のことを天才といわれていたが、今回何一つわからない。もう、何もしないでこのまま終るのも悪くないのかも知れないと思えてくる。

二日徹夜をしたが、何も出来なかった。

その徒労感とエボラによるタイムリミットで私とイレミはすでにぼろぼろだった。


イレミが、自分の血をぬぐう。

私も、同じように血をぬぐう。

イレミが私に話しかけてくる。

「ねぇ、このまま諦めちゃだめかなぁ……」

「私もそう思った。今回、陳とミーレに完敗だ……」

「だって、このまま行けばどうせ戦争で引き分けて終りだし……」

「全滅が早いか遅いかそれだけだよな……」

「そういえば、あたしは……世界を壊すためにヴィナを作ったのに……今は救う立場にいるなんて、おかしいよね……」

「そして、自分達の生きる理由が世界を壊すために作った兵器なんてな……」

「ここで、世界を救えば、あたしのやってきた罪が少しは償えると思ってがんばったけど……もう、限界よ……」

「ここで、解決の方法を考えつかなければ……魔方陣解呪の時間なんてない……」

「ヴィナと胸次郎は大丈夫よね……」

「奴らはウィルスには引っかからない……と思いたい……」

「神もコンピューターも人も動物もこのウィルスにかかるけどね……」

「作業を続けよう……」


絶望。


魔方陣を何とかしても、世界にはウィルスであふれている。

一度になんとかしないと……

一匹でもウィルスを逃すと、そこから無限に増殖して再び世界が侵される。

なにより、死の宣告を止める手段がない。

ウィルスの中に死の宣告の魔方陣があるからだ。解呪を行ったってウィルス一匹ずつ行っても無駄に終るに決まっている。


絶望。


イレミがつぶやく。

「あたしも……本当は結婚したかったなぁ……」

「私もだ。絶対に結婚ができないから二次元に傾倒していた……私は二次元にしか興味がないから……と、自分に言い聞かせていた」

「あはは……さすが科学世界のあたし。弱いところまでそっくりね」

「本当……ここまでそっくりだとは思わなかったぞ……」


テレビでは、絶望宣言が始まった。魔法陣も半透明で見える。


今、ここで全ての希望が絶たれました。

したがって、絶望を宣言いたします。


国連軍はすべてをあきらめました。

兵士にはこれ以上の補給はいたしません。


国際軍はすべてをあきらめました。

騎士にはこれ以上のマナは回復いたしません。


私たちはこれからの歴史をあきらめました。

今までの歴史をあきらめました。

未来をあきらめました。

これから生まれてくる子供達をあきらめました。

すべてをあきらめました。


希望を捨てました。

描いていた未来を捨てました。

今までの努力を捨てました。


もう、わずかな時間をゆっくりと味わいましょう。

もう、時間をかみ締めましょう。

もう、生きることをあきらめましょう。


希望を持つからつらいのです。

努力をするからつらいのです。

未来があるからつらいのです。


私たちは最初から生きていなかった。

そう考えれば楽になれます。


私たちは最初から死んでいた。

そう考えれば楽になれます。


未来など最初から無かった。

そう考えれば楽になれます。


そうすれば、苦しむことはありません。

あきらめましょう。

生きることをあきらめましょう。

未来をあきらめましょう。

守ることをあきらめましょう。


神の加護は無力でした。だから、あきらめました。

人類の英知は無駄でした。だから、あきらめました。

人の営みは無意味でした。だから、あきらめました。

祈りは届きませんでした。だから、あきらめました。


我々はすべてをあきらめました。


国連軍は敗北したのです。

国際軍は敗北したのです。

魔法は敗北したのです。

科学は敗北したのです。


世界はすべて終りました。


魔法文明は終わりました。

科学文明は終わりました。


人類は終りました。


私たちはすべてをあきらめました。


イレミがそれを見て疲れ果てたようにつぶやいた。

「あたしも……もう、あきらめたわ……」

私もそれに答えるようにつぶやいた。

「私も………あきらめた……」


それから、私達は何もしなかった。


八月五日

さらに、エボラの侵食は続く。人類は四/七エボラに侵された。

私とイレミはもう生きることをあきらめた。

すべての研究を捨てて自分の趣味に走る。ただの現実逃避が何より楽しい。

エボラによる血まみれの姿で最後のときを楽しむ。

「ねーねー、緑太郎………このカラミ萌えない?男の子とその兄のカ・ラ・ミ。ああ、本当の男の子にもこんな不思議な穴があるとさらに萌えるのになぁ………『にいちゃん。にいちゃん。ありがとう』ってうれし泣きするんだよ」

「妹に萌えていたけど、むしろ姪っていいよな………お年玉をあげてりしてすごく喜ばれて………『にぃにありがとう』、と言いながら私に近寄ってホッペにキスをするんだよ」

「そうでしょ。ここでコケシが投入されるのよ。内緒な穴におさめるんだ。お兄さんは『お前は、俺の一生の奴隷だ』ってかっこよく決めるのよ………」

「そして、バレンタインのチョコを失敗しちゃったって泣きながら電話くれるんだよ。そこで、『にぃに。チョコじゃなくて私を貰ってほしいよぅ………』と私に哀願ですよ…私は姉に内緒で姪にね………」

二人で微笑みながらかみ合っていない会話をする。

「そういえば、いつ緑太郎はこんな趣味を覚えたの?」

「胸次郎がまだ話せなかったときにね。行き詰ってネットに逃げたんだ。何をしても、なにを話しても反応しなかった。そのときは私の才能を呪ったよ。無能だって。でも、その経験で初めて私は挫折も知った。その経験は今では感謝している。アニメとネットゲーとギャルゲーと携帯電話のすばらしさに目覚めたからね」

「あはは。あたしと同じ生い立ちだったよね。聞いても答えが分かっているのに……」

「本当は、何も話すことなどないのに、沢山話したなぁ」

「そうだよね……だって、喋る内容は同じだからね……でも、楽しいよ」

「……イレミ。最初で最後のお願いがある」

「あはは。偶然ね。あたしも最初で最後のお願いがあるよ」


イレミと私は目を閉じてゆっくりと唇を交わした。


二回目のキスは血の味がした。

イレミは微笑んで私に言った。

『にぃに、ありがとう』

私はそれに答える。

『にぃちゃん、にぃちゃん。ありがとう』

イレミがゆっくりとつぶやく。

「それは……ちょっとどうかな?」

「だが、二つ目のセリフは痛いだろ」

「そのセリフよりマシよ。だから、やり直し」

イレミは再び目を閉じる

私はそれに応じる。


再び唇を重ねる。


やっぱり血の味がする。エボラに侵された血の味が。

イレミはつぶやく。

『にぃに。チョコではなく私を貰って欲しいよぅ』

『お前は俺の一生の奴隷だ』

「はい。よく出来ました」

「痛いって!痛いって!」

「二三の若者が、にぃにと呼ばれたがるほうが痛いと気がつきなさいよ……」

「同性愛をありたがるその精神は理解できん」

 私は、体を引きずるようにパソコンに向かい、かすれた声で言葉を綴る。

「さぁーて、ファイル共有ソフトでやっていないギャルゲーでも落とすか」

「BLゲームもお願いねー」

私は、ネット上でハッシュを手に入れファイル共有ソフトを起動した。

そのとき、すべてのファイルが一つのソフトで埋まっていた。


【人類存続】エボラコンピューターウィルスワクチンソフトver二.三【希望を捨てるな】


何で検索してもゲームは何一つ落ちていない。

全てが同じワクチンソフトで埋まっていた。政府も軍も全てがあきらめているはずなのに。

一番死にやすく、一番弱いはずの人々が最後まで戦っている……


私はすぐさまその戦っている人たちのガイドラインを探し出した。

ガイドラインでは、魔法世界の住人と科学世界の住人が最後の最後まで希望を捨てていない様子が現れていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

軍も政府も全てがあきらめた!しかし、『名無し』はあきらめないッ!!

人類存続のガイドライン。~人類皆兄弟~魔法も科学も知ったことか!


追加されたエボラコンピューターウィルスの特徴。


進化なし。八月一日から現在まで遺伝子を調べたが変化なし。

どの地区でも同系統の遺伝子

コンピューターウィルスで魔方陣をだしているが、魔方陣は違うサーバーからの画像を取り出している様子。そのサーバーの割り出しはまだ無理。

ネットに接続していない端末は、中国と中央共亜国に描かれている魔法陣が現れる。

魔法国の有志により、中央国と中国にある巨大魔法陣は場所だけを指定していることが判明。

神と人と動物と電子機器がこの病気にかかる。

ウィルス解析の結果、ウィルスには中国と中央国と同じ魔法陣が分子レベルで組み込まれている。つまりウィルスは操作されている!ウィルス自体の魔法陣に意味はない!

念波でもエボラにかかる。魔法国住民の必死のデータで判明。


つまりだ。この世のどこかに本当のサーバーと魔法陣がある。

それらを探し出して魔法世界の誰かが死の宣告の魔法陣を消滅の魔法陣に書き換えろ!!それだけで我々の勝利だ!


~ワクチンソフトの使い方~

お前らのパソコンに取り付いているウィルスはエボラとはいえ所詮コンピューターウィルス。

インストールをすれば自動的に除去とプロテクトができる。もちろん、エボラの空気感染も防げる!だが、魔法陣はこのソフトでは消えない!

魔法陣は魔法世界の誰かに解呪してもらってくれ!

では、健闘を祈る!

最後に、俺らはお前らに伝えたい言葉がある。


人類を救えるのはここを見ているお前らだけだ。


全ての人の命がお前にかかっていると思え。つまり、お前の母親を救えるのはお前だけだ!お前の父親を救えるのはお前だけだ!お前の町を救えるのはお前だけだ!そして、すべての人類がお前に泣いて頼んでいる!今こそ、戦ってくれと!

そして………!!

ニートのみんな!働いている奴にネット戦はできない!お前らの人海戦術が闘いの基礎になる!

職場があるみんな!働いてくれ!エボラに負けないでくれ!インフラを維持してくれ!

自暴自棄になるな!俺達ニートが絶対にこの危機を乗り越える!

魔法世界のみんな!俺達、科学世界住民は魔法のことがさっぱりだ。力を貸してくれ!

科学世界のみんな!俺達、魔法世界住民は科学のことはさっぱりだ。力を貸してくれ!

科学者のみんな!今度の戦いは科学者への最大の侮辱だ!お前らの努力が悪用されている!

魔法使いのみんな!今度の戦いは魔法戦だ!お前らの魔法が無ければ世界は滅ぶ!

プログラマのみんな!今度の戦いはネット戦だ!お前らのソフトが人類を救う!

SEのみんな!サーバーを絶対に落とすな!サーバーが全ての基本だ!

妖精使いのみんな!妖精を死なすな!情報妖精はこの戦いの核!

巫女のみんな!神を守りきれ!復興に神は必須!

仏教徒のみんな!輪廻転生はまだ早い!仏の教えに諦めはないぞ!

イスラム教のみんな!今こそジハードだ!アラーを信じるものに敗北などない!

キリスト教のみんな!これは神の試練だ!神が人類にできない試練を科すだろうか!

母親のみんな!今こそ子供達に希望を教えてあげてくれ!子供達には希望が必要だ!

父親のみんな!今こそ子供達に威厳を教えてあげてくれ!子供達には威厳が必要だ!

子供のみんな!科学世界の全ての人たちと魔法世界の全ての人たちはお前達をどんなことがあろうと命を賭けて守りきる!だから俺達の勝利をいつか生まれるお前らの子供達に伝えてくれ!いいか!必ずだぞ!かっこよかったと伝えるんだぞ!

マスコミ!絶望を与えるな!希望がないなら俺達ニートが最後の希望となる!

政府!あきらめるな!ていうか、仕事しろ!

軍!お前はすでにニートに負けているッ!


すべてのみんな!俺達はまだ生きている!そして、これからも生きていくッ!!

まだ見ぬ子供達のため、みんな、行くぞ!!完全勝利まであと三日!!!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


なんか、涙でうるんでくる。これなら…ここまでお膳立てできていているなら…

私はイレミに言った。


「イレミ………勝てた。人類は全滅しない………」

「どーしたのよ………あきらめたんじゃないの?」

「ここのページを見てみろ……」

「これって……まさか………」

「サーバーを探して魔法陣を書き換えるだけだぞ?」

「行ける……絶対にいけるかも……ウィルスの魔法陣に死の宣告のある場所が書かれているはずよ!でも、それは特殊な暗号によって守られている……」

「暗号?この私が暗号などマトモに解くわけが無いだろう!暗号という時点ですでに我々の勝利!」

「どーすんのよ………」

「とりあえず、このワクチンソフトをインストールしよう」

ワクチンソフトをインストールした後、私は電話をした。

昨日命乞いをした国連事務総長に。

「もしもし」

「私だ。緑太郎だ」

「もしかして、ワタシだけを助けてくれるんですか?」

「逆だ。全人類が助かる方法が見つかった」

「魔法世界の奴らだけは、このままというわけには行きませんか?」

「いかない。全人類が滅ぶか、全人類が生きるかの二つに一つだ」

「………分かりました。なにをすればよろしいのでしょう?」

「世界中のゲーム機やパソコンなどインターネットに繋がる機器すべてに、今から私が作るソフトを入れるようにマスコミを通じて指示をだしてくれ。あと、それら全ての機器をインターネットにつなげる義務を出してくれ。一日でだ」

「………分かりました。やりましょう。生きるためにやります」

「娘さんの命が欲しければやるんだな」

私は電話を切った。そして、イレミにも指示を出す。

「イレミ、国際のほうにも同じ電話を頼む」

「よくわからないけど、分かったわ」

さて、ここからが勝負だ。

念話が終ったイレミが私に聞いてくる。

「そういえば、ゲーム機なんてどーすんの?」

「この世にある全てのパソコンとゲーム機などをつないで一つのコンピューターにする!もちろん、ネット対応している炊飯器も冷蔵庫もテレビもすべてだ!これで、解けない暗号などこの世に存在しない!」

「でも……そんなことできるの?」

「あとは……協力してくれる人しだいだ」


私は、人類存続のガイドラインに一つ書き込んだ。


おまえらのパソコンとゲーム機を一瞬貸してくれ。

全世界のゲーム機、パソコン、サーバー、冷蔵庫、炊飯器、掃除機、テレビ、携帯電話など、インターネットに接続できるものすべて貸してくれ。そして、これからファイル共有ソフトで配る計算ソフトをいれてくれ。ウィルスの魔法陣をこれで割り出して本体の魔法陣の場所を探り当てる。

そして、本体の死の宣告の魔法陣が見つかったとき俺達の勝ちだ。


この日を境に、マスコミと軍と政府が動いた。

世界が再び活気付く。こうして、魔法世界と科学世界両方の本当の同盟が始まった。


八月六日

エボラに五/七侵される。正直、辛すぎる。血がどんどんあふれてきた。

だが、この共同計算ソフトを作るのをやめるわけにいかない。

イレミが私に話しかけてくる

「緑太郎ばっかりで、あたしは何もできていないね…」

「なにを言っている。魔法陣を書き換えるのはお前の役目だ。たぶんまだワナはある」


一五時。できた!!


私は、すぐに全世界に共同計算ソフトをファイル共有ソフトを通じて配布した。

一瞬のうちに恐ろしいケタの計算が出来上がる。連結したコンピューターの数、実に五〇〇〇億台。

「これで………あと、一日計算させれば………人類の勝利だ………イレミあとは任せるぞ…………」

「うん。任せといて!!」


私はそういって倒れた。

血が……あふれている………胸次郎とヴィナは大丈夫だろうか………

熱が………もうだめかも………


八月七日

全人類がエボラに六/七侵される。

計算結果がでた。結論は中国。中国のすべてのコンピューターが犯人。なんてこと考えるのだ、陳とミーレは……

もう………私は、熱で動けない。血が出すぎて動けない。

ただでさえ、体が弱いのだ………

大丈夫。あとは、イレミと世界中のみんなに任せよう。

胸次郎は悲しんでくれるかな?

それとも、喜ぶのかな?

悲しんでほしいなぁ………

もう、目が見えない。エボラは本当にきつい………死の宣告の数字も残り僅か………


今度こそ死んだな。


ヴィナ。胸次郎のこと頼むぞ………

イレミ、すまないが先に逝くぞ。対称性っていったって、死ぬときはいっしょじゃないんだな。おそらく、私とイレミが時空移動器を作ったときから少しずつ対称性が崩れていったんだろうなぁ。


なんか、よくわからない言葉が聞こえる。

口に何か液体が入る。ごめん。もう飲み込めないんだ。

お願いだから、このまま寝かしてくれ。

大丈夫。私はちゃんと役目は果たせたから。

あれ?血の味がする。おいおい、鼻をつままないでくれ。

ゴクン。無理やり何か飲まされた。


これは…?


私は目をさました。イレミが私を魔法陣の上で寝かしている。

「おい!これは………?」

「良かった………目が覚めたのね?」


私はおきあがりイレミの話を聞く。

「あれから、いろいろあったんだけど…正直な話あたしじゃ指揮できない。ごめんね。だから、あんたに全て託させて………」

「おい!この魔法陣と飲ませた薬は何だ!!」

「あたしの生命力全部、あんたにあげちゃった!だから、生きてね!気にすることはないよ!でもね、人類救わずに簡単にこっちに来たら地獄に叩き落してやるからね!」


そう言い残すと、イレミの体の全てから噴水のように血が噴出した。

血の海に倒れこむイレミ。


おい……まさか……イレミ……


私はいきなりのことで呆然とする

アニメの曲が部屋に響く。

私の携帯電話が鳴っている。私は電話を取った。

「国際軍だ。全魔法世界の人間が中華人民興和国のパソコンに配備する。」

「ということは、あとはすべてのコンピュータを見つけて書き換えるだけなんだな。」

「そうだ。ここまでの手引き本当に感謝する。まず、日本に感謝する、未開の魔法国の道を作ってもらった。これにより、陸の孤島の全ての人間が科学世界に移動できた。アメリカに感謝する。飛行機のピストン移動で全ての果てに住む人間を科学世界につれていけるようになった。ロシアに感謝する。魔法世界の住人に多くの食料と毛布を与えてくれたことを。韓国に感謝する。軍がわれわれを身を挺して守りきってくれた。災害やトラブルに巻き込まれてもスムーズに移動できた。イギリスに感謝する。船で我々の世界の住民をそのまま科学世界に連れて行ってくれた。中国に感謝する。彼らが我々の敵になってくれなければ科学世界のすべての人間が尊敬に値するすばらしい人達だということを理解できなかった。そして、科学世界に感謝する。我々は兄弟だ。時空を超えてもいっしょの地にいる喜びはなによりも代えがたい。では、最後に貴君の指揮に感謝する」

また、再び私の携帯電話が鳴り出した。国連の偉い人だ。

「魔法世界の全ての人が中国にあるパソコンを探して操作している。まさか、中国にあるパソコン全てが原因だったとはな。もう、大丈夫だ。お前達のおかげだ。魔法世界の人々がこんなに暖かいとは思わなかった。エボラにかからないとこんなことすら分からなかったとは……ワタシはワタシを恥じる。もう大丈夫だ。国連が命をかけてこの作戦を完結させる」

そうか……すべて終ったのか……

イレミ……指揮できないといいながら完璧にやっているじゃないか。

残りの数字は一〇〇〇を切っている。

私の命もおそらく失敗したら一〇〇〇秒だ。

全世界の人々の寿命も同じく一〇〇〇秒だ。

また、全身から血が吹き出てきた。

まだまだ、私の体と世界の人の体はエボラで侵されている。

「残りの数字が一〇〇秒になったとき、いっせいにすべてのパソコンの中国にあるパソコンの魔法陣を書き換える。中国にあるパソコンはそこまで多くはない。科学世界住民は成功しても失敗しても、魔法世界住民と出会えたことを誇りとする」


私はイレミの隣に座った。

もし、失敗したらイレミの隣で死ねるな。

こんなセリフを聞かすためだけに、私に生命力のすべてを渡すなんて………

一〇五……

一〇四

一〇三

一〇二

一〇一

一〇〇


「書き換えはじめ!!」

一気に書き換えが始まったようだ。

………血が止まらない?


あれ?


もう、八〇だぞ。書き換えはすぐ終るはずだ!

まさか………失敗したのか………

また、目がくらんできた。

体中の血が止まらない!!!

くそう………せっかく、陳やミーレの目的の通りに人類が和解したというのに!

三〇、二九、二八………

また、意識がなくなってきた……

ごめん。生命力貰っても何も出来なかった。

もう……ダメだ。人類の歴史は費えた……


ドアが開く音がする。

開くというより、引いて開けるドアを押して開けてドアが壊れる音だ。


「ほねぇ!!貴様の人生には、圧倒的に鉄アレイが足りない!!!」

「だからー、イレミちゃん。いつも言っているでしょ?こまったらヴィナに相談してくれないとー。だめだめだよー」


第四章完





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