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妖の巣喰う屋敷  作者: 雪りんご。
二章 -爆弾魔-
9/13

瞬と子ども

「…で、主よ」

「はい~?」

ネコ娘が、瞬に問う。


「その人の子を連れてきて…。一体どうするおつもりか?」

目をパチクリ、とさせる瞬。


今は包帯が取れていて、瞳が露となっている。

左目は、濃紫。右目は、蒼の瞳だ。


「え?愚問だね~」

「…瞬、本当にどうするつもり?」

当の子供の方が、妖だらけのこの空間で、強張ってしまっている。




「そんなの、屋敷に連れて帰って、僕たちで育ててあげるに決まってるじゃん~」



炎龍を筆頭に、妖たちが固まった瞬間だった。










「兄様」

愛が少し先を歩く、兄に声をかける。

「なんだ?」

翔が止まることはせずに、意識だけ愛へと向ける。


「瞬は、あの子供を、どこへ連れて行ったのでしょうか?」

沈黙の翔。



しばらくして、返ってきた言葉は、



「知らん」



そんなそっけない言葉だった。



●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○


「改めまして~。

 僕は、久遠瞬だよ~。よろしくね~」

先ほど、城下で拾ってきた子供に、自己紹介する瞬。


「ちなみに、僕、半分妖、半分人間だから~。

 そこんとこ、よろしくね~」

「ぼ、ぼく…あ、あの…」

あたふたする子供の頭を、そっと撫でる瞬。


「名前、名乗るの嫌か?」

先ほどまでとは違い、真剣な眼差しで問う。


「…う、ん。 

 かあさまが、なまえは大切なものだから、人にかんたんにおしえちゃダメって…」

「分かった。

 ん~と。じゃあ、俺たちと暮らすの、嫌?」

瞬が口調を変えて問う。


「いや、じゃない、よ?」

「へぇ~…。妖だよ?怖くないの?」

子供は、小さい体をさらに小さくさせて、

「相模さま、より怖くない」

そう言った。


「じゃあ、これからよろしくね。

 名前は、そうだなぁ~…」

瞬は後ろに居る、妖たちを見据え、



「名前急募」

と、言った。



「瞬、あなた自分で考えなさいよ」

砂雪が一言。

尤もな意見である。


「え~。俺ネーミングセンスないし?」

あっけらかんと、そう言う瞬。


「では、(れき)という名はどうであろうか?」

ネコ娘が提案する。

「…石ころ?」

瞬が問う。


「磨けば、ヒカル石ころ。という、意味です」

「へぇ、お洒落ね、ネコ娘」

砂雪がこのっ、と肘でネコ娘をつつく。

「う、うるさいのです!」

頬を赤らめ、ネコ娘は反論する。


「いいじゃないか。

 じゃあ、今日から、お前は礫だ。

 母親にもらった名は、真名として誰にも言わずに大切にするんだぞ?」

瞬が礫の頭をくしゃっ、とまぜながら言う。



「うん!よろしくね!!

 ―――――みんなに、いっぱい質問、いい?」

言葉をゆっくり、言葉を並べる礫。


瞬や妖は、それをあたたかく見守る。


「良いわよ、なんでも答えてあげる」

砂雪がニコっ、と微笑む。



「えっとね、しゅんは、この前と話し方と、かみの毛の色と、目のほうたいと、目の色と…

 なんで、時々?色々違うの?」





グサ―――――ッ





瞬がその場に崩れ落ちる。


「あぁ…。誰もが触れたかったけど、触れなかったその話題」

凛がボソッと呟く。

「知ってるっすけど…」

煉が語尾を濁し、瞬を見る。


「うん…。ね。…色々あるんだけど、ね…。うん…。ね…」

瞬がブツブツと、繰り返しそう呟く。


礫はと言うと、今か今かと答えに期待し、目を輝かせている。


「…瞬、早く答えてやれ」

氷狼が大きな前足で、瞬をつつく。


「はい…」

瞬は、そう一言答えると、礫と向き直った。



「あのね、難しい話なんだけどね、聞いてくれる?」

「おしえてくれるなら、聞く!!」

眩しいほどの笑顔のキラキラが、すべて瞬に突き刺さる。


(刺さってるわね…)

砂雪が他人事のように、瞬を見る。

それはもう、心底哀れむような目で。


「えっとね、長くなるんだけど~…」


本当に長かった。

日が暮れるほどに。


話が始まったのは、正午過ぎだったはずなのに。




まとめると、

・通常は、濃紺の髪に、左目が紫色、右目が蒼色。

・妖の力を借りてたり、半妖だから自分の妖力を使ったりしてるときは、

 白銀の髪、左目が紅色、右目が薄水色。

・陰陽術は、どちらの時でも使える。

・話し方は、場合に応じてコロコロと。

と、いう話だった。


それを話し終えた瞬は、たいそう疲れきった様子だった。


「って、感じかな~」

瞬がそう締めくくる。


(長い説明だったわね…)

(今の時間で瞬、大分やつれたな…)

(お疲れ様なのです…)

妖たちは、心の中でそう呟いた。


「じゃあ、かみの毛長くて、くくってるのは?」

瞬の髪を指差し、そう言う礫。

「あぁ…。これはね、陰陽師の髪型、的な?」

「瞬の髪型は、髪を指輪型の髪飾りで留めているのよ」

砂雪が答える。


「正確には、和紙で結んだ上から、大き目の指輪を通してるだけだけどね~」

と、自分の髪を指差す瞬。


「へぇ~。しゅんって、面白いね」

「そうでもないよ~」


と、なんでもない会話をしている時だった。



どかぁぁぁぁぁぁぁあああああんんん!!



「なんだ!?」

煉が勢いよく障子を開け放つ。

その先には、城下町が見える。

「なっ!?」

白虎が、驚きの声をあげる。


それもそのはず。



つい今朝方までいた城下は、火の海と化していたからだ。


お久しぶりです。


更新が一年ぶり(?)になります。



しばらく、更新できるかなと思います。


これからも、よろしくお願いします。

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