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妖の巣喰う屋敷  作者: 雪りんご。
一章 -辻斬り-
6/13

妖遠の妖-どちらでもない存在-

「遅かったね、陰陽師」

    フゥ――――――――   

瞬がキセルの煙を吐きながら言う。

「少し準備に手間取ってな…。そんなことより、何か分かったのか?」

「当然~」

(さすがは妖…)

「これぐらいのことは、出来て当然でしょ~?」

「!!」

瞬が出の心の中を読んだかのように、そう言った。


「お前…(さとり)か!?」

    フゥ―――――――――

煙を吐く瞬。

「答えろ!」

「…愚問だね。そんなことは、自分の頭で考えてよ」

あくまで白を切る瞬。


「…まぁいい。それで、何が分かったんだ?」

話を本題に移す翔。


「僕たちが集めた情報を、もとにすると~…」

瞬が少し下を見る。


「今日にもそいつは、修羅の妖になるよ」


瞬が言い切った。

「…それは本当か?」

「こんなことで嘘をついて、なんになるっていうの~?」

飄々と構える瞬。


「…だとすると、早く始末しないといけませんね…」

今まで翔の隣で黙っていた、愛が口を開いた。

「うん。次に奴が出てきそうなところは、既に分かっているよ。

 ―――――――あとは、そこに行くだけ」

瞬がそう言い切った。


「ほう…。奴は必ずそこへ来る、と言っているようにも聞こえるが?」

「奴は必ず来るよ」 

(尚も言い切るか…)

「分かった。そこへ案内しろ」

「言われなくとも」

瞬たちは二人の陰陽師を引きつれ、その場所へと向かった。


●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○


月明かりが、闇夜を照らす。

「十六夜…いい月だ…俺がになるには最高の月だ…。

 天までもが俺が神になるのを、祝福しているようだ」

血色に染まった刀を手に、男は言う。


「ぃ…、いぃ…」

男の前で、首を横に激しく振る幼い子供。

その横には、首のない女の死体が転がっている。


「よぉ、ガキぃ。久しぶりだなぁ?俺のこと、覚えているよなぁ?」

ぎゃははっ、と下品に笑う男。

「さ、相模…大、二郎…」

「ぎゃははっ、そうだぜぇ!お前を殺そうとした、役人の相模大二郎様だぜぇ!!」

後ずさりする子供。

だが、恐怖で体がうまく動かず、その場に倒れこむ子供。


「死刑執行と行こうじゃねぇか、ガキぃ!!」

相模が、血色に染まった刀を振り上げた。

「あばよ、ガキぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

(神様…!!助けて!!)

恐怖で動くことも、叫ぶことも出来ない子供は、ただ祈るしかなかった。



と、その時。

    バァァァ―――――――――――ン!!

一つの銃声が聞こえ、相模は手を止めた。




「間に合ったようだな」

    フ―――――――

屋根の上に立ち、口に銜えたキセルの煙をはく瞬。

瞬の右手に握られている拳銃の銃口から、煙がたなびいていることから、先の銃声は瞬が鳴らしたものであろう。


「役人が辻斬りとは…。しかも、幼い子供を殺して何になるというんだ?」

翔が言った。

下では翔と愛が、それぞれ式神を出し、構えている。


「役者はそろったぁぁぁぁぁ!!」

不気味な笑い声と共に言う相模。

「役者…だと?」

瞬が問う。

「十六夜の月、陰陽師、そして…」 

瞬を指差す相模。

「お前だ、妖遠の妖!!」


    フゥ―――――――

「妖遠の妖…ね…」

「お前の血、陰陽師の血、そして十六夜の月…この三つがそろったとき、俺は最強の妖になれるんだ!!」

「妖遠の妖…?それが瞬、お前なのか…?」

翔の真剣な眼差しが、瞬を捉える。

「妖遠の妖…ってのはな、人でもなければ妖でもない…。

 いわばどっちつかずの存在だ。…僕はそのどっちつかずの存在。どっちつかずには理由がある。

 いや…すべての物事には理由がある。僕という奇異な存在が、生まれてしまった理由にも…ね」 

    


「ま、とりあえず。子供は返してもらえたから、よしとするかな」

そういう瞬の右手には、先ほどまで相模に殺されかけた幼い子が抱かれていた。


「お前、いつの間に…?」

「さてな…」

飄々と質問をかわす瞬。

(まぁ、いい…。それより今は―――――)


「お前を滅する方が先だ」

相模を見据える翔たち。


    フゥ―――――――


翔がキセルの煙をはいた次の瞬間には、戦闘が開始されていた。

長くなってしまい申し訳ない…。


「妖の巣食う屋敷」は年内最後の更新となります。

来年もどうぞよしなに。

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