爆発
「そんな…」
砂雪が口元を覆う。
先ほどの爆発を調べて来い、
と瞬はすぐさま砂雪とネコ娘を城下に派遣した。
「火の海なのです…」
文字通り、火の海だった。
建物から、何から何までも燃えていた。
物陰から様子を窺う二人。
何処もかしこも火の手が上がっていて、町中が混乱している。
「消火しないと…!!」
と、動こうとする砂雪をネコ娘が止める。
「待つのです、砂雪」
「ネコ娘!?」
「主は、見て来いと言ったのです。
ここは一度引いて、主に現状を話すべきです」
「でも…。それじゃあ、たくさんの人間が死ぬわ!!」
「大丈夫なのです」
す――――。
と、指差す先には、陰陽師の部隊。
20名あまりの陰陽師たちは、次々と火を消してゆく。
「一度、主に報告。それから、です」
「…分かったわ」
砂雪はそう言うと、渋々その場をあとにした。
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「そうか…」
砂雪たちの報告を聞き、顔をしかめる瞬。
「兄ぃ?」
礫が瞬の着物の裾をくい、と引っ張る。
「ん?」
どこか不安そうな顔の礫に、視線を合わせる。
そして、そっと顔をのぞく。
「こわい」
そう言う礫を抱きあげる瞬。
「うん、怖いな。でも、ここに居れば、大丈夫だ。
何も怖いことはない。みんながいるし、な?」
瞬にくしゃり、と頭を撫でられ目を細める礫。
「うん。兄ぃは、どこかにいく?」
「ん?」
「母さまは、しんじゃった。しんだら、お花いっぱいのきれいなとこいく。
―――――しゅんもいくの?」
瞬は、ぎゅうっと礫を抱きしめる。
「俺は、何処へも行かない。お前が望む限り、ここにいる。
―――――礫はどこかへ行っちゃうのか?」
首を左右にブンブンと激しく振る礫。
「ぼくも、どこにもいかない。ここにいる」
「ん」
瞬は礫の額に、軽く口付けをした。
「おまじない。これで、礫が怖がることは、何もない」
「うん!ありがとう、兄ぃ!」
さて、と瞬が話を切り替える。
「砂雪、ここに翔と愛を連れて来てくれる~?」
瞬は礫を抱えながら砂雪にそう言う。
「嫌よ」
即答だった。
「砂雪~」
「なんと言われようと、私は行かないわよ?
―――――誰が好きで、陰陽師の家に行くのよ」
瞬が困ったように笑う。
「自分の実家でしょう?自分で行きなさい」
そう。何を隠そう、瞬の実家は陰陽師の「久遠家」だ。
もろもろの事情により、疎遠状態となってしまっているが、血のつながりは確かにある。
「翔と愛ちゃんとは、確かイトコの関係にあたるんでしょ?」
無言で頷く瞬。
瞬の父・久遠和莉の兄、雨莉の子が翔と愛だ。
「しゅん、おうちいくのイヤ?」
礫にまで、そう言われると何も言えなくなる瞬。
「あいつ等に説明するのが、面倒だ」
と、顔を背ける瞬。
「今行って説明してきたらいいじゃない。
―――――あとあと楽になるわよ?」
「砂雪…。お前は何がどう転がっても、俺をあの家に行かせたいのか?」
「あら、察しがいいじゃない」
ふふふ、と笑う砂雪。
「なんだったら、私が付いて行ってやろうか?」
突如姿を現した少女。
一言で表すなら、「漆黒」という言葉がぴったりの少女。
肩ほどの髪を一つに束ね、袖のない着物を着た姿は、忍の様だった。
「久しぶりだな、瞬」
「琳麗こそ。
―――――そっちはどうだった?」
その一言で、何かを察する琳麗。
「爆発したのは、家に届いた荷物だったようだ」
「もう、調べてもらってたの?早いわね」
砂雪が半ばあきれるように言う。
「早いのが、売りなのでね」
琳麗が言う。
琳麗は、この屋敷の主である瞬が、何処からか拾ってきた忍だ。
何処で、どういう経緯で拾ったかは、誰も知らない。
が、その腕と情報力は誰もが認めており、この屋敷内では一目おかれている人間の気配のしない、人間である。
「で、どうするんだ?
―――――一人で行くか?それとも、私と行くか?」
瞬は顔を盛大にしかめる。
「…一人で結構です。行けばいいんだろ。行けば」
「最初からそう言え」
結局、瞬のほうが折れて、翔たちのいる陰陽師の家―――――もとい、実家へと向かうことになった。
更新ペースはコレぐらいになると思われます。
これからも、よろしくお願いします。