表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シナスタジア心霊事件ファイル~共感覚霊視者と心霊詐欺師の霊能者業界成り上がり~  作者: 十凪高志


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/10

第8話 俺達が、助けます

 最初の客は、三十代くらいの女性だった。


「恋愛運を見てほしくて……」


 女性は、恥ずかしそうに言った。

 獅堂が、笑顔で応対する。


「もちろんです。こちら、タロットカードです。よく切ってから、三枚選んでください」


 女性は、言われた通りにカードを切り、三枚選んだ。

 僕は、深呼吸をして、カードを見つめた。


 すると――。


「……視える」


 カードに、女性の思考が残っていた。

 不安。

 焦り。

 そして――誰かの顔。


 中年の男性。既婚者だ。


「このカードには……不安と、焦りが視えます」


 僕が言うと、女性がはっとした表情になる。


「あなたは、誰かを想っている。でも、その人は……既婚者ですね」

「……っ」


 女性の顔が、青ざめた。

 図星だった。

 獅堂が、すかさずフォローに入る。


「お客様、大丈夫です。カードは、あなたを責めているわけではありません」


 獅堂は、優しく言った。


「むしろ、カードはあなたの本当の気持ちを教えてくれているんです」


「あなたは、その人を本気で愛している。でも同時に、このままではいけないとも思っている」


 獅堂の言葉に、女性が涙ぐんだ。


「そう……なんです。私、どうすればいいか、わからなくて……」

「大丈夫です」


 獅堂は、カードを一枚めくった。


「このカードは、『節制』。バランスと調和を意味します。

 つまり、あなたは今、冷静になる時期なんです。感情に流されず、自分の人生をもう一度見つめ直す。

 そして、本当に自分が幸せになれる道を選ぶ。それが、このカードのメッセージです」


 女性は、しばらく黙っていた。


 そして――。


「……ありがとうございます。なんだか、すっきりしました」


 女性は、笑顔で帰っていった。




 ◇


 それから、僕らの占いは評判になった。


「あそこの占い師、当たるらしいよ」

「特に、眼鏡の子。霊視ができるんだって」


 口コミで、客が増えていった。

 僕の霊視と、獅堂の話術。

 二人で一つの占い師として、僕らは客の悩みを解決していった。


「獅童さん、マジかっこいい!」

「ねー! 占ってください!」

「おう、任せとけ。で、どっちが占う? 俺か、それともそっちの……」

「ガチで視えるっていう、祐介くんがいい!」

「私も!」


 意外な言葉に、僕は少し面食らった。

 獅童が目当てだとばかり思っていたのだけど。


「んだよ。俺より祐介の方が人気じゃねえか。しかし残念だったな、こいつの一番のファンはこの俺だお前らじゃねえぞ?」

「あはは獅童さんも祐介くん大好きじゃん!」

「獅童さんの話術もすごいけど、祐介くんの、ボソッと言う一言がマジで当たるって、友達の間で評判なんだよ!」


 どうやら、口コミで僕の霊視の評判が広まっているらしい。

 気恥ずかしさを感じながらも、悪い気はしなかった。


「それで、お悩みは?」


 僕が尋ねると、一人の女子高生が、恋愛相談を始めた。

 いつものように鑑定を進めていると、ふと、別の女子高生が獅童に質問を投げかけた。


「獅童さんって、霊とか信じてる人なんですか? なんか、そういうの信じなさそうなのに」


 その言葉に、獅童は笑った。


「良い質問だな。俺にとって占いは知識であり技術なわけよ。占いはテキトーな迷信じゃねえ。古代から脈々と続いて来た知識の集大成。いわゆる統計学だな」

「統計学?」

「ああ。血液占いや星座占いだって大まかな傾向をさぐるには馬鹿にできねぇんだぜ。

 この世の森羅万象を陰陽五行に分類して運命を読み解く算命学、星の配置で見る占星術。易学、手相占い、風水とかな。

 全部、膨大なデータに基づいた先人の知恵だ」


 獅童は、立て板に水で語る。彼の言葉には、人を惹きつける不思議な力があった。


「一方、こいつは頭でっかちのがり勉な俺と違って、ガチで霊が視える」


 急に話を振られて、僕は慌てて首を振った。

 というかお前、がり勉って感じじゃないでしょ。


「み、視えるのは霊だけで、未来や遠くが視えるってわけじゃないけど……」

「それでもすげえって。霊感もちに偽物が多い中、ガチだからな。こいつの目と俺の知識……このコンビは最強なんだぜ」


 獅童が自信満々に胸を張る。

 その堂々とした姿が、少し眩しかった。


 そんな時、一人の女子高生が言った。


「あの、ちょっと相談があって……」


 彼女は、困った顔をしていた。


「私の友達が、すごく困ってるんです。心霊現象に悩まされてて……」

「心霊現象……?」


 獅堂が聞き返す。


「はい。いろんな霊能者に相談したみたいなんですけど、全部断られちゃって……。

 それで、あなたたちなら助けてくれるんじゃないかって思って」


 女子高生は、スマートフォンを取り出した。


「この子なんですけど……」


 画面には、清楚な雰囲気の女子高生の写真が映っていた。


「名前は……」


 その瞬間、僕は凍りついた。


「一ノ瀬雫って言うんです」


 一ノ瀬雫。

 その名前を聞いて、僕の心臓が跳ね上がった。


 あの、スピリチュアルフェスタで出会った女子高生。

 僕と獅堂が出会うきっかけになった、あの少女。


「……あの、どうしたんですか?」


 女子高生が、不思議そうに僕を見る。

 獅堂が、すかさずフォローした。


「いや、何でもないです。それで、その一ノ瀬さんは、どんな心霊現象に悩まされているんですか?」

「えっと……家で変な音がしたり、物が勝手に動いたり、それから体調不良も続いてるみたいで……」


 女子高生は、心配そうに言った。


「それで、いろんな霊能者に相談したんですけど……」

「断られた?」

「はい。『あなたには霊障はない』とか、『うちでは扱えない』とか言われて……」


 女子高生は、悔しそうに続けた。


「スピの介っていう有名な霊能者にも相談したみたいなんですけど、ブロックされちゃったみたいで……」


 僕は、はっとした。

 スピの介にブロックされた。

 それは――。


 獅堂が、僕の顔を見た。珍しく、しまった、という顔をしていた。

 僕も、獅堂の顔を見た。

 二人とも、同じことを考えていた。


 あの時、イベントの後――獅童は彼女の連絡先を改竄し、極道の家に向かわせるという事をやってのけた。

 それでスピの介は思ったのだろう。


 あの女に騙された、と。


 つまり、彼女がブラックリスト入りしたのは――僕らのせいだ。


「……っ」


 僕は、罪悪感で胸が締め付けられた。考えが甘かった。


「あの、やっぱり無理ですか……?」


 女子高生が、不安そうに聞く。


「いえ」


 僕は、顔を上げた。


「助けます」

「え……?」

「その一ノ瀬さんを、僕らが助けます」


 僕は、はっきりと言った。

 獅堂が、僕の肩を叩いた。


「そうだな。俺たちに任せてください」



 ◇

 翌日。

 瑠璃宮に、一ノ瀬雫が現れた。


「……あの」


 彼女は、恐る恐る入ってきた。

 僕は、彼女を見た瞬間、胸が痛んだ。

 彼女は、やつれていた。

 顔色は悪く、目の下にクマができている。

 明らかに、体調が悪そうだった。


「いらっしゃい。一ノ瀬雫さんですね」


 獅堂が、笑顔で迎えた。


「は、はい……」

 雫は、緊張した面持ちで座った。


 そして、僕の顔を見た瞬間――。


「……あ」


 彼女は、はっとした表情になった。


「あなた……あの時の……」


 彼女は、僕を覚えていた。

 スピリチュアルフェスタで、スピの介に反論した、あの少年を。


「……はい。八坂祐介です」


 僕は、頭を下げた。


「あの時は……すみませんでした」

「え……? なんで謝るんですか?」


 雫さんは、驚いた顔をした。


「あなたは、私を助けようとしてくれたん……ですよね?」

「でも……」


 僕は、言葉に詰まった。

 流石に、この獅童があなたのプロフィール改竄したり、連絡先改竄して色々してましたその結果あなたは霊能者たちからブラックリスト入りしましたごめんなさい――なんて言えるわけがない。


「でも……あの時は助けられませんでした」


 だから、そう言うしか無かった。



「で、でも……今もこうして助けてくれようとしてくれてる、んですよね。」


 雫は、涙ぐんだ。


「私、もう誰も助けてくれないと思ってました……だから、友達から、OKが出た会ってくれるって聞かされた時……本当に、嬉しくて」

「大丈夫です。必ず助けます。こいつが!」


 獅堂は、そんな彼女に力強く言った。


「それで、具体的にどんな心霊現象が起きているんですか?」

「はい……」


 雫さんは、震える声で話し始めた。


「最初は、家で変な音がするようになって……」

「どんな音ですか?」

「ドン、ドンって、壁を叩くような音です。夜中に、突然……」


 雫さんは、続けた。


「それから、物が勝手に動くようになりました。私の部屋の本が、棚から落ちたり……」

「他には?」

「体調不良も続いてます。頭痛、めまい、吐き気……」


 雫さんは、顔を覆った。


「それに……悪夢を見るんです。毎晩……」

「どんな悪夢?」

「誰かに……追いかけられる夢です。暗い場所で、誰かが私を呼んでいて……」


 雫さんの声が、震えている。


「怖くて……もう、限界なんです……」


 獅堂は、雫の手を握った。


「一ノ瀬さん。大丈夫。俺達が、助けます」


 獅堂は、真剣な表情で言った。そして俺の手を取り、雫さんの手に重ねる。


「特にこいつが。こいつの霊視は――本物だ。決して、手に負えないからと見捨てたりしねぇよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ