童話 駄菓子屋の魔女の飴
とあるお店に、
すごく甘い飴があった。
皆が食べたくなるようなそんな飴が。
それは小さな町の駄菓子屋さん。
いつからできたのか、大人も子供もお年寄りも、誰も知らない。
けれど、誰もが知っている、そんな不思議な駄菓子屋さん。
そんな駄菓子屋さんにはある噂がある。
それは魔女がお店をやっているという噂。
良い子のお客さんには、ちょっとだけ願いを叶えてくれるような魔法のお菓子をくれるという。
けれど、悪い子のお客さんには、ちょっと痛い目にあうような、そんな怖いお菓子をくれるという。
噂を知っている子供達は、好奇心で確かめようとするけれど、真相は誰にも分からない。
お菓子を食べた子供達は、その後にあった出来事を覚えているけれど、お菓子を食べたという記憶が消えてしまうから。
だから魔女が何かしているかもという噂があっても、真相なんて分からない。
そんな魔女はある日から、とても甘い飴を売り始めた。
子供達はこの飴に夢中で、すぐにいろんなお客さんがやってきた。
良い子、悪い子。それだけじゃなくて。
悩みがある子。ない子。
いろいろに。
飴を食べた後も、もちろんいろいろな出来事が起こった。
なぜならそれらのとても甘い飴には、魔法がかかっていたから。
テストの点を上げる方法が分からないという子には、テスト勉強にやりかたをまとめたノートがプレゼントされる出来事があったり。
病気が早くよくなりますようにと闘病生活を送っている子には、治療薬の発見の知らせがもたらされたり。
けれど毎日人の家の壁に落書きをしているいたずらっ子には、手についてもとても落ちにくいクレヨンをおくったり。
ゴミをポイ捨てしてばかりの子には、拾ったゴミの怨霊が夢に出てくるようになったりした。
いつもはそんなにたくさんの魔法の駄菓子を売ったりしないけれど、駄菓子屋の魔女はその町を離れる事が決まったから、最後に町の人たちへのプレゼントをしたかった。
魔女は年をとらないため、一か所に長くとどまれない。
だから、毎回その土地を離れるときは、たくさんのお菓子を売ってからにしているのだ。
たくさんの飴がもたらしたものは、良い事と悪い事どちらも。
お菓子を食べた記憶はすぐになくなってしまうけれど、魔女が残した思い出はずっと残り続けていく。




