流されちまった2人の少女(4)
少女2人は川上に向かって歩いていた。
「なあ、なんでついてくんの」
「・・・・・・勘違いしないで、私もこっちに用があるだけ」
「あっそ」
2人は歩いた。沈黙に耐えきれなくなったサナエは話題を絞り出すが、今一つ芯を捉えることができず、この間の会話で分かったことは、クイナがオクラや山芋のような糸を引くような食べ物が嫌いであるということ、年齢が自分よりも1つ上だということ、そして、先ほどの模擬戦闘では5割ほどしか力を出していなかったということである。
会話は長続きすることなく途切れ途切れとなった。おしゃべりエンターテイナーと自称しているサナエにとっては苦痛の時間であった。
1時間ほどして、川岸にサナエが使ったタオルが落ちているのを発見した。つまり、2人が流された場所である。結構流されていたのだなとサナエは川上の方を見た。流れは相変わらず急である。
「ああ、良かった。なんとか帰ってこれたわ。後は、こっちを真っ直ぐ行ったら、アイコ達がおるわけやな」
「・・・・・・アイコ、誰?」
先ほどまで何事にも興味を示さなかったクイナの表情筋が動いた。
「あん、誰ってアイコやアイコ。尻尾がフサフサのカワイイカワイイ女の子。あっそうか自分と初めて会ったときはまだおらんかったなぁ。最近一緒になってん」
「・・・・・・フサフサ・・・・・・むふぅ。分かった。この森は危ないからマルグロリアたちの所までボディガードしてあげる。さあ、行こう」
クイナはサナエの後ろに回り込み背中を押した。凄腕殺し屋スナイパーのように背後に回られたら男女かまわず殴るという条件反射を持つ人間なら対処できたかもしれないがサナエが気付いた時には背中にクイナの手が当たっていた。クイナが本気を出せば簡単にサナエが殺されるということを証明する形となった。
「いやいや、危険ってこっから30歩ほどの距離やねんけど」
「・・・・・・その油断がいけない。もし魔族が出てきたらどうするの。あなたは私より弱いのだから、遠慮せずにさあ、早く」
そう言ってクイナはサナエを守ると言いながら先頭に立たせマルたちの所へ向かわせた。