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流されちまった2人の少女(2)

 「みぎゃああ!」

 かれこれサナエのでこは7発の強烈なデコピンを受けていた。何度も腕を振り、3種類ある出し手を不規則に出していくが、そのことごとくが破れ去って行った。

 そして、デコピンを受けるたびにサナエはのたうちまわる。

「・・・・・・あなたが相手だと何故だか、全部がクリティカルヒット。もしかしたら私デコピンが得意なのかも」

「くっくそ・・・もう一回や。次は絶対に勝つ・・・・・・例え卑怯者と罵られようとも、女には勝たなあかん時があんねん」

 クイナは何の躊躇いもなく再戦を受けた。クリティカルヒットするこのデコピンと言う行為に快感を覚え始めていた。早く、デコピンをしたくて仕方なかった。

 再戦を了承したことを確認し、サナエは意地悪そうに笑った。なにやら、良からぬことを考えているようである。

 そして、再びじゃんけん。

「じゃーんけん、ぽん・・・・・・これで私の勝ちやぁぁぁ!」

 サナエはあることを思い出していた。それは、小学校5年生のことであった。

 プリンが給食に初登場した時のことであった。この日は欠席者が1人いた。そう1人いたのだ。必然的にプリンが1つ余るのだ。そして、始まるプリン争奪じゃんけん勝負。やはりさすが新登場のデザートである。じゃんけん大会に参加したのはクラスの全員であった。大会は熾烈を極めた。対戦相手の癖を思い出す者、手を組みそこを覗き、穴の形で出し手を決める者、鉛筆にグーチョキパーと書き転がした時に出た目を出す者と参加する児童たちは、様々な手段を講じて戦いに挑んでいた。そして、決勝戦。サナエと友人が残った。サナエはどうしてもプリンが食べたかった。その時はどのようなものを犠牲にしようとこの勝負勝ちたかった。

 そして、勝負。

 サナエの出したる手はじゃんけん界で最強の手といわれる必殺グーチョキパー。親指、人差し指、中指を立たせ、薬指、小指を折り曲げた形である。非難の声を浴びたが無理が通れば道理が引っ込むという心情を胸にサナエは全員を説き伏せた。しかし、放課後の終わりの会で友人に謝ることになった。以来この必殺のグーチョキパーは封じられた。だが、この手は時折学内で使用され、数々の修羅場が生み出されたのは言うまでもない。

 そして今、サナエは封印を解く決意をしたのだ。

「どや、この手に勝てる手なんか存在・・・・・・なっなんで、なんであんたがその手を出してんねん」

 クイナもサナエと同様にグーチョキパーを出していた。唯一この手で負けない方法それは同じ手を出すことである。

「・・・・・・あいこで」

「あっ」

 予想できなかった出し手、自分が勝つビジョンを裏切られたサナエは、目の前の光景が信じられず、動揺した。これがいけなかった。クイナは立ち直らせる暇を与えることなく、あいこを発した。これにより、サナエは苦し紛れに意志の全くこもっていないグーを出してしまった。見逃すはずもなく当然のようにクイナはパーを出し、この勝負を制した。

「・・・・・・私の勝ち」

 掌をサナエに向けニギニギ。そして微笑。

「なんで、必殺のグーチョキパーを・・・まさかあんた夢可視ノ小学校の伝説のじゃんけんキング」

 サナエの小学校の1つ上の学年での給食牛乳じゃんけんで、無敗を誇った生徒のことを、皆がじゃんけんキングと呼んでいたのだ。小学生のモテる要素と言えば、脚が速い、勉強ができるであるが、夢可視ノ小学校ではじゃんけんが強い児童がモテたのだ。

「・・・・・・じゃんけんキング?よくわからないけど、でこ出して」

 さて、連戦連勝でデコピンを打ち続けているクイナの必勝法とはどんなものであるのか。この必勝法を実践するには、必要なものがある。それは、鍛え上げられた動体視力である。何度も修羅場に遭遇し、その全てを生き抜いてきたクイナの瞳はサナエの手の動きをコマ送りで見ることが可能なのである。そのため、クイナはサナエの手の形が固定されるギリギリまで確認することができる。あとは、それに合わせて、グーならパーをチョキならグーをと勝つことのできる手を出すだけである。

 それにより、サナエの必殺グーチョキパーに対応することができたのだ。

「ぐぐぐ・・・・・・なぁ!!」

 8度目のデコピンも今までと同じ個所に吸い込まれた。回数が増す毎に、クイナはデコピンに慣れてき、サナエは何度も同じ個所に受け続けているため、痛みは増すばかりである。

「・・・・・・ふー、もう満足」

 鼻息を出し、クイナは恍惚の表情を浮かべた。

「なぁ、お願いがあんねんけど」

 ようやく痛みが治まり、立ち上がったサナエが懇願した。

「・・・・・・何?」

「一回だけ、私にデコピンさせてくれへん、痛くせえへんから」

 サナエは、デコピンを2回素振りをした。作り上げられた風により、飛んでいた蝶が落下した。

「・・・・・・意味がわからない。まず、あなたはじゃんけんに勝っていないし、デコピンが痛くないことは絶対にない。だから私は断る」

「そんな英文の日本語訳みたいな文章で断らんといてや、お願い、一回だけ、このままやと怒りにまかせて殴りかかりそうなんや」

「・・・・・・あなたの今の精神状態はかなり危険ね」

「だからお願い、痛くせえへんから。最初だけやから痛いのはぁ!」

 処女の女の子に言い寄る男のようなことを言っているサナエとクイナは距離をとるために、剣を抜き牽制した。同じように警戒し、サナエは前かがみになり、いつでも飛びかかれるように姿勢を低くした。

 先に動いたのがクイナである。剣をサナエに向けつつ、姿勢を低くし、足元にある石を拾った。

「・・・・・・それじゃあ、試しに私にしようと思っているデコピンをこの石にしてみて」

 そう言ってクイナは掌に収まるほどの石をサナエに投げ渡した。クイナは、この牽制しあう状態が続けばデコピンどころではないクイナが攻撃してきて被害を受ける可能性があると予想していた。よって、クイナの要望を受け入れることにした。

「よし」

 サナエは石を左手に乗せ、石にクイナの顔を投影。そして8発分の怒りを込めたデコピンを放った。打ち抜かれた石は砕かれることはなかったが、瞬間移動したかのようにサナエの左手から姿を消していた。そして、少し離れたところにあった細木が音を立て、下半分を残し倒れた。

 クイナの背中に大量の汗が流れた。

「・・・・・・絶対にいや。そんなのされたら私の頭部がアンパンマンみたいに取れてしまう」

 身の危険を感じたクイナはこの場を離れようとそそくさと逃げ出そうとした。しかし、それをサナエが腕をつかみ制止した。

「ええやんか、一回だけさせて・・・・・・つうかさせろ」

「・・・・・・絶対にいや」

「先っちょだけ」

「・・・・・・だからいやだって」

 2人はもみ合いつかみ合い。サナエはデコピンの間合いに入ろうとし、クイナはサナエから離れようとしていた。

「あっ」

「・・・・・・あっ」

 サナエはバランスを崩し、川へと一直線に倒れていった。クイナは不運なことに腕をサナエがっちりとつかんでいたのだ。サナエに引っ張られる形でクイナも川へとダイブし、水かさが増した川の激流に飲みこまれた。


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