毒殺料理人アイコ
【どう、おいしい?】
「・・・おいマルなんか言えや。アイコが返事待ってるやろ。見てみぃな、あの潤んだ瞳、まるで売られていく子ヤギ見たいやで。ああかわいいなぁ」
『・・・お前が言えよ』
「言いたいけど、言葉が思いつかんねん。いかにしてアイコを傷つけずにこの、よくわからん色をしてるチャーハン?を評価する単語、語句、言葉、用語が私の脳内辞書にはないねん。お前長く生きてんねんから、いくつか候補あるやろ」
『確かにバカなお前よりも俺は年上で博識だ。しかし、思いつかん。下手なこと言って泣かれても困るからな。ここは、己に嘘をついて褒めた方がいいんじゃないか?アイコの料理はチャーハンの宝石箱やぁみたいな』
「アホか。あんたが作った意味のわからん夕食担当決めくじ引きでアイコが一週間連続で担当になったんやんけ。一週間もこんなん食わされたらもたんで」
『確かにな・・・どうする?どっちを選んでも地獄だ』
「せやねんなぁ。アイコはなんとかして悲しませたくないし」
【ねえぇ、どうなの?さっきから2人でしゃべってばっか・・・もしかしておいしくなかった?】
「へぇっ!?おおおっおいしいでめっちゃおいしい、モグモグゴクッ、ほらおいしすぎて一気に食べてもうた」
『相変わらず、変なところだけ男前だなお前は』
【ほんと?よかった。おかわりいっぱいあるからね。サナエがたくさん食べると思ったから、御鍋いっぱい作ったんだ】
「・・・いただきます・・・グスッ」
【嬉しくて泣いてるの?】
「そうやで、嬉しすぎて堪らんわ・・・いただきます」
『男前だな』
「ううう・・・甘ずっぱ苦いチャーハンが襲ってくるぅ」
『おーい、大丈夫か』
「大丈夫やったら、こんな弱音吐かんわ。アイコは?」
『寝込んだお前のために水を汲みに行ってるよ。作りすぎたのかなぁって言っていたぞ。かわいいやつだなぁ。10人前食ってもお前の胃なら大丈夫なのにな』
「なるほど。不味いってことには思考がいきつかんのか」
『で、どうするんだ。これから1週間、毎日夕食にトラウマを作られるぞ』
「うーん。そう言えば、アイコも食べたんやろ。どうやったん?」
『平気な顔して食ってたぞ。どうやら俺達と味覚の作りが違うらしい。お前以上に、何を食ってもうまいうまいって言う娘だからな』
「さすが化け狐娘。男やったらさぞ女性にもてるやろうに。しかし、そう言うことやったら本人に料理が下手って言うことを知らすって手段はできへんってことやな」
『ああ、誰かが言ってやらんといかんだろうな。しかし、俺達はそれを告げることはできない。そこでだ、これを見ろ』
「ん?ミクリアン料理大会?」
『この先にある街だ。3日後、この街で料理大会が開催されるそうだ』
「ほぉほぉうんで?」
『俺達で料理が下手だと言うことを告げることは良心的に無理だ。なら、他のアイコに特になんら感情移入していない辛口審査員共に言ってもらったらいいだろう。それに、審査員も大人だ、子供の料理をそこまでケチョンケチョンに貶すことはないだろう。これなら俺達がアイコに嫌われることはなく、トラウマの大量生産も避けられるわけだ』
「ほな、早く行こ、早く早く」
『ただ残念なお知らせだ。どれだけ急いでも2日はかかる』
「・・・と言うことは」
『後2回は、アイコの手料理を食うことになるな』
「・・・・・・がくっ」
【サナエー、ほら水汲んできたよ。あれ、どうしたの2人とも】
『いやなんでもない、ただ人生って楽無くて苦ばっかりだなって思ってな』




