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暗闇からの来訪者(6)

「えっ何?誘拐?お前、前から言ってるだろ。犯罪をする時は先に俺に言えって。ああもうどうするんだよ。身代金でも要求すんの?やめとけやめとけ、ほら金見てこれ金。なっ、これでいいだろ。よし分かったな、なら早速このか弱き少女の自由を奪っているワイヤーを外して元の場所に返してこようか。うん1人じゃ行きづらいか、分かった俺も付いて行って頭下げてやるから。なっ」

 サナエが極貧生活に嫌気がさし身代金目的の誘拐をしたと勘違いしているようだ。顔色は蒼白し、大量の汗を浮かべている。息遣いもどこか荒く、今にも過呼吸に陥りそうになっている。

「アホ、ちゃうわ。金稼ぐんやったらこんな手間かけずにもっと単純に高そうな貴金属つけてるセレブババア襲うわ。ちゃうちゃう誘拐ちゃう、実はな、かくかくしかしか」

 かくかくしかしかとたった8文字で3話分の出来事をまとめ説明した。実に便利な言葉である。

「うむ。つまりあれだな、お前がこの街で出会った男に恋をしたのは良いのだが、その男には彼女が居てその彼女がこの子なんだな。そして、お前は恋敵である邪魔な少女を亡き者にしようとしている所に俺が入ってきたんだな」

 表情は落ち着いているが、まだ脳内は絶賛混乱中のようである。

「ちっがーう。ええ加減にせんとドツキ回すぞ」

「分かってるって、その少女が昨日の刺客なんだろ。うんでお前が返り討ちにした。しかし、殺すことはできないし倒したままにしておけば、また襲ってくるかもしれない。だから縛って監禁してるんだろ」

「そうそう。監禁って言葉世間体悪いけどな」

「見る者が見たら確実に犯罪者だな」

その時であった。絶対に入って来てほしくない状態、エロ本をコソコソと読んでいる中学生状態と呼ばれる状態の部屋のドアが開いた。

「失礼します。夕食は・・・・・・あっ・・・しっ失礼しましたぁ」

 ビーフオアフィッシュと国際線のキャビンアテンダントのように注文を聞きに来た宿の店員が何か見てはいけない物を見てしまったと慌てて部屋を飛び出して行った。その動きを見ると同時にマルの体は反応し、店員に向かっていた。

「違うから違うから、犯罪じゃないから誘拐じゃないから、ただ・・・そのあれ、ド変態的なプレイをしようとしていただけだから。うん、決して犯罪的なものじゃないから変態的なものだから安心してね、ねっ」

 逃げだそうとする店員の腕を掴み、マルが混乱しつつ仮に納得されても損しかない言い訳をするのであった。悪いことにこの男の目が大きく開かれ瞳孔も開いていた。さらに先ほどの汗がまだ引いていなかった。ますます、不審者に見える。

「いやぁぁぁぁ、変態も犯罪もどっちもいやぁああああああ。そっその私見てないです。何も見ていないんです。だから殺さないでください、もしくはそのプレイに巻き込まないでええええ」

 腕を掴まれた女性店員は命の危機に瀕しているかのごとく暴れ回った。腕を振り回し、マルの手を外そうとする。

「ちょっマル暴走してるから。もうちょい良い言い訳あったやろ」

「えっとあのその・・・そうだ。実は人体実験の方を」

「わっ私に触るな、このド変態があぁ!」

 涙目の店員のスナップのきいたビンタがマルの頬を打ち抜いた。綺麗に強振で真芯を捉えられたマルの体は回転を始め、宙を舞った。そして落ちた。

「二度と私の目の前に現れるな!後ビーフオアフィッシュ!?」

「「フィッシュでお願いします」」

 あまりの迫力に2人は押され、ビーフを食べたいところフィッシュを注文してしまった。

「おう!待っておけよ」

「「はいっ、ありがとうございます姉さん」」

 劇画タッチになった店員は注文を取り部屋を後にした。

「はぁ、痛い。右耳の鼓膜破れたかも」

 ビンタがあまりにもきれいに決まったようでマルの右耳は聞こえづらくなっているようだ。

「良かったやん。ド変態の方信じてもらえて」

「・・・複雑な気持ちだ。もう少し、良い言い訳があったよなぁ。例えば、マジックの縄抜けショーの練習中だとか。しかし、どうするんだその子、このままにしていてもいかんだろ」

 この大騒ぎの中、未だに気絶している少女を指さした。この少女ある意味大物である。

「うーん。とりあえずもう一回襲いかかってこられたらかなわんから、私の目に届く場所においとこってことになってんけど、先々のこと全然考えてへんかったわ。やっぱりここは覚悟を決めてバラすか、それともどこか遠方の方に運んで行ってこのまま放置するか」

「主人公の言う言葉じゃないな」

 なんて、一向にストーリーが進展しない会話が飛び交っている。


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