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暗闇からの来訪者

 いつ終わるのか分からない旅を続けるサナエとマルを見つめる影があった。

 身の丈は150㎝代後半、背中まで伸びた黒髪が夜の闇と同化している。腰には短刀を2本備え、さらにナイフを1本鞘に収め、付けている。右手には1枚の写真を持ち、森の中で焚き火を囲むサナエとマルを眺めていた。その瞳は焚き火の光を反射させ怪しく光った。

「見つけた」

 少女のような高い声が影から発せられた。影は、写真を懐に仕舞い、音を立てずに歩きだした。影が仕舞った写真には、アホ面で大あくびをするサナエが映っていた。


 焚き火の熱がサナエの頬に当り、ヒリヒリとさせる。携帯食糧を調理し食べ、食後のデザートである焼きマシュマロを作っているところである。3人前も食べたにもかかわらず、マシュマロ一袋全部を串に刺し、平らげようとするのは流石である。

「これはなぁ、なかなか、火の当て方が難しくてなぁ。当てすぎたら焦げるし、チキンなったらおいしい熱の通り方はせえへんねん。外はカリカリ、中はふっくらやで。それによって、マシュマロ本来の柔らかさと焦げにより作られたパリッと感、この二つの食感が同時に味わえて最高のスウィーツになるんや」

 うまい具合にマシュマロの刺さった串を回していく。熱せられたマシュマロは外皮を焦がされ、食欲をそそる匂いを出している。匂いにつられ周りに動物が寄って来ているようで、物音が辺りからした。しかし、火におびえ姿を現すことない。火におびえているのか、それとも、サナエのオーラに怯えているのかは分からない。

「今日の夕食は、適当に食材を選び、適当に味付けをして、適当に盛った奴のするマメな行動ではないな」

 野菜炒めを、焼き魚の上にかけ、その上に、パスタを乗せた、ごちゃ混ぜ料理のことをマルは、思い出した。不味くはなかったが、やはり料理とは外見も重要であると言うことを認識させられるものであった。

「私は、無駄な所に労力を使う主義やの」

 サナエはマシュマロから目を離さず答えた。確かにサナエは言うとおり無駄に細かいことに気を使うタイプであり、割り箸を丁寧に真っ二つに割ることに集中したり、プリントを全て均一にまっすぐホッチキスで止めるために神経をすり減らしたりと、変なところだけ神経質なのであった。

「上司だったら使いづらい部下だろうな」

「今この時はそんなもん考えたくもないわ。私は、今は、おいしい焼きマシュマロを作ることだけに専念したいの」

 やれやれと、マルは呆れ、その場で横になった。時間ももう遅いし、明日もこの森の中を歩くのだから、早く寝ようと考えていた。

 そんなマルを尻目に、サナエはさらにマシュマロに集中した。そんな焚き火の煙がサナエの鼻へと吸い込まれていった。そして、煙が鼻孔内を暴れ回りくすぐる。

「むぅ、へっ、へっくしゅん」

 盛大なくしゃみを決めたサナエ、飛び散った光るよだれ。そして、その頭があった場所を風を切り通り過ぎ、食べごろになっていたマシュマロ串を一刀両断し、怪しく光るナイフ。

「ナッナイフ!?」

 先ほどまで、マシュマロがあった場所でナイフが焚き火に温められていた。

「伏せろ」

 起き上がり、マルはサンタフェに手をかけしゃがみこんだ。そして、ナイフの飛んできた方向に目をくばせ、第二撃を防ぐために焚き火を消した。

 焚き火と言う光源が消え、辺りは暗闇と化した。視界が奪われたマルの耳が鋭敏化し、木々に潜む、刺客の音を拾うために動いた。聞こえるのは、自分の呼吸の音、焚き木の燃え尽きる音、一斉に異変を感じ逃げだした動物たちの音。その中から、刺客の音を探る。

「きゃっ、一体なんなん!?」

 マルの言うことを聞き、伏せていたサナエが空気を読まず、まるで映画のヒロインのように黄色い悲鳴を上げ、マルに今の状況を問いただした。

「良いから黙っていろ。場所がばれる。理由はわからんが、どうやら何者かに襲われているようだ」

 マルは、事態を把握しきれていないサナエの手を取り、森の中を走った。元居た場所に居れば必ず、刺客は来る。居場所を知っている分だけ、刺客が有利であった。だから、マルは条件をイーブンにするため走った。そして、途中で、適当な場所で足を止め、息をひそめ隠れた。

「ちょっ、なんでいきなりナイフが飛んでくんの」

 マルにしか聞こえない、小声でしゃべりかけた。

「分からん、いいか、声を出すな。まったく敵の場所が分からんのだ。辺りが明るくなるまでここで待つぞ。恐らく、敵も目が見えていないはずだ。しかも俺達を狙っているのであれば、絶対にさっきの場所から動くはずだ。その隙をつき荷物を取る。そしてその後」

「その後、叩く?」

「いや、怖いから逃げる」

「賛成」

 それから2人はじっと息を殺し辺りの気配を窺いつつ隠れた。


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