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平和を守りし者と乱す者

 酪農が盛んな町。サナエとマルが草の上に寝転がっている。

「あ~平和やなぁ」

 仰向けに寝そべり、輪郭がはっきりと見える雲を眺めていたサナエが、呟く。

「うむ。平和だ」

 サナエの横で同じように仰向けで、目を閉じ風と草の匂いを感じているマルが同意した。

 ここ最近は色々と事件があり、気が休まる暇がなかった2人は、ここぞとばかりに、だらけた。

「あ~一生このままでええわ」

「俺も」

 サンサンと太陽が2人を照らした。


 日向ぼっこに勤しんでいる2人の500m後方。この街最大の牧場にて、事件は起きていた。

「ふっはっはっはっはっはっ。おとなしくしろ。私は、ブラックダーカーズのエッグ男爵だ。この牧場は我々が頂く」

 世界征服を企む、悪の組織ブラックダーカーズの幹部エッグ男爵が、部下の量産型戦闘員クログロを複数人連れて、牧場に乗り込んできたのだ。

「ブッブラックダーカーズだって、一体何でこんな田舎町に!?」

 牧場主の、ジョージは、ブラックダーカーズの名前を聞いただけで震え、腰が抜け座り込んでしまった。

「ふっはっはっはっはっはっ。この牧場を我々の支部とし、この地域の支配のための基地とさせてもらう。そして、お前が丹念に育てた動物たちを改造し、我々の怪人にしてやろう。ありがたく思え人間よ」

「そっそんなあんまりだ」

 頭に目と鼻と口をマジックで書かれた巨大な卵を乗せたエッグ男爵はマントを一度翻し、恰好をつけ、ジョージに剣を突き付けた。

 最新最先端技術で作られた、エッグ男爵の剣は、1秒間に千回振動を起こし、どんなものでも簡単に裁断してしまう恐ろしい剣である。エッグ男爵はそれの剣を器用に扱い、ジョージが5年間丹精をこめて蓄えた髭を全て剃っていく。

「どうだ、すばらしい剣だろ。抵抗したらお前自身に喰らわしてやろう」

「ぐぐっ」

「ふふふ、はっはっはっはっはっ。それではクログロども、牧場に居る動物共を、連れて行き、怪人に改造するのだ!」

「「「クーログーロ」」」

 クログロ達は大きく返事をした。

「ああー、花子に菊子、春子、夏子、冬子、秋子、そして太郎に次郎に三郎に・・・・・・(300頭の動物の名前を言っている)。があああああああ!誰かっ、誰か助けてください」

「ふははははは、いくら助けを呼ぼうが無駄だ。ついでだ、貴様も改造人間にしてやろう。そして、わが組織に忠誠を誓い、我々のために働くがいい」

「うわー」

 エッグ男爵は懐から怪人の細胞をいれたアンプルを取り出した。

「そんなことはさせないぞ!」

 エッグ男爵の後方で声がした。

「誰だ!?」

 振り向くとそこには、

「空に輝く太陽の化身・・・この世の全てを照らしだす、レッド!」

 少しだけデコレーションされた全身タイツを着た男がポーズを決めた。

 普通に見れば大爆笑してしまう場面であるが誰も笑わず、真剣な顔をしている。

「愛。世界中を愛で包んで平和にして見せる。ピンク!」

 次に、ピンクの全身タイツを着た人間が現れた。タイツにより強調される体のラインからして女であることが分かる。

「夜は我に任せろ。漆黒の闇を照らしだす星・・・ブラック」

 全身黒タイツの男も現れた。黒色のためクログロとかぶっている。クログロのリーダーと言われても普通に納得してしまうほどかぶっている。

「俺達3人合わせて」

 レッドが言うと3人は集合した。

「「「空想妄想戦隊・・・エスエフレンジャー」」」

 チュドーン。

 ポーズを決めたエスエフレンジャーの後ろで爆発が起こった。

「そこまでだ。エッグ男爵。この牧場をお前たちの好きにはさせないぞ」

 リーダーであるレッドが前に一歩出て、エッグ男爵を指さした。

「エスエフレンジャーだと・・・小癪な。我々の邪魔する者は誰であろうと容赦はせん。クログロ共やってしまえ」

「「「クーログーロ」」」

 全身黒タイツのクログロ総勢20人が、サーベルを持ちエスエフレンジャーの面々に襲いかかる。

「みんな行くぞ」

 無駄なデコレーションを施された非常に扱いづらそうな赤い色の剣を構えレッドがほかの2人に声をかける。

「「おう!」」

 2人が返事をし、自分たちのおよそ7倍の数のクログロを迎え撃つ。

 質より量と言われるが、個々の力の差が赤ん坊と大人ぐらい離れていると、いくら数に差があっても無駄であると思われる。それの答えが今、牧場内で起きている。

 クログロの攻撃を軽やかにかわし、斬撃を食らわし、クログロを戦闘不能にしていくレッド。

 愛の力で、クログロをメロメロにし、同志討ちをさせていく、ある意味最強のピンク。

 プロレス技で、一々フォールを決めクログロを倒していくブラック。

 5分も経てば、動けるクログロは1人も居なくなっていた。

「さあ、後はお前だけだ。エッグ男爵。覚悟しろ」

「うぬぬぬ。使えぬ雑魚共が、いいだろう私が直々に相手してくれよう」

「行くぞ。エッグ男爵!」

「かかってこい!」

 レッドとエッグ男爵の剣がぶつかる。流石正義の味方の剣である。どんなものでも裁断すると言われていたエッグ男爵の剣を受けても斬られることはなかった。

 デスクワーク派のエッグ男爵では、剣術に長けたレッドとは技術に差があった。剣での有利もなくなり、さらに3対1である。

 横から時たま攻撃してくるブラック、操る者が無くなり手持無沙汰になり仕方なく応援しているピンク。それにより着実にエッグ男爵は追い込まれていった。

「うぬぬ。ならばこれでどうだ」

 エッグ男爵は一度レッド達から距離を取った。そして、腰下につけていたホルダーから卵を取り出した。

「くらえ、電子レンジで温めた生卵攻撃」

 マイクロ波により熱せられた卵を投げた。

「無駄だ」

 それを剣でレッドが斬った。いや、剣が触れた瞬間卵は盛大に破裂したのだ。熱々の、半生卵が飛び散り、エスエフレンジャーを襲った。

「うわー、あっつあっつ」

「いやー」

「ぬわー」

 3人は余りの熱さにのたうち回った。

「ふははは。どうだどうだ。どんどんいくぞ」

 次々と卵を取り出し投げていくエッグ男爵。

 卵はタイミング良くエスエフレンジャーの近くで爆発し、エスエフレンジャーを弱らせていった。

「勝った。これで、私の出世は約束されたな・・・ふふふっはっはははははは」

 卵を手に持ったままエッグ男爵は高笑いを始めた。

「くっくそう、一瞬でも隙があればなんとかなるのに」

 タイツの隙間に入ってきた卵をかきだし、レッドが叫ぶ。

「無駄だ。隙なんぞ絶対に見せんぞ絶対だ」

 エッグ男爵の手に力がこもった。

 その時、手に持っていた卵に圧力が加わり、卵が爆発した。

「うわぁっちいいいい」

 至近距離で爆発を浴びたエッグ男爵は、思いっきり隙を見せた。

「今だ」

 ここぞと言わんばかりに3人はフォーメーションを組んだ。

「「「エスエフビーム」」」

 レッドがどこからか巨大なビーム兵器を取り出し、3人で協力し構えた。

「エネルギー充電率85・・・90・・・95・・・100。第一第二第三砲門開放。冷却機エラーなし。ロックオン完了・・・レッド撃てます」

 ピンクが言った。

「よし、発射」

 レッドが保護カバーを開き、発射ボタンを押した。

 ビーム兵器の発射口付近の時空がねじ曲がった。そして、超強力最大最高激震のビームが飛んだ。

「しっしまったあああああああ!!!」

 ビームをまともに浴びたエッグ男爵は、跡形もなくこの世から消え去ってしまった。

「この世界の平和は俺達が守る」

「「「俺達・・・エスエフレンジャーが!!」」」

 3人はそう言って去って行った。


「ありがとうよ。エスエフレンジャー。おかげで牧場は守られたよ」

 エスエフレンジャーに礼を言い、ジョージは愛しの動物たちの様子を窺いに行った。

「・・・あっ」

 ジョージは自分が作り上げた牧場を見て声を失った。クログロ達によって柵が破壊されていた。そして、その壊れた柵から大量の動物たちが逃げていた。通常時なら、おとなしい動物ばかりなので逃げるようなことは無いのだが、先の戦いの音や振動。そして、エスエフビームの余りの凄さに、興奮し、全頭逃げてしまったのだ。

「あああああああああ!!!!」

 ジョージの声が牧場内にこだました。


「あーほんまに平和やなぁ」

「ああ、本当に平和だ」

 平穏を噛みしめる2人は、500m後方から300頭の動物が自分たちの方向、目がけて爆走していること、そして、後数十秒で、この平穏が終わることを知らない。


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