第57話 お城でまさかの“お役ゴメン”とかウケるんだけど?!
やっほー☆甘奈だよー!
まさかお城から急に呼び出されるとか聞いてないんだけど?!
てか王様に謝られるとか意味わかんないし!
「はあ?!」って素で声出ちゃったわw
その日、甘奈たちのもとへ王城の使者が現れた。
きらびやかな紋章入りの外套をまとい、場違いなほどかしこまった様子で一礼する。
「ノクス様、甘奈様。国王陛下がお呼びです。至急、城へ」
その言葉に、空気が一気に張り詰めた。
「何ー!? しかも名指しされてるし……」
甘奈は思わず声を裏返らせた。
ただの報告ではなさそう――甘奈は思わず身構えた。
◇ ◇ ◇
謁見の間に足を踏み入れると、王はすでに玉座から立ち上がっていた。
普段の威厳を削がれたように、深くため息をつき――
「……異世界の娘よ。すまない」
そう言うと、王はゆっくりと頭を垂れた。
「へ?」
甘奈は目をぱちくりさせる。
「え、急に何……? なんか謝られてんだけど?!」
王は続ける。
「そなたをこの世界に呼び寄せ、危険に巻き込んでしまった。
本来ならば背負わせるべきではなかった。……許してほしい」
「え、いや……いまさらそんなこと言われても……」
甘奈は思わず、視線を泳がせる。
王の目は玉へと移った。
「そしてノクス。改めて禁術という愚行に巻き込み、数多の犠牲の果てにその姿を……。知らなかったとはいえ、我が罪である」
玉はわずかに目を伏せたが、口を閉ざしたままだった。
その時、王の背後に控えていた側近が一歩進み出る。
「陛下。……ここからは私が」
王が小さくうなずくと、側近は甘奈たちに聞こえるように言った。
「魔族と繋がる使者より連絡が届きました」
一拍の間を置き、重々しく言葉を重ねる。
「女魔王が実権を握ったことにより、魔族側も以前のように“魔封じ”を行うことに成功したとのことです」
玉の目が細く光った。
「……そういうことか」
甘奈がきょとんとする。
「え、なに? どういうこと?!」
玉は少しためらい、言葉を選ぶようにしてから口を開いた。
「つまりは……甘奈。お前はもう“お役御免”というわけだ」
「……はあああああああ?! ちょっと待ってよ!……何それ……」
がくんと膝から力が抜け、その場にしゃがみ込む。
手から滑り落ちそうになったスマホを慌てて胸に抱きしめ、ぽつりとつぶやいた。
「……意味わかんないし……」
甘奈がうなだれたままの空気を断ち切るように、王は深くうなずいて場を見渡した。
「……私はこの国を導く資格を失った。禁術を止められず、多くの命を失わせた責は重い。
ゆえに――王位を退き、後を娘に託す」
その言葉に謁見の間がざわめく。
背後の幕が揺れ、若き姫が一歩、前へ進み出た。
「……以後は、この私が政を担います」
張り詰めた声が響く。まだ若さの残る顔立ちに緊張が滲むが、その瞳は真っ直ぐに前を見ていた。
「……それって責任取ったことになるの……?!」
甘奈の抗議を、姫は正面から受け止めて小さく息をつく。
「父の罪は、私が引き継ぎます。この国が償わなければならないから」
そう言いながら――ふと玉の方へ視線を向ける。
その瞬間、姫の白い頬にかすかな赤みが差した。
玉は気づいているのかいないのか、淡々とした表情を崩さない。
謁見の間に再び沈黙が落ちた。
その空気を切り裂くように、玉が一歩前へ出る。
「……セリオン王。退位するのは止めないが」
低い声が響く。
「だが、その前にやってもらいたいことがある」
王が顔を上げる。
「なんだ」
「女魔王と――正式に対面できる場を設けてほしい」
謁見の間にざわめきが走る。
「女魔王と、対面……だと?」
王の声がわずかに震える。
玉は表情を変えず、ただ頷いた。
しばしの沈黙ののち、王は苦渋に顔を歪め、やがてうなずいた。
「……わかった。お前の言うことなら何か意味があるのだろう」
「頼んだ」
玉は短く答えると、しゃがみ込んだままの甘奈の腕を取った。
しっかり支えながら引き上げる。
「用は終わった。帰るぞ」
「……ちょっと待って、あたしまだ気持ちが……」
甘奈が涙声で言いかけたところで、玉は彼女を覗き込み、口元をわずかに歪めた。
「歩けないなら……背負ってやるぞ」
「~~っ近いし、歩けるし!!」
顔を真っ赤にして叫ぶ甘奈。
玉はそれ以上何も言わず歩き出す。
去っていく二人を、姫はじっと見送っていた。
その頬にわずかな赤みを帯び、名残惜しそうに視線を落としながら――。
うわぁぁん……。
お役ゴメンとか、あたしここまで来た意味どこいったんですか???
てか姫様まで出てきてなんか意味深だし~!
次回はマジで心の準備いるんだけど……。




