第53話 知的イケメン?できあがり~!
やっほ〜甘奈だよー!
今回はね〜完全に「箸休め回」ってやつ?
……いや、だって気になってたんだよね、あの人のヒゲとか眉とか髪とか。
やっと整えてあげられて、あたし的にすっきり〜!
目の前には、重苦しい空気を放つ椅子に腰掛けたエルディス。
「エルディスさんじゃん! 行方不明って聞いてたよ?」
その言葉に、彼は露骨に顔をしかめた。
「……異世界の娘か」
そう言うと、恨めしげに玉をにらむ。
「じゃあ、玉の待たせてる人って……」
「そうだ」
玉は少し意地の悪そうな顔で答えた。
「僕たち、外で待ってたほうがいいんじゃないですか?」
「だねー」
気を使ってか、扉へ向かおうとするヤーラと甘奈。だが玉がそれを引き留める。
「――待て」
二人の足が止まる。ヤーラはエルディスの方をチラッと見ると小さく身を震わせた。
「……やっぱり僕、外で待ってます!」
一礼して、そそくさと部屋を飛び出す。ヤーラはエルディスが苦手なのかもしれない。
「……逃げたか」
玉は追い止めもせず、当然のように受け流した。
エルディスは小さくため息をつく。
「話は先程で終わったはずだ。帰らせてもらう」
立ち上がろうとしたその袖を、甘奈ががっと掴んだ。
「!」
エルディスは思わず目を見開き、驚いたように甘奈を見る。
「……ねぇ、玉と話し終わったなら、あたしからもちょっといい?」
上目遣いで見上げられ、エルディスの顔が強ばる。
「ずっと気になってたの!」
「な、なにを言い出す……!」
その瞬間、エルディスの頬に朱が差した。
玉もわずかに眉が動いた。
だがそんな二人を気にすることなく、甘奈は小さなバッグから化粧ポーチを取り出し、得意げに電動シェイバーを掲げた。
「じゃーん!」
「……」
一瞬の沈黙。
「本来は眉毛を整えるやつなんだけど……魔力にあてられたせいか、電池もなくならないし、結構なんでも剃れちゃうんだよ! しかも痛くないの。すごくない?!」
ブイィィィィ……!
軽快な音に、エルディスは椅子を引き、顔を強張らせた。
「な、な、な、なんだそれは!! 俺を殺す気か?!」
「痛くないって言ってるじゃん! ほら」
甘奈は自分の頬に軽く当ててみせる。
エルディスは唖然とし、しばらく固まったが、やがて観念したように椅子へ戻った。
「ほらー、痛くないでしょ?」
甘奈は彼の顎へシェイバーを当てる。
「近づきすぎじゃないか?」
玉が甘奈の隣に立って、時折そんな言葉を投げ掛ける。
「ちょっと黙ってて」
甘奈は振り払うように言い、髭を剃り、眉を整えた。
さらに髪をじっと見つめると、
「んー……ここも重たいなぁ」
彼女は指で髪をひとすくいつまみ取り、そこにシェイバーを当てる。
ブイィィィィ……と刃が震え、毛束がざくりと落ちた。
またひとすくい、そしてもうひとすくい。
最後に手櫛でざっと整えた。
ぱっと見れば素人仕事で不揃いだが、無造作ヘアに見えなくもない。
「変わったじゃないか……」
玉が思わず声を漏らす。
「でしょ? でしょ?」
甘奈はにんまり笑い、ポーチから折りたたみ鏡を取り出してエルディスに差し出した。
恐る恐る鏡を覗き込んだ彼は、しばらく動かなかった。
指で眉をなぞり、顎を撫で、髪を確認する。
「…………」
いつしか、彼は自分の顔に見入っていた。
そのことに気づき、はっと顔を上げる。
甘奈と玉の視線がこちらに注がれていることに気づき、耳まで赤く染めた。
「し、失礼する!」
慌てて立ち上がり、足早に部屋を出ていこうとするが
「ちょっとちょっと! 鏡返してよー!」
甘奈の声に、エルディスは机に鏡を置き、咳払いをひとつ残して去っていった。
甘奈は鏡をぱちんと閉じてポーチにしまいながら、にっこり笑う。
「いやー、ずっと気になってたから、すっきりしたー!」
そう言いながら落ちた毛束を軽く集め拾い上げる。
玉はこめかみに指を当て、深いため息を漏らした。
「……全く、お前は人の都合なんてお構いなしだな」
甘奈はじっと玉を見て言った。
「その台詞玉には言われたくないんだけどー」
「……」
ってことで、今日は軽めにお届けしました〜。
次は久々にピケ(女魔王)が出てくるかも……!?
今度は一気にシリアスに行く予感しかしないんだけど〜
ありがとうね〜!




