第50話 しんみりからの再会フラグってアリ?
やっほー甘奈だよ☆
なんかさ、今回はちょっとしんみりモード。
ヤーラがポツリって言ったひと言が、マジで胸にズキンってきた…。
あたしも勢いで「行ってみよーよ!」って言ったけど、ほんとはドキドキしてるんだよね。
ヤーラは、秩序の院の件があってから少しぼんやりすることが増えた気がした。
そんな時――甘奈は、彼の小さな声を聞いてしまった。
「……僕の村、どうなってるのかな」
誰に向けたわけでもなく、ただポツリと漏れた言葉。
彼の村は壊滅し、両親も亡くなった。
それでも――心のどこかに「もしかしたら」という思いが残っているのかもしれない。
「気になるなら行ってみようよ! もしかしたら、ヤーラみたいに生き残った人がいるかもじゃん?」
「えっ? え?」
まさか返事が返ってくるとは思わなかったのか、ヤーラは大きく目を見開き、慌ててこちらを振り返った。
甘奈は笑って肩をすくめる。
「ね?」
ヤーラは少し俯いて、唇をかみしめる。
「……でも、噂を聞くと、そんな話は全然なくて……。行くの、怖いんです。もし……本当に誰も残ってなかったら……」
小さく震える声に、甘奈の胸も痛んだ。
「じゃあさ」
少し間を置いてから、甘奈は言った。
「……明日、ララちゃんの集落の方に行かない? 様子見に行こうよ。あたし気になってたんだ」
異世界に来た直後に寄った集落で、モンスターの被害にあい、ヤーラの友達の母親が傷ついた場所……。
ヤーラの瞳が驚きに揺れる。
「……!」
「だめだ」
返事よりも早く、鋭い声が割り込んだ。
「甘奈。お前は優先すべきことがあるだろう」
さっき話に出た、レベルアップのことだ。
「……玉のケチ! 顔だけイケメンになっても、中身は全然イケメンじゃないじゃん!」
玉は深くため息をつき、じっと甘奈を見つめた。
甘奈も負けじと、むーっとした顔で玉を見返す。
しばしの沈黙。
やがて玉は肩を落とし、短く息を吐く。
「……やれやれ。言い出したら聞かないんだな」
短く息を吐き、しかめっ面のまま続ける。
「あそこは遠い。近くまでテレポートで送るが……一刻だけだ。明日は俺もやることがある」
「やったね!」
甘奈とヤーラは顔を見合わせ、ぱちんと小さくハイタッチする。
「たまーありがとー!」
勢いのまま抱きつこうとして――甘奈はハッと固まった。
(……やば。今、イケメンバージョンだった……!)
顔が一気に熱くなり、伸ばしかけた手をそっと下ろす。
「へ、へへへ……」
バレてないよね!? とごまかすように笑う甘奈。
玉は横目でちらりと見て、鼻で小さく笑った。
「……げんきんなやつだ」
◆ ◇ ◆
視界がぐにゃりと歪み、足元の感覚が消える。
甘奈が思わず目を閉じた次の瞬間――もう、辺りは森だった。
隣にはヤーラ。後ろを振り返ると、玉の姿はもうない。
「……行こっか」
入り口の横に少し開けた場所があり、そこに無数の石が積まれているのが見えた。
以前立ち寄った時は、こんなものはなかったはずだ。甘奈の足は自然とそちらへ向かっていた。
ただ石を積み重ねただけの、簡素なお墓。
けれど、誰かが摘んできた野の花が供えられていて――どの石の前にも、一輪ずつ必ず添えられていた。
甘奈は自然と目を瞑り、手を合わせた。
(こんなに沢山……助けられなくてごめんなさい……)
その隣で、ヤーラも小さく両手を合わせる。
ぎゅっと目を閉じた横顔は、年齢よりもずっと大人びて見えた。
「……おい、あんたら」
背後から声がした。
振り返ると、花を手にした一人の獣人の男性が立っていた。
見覚えのある顔だった。
――甘奈たちが集落に来て、初めて言葉を交わした男性だ。
その目が驚きに見開かれ、次の瞬間、安堵の色を帯びて細められる。
「やっぱり……あんたたちか」
ふぅー……お墓で手を合わせるのって、なんか背筋のびちゃうね。
でもでも!まさかの声かけられちゃったし……次はララと再会?




