第48話 光、取り戻せるよね?――セラさんの目のこと
やっほー☆甘奈だよ!
推しの遊くんだってドラマで言って気がする「ボクシングは目が命」って。
だから目ってマジ大事なんよ!!
「……あたしが、セラさんの目を治療する。――だから大丈夫」
だが玉が肩を押さえ、首を振る。
「やめろ。目は繊細な部位だ。下手をすれば、そのまま戻らなくなるぞ」
「でも、このまま何もしないなんて……! それこそ……!」
甘奈の声が震える。
その様子に、セラがぽつりと呟いた。
「……もう、いいのよ。どうせノクスの気持ちは私には向いていない……よく分かったわ。
だったら、いっそのことこのまま見えない方が幸せなのかもしれない」
「セラ……」
エルディスはその言葉を聞き、顔を覆った。
部屋に重苦しい沈黙が落ちる。
しかし、甘奈は食い下がった。
「そんなこと言わないでよ!」
涙目で叫ぶ。
「推しの遊くんだってドラマで言ってたもん! “ボクシングは目が命”って! だから……目ってすごく絶対大事なんだよ!」
「……なによそれ……」
セラは鼻で笑いながら呟いた。
「何でお前が泣いてるんだ」
玉も呆れた声を出す。
「ねぇ、玉も手伝ってくれるよね……」 涙目で縋る甘奈。
玉は沈黙ののち、ため息をつき、甘奈の肩に手を置いた。
「……まったく。手がかかるやつだな」
後ろからタタタっとヤーラが近づいてくる。
「僕も手伝います」
と、甘奈の肩に手を添えた。
「ヤーラ……」
甘奈はジーンときたが、玉が短く言い放つ。
「ヤーラ、今回はオレの魔力は足りてる。悪いがセラを支えていてくれ」
「おい、泣いてないで治癒魔法に専念しろ。制御はオレがやる」
玉は自分の袖で甘奈の涙を拭った。
甘奈は力強く頷く。
(集中……集中して……あたしならできる……はず!)
手のひらが光を帯びていく。
しかし、甘奈の治癒レベルは高くはない。放たれる光は揺らぎが大きく、治癒の力としては不安定すぎた。
皮膚や筋肉といった外的傷害なら、今の甘奈でも癒せる。 だが“視”の器官は違う。ほんの僅かな誤差が、二度と光を取り戻せない結果を招く。
「力は悪くない。だが精度が足りん。それに……少しだけ、量も足りないな」
玉は低く告げると、自らの魔力を甘奈の流れに注ぎ込む。
奔流のように散っていた光が、彼の制御によって一筋に束ねられ、欠けた部分が補われていく。
「暴れる分は俺が抑える。足りない分は補う。……お前はただ“癒す”ことだけを考えろ」
「……うん!」
「そのままセラの目に手をかざすんだ」
甘奈の手から放たれた柔らかな光が、セラの瞼の奥にゆっくりと染み込んでいく。
「……あったかい……」
セラが小さくつぶやいた。
「あと少しだ、気を抜くな」
光が収束し、室内に静寂が戻った。
甘奈は祈るようにセラの顔をのぞき込む。
「セラさん……見える?」
長い沈黙ののち、セラは震える声で答えた。
「……ぼんやりだけど……」
「ほんと!?」
甘奈の目がぱっと輝いた。
だが次の瞬間、玉が冷静に告げる。
「根は深い……完全に治すのは難しいだろう」
さらに続ける。
「……直後なら、まだもう少し希望はあったかもしれないが――」
玉は横目でダリオを見やった。
「わ、私のせいだって言いたいのか?!」
声を荒らげるダリオ。
「オレは何も言ってない」
それだけを告げる玉の声音は、氷のように冷たかった。
沈黙を破ったのはエルディスだった。
「異世界の娘とノクス……本当に助かった。これがどれほど難しいかは、俺には分かっているつもりだ」
彼はセラの体をそっと背に担ぎ上げる。
「とりあえず彼女の目を少しでも……そのあと、俺なりの責任をとらせてもらう」
静かな決意を帯びた声が、地下室に響いた。
去っていく背中を見送りながら、ダリオは膝を折り、その場に崩れ落ちた。
「……セラさん……っ」
嗚咽がこぼれ、両手で顔を覆う。
その泣き声は、誰にも届かず闇に溶けていった。
ふぅ~……マジ緊張したんだけど!?
セラさん、ちょっとは見えるようになったっぽいけど……まだ完治はムズい感じ?
玉も冷静すぎ、ダリオは自己嫌悪で沼ってるし……ほんと修羅場……
次回は……なんだろうね。応援よろ~!
読んでくれてありがとね♡




