第46話 いや心臓に悪いんですけど!
やっほー、甘奈だよー✌️
今回はね、マジでヤバいの!
部屋の中がパニックだし、あたしも心臓止まるかと思ったんだけど!?
玉に助けられてドキドキしたのは内緒ね♡
「――目を閉じろ!」
玉の声が部屋中に響き渡った。
次の瞬間、セラの前に立つフードの男から、爆ぜるような光が放たれる。
まばゆさと同時に、熱を孕んだ奔流が部屋全体を呑み込んだ。
「きゃあっ!」
「うわああ!」
「ひっ……!」
至る所から悲鳴が上がり、何かが倒れる音や床を這う気配が交錯する。
まるで地獄の業火に焼かれるかのような錯覚――。
甘奈は咄嗟に瞼を閉じたものの、目の奥が焼けるように熱い。
(やだ……! どうなっちゃうの!? 怖い!!)
恐怖で心臓が跳ね上がる。
だが――次の瞬間。
暗闇。
誰かの腕に抱きすくめられている感覚が、全身を覆っていた。
「……目は大丈夫か」
耳に落ちてきたのは、玉の静かな声だった。
顔を上げると、玉がすぐ目の前で覗き込んでいる。
(やば……イケメンバージョンは心臓に悪いって!)
こんな状況なのに頬が熱くなる自分に、甘奈は慌てて首を振った。
「あ、ありがとう……大丈夫だから……」
急いで玉から離れ、荒れた部屋を見回す。
ヤーラは入口近くにいたので無事。
エルディスは土下座のままの姿勢だったので無傷。
……だが、一番危なそうなのはセラだった。
「見えない! 何も見えない! ノクス! ノクスはどこなの!」
両手で顔を覆い、絶叫している。
その声は、先ほどの悲鳴の余韻に重なり、まだ空気を震わせていた。
リーズの父はセラを心配そうに見つめていた娘の手を引き、入口へ向かってゆっくり歩き出す。
その前に、玉が静かに立ちふさがった。
「ちょっと待て。……あんた、魔族だろう? 大昔に取り決められた“人間に干渉しない”という掟を忘れたのか」
男の足が止まる。
フードの奥から、怒気を含んだ鋭い視線が玉に注がれる。
「……おとぎ話のように子どもにすら語り継がれている話だ。
身の程も知らぬ人間どもが魔族に戦を仕掛け、大地を汚した大戦――知らないわけがないだろう」
低く吐き捨てるように言い放つ。
「だが、その後の取り決めのせいで……我らは自由に動けぬ。
なぜこちらが、こそこそと隠れるように生きねばならぬのだ……!」
そこで男は口をつぐんだ。
フードの奥から、じっと玉を見据える。
しばしの沈黙。
「……人間の寿命はたかが知れている。あれから何千年経ったと思っている」
独り言のように零れる。
「魔族に関する書物も、とっくに破棄されたはず……何者だ?」
玉は無言のまま、口を開かない。
鋭い視線が玉を射抜く。
「――いや。人間ではないようだな。魔力の流れが人間と違う」
やがて、男の口元がわずかに歪んだ。
「……まぁ、我らの中にも“裏切り者”はいると聞く」
「喋りたいなら裏切り者に言えばいい。……ただ、最初に干渉してきたのはそちら側のようだがな」
男の視線がセラへと鋭く突き刺さる。
その先には、何もない空間を掻くように必死で手を伸ばすセラの姿があった。
「ノクス! ノクスどこなの!?」
声を枯らしながら、掻きむしるように虚空を探している。隣でエルディスが必死に落ち着かせようとしていたが、全く効果がなさそうだった。
玉は舌打ちし、横に一歩引いた。
「殺してはいない。ただ……見えなくなっただけだ」
ジジジ……。
空間が軋むように震え、黒い裂け目が走る。
その裂け目は底なしの“無”で満たされていた。
男はふと視線を横に流し、ヤーラをちらりと見た。
「……逃げるなよ」
その言葉に、ヤーラの顔から血の気が引き、耳も尻尾も逆立ったまま固まる。
男は娘の手を引いたまま、その“無”の空間へ足を踏み入れる。
そして、音もなく消えていった――まるで最初から存在しなかったかのように。
ふぅ……とと様、ほんとに怖すぎなんだけど!?
しかもヤーラに「逃げるなよ」って……あれ完全に死亡フラグじゃん…
……って思ったら、ここでまさかの新しい人物が乱入する予感☆
次回もよろしくね~!




