第25話 あの子、絶対フツーじゃないし
やっほー!甘奈だよ~!
今回はね、なんか町で変な演説してる人いて、ヤーラと一緒にちょっと様子見に行ったんだけど……
いやマジで空気やばかったから。
甘奈は次の「モンスターが溢れる日」に備えて、レベルアップに励んでいた。レベルが5を越えたタイミングで、スマホのアプリのロックがひとつ外れた。
開放されたのは――音楽アプリだった。
「うっそ、マジ!? 前入れてた曲とか聞けちゃう!?」
わくわくしながら再生してみたけど、再生されたのはぜんっぜん知らない曲ばっかり。
しかも声も入ってなくて、ただのBGMって感じ。なかには“寝落ち専用”ってくらいスローテンポな曲まであって、正直けっこうガッカリした。
……が。
この世界での音楽アプリには、なんと特殊な効果があった。
曲をかけているあいだは、選んだ音楽に応じてバフが発動するのだ。攻撃や魔法の威力が上がって、討伐の効率までアップ!
甘奈はノリのいい曲をかけてモンスターをバッタバッタと倒し、あっという間にレベル9に到達した。
「スマホ様々じゃん……!」
ギルドの帰り道。ヤーラと並んで歩いていた甘奈は、ふと視界の端に防具屋を見つけて声をあげた。
「ねぇヤーラ、もうちょいお金たまったらさ、おしゃれな装備とか買いたいなーって思ってるんだけど!」
「そうですね……って言いたいところですが、無駄遣いはやめろって玉さんに怒られますよ?」
「……言うようになったじゃーん。えっ、てかあれなに? あの人だかり」
白い教会のような建物の前に、人が集まっているのが見える。
「見ていきますか?」
人だかりの中心には、白いローブに仮面をつけた男性が、木箱の上に立って演説していた。
オーバーな身ぶり手ぶりで、声に熱をこめて語りかけている。
「皆さん。このあいだも、獣人の村がモンスターの被害に遭いましたね。とても悲しいことです……」
甘奈はその言葉に、少し身構えた。
「モンスターが発生するのは、魔族のせいなのです。これはご存じですよね?」
うなずく人、「許せないな」とつぶやく人……反応はさまざまだ。
甘奈はそっと、隣にいるヤーラの顔をうかがう。
当事者の前でこんな話を聞かせるのは、さすがに気が引ける。
けれど、ヤーラは無表情のままだった。
甘奈は、そっとその小さな手を握った。
「行こっか?」
小声でたずねると、
「大丈夫です」
ヤーラはそう言って首を振った。
「魔族は許してはいけません! 存在してはいけないのです!」
演説者の声がだんだん大きくなり、群衆の空気が熱を帯びていく。
「国は町や村に魔導師を派遣し、結界を張っていますが……それは“防衛”にすぎません!
いつか、あなたたちの大切な人が――モンスターによって命を落とすかもしれない!」
その言葉を受け、周囲から歓声が上がる。
「そうだ!」
「魔族なんて、皆殺しだ!」
物騒な言葉が飛び交い、甘奈は思わずつぶやいた。
「……怖い」
モンスターも魔族も確かに怖い。
でも、人間が言葉ひとつでこんなにも攻撃的になることのほうが、もっと怖かった。
「甘奈さん……あれ」
ヤーラが小さく指をさす。その先には、ボロボロの服を着て、フードを目深に被った子供が立っていた。
演説者を、じっと睨みつけている。
「えっ、なに? 知り合い?」
「……いえ。獣人ではないと思います。たぶん……」
やがて演説が終わり、人々が散り散りに帰っていく。
「あの、あなたも秩序の院に……入会希望でしたか?」
仮面の演説者が甘奈に声をかけてきた。
「あ、いや……あっ!?」
甘奈が声を上げる。
さっきの子供が、するりと人ごみをすり抜け、どこかへ歩き去ろうとしていた。
その背中を、ヤーラが迷わず追いかけていく。
「ちょ、ヤーラ!?」
甘奈も慌てて男を振りきって、ヤーラのあとを追う。
すると、ヤーラは口元に指をあてて「静かに」と合図をしてきた。
(……って、尾行!?)
フードの子供は、慣れた足取りで人気のない行き止まりの路地裏に入っていく。
甘奈たちは身を隠しながら様子をうかがうと、子供は周囲をきょろきょろと見回していた。
(待ち合わせ……?)
甘奈が眉をひそめたそのとき。
ギチチ……
空間が不自然にゆがみ、ひび割れた硝子のように捻じれる。
そこから、大柄な影が音もなく現れた。こちらもフードを深く被っていて顔がよく見えない。
子供のそばまで無言で近づき、その肩に手を置くと――
ふたりの姿は、ゆがんだ空間の穴の中へと吸い込まれ、跡形もなく消えた。
「(あれって……玉も使ってたテレポートの魔法……)」
甘奈が息をのむ。
「……やっぱり、あの子は魔族ですね」
ヤーラがきっぱりと言い切った。
はい読んでくれてありがと~!
あの仮面の人たちマジ無理じゃない?テンション低すぎて空気凍るかと思ったんだけど。
てかさ、あの子供マジで誰? しかも消えたし!?いやほんと、次出てきたら話しかけてやるからな!?
……ってことで、次回もよろしくねっ☆




