第3話 木の上にいた!
玉って勝手に名前つけたけど、なんか色々光ってるし自分勝手だし変なやつなんだよー。
てか森の中で「助けて」って声…ガチのやつじゃん?
「よし、決めた! あんたのこと、勝手に『玉』って呼ぶから!……名前とかないと呼びづらいし。玉もあたしのこと、甘奈って呼んでいいからね!」
得意げに人差し指を立てる甘奈の声を無視して、頭からつま先まで色んな意味でまぶしい存在(頭とか…)玉は森の中を静かに見渡していた。
風が木を揺らす音に混じって、かすかに聞こえる。「……木の上に……ます!……気づい……」
「ふむ……しくじったな。どうやらこのあたりは獣人の村付近らしい」
玉が小さくつぶやく。
「ね、ねぇ今の声、聞こえてたよね!? っていうか、しくじったってヤバいやつじゃない!? 強敵とか出るエリア的な!?」
「……時間をさいてる暇はない。あいつのもとへ急がねば」
玉は声のした方向とは逆へスタスタと歩き出す。
「いやいや、待ってってば! 人助けって異世界の王道イベントじゃないのー!?」
甘奈は納得できないが、一人になるのが心細くて玉のあとを追いかけようとしたが、出来なかった。
——たすけて。
風の音に紛れるような、でも確かに存在した、誰かの必死な叫び。
甘奈は決意したようにくるりと向きを変え、声の方へ駆け出す。
「……はぁ、はぁ……いた! 木の上?」
木の上に、小さな影。毛のある耳とふさふさの尻尾——お馴染みの“獣人”っぽいシルエット。幼く見えるが、衣服はボロボロだった。
実でも取ろうとして登ったけど、降りられなくなった感じ?ドジっ子ってこと?
「君、大丈夫!? 降りられそ!?」
「た、助けてください……登ったのはいいものの……足がすくんでしまって……」
甘奈が「どうしよう」と周囲を見回していると、背後から玉が歩いてくるのが見えた。
「玉ーっ! こっち! 見てよ、木の上!」
甘奈が指を差すと、玉はため息をついた。
「獣人なのに木から降りられないなんて、そんな馬鹿な話があるのか……」
呆れたように言いながらも、「仕方ない」とつぶやいて手を開閉し力の調整を確かめる。
「まぁ、これなら……いけるか」
そして、突然木に向かって拳を振るった。バキリ、と幹が折れる乾いた音が森に響き渡る。
「うわあああああ!?」
「何やってんの!? 頭イカれてるってば!!」
甘奈と獣人の子どもが同時に叫ぶ。
倒れてくる木の枝へ向かって、玉がひと跳び。空中で子どもの身体をひょいと抱え上げ、そのまま軽やかに地面へ着地した。
「……………」
獣人の子どもは、腕の中で硬直したまま、ぽかんと口を開けている。何が起きたのか理解できていないようで小さく体だけが震えていた。
「助けただろう? 先を急ぐぞ」
玉はもう子どもには興味を失ったように、またスタスタと歩き出す。
モンスター出てこなくて良かった!だけど、木から降りれないって普通に怖くない?
玉、やり方が物騒すぎて笑うしかなかったんだけど(笑)




