表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/67

第18話 助けに来たのが一番ヤバいやつだった

えーと、今回は……あたし、なんか知らんけどヤバい部屋で目ぇ覚めました。

てかあのおねーさん、マジこわすぎじゃない?

とりま、早くこの場から消えたいんだけどー。

玉はセリオス支店のギルドに顔を出していた。

査定結果の確認と報酬の受け取りのためだ。時間帯もあってか、受付は混み合っていた。


ドアを隔てた奥の酒場からは、楽しげな声がにぎやかに響いてくる。


「今朝は急に悪かったな」


声をかけてきたのはギルドマスターだった。


「……あの黒髪の受付は?」


「休みだよ。まったく、この忙しいときにさ……ったくよ」


マスターは頭をかきながら封筒を差し出す。


「魔法学校の依頼完了通知が届いてた。それも加算してある。……ちょっとこっち、来てくれないか?」


そう言って、応接室に通された。


「依頼完了だけなら、こんなところに呼ばないだろ。――用件はなんだ?」


鼻をポリポリと掻きながら、マスターはばつが悪そうに言った。


「その……聞いたぞ。ダリオが、あんたの仲間にちょっかいかけたって。悪かったな、ほんと……この通りだ、あまり大事にしないでくれ」


「……上に報告するつもりはない」


玉の言葉に、マスターは安堵の息を漏らした。


「そうか……助かるよ。あいつ、両親をモンスターに殺されててな。……ちょっと、歪んでしまったのかもしれない。変な連中とつるんでるのも知ってる……」


「もういいか?」


「……あ、ああ。悪かったな。今後はダリオを担当させないようにする。だから、またうちのギルドを使ってやってくれ」



---


場面は変わり、薄暗い部屋。


魔方陣の中心には、ぐったりと横たわる甘奈の姿があった。


「セラ……なんてことをしてくれたんだ……! 学校内で薬を盛ったうえ、誘拐までって……お前が一番に疑われるんだぞ!」


声を荒らげる男は痩せ型で、まばらな髭。くぼんだ目にボサボサの髪。清潔感とは無縁といった風貌だった。


「誘拐したのはダリオだから平気よ。あの子」


顎で甘奈をさしながら、セラは腕を組んで言い放つ。


「今は使い道がなくても、後々、戦力になるかもしれないじゃない?」


「…………」


「ねえ、お願い。今のうちに洗脳しておいて。合図があれば、こっちの言うことをなんでも聞くように仕上げて。ね?」


(いやいやいや、なに言ってんの! えぐッ! こわッ!)


――意識はまだぼんやりしていたが、頭の中は冴えていた。


「……だいたい、異世界人にこちらの魔術が通用するかも分からないんだぞ?」


男は、ため息交じりに返す。


「……それは……ごめんなさい……あなたのために、したの……」


「お前は……全く……」


(うわっ……てか、人質の前でいちゃこらすんなってーの……)


重たかったまぶたが、ますます開けづらくなる。


――その時だった。


「――邪魔するぞ」


冷たい声が、部屋に響いた。


息を呑む気配。


「お前は……」


「久しぶりだな。オレを作ったことを忘れたか?」


「黒い……玉……か。意志が……あるのか?」


「オレたちは、王の命令で女魔王を討てと言われている。それだけの話だ。余計なことはするな」


その言葉に、セラが目を見開く。


「それだけじゃダメよ! 殲滅しないと……! じゃないと、あの人が死んだ意味がないじゃない!」


「――伝えることは伝えた」


次の瞬間――。


甘奈の身体がふわっと持ち上がった。

うっすら目を開けると、視界に玉の顔があった。


「……起きてるな?」


「……う、うん。てか……めっちゃ気まずかった……」


甘奈は顔を逸らしながら、小さくつぶやいた。


玉は無言のまま、何もない壁際に向かって歩き出す。


ギギ……ギチチ……。


空間がわずかに歪み、黒い裂け目がゆっくりと開く。


ふたりは、その穴に音もなく吸い込まれていった。


部屋には、セラと男だけが残された。


「なんなのあいつ!」


セラがヒステリックに叫ぶ。


男は、強ばった表情でつぶやいた。


「あれが……禁術で作られた、王の切り札だ……」


「そう……あいつを作るために、ノクスは命を落としたのね……」


セラの整った顔が、狂気に染まる。


だが、男は気づいていた。あの禍々しい魔力の中に――ノクスの面影があったことに。


(……いや、まさか……だが、あれは……ノクス――?)


奥底に眠る記憶が、警鐘を鳴らす。


殺したはずの存在。自分が消したと思っていた男。


(俺は……セラを手に入れるために、ノクスを――)


男の体が震える。


焦燥。嫉妬。後悔。恐怖。


(なんで今さら出てくるんだ……!)


目の前の空間を睨みつけるセラを横目に、男は心の底で、己の選択を呪っていた。

てかさ……マジで何が起きてたの?

あたし、薬盛られて連れ去られて、洗脳されかけて、空間ねじれて消えたんだけど……ま、いっか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ギャル ギャグ パッシュ大賞 ネトコン13
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ